5 / 8
第5話 箱の中身はなんだろな
しおりを挟む
「で、ガラガラはこれから何すんの?」
「博士を戻す」
「博士を戻す?」
「ちょっと待ってて」
そう残して路地裏の奥へと向かっていったガラガラは、一つのアタッシュケースを手に持って戻って来た。
そして「博士」という単語を告げ、そのアタッシュケースを夢宙の眼前に差し出した。
「博士。戻らなくて困ったなー。戻し方、知らない?」
「え、最新の博士ってアタッシュケースに変身できるの?」
「そのような事例は報告されていない」
「じゃあ、博士の連絡先でも入ってる感じ?」
「博士が入ってる」
噛み合わない会話に、夢宙とガラガラは首を傾げ合う。
「確認なんだけど、博士って人間だよな……?」
「ゲラだという記録はない」
「機械でもない?」
「ない」
夢宙は顔を顰め、目の前のアタッシュケースを神妙な面持ちで見つめる。
「虫でもない?」
「ない」
「……ハムスターでもない?」
「ない」
「人間?」
「人間」
「てか博士って誰」
「俺を製造した人」
ガラガラの言葉から導き出される答えと、目の前のアタッシュケースの関係が結び付かず、夢宙は知恵熱が出そうになりながら思考した。
夢宙は難しいことがあまりわからない。
なので、このままアタッシュケースを眺めていても、おそらく正解は導き出せないだろう。
「あのさ……これ開けていい?」
我慢ならなくなった夢宙は、もう解答を見てしまおうと、アタッシュケースを指差してガラガラに確認を取る。
しかし、そんな夢宙にガラガラは、アタッシュケースをギュッと抱きしめ「ダメ」と表情を崩さずに告げた。
夢宙は絶望した。ラフな絶望である。
「嘘だろ⁉︎ こんなに気にならせといて⁉︎」
夢宙は、頭を抑えながら「思わせぶりかよ……!」と地面に向かって嘆いた。
「何が入ってんだ……」
「博士」
「もう答えは出てるのに……!」
正解はすぐそこにあったが、手が届くことはない。
仕方がないと諦め、夢宙は気を取り直してガラガラとの会話を再開した。
「……で、博士の戻し方を探したいって?」
「そう。俺が起きたときから、博士は眠ったまま」
「あぁ、へぇ。さいですか。んじゃ、まぁ起こし方を探すのは確定として、私って何すりゃいいんだ?」
「生きてる」
「そんな必要最低限なことあんの?」
(もしかして私、必要とされてない……?)と、夢宙がショックを受けているとはつゆ知らず、ガラガラは舌を出し何やら上に視線を向けている。
「何。なんか上にあんの」
「ある。けど、見えない」
ガラガラの言葉に釣られた夢宙が、同じように上を見上げる。
確かに何かある。暗い上に、かなり上空にあるため、物体の判断はできないが、何やら金色に輝く謎の飛行物体が見える。
「まさか、UFO……ってやつか?」
夢宙が未確認飛行物体の可能性を示唆していると、ガラガラの視線が上空の飛行物体から、後方へと移った。
夢宙とガラガラが最初に出会った方向だ。
もう誰もいないはずだが、夢宙の耳にも土を踏んで歩く足音が届いた。
ザッザッという、どこか圧を感じる音が近づくと、ガラガラからザーッというノイズ音のような音が鳴り始めた。
夢宙は「その音お前が出してたんだ」という言葉や「音圧対決でもしてんの?」という場違いだろうと思われる言葉を飲み込み、足音のする方向へ意識を集中させた。
「博士を戻す」
「博士を戻す?」
「ちょっと待ってて」
そう残して路地裏の奥へと向かっていったガラガラは、一つのアタッシュケースを手に持って戻って来た。
そして「博士」という単語を告げ、そのアタッシュケースを夢宙の眼前に差し出した。
「博士。戻らなくて困ったなー。戻し方、知らない?」
「え、最新の博士ってアタッシュケースに変身できるの?」
「そのような事例は報告されていない」
「じゃあ、博士の連絡先でも入ってる感じ?」
「博士が入ってる」
噛み合わない会話に、夢宙とガラガラは首を傾げ合う。
「確認なんだけど、博士って人間だよな……?」
「ゲラだという記録はない」
「機械でもない?」
「ない」
夢宙は顔を顰め、目の前のアタッシュケースを神妙な面持ちで見つめる。
「虫でもない?」
「ない」
「……ハムスターでもない?」
「ない」
「人間?」
「人間」
「てか博士って誰」
「俺を製造した人」
ガラガラの言葉から導き出される答えと、目の前のアタッシュケースの関係が結び付かず、夢宙は知恵熱が出そうになりながら思考した。
夢宙は難しいことがあまりわからない。
なので、このままアタッシュケースを眺めていても、おそらく正解は導き出せないだろう。
「あのさ……これ開けていい?」
我慢ならなくなった夢宙は、もう解答を見てしまおうと、アタッシュケースを指差してガラガラに確認を取る。
しかし、そんな夢宙にガラガラは、アタッシュケースをギュッと抱きしめ「ダメ」と表情を崩さずに告げた。
夢宙は絶望した。ラフな絶望である。
「嘘だろ⁉︎ こんなに気にならせといて⁉︎」
夢宙は、頭を抑えながら「思わせぶりかよ……!」と地面に向かって嘆いた。
「何が入ってんだ……」
「博士」
「もう答えは出てるのに……!」
正解はすぐそこにあったが、手が届くことはない。
仕方がないと諦め、夢宙は気を取り直してガラガラとの会話を再開した。
「……で、博士の戻し方を探したいって?」
「そう。俺が起きたときから、博士は眠ったまま」
「あぁ、へぇ。さいですか。んじゃ、まぁ起こし方を探すのは確定として、私って何すりゃいいんだ?」
「生きてる」
「そんな必要最低限なことあんの?」
(もしかして私、必要とされてない……?)と、夢宙がショックを受けているとはつゆ知らず、ガラガラは舌を出し何やら上に視線を向けている。
「何。なんか上にあんの」
「ある。けど、見えない」
ガラガラの言葉に釣られた夢宙が、同じように上を見上げる。
確かに何かある。暗い上に、かなり上空にあるため、物体の判断はできないが、何やら金色に輝く謎の飛行物体が見える。
「まさか、UFO……ってやつか?」
夢宙が未確認飛行物体の可能性を示唆していると、ガラガラの視線が上空の飛行物体から、後方へと移った。
夢宙とガラガラが最初に出会った方向だ。
もう誰もいないはずだが、夢宙の耳にも土を踏んで歩く足音が届いた。
ザッザッという、どこか圧を感じる音が近づくと、ガラガラからザーッというノイズ音のような音が鳴り始めた。
夢宙は「その音お前が出してたんだ」という言葉や「音圧対決でもしてんの?」という場違いだろうと思われる言葉を飲み込み、足音のする方向へ意識を集中させた。
0
あなたにおすすめの小説
お姫様は死に、魔女様は目覚めた
悠十
恋愛
とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。
しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。
そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして……
「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」
姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。
「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」
魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
ひめさまはおうちにかえりたい
あかね
ファンタジー
政略結婚と言えど、これはない。帰ろう。とヴァージニアは決めた。故郷の兄に気に入らなかったら潰して帰ってこいと言われ嫁いだお姫様が、王冠を手にするまでのお話。(おうちにかえりたい編)
王冠を手に入れたあとは、魔王退治!? 因縁の女神を殴るための策とは。(聖女と魔王と魔女編)
平和な女王様生活にやってきた手紙。いまさら、迎えに来たといわれても……。お帰りはあちらです、では済まないので撃退します(幼馴染襲来編)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる