ガーデン・オブ・ガーディアン 〜Forbidden flower garden〜

サムソン・ライトブリッジ

文字の大きさ
91 / 157
~三章 復讐の乙女編~

十七話 二人……!

しおりを挟む

 日は沈み暗闇深まる森の中、私達は先行するサンゴーの後を追いながら森の奥へ奥へと走る。

 その視線の先──十数メートルほど離れたところを必死に走る犯人の背中を見つけて追っているのだが、地面は先日雨でも降っていたのか大きな水溜まりがそこら中にあったりして、柔らかくなったぬかるみをみせる悪路のせいで中々見えている敵に近付けない。

「待ちなさーい! 逃げても無駄よ!」

「……くそっ! しつこいやつらだ!」

「だぁ、はぁ、はぁ、ちょっと止まりな、さいよぉ……」

「犯人ハ疲レヲ見セテマス。ファイトデス、バラコフ」

 諦めをみせない犯人は、疲れをみせながらもどんどんと深い森へ後戻りを考えることなくひたすらに走る。

 しかしこのまま走り続ければスタミナの差で私は犯人を捕まえることができるだろう。仮に私のスタミナが尽きたとしてもサンゴーがいる。彼は機械故に疲れというものを知らないらしく、そのスピードが落ちることは無い。

 距離が詰まるのは時間の問題。しばらく走ると森の道が切れるように開けた場所が現れた。犯人が慌てるよう突っ走った先、そこはちょっとした大きな池があり、これ以上は先に進めない……ようはどん詰まりな場所である。

「観念しなさい! もうこれ以上は逃げられないわ!」

「コノ池ガ袋小路ふくろこうじデス。アナタヲ、捕獲シマス」

「はぁ、はぁ……。疲れたわぁ……。やっと終わるのねぇん。こいつ捕まえてさっさと町に戻りましょうよぉ」

 私達が詰め寄ると、犯人は池を背にしてこちらを振り向いた。頭上には怪しく光る大きな丸い満月が犯人を照らす。青白い髪と白い肌、華奢な細い線をした身体で黒いタイツのような服を着た若そうな男であった。

「…………くく。ふふははは!」

 男は自分が追い詰められておかしくなったのか、不気味に笑い始める。

「なにがおかしいのよ?」

「──理解不能。感情ガ壊レタノデショウ」

 私は呆れた顔で言うと、男は片手を上げて言った。

「観念するのはお前らの方だ。このに来た瞬間、お前らの負けは決定した」

「はぁ? この池がどうしたってのよぉ?」

「まだわからんか? ──この水の渦巻く音が!」

 その言葉で、男の後ろの池が中心から大きく渦を巻き始めた。渦はみるみるうちに巨大な水柱となって逆巻きながらまるで塔の如くそびえ立ったのだ。

「池の水がぁ!?」

「コレハ──」

「あんた──逸脱ね!」

 竜巻のようにぐるぐると回る池の水。今までにあったことの無い、自然の力を使うタイプの能力者に私達は驚き身構えた。

「そうだとも。俺は水芸師みずげいし『アッピア』! 水を自由自在に操れる能力だ! ここに追い込んだのはお前らじゃない……追い込んだのはこの俺の方だ! 撃ち抜け! 『竜巻の水銃スピン・ウォーターガン』!」

 アッピアは上げた片手をこちらに振りかざすと、荒ぶる竜巻の如し水柱から無数の水の弾丸が勢いよく放たれた。

「速い! みんな気をつけて!」

「わわわわぁ!」

「バラコフ! 私ノ背中ニ隠レテクダサイ!」

 無数の長細い水の弾丸を私は紙一重で避ける。サンゴーはとっさにバラコフをかばうと、いくつもの攻撃が彼の鉄の体に跳ね返るように当たる。

「サンちゃん大丈夫!?」

「──問題アリマセン。デスガ──」

 バラコフが心配すると、サンゴーの体は敵の攻撃により所々がまるで蜂の巣のようにへこんでいた。

「俺の攻撃を食らって死なないだと!? お前も逸脱か? 本来なら鉄板さえも貫通する俺の『竜巻の水銃スピン・ウォーターガン』を耐えやがった……。なるほどな、攻撃を避けたそこの女といい、少しはできるわけだ」

 敵は少し動揺しつつも次の攻撃に移ろうとしている。状況は悪い。あの水の銃撃をどうにかしないと迂闊に敵の懐には潜り込めない。それに私はギリギリで避けられても、サンゴーはまたあの攻撃を食らえば今度は穴が空くかもしれない。

 ──短期決戦で行くしかない。勝負は一瞬だ。私が覚悟を心に秘めると、敵がまた片手を上げて水の竜巻がうねりをあげる!

「死ねえ! 『竜巻の水銃スピン・ウォーターガン』!」

 放たれた攻撃は先程よりも多い! 光線のような水の弾丸が避ける私の服をかする! 一方でサンゴーは両手でガードを固めながらバラコフを庇って耐える。

 ガン! ガン! ガァン!

 サンゴーの鉄の体に穴を空けんと水が襲う!

「ボディ損傷38%、防御継続不能マデ、アト20%──!」

「ひえええっ! サンちゃん頑張ってぇ!!」

 バラコフは情けなくもサンゴーの後ろに隠れてこの猛攻を耐えるしかない。

「いつまで持つ! その体、穴ぼこだらけにしてやるよお!」

 敵は己の優位に笑う。──そしてそれが油断、逆転のチャンスでもあると私は知っている!

「おおおおッ!」

 私は水の銃の雨あられの中、舞うように避けながら距離を徐々に詰め──敵の懐へと一気に飛び込んだ!

「なんだとっ!」

「そこよッ!!」

 まさかあの猛攻の中を切り抜けて突っ込んでくるとは敵も度肝を抜かれた。──私の拳が敵の顔面へと触れるあと少し、水芸師はとっさに叫んだのだ。


「こぉい!! バティータ!!」


 叫ばれた名前、それに呼応するようにアッピアの後ろの水の竜巻の中から何者かが飛び出し、私に腹に蹴りをいれた──!

 ゴッッ!!

「ぐっ……なっ……!」

 鋭い衝撃と共に私は吹っ飛ばされ、そのまま離れた木にぶつかった。

「ヴィエリィ!」

「新タナ熱源反応有リ! 新手デス!」

 私を吹っ飛ばした何者はストンと地面に降り立つと、こちらを細い目で見下ろした。

 そいつは狐のような細くしまった顔でタンクトップのような道着を着ている。つんざくような髪をした金髪の筋骨隆々な男がふんと、鼻を鳴らした。

「なんだあ? アッピア、苦戦してんのか?」

「別に苦戦って訳じゃねえ。ただ二人の方が早い話しだ。そこの女、すばしっこくてな。お前に任せていいか」

「……いいぜ。ちょうど退屈してたしな。今宵は満月──楽しく戦えそうだ」

 二人……! 突如現れた別の敵。二人は簡単に話し合いをすると、新手の男はこちらにのしのしと近づいて来る。

「……もう一人いたとはね。油断してたわ」

 私は木を杖の代わりにして、まだ身体に響くダメージを我慢してよろりと立ち上がる。

「女のくせに中々タフだな。いいね、嫌いじゃあない」

「──女のくせに? 私の嫌いな言葉ね。人を見かけで判断するんじゃないわよ」

「……気に入ったぜ。気の強い女は好きだ。なぜなら屈服しがいがあるからなあ!」




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

処理中です...