ガーデン・オブ・ガーディアン 〜Forbidden flower garden〜

サムソン・ライトブリッジ

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~一章 野望の剣士編~

九話 新たな仲間

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「ここまで来れば大丈夫だろ」

 俺達は城下街の人目のつかない路地まで下りて来ると、ティエナの入った壺を降ろした。

「嬢ちゃんもう安心だぜ」

「いやあ、ハラハラしたな。しかし何とかなるものだな」

 俺もディーノも一汗拭くと、壺の中からティエナがヌッと顔を出した。

「なんで? なんで私を助けたの? そっちのイケメンは私を助けるつもりなんて無かったじゃない。その心に嘘は無かったのに……」

 ティエナはいまだに自分を助けた見知らぬ男に警戒心を寄せる。

「そんなんどーでもいーだろ。助かったんだからよ」

「えっと、あなたは──」

 ティエナが壺から這い出ると、不思議そうに俺の顔を見た。そう言えばまだ名乗ってなかったことを俺は思い出した。

「そういや、自己紹介が遅れたな。剣術で名を轟かせるはセーリエの街の快男児! 情けあり、仁義あり、風情を持って世を渡る! そう俺こそは東大陸の風来坊! その名も──」

 ズルルンっ

 待ってましたと言わんばかりのタイミングで、俺のズボンは真下に直滑降した。

「きゃああああああ!!」

「うおおおおおおお!!」

「それはやばい」

 夜の闇に木霊する悲鳴をあげる少女、何度も醜態を晒す剣士、それを見て笑う伊達男の図がそこにあった。


「へ、変態! 変態!!」

「変態じゃねーー!! これは仕方無いあれなんだ!!」

「仕方無く下半身見せる奴がどこにいんのよ!! 変態! 変態!!」

「うおーー!!だまれーー!! 助けてやったのにこのドチビ貧乳娘がーーッ!!」

「誰がドチビ貧乳だ!! 丸出し野郎の変態に言われたくない!! 二度とその粗末な物が顔出さないよう鍵でもかけろおおお!!」

「てめええ!! 俺の名剣(未使用)を馬鹿にすんじゃねえええ!! それに変態って言う奴が本当の変態なんだぞおお!!」

「清楚な私のどこに変態要素があるのか言ってみろおお!! 枯れ木の枝先みたいな下半身の変態野郎おおお!!!!」


 犬猿の仲である! どちらが犬でどちらが猿なのかはさて置いて、この二人は水と油……! 互いに決して相容れないのではとディーノは不安に思ったが、それ以上にこの二人のやり取りは面白かったので静観しているのであった!

「「はあ、はあ、はあ」」

 争うこと数刻、二人は息を切らしながら互いを睨んでいた。

「……そろそろいいかな。改めて自己紹介をさせてもらうよ。自分はディーノ。セーリエの街から来た剣士であり、禁断の花園を目指す冒険者だ。──そしてこちらが相棒のバッジョ。見ての通り愉快な奴だ仲良くしてやってくれ」

 二人の間に割って入りこむと、ディーノは白い歯を輝かせながら、クールに自己紹介を決めた。

「……私はティエナ。南にあるルージャ村出身よ。それにそこの変態がドチビとか言ってたけど、私これでも14歳なんだからね」

「あ? もっとガキだと思ってたぜ。まあ幼いのは顔だけじゃなく、その貧相なボディもだがな」

「あ?」

「あ?」

 二人の間にまた嵐が吹き荒れそうなのでディーノは「まあまあ」と言ってバッジョを引き離した。

「ティエナ、君はもう自由だ。だがこの辺りをうろうろしていてはまた君は捕まるだろう。そこで考えたのだが、君は他の大陸まで逃げた方がいい。そうすれば追手はもう来ないはずだ。例えば、南の大陸なんかは逸脱狩りが盛んでは無いと聞いたことがある。どうだい、自分達も君をここまで連れ出した責任がある。船が出る港まで送ってあげるよ。もちろん船賃も出してあげよう」

 ディーノが願ったりの提案をティエナに言った。

「……なんで?」

「え?」

「なんであなたは私を助けようとしてなかったのに、こんなに親切にしてくれるのよ。今の言葉も嘘じゃなかった……。私はあなた達が嘘をついて、私をどこかへ売り飛ばそうとかそんな悪漢共だと思ったのに、なんであなたは嘘をつかないの。あなたの目的は何なの」

「ふっ、ふっははは!」

 ディーノは笑う。何故に彼が笑うのかティエナには分からないのか、まるで逸脱を見た人間のような目でディーノを見る。

「いや、ごめんごめん。余りにもおかしくてね。ティエナ、君はさっきの勝負を見てただろ?」

「えっ、あのジャンケン??」

「そうだ。俺達は勝負と云うものをとても大事にしている。簡単に言えばプライド、絶対に曲げてはならない信念を持って臨んでるんだ。あの勝負でバッジョは勝った。たったそれだけの事なんだ。でもそのたったそれだけの事に俺もバッジョも自身の全てを賭けているんだ。でた目は決して覆らない。それが例え王様の命令であっても、行く先が死罪であっても、この結果は絶対であり、俺達の誇りだ。そこになんで嘘なんかがつけようか。俺達は一心同体、行くも去るも歩みは常に一緒なのだよ」

 ディーノはその口上を誇り高くティエナに聞かせた。ティエナはポカンと口を開けると、

「あなた……顔はいいのにちょっと変な奴ね」

「ふふっ。誉め言葉として受け取っておくよ」

 ディーノはまぶしい笑顔で返した。

「……まあ、その……助けてくれてありがとう……。あなた達が嘘をついてないのはよくわかったわ。──本当はすごく嬉しかった。けど、私はずっと人の汚なさを見てきたから疑いがどうしてもあった。でもそれも晴れたわ。世の中にはあなた達みたいな、嘘がつけない無謀で馬鹿な奴もいるんだってわかったからね」

 ティエナは自分のぼろぼろの白いワンピースをいじりながら、恥ずかしそうに答えた。

「お、お願いがあるの!」

「なんだい?」

「私も……私も旅に連れていってほしいの! 禁断の花園には逸脱が望む理想郷があるとも聞いたことがあるわ。私もそこに行きたい……! 私にはもう帰る場所なんてないんだから、私も前へと進みたい!! 私は戦闘力もないし、都合のいい話かも知れないけど──お願い! 私を仲間に入れて!!」

 ティエナの偽りなき熱い思いが王都の片隅で俺達の心を響かせた──。

 俺達は目を合わせると彼女に言う、

「──ティエナ。仲間に入るには条件がある」

「なんでも言ってよ。私なんでもやるわ」

「言ったな? よし、それじゃあ……」

「「──ガッツはあるか?」」

「当たり前よ──!!」

 三人はニヤッと笑う。

「ティエナ。よろしく。俺もバッジョも君を歓迎するよ」

「よろしくね! ディーノ!」

 ティエナとディーノはがっちり握手をする。

「お前のガッツ、見せてもらうぜ。まな板娘」

「あんたよりはガッツあるわよ。変態アンポンタン」

 カチンッ

 っと二人の頭に血が昇る。

「ド貧乳がああ!! てめえのその貧相極まりない洗濯板みてぇな胸で毎日俺のパンツ洗ってやっぞゴラアアア!!!!」

「女の子に言って言い事と悪い事も区別つかねえのか丸出し早漏野郎おおおお!!!! 嘘も方便って言葉知らないのか脳みそスポンジがあああああ!!!!」
 

 前途多難──二人の漢と紅一点である可憐(?)な少女の冒険が不安と共に始まった……!

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