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10日
しおりを挟む太陽の光がまっすぐに室内に差し込む気配に、ミッシャはいつもより早く目覚めたことを知る。
新鮮な水を盥に注ぎ顔を洗った。
それまで気にすることも出来なかった身なりを確認すると、清潔な寝間着一枚で転がされていたことに気付いた。
清拭されているのか、嫌な体臭も感じない。
良い目覚めとは言えないが、幸せな夢を見たおかげで気持ちは落ち着いていた。
何もない部屋で何をしようかと考え始めたところで、オスカーが食事片手に入ってきた。
「おはよう」
「……起きていたのですか?」
「誰かさんのせいで最近は寝すぎなくらいだ。おかげでいい夢が見られたけどな」
不満げに言うミッシャにオスカーは眉間のシワを深くした。
「夢を、見たんですか?」
「寝てりゃ見るだろ?」
「そうですが……。どんな夢を?」
ここに来て初めて普通の会話をしている気がして、ミッシャは口が軽くなっていた。
「子爵家の庭に着いたころのこととか。娘のこととかな。あぁ、小さかったころのお前も出てきたぞ。あの頃は無口だったけど可愛かったなぁ」
寝てばかりだったミッシャの夢の記憶は混在していた。
子供のころのオスカーがいかに可愛かったかを語ったすぐあとに、娘のシャルロッテが初めて歩いた日の話をし、またオスカーの子供時代に戻ったり。
飛び飛びで語るのを黙って聞いていたオスカーだったが、手にしていたミルク粥をサイドテーブルへと置くと、ベッドに乗り上げた。
「ずいぶんおしゃべりですね」
「それも誰かさんのおかげで――っ」
押し倒され、口を封じられて、ミッシャはまたかと、目を閉じた。
オスカーの好きにさせよう。そうすればいずれ終わる。
オスカーの舌が力を抜いたミッシャのそれに絡まる。なすがままに全体をなぞられ、吐息が漏れる。
「ん、ふぁ……、は、ふ……っ」
じわりじわりと魔力が抜かれていく感覚の中、
――あぁまた飯を食べ損ねたな。
と、どうでもいいことを考えていた。
口端から垂れ落ちた涎が、顎を伝い首筋まで流れる不快感、執拗にねぶられ不足する酸素。
もう十分だろうと、目を開いた。
目の前の琥珀の瞳が大きく見開いた。
ゆっくりとオスカーの唇が離れていく。
ミッシャは濡れた唇を手の甲で拭い、大きく深呼吸をした。
よく眠っていたからか、まだ少し魔力が残っている気配を感じて、ミッシャはこれで自分で飯が食えると小さく笑った、瞬間。
身体が何かに押しつぶされた。
息が出来ない。
前が見えない。
何が起きた?
背にあったはずのベッドの感触は腹にあった。
ひっくり返さされたのだと認識したところで、振り返ろうとしたが頭を押さえつけられた。
「おい、オスカーっ……!」
声が枕に吸い込まれる。
寝間着一枚のミッシャの尻が持ち上げられて、何かが当たる。
いや、何かは分かる。
「待て、お前なにを考えてっ!」
「経口では十分いただけなくなったので、もっと手っ取り早くいただこうかと」
「まだ、足りない、っていうのか? お前、いったい何をけんきゅ、……っう、がはっ! ひ、ぐぅっっっ――」
身体が避けるような痛みに悲鳴が上がる。それもまた押さえつけられて枕に消えていくが、痛みが消えることはない。
オスカーに犯されている。
それがわかったところで、魔力も体力も不足しているミッシャに抵抗できることは何もなかった。
窄まりを無理やりこじ開けられた。
枕に押さえつけられてただでさえ苦しい呼吸が止まる。
実際、割けたのだろう。
血の臭いがした。
眩暈がする。
突き刺された痛みと、急速に魔力を奪われる感覚と、戦場を思い出させる鉄臭さに。
「まだ、先端しか触れてませんが、これだけでも口から奪うよりも多量の魔力が流れ込んできますね。奥に挿れたら、どうなりますかね」
ミッシャは首を横に振った。
「さすがに、これだけキツければ、俺も痛いんで……、しませんよ、まだ……」
キツイと言うだけあって、オスカーの息も荒い。
先端だけでこの痛みだ。これ以上、奥に侵入されたらどうなるのか。想像してミッシャの身体が震えた。
「あ゛あ゛ぁぁっ……」
少し動いただけで、痛みが全身を駆け抜けて、ミッシャは断末魔のような叫び声をあげた。
魔力の枯渇ではなく、痛みで意識を失いかけたミッシャは、その時、オスカーを哀れに思った。
こんな自分に執着せざるを得ない、養い子に。
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