ガーデン・オブ・ガーディアン 〜Forbidden flower garden〜

サムソン・ライトブリッジ

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~一章 野望の剣士編~

十六話 エリックの依頼

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 俺達は妙な事を言う子供の後に着いていくと、古そうなレンガ色の家に通された。

「まあ座れ。遠慮はいらん」

 達者な喋り方でその子供は言った。俺達は大きめのソファに三人で座ると、テーブルを挟んだ対面の大きめの椅子にちょこんと子供は座った。

「おいガキンチョ。早く長を連れて来いよ」

「だからわしが長だと言ってるだろうが! 寝癖頭のアホじゃ話しにならん。そこの頭の良さそうなの、お前さんどこから来たんだ?」

「口の悪りぃガキンチョだなコラ!」

「まあまあ。バッジョ、まずは話をしようじゃないか」

 俺が躾の拳を振るおうとしたが、ディーノはそれを制する。

「自分達はここからずっと北東にあるセーリエの街から来た冒険者です」

「ほう。なるほど、それでどこを目指す?」

「目指すは『禁断の花園』です。そのために他の大陸に渡って守護者を見つける旅も兼ねています」

「ふん、なるほどな。まあ冒険者は皆おんなじような理由だからな」

「ところで貴方は一体何者なんですか? 集落の長にしてはだいぶ若く見えますが──」

 当然の疑問を投げるディーノを含め、三人は訝しむようその子供を見る。

「そうだな。とりあえず互いに紹介でもしておくか。わしは『エリック』この集落の長であり、逸脱だ」

「逸脱だって!?」

 退屈であくびをしていた俺だがその言葉を聞いて驚いた。

「……嘘は言ってない。この子──いや、この人は逸脱よ」

「だから言ってるだろうが。それにお前さんも逸脱だろ? 多分だが相手の嘘を見抜く能力じゃないかね?」

「はい。そのとおりです。それであなたは──」

「わしはお前さんのようなすごい能力は持ってないよ。わしの逸脱としての能力は『不老』だ。この体は八歳の時からその成長が止まっておる。わしの精神的な年齢はもう五百を越えているよ」

「「「五百ッッ!?」」」

 とんでもない数字だ。どうやらこの子供、いや爺さんなのか。見た目とは裏腹のすごい人物に俺達は度肝を抜かれる。

「驚いたか。無理もない、こんな姿の奴がそんな戯言を言っても信じてもらえなくてな。しかしその娘が手配書で見たことあったんでな、同じ逸脱として声をかけさせてもらった」

「ほ、ほんとに五百歳なのか!? すげえ……ガキンチョジジイじゃん……!」

「だれがガキンチョジジイだ! ケツの青いガキめ!」

「ケツは青くねえ! チビッ子ジジイ!」

「キサマ~ッ! おい、お前達こんな馬鹿と旅してるのか!?」

「ははは……すみません。おいバッジョ、歳上にあまり失礼な事を言うな」

「そうよ。あんた馬鹿なんだからちょっと黙ってなさい。大人しくしてないと野生に帰すわよ」

「俺を何だと思ってんだ!」

 総攻撃に合う俺は若干拗ねた。そもそもやはり俺は堅苦しい爺さんみたいなタイプが苦手なのかも知れない。

「……まあいいわい。それでお前さん達の名前は?」

「申し遅れました。自分はディーノと言います。そしてこっちが──」

「私はティエナです。同じ理性ある逸脱に会えて嬉しいです! よろしくお願いします!」

「そしてこっちの彼がバッジョです。先ほどは無礼をしてすみません。喧嘩っ早いですが頼りになる男なんですよ」

「ほう。お前さん達はなぜ逸脱のその娘を連れて旅なんかしてるんだ」

「実はですね──」

 ディーノがこれまでの経緯をつらつらと説明してくれると、俺は誇らしげに鼻で笑った。

「──よくわかった。ディーノ、お前さんは禁断の花園を目指すと言ったな。当てはあるのかね」

「……いいえ。恥ずかしい話ですがこれが何もわからずに四苦八苦しております」

「だろうな。それがわかってたらこんな田舎の小さな集落には来ないだろう」

「エリックさんは何かご存知ですか? それに私達は東大陸にはいられないので、他の大陸に行く方法も探しています。何とか助言頂けないでしょうか……?」

 ディーノとティエナが眉を落として質問に答えると、エリックは椅子の上であぐらをかいてこう答えた。

「事情はわかった。お前達を助けてやろう」

 思いもしない鶴の一声が飛んできた。

「エリックさん本当ですか!」

 ティエナの髪が喜びと同時にぴょんと跳ねた。

「ああ、本当だとも。お前達に船の賃金もくれてやるし、冒険者共が憧れてやまない禁断の花園の事も教えてやろう」

「マジかよ坊っちゃん爺さん! ほんとに知ってるのかよ!?」

「誰が坊っちゃんだ!」

「バッジョ! あなたエリックさんはこんなかわいい……じゃなくて、すごい人なんだから黙って話を聞きなさいよ!」

「エリックさんすみません。話の腰を折りましたね。それで本当にご存知なら大変助かるのですが──」

「……当たり前じゃ馬鹿もん。何百年生きてると思ってるんだ。多少の事なら何でもわかるわい」

 エリックは喉を鳴らし豪語する。

「しかしエリックさん。なぜそんな見ず知らずの自分達にそんな──」

「もちろん、タダでは無いぞ。わしの依頼を受けて、なおかつ解決してくれたらの話だ。お前達にそれができるかな」

「よっしゃあ! 何だってやるぜ!」

「やらせて下さい! 私達にできることなら精一杯頑張ります!」

「願ってもない話です。依頼の内容をお聞きしてもいいですか」

 俺達は息巻くと、先までの怪しき雲行きが一気に晴れたかのような顔をした。

「ふふ、若いな。では頼もうか。──近頃この集落で若い男が行方不明になる事件があってな、今月も三人が狩りに行った際にそのまま帰らないのだ。今までの行方不明者は全部で八人。このままではただでさえ人手のいないこの集落から男が消え続けたら、いつかは集落は崩壊するだろう。その原因を突き止めて欲しいのだ」

 エリックはその容姿からか、子供のような悲しげな顔を見せる。

「なるほど……恐らくですがそれは逸脱の仕業かも知れませんね。他の大陸でも行方不明の誘拐事件が多発しているみたいです。それが完璧に逸脱の仕業だとは言い切れませんが、可能性は高いでしょうね」

「わしもその考えだ。こんなに痕跡も無く、人がいなくなるのには理由がある筈だ。その理由を常識の範囲から外せるのが逸脱である。現にわしがそうだからな。今回のこの事件、解決してくれたらわしの知ってる事は全部お前達に話そう。どうだやってくれるか」

「もちろんよね! 二人とも! 必ず原因を止めて見せるわ!」

「あたぼうよ! 逸脱でも何でも来やがれってんだ! 俺達のガッツ、見せてやらあ!」

「無論ですね。見事解決して見せましょう」

 二つ返事で承諾する。エリックはうんうんと頷くと、

「頼りにしてるぞ。わしは戦闘力の無い逸脱だからな……。情けない話だがお前達のような冒険者に頼むしかないんだ。そのかわりだが、この集落にいる間はわしがお前達を王都の追手から匿うぞ。なに安心しろ、ここの集落の連中はわしが昔世話をしてやった奴等の子孫の集まりなんだ。だからティエナのような逸脱がいても気にしないタチでな、わしからもお前達の事をよく言っておこう。それにそこの『ポンチョ』はまだ体が癒えていないのだろ? しばらく休むがいい」

「ポンチョ? ……あっ俺か!? バッジョだ!」

「わかったわかった。どっちでもいいから今日の所は休め。宿の主人には代金はワシが持つように伝えるからゆっくりと休め」

「ありがとうございます。相棒が全快したら早速調査に向かいます」

 何だか小さい子供におごられてるみたいで気が引けるが、俺達はエリックの好意を素直に受け取り、宿へと戻った。




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