ガーデン・オブ・ガーディアン 〜Forbidden flower garden〜

サムソン・ライトブリッジ

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~一章 野望の剣士編~

二十五話 幻惑の館

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森の奥の館は嘘のように静まりかえっている。まるで中には生きてる者がいないかのような静寂さが、不気味さを増して俺達に恐怖を与えるかのようだ。

「エリックさん。この先は危険なので、ここで待っていて下さい」

「ああ、そうさせてもらう。わしが行っても足手まといになるだけだ。お前達を信じて待つとするよ」

「まかせてくれよ。もし守護者ガーディアンがいたらエリックの仲間の仇も必ずとってやらあ」

「エリックさん。私達が戻らない時はすぐにここから離れて下さい。もしかしたらこの森から出られる方法もあるかも知れないですから……」

「おいティエナ! それじゃあ俺達が負けるみたいじゃねーか!」

「あんたねぇ……勝つ勝負が当たり前だと思わないことよ! 今までは運もあって勝ってきたけど、それに頼ってばかりだといつか痛い目を見るって言ってるのよ!」

「なにお~ッ! 運だけじゃねーぞコラ!」

「まあまあ落ち着きなよ。『勝ち気は得なり、されどおごりは損するものなり』だ。ティエナ、実はねバッジョは最初、逸脱と戦うのをとてもビビっていたんだよ。だけどここまでの旅路でバッジョも俺も成長できた。この戦いも勿論勝つつもりだ。決して傲慢な自信では無い──誇りを胸に俺達は勝利を掴んでみせるよ」

「……そんな事、わかってるわよ……。ただ私は心配で……」

「バッジョ、お前からもほら」

「わ、わかってらーな。……俺達の戦いは苦難の連続だったけどよ、ティエナがいてくれたおかげでここまで勝ち残れたのはマジで感謝してるぜ……その、なんだ、ごめん……? いや、ありがとうだな!」

「ふふっ」

「はっ、なはは!」

 俺とティエナが笑うと、空気はなごみ、先程までの緊張はすっかりとほぐれていた。 

「それにしてもあんたも緊張とかビビったりもするのね」

「う、うるへー! お前、最初にあった逸脱、超恐かったんだぞ!?」

「ほんと……見てて飽きん奴等だわい」

「ふっ」

 エリックがまるで孫を見るような目で俺達を見るが、どちらかと言えば小生意気な子供にしか見えず、ディーノは鼻で笑った。


「それじゃあ行くとしようか──!」

「おう!」

「いいわ!」


 意を決めた三人は開かれた館の扉をくぐる。そこで見たものは──

「こいつはひでえ……」

 館の中には、若い男の無数の死体が転がっていた。死体は剣で斬られたような傷跡が目立つところを見ると、恐らくはジーダ達の手によって殺されたのだろう。

「ずいぶん激しく戦っていたようだね。この男達は館の人間……? もしくは館を守る逸脱か──?」

「ずいぶんと多いわ……しかも若い男の人ばかり……」

「おい、これってもしかして拐われた奴等なんじゃ……!?」

「いや、どちらにせよ抵抗しなければここまでの争いにはなってない筈だ。もし拐われた人達なら王都の騎士が来れば助けだと思うだろう。ジーダ達も騎士を名乗る者だ。無抵抗の人間に危害は加えない──だが、何かひっかかるな……」

「ね、ねえこの館ちょっと変じゃない? なんか外から見たよりもこの館の中、大きくないかしら……?」

「確かに……言われてみればそうかも知れない」

 三人は視界を見渡す。館の玄関ホールは大きく広がっており、まるで王宮を思わせるような広さだ。

「これも幻術か……」

「ま、いいんじゃねーの? 戦いやすいじゃねえか」

「楽観的ね……。あの先の廊下に行ってみましょ。奥へと続いてるみたいよ」

 俺達は無数の死体を通りすぎ、奥に続く広い廊下に入ると、またも死体が数体ほど転がっている。

「! おい、あれ、あの鎧野郎の部下じゃねーか?」

 廊下の先で、王都の紋章が入った鎧を着た騎士が倒れている。ディーノは近寄ってそいつの肩を揺らした。

「おい、まだ生きてるか!」

「……う、あ……あ……」

「まだ生きてるわ!」

「どうしたんだ! 何があった!?」

「おれ……は……な、に……お──」

 ガクンと、騎士はその意識を途絶えた。

「死んじまった……」

「──先を急ごう。答えがある筈だ」

 廊下を抜けた先には大きな赤い扉が構えていた。その扉を慎重に開けると、

「おお……なんだここ、パーティー会場みてえだな」

 俺は目の前に広がる王宮の大ホールのような場所が、目の前に広がるのを見て思わず口をポカンと開けた。

 上からぶら下がる大きなシャンデリアが、下に敷かれた深紅のカーペットとつやのある大理石の石柱をきらびやかに照らすように、ホール全体を豪華に仕立て上げている。

「おしゃれな場所ね……」

「──! 待て! 誰かいる……!」

「あの石柱の影だな……!」

 ディーノがホールの奥にある石柱に向かって、声を張り上げると、俺は剣を構えてうごめく影を睨んだ。

 石柱の影からその剣先を見せ、現れたのは──

「貴様は──!」

 ディーノが言うと、その影からでし者はバタリと倒れてその姿を見せた。その体からは血が大量に流れていて、ピクリとも動かないでいる。

「あいつはジーダの仲間じゃねえか……」

「あの逸脱も死んでる……? あ! よく見て……! あの石柱の周りに他の奴も倒れてる……!」

 俺とティエナは三人ばかしの王都の騎士が倒れているのを確認すると、おそるおそる近づこうとした────その時であった、

「バッジョ!! 上だッッ!!」

「!!」

 ディーノが叫ぶ──!

 ガギィィィィィィンッッ!!

 鉄と鉄がぶつかり合う音がホール全体に響いた。

「てめえ!? あっぶねえじゃねーか!!」

 剣にて受けられたのは咄嗟のディーノの声で反応が間に合ったからだ。上空から奇襲をしかける者──それはまごうことなく、東大陸最強の騎士。エメラルドの鎧を輝かせたジーダ本人であった──。






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