サラリーマンのおっさんが英雄に憧れたっていいじゃないか~異世界ではずれジョブを引いたおっさんの英雄譚~

梧桐将臣

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第1章

光の勇者と企むおっさん

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続く『魔法試験』はいきなり魔法を撃ち合って戦うという過激なものではなくふたつの手順があるものだった。

まずはステラクリスタルという、星が煌めく夜空をそのまま閉じ込めたような丸い水晶に向かって、自分の魔力を発し魔法適正を調べる。

次に、魔法人形といわれるサンドバッグがわりの人形に向かい、なんでもいいから自分の1番得意な魔法をかけるというものだ。

この世界の魔法属性は・火・水・風・雷・土・光・闇の7種類があるとの事だ。

いくつかの属性に適正がある事もあれば、ひとつも適正が無い事もあるらしい。

また、適正の幅にも

・全く使えない・呪文の詠唱により使える・念じるだけで強力な魔法が使える

などの段階があるとの事。

ステータス確認魔法やインベントリの収納魔法などは、属性の適正関係無しにこの世界の人は等しく使えるようだ。

ただし、攻撃や回復などの主に戦闘に使うような魔法は、この属性の適正がモロに反映されるらしい。

ただ最初は適正が無くても後々目覚める事もあり、あくまでも入学時の適正を測るものなので、気軽に行ってくれとの事だった。

「うぉぉぉーーー!!!」

「きゃーーかっこいいーー!!」

「さすが神童!!」

何やら騒がしい方を見ると、金髪のさわやかイケメンが受験生の喝さいを浴びている。

「ふっ。これくらい当然だ!それから神童はやめてくれないか?俺ももう16才になるのだからね。偉大なる勇者の末裔、このクロード=アルヴェイユ。光の勇者の再来と言われている!これからは神童では無く光の勇者と呼ぶがいい!」

どうやらあのクロードというやつが全属性への適正があり、特に光属性には最高ランクの適正を示したらしい。

にしても、完全に苦手なタイプだな。

だが、俺は日本のサラリーマン生活を経て、どんなやつとでもそれなりに付き合う術を覚えた。

もし入学後関わる事があれば、【社交辞令】と【お世辞】と【へりくだり】を駆使して適当に仲良くやっていこう。

ちなみに俺は小さい頃雷に撃たれたせいか、雷属性に適正があったのみで他はなしだった。

その様子を見ていた、自称光の勇者クロードとその取り巻き達が

「はーはっは!!落ち込むなよ平民。もし一緒に入学できたなら俺が魔法のなんたるかを教えてやるから安心したまえ。」

「さすが光の勇者様!平民にもその優しさを分け与えようとは!」

「かっこいいーー!あの平民ずるいわ!私にも魔法教えてー!」

などと茶番を繰り広げていた。

いきなり平民よばわりとは失礼なやつだ。まぁ平民に間違いは無いんだけど。

日本では普通のサラリーマンで、異世界では平民ときたか。

ガイア様本当に俺で良かったのか?星を救って欲しいとか言っていた気がするけど、はずれジョブからの魔法適正も雷のみで救える要素が見当たらないぞ。

ちなみに光の勇者様に対しては、それなりに仲良くしておこうという気持ちは微塵も無くなったのでフルシカトしておいた。

続いてサンドバッグ代わりの魔法人形に魔法をかける試験。


火の玉、土の塊、毒っぽい液体など各自得意な魔法を人形にあてている。

その度に魔法人形が

「ピピッ!18ダメージ。」

「ピピッ!12ダメージ。」

「ピピッ!8ダメージ、毒デバフ。」

と魔法の効果を測定している。

すごく優秀な機械だな。・・・まぁでもパンチングマシンの魔法バージョンみたいなものか。

しかしダメージやデバフという言葉はゲーム用語そのまんまだな。

ゲームに慣れ親しんだ俺には非常に助かるが、この世界の成り立ちについては今後検証していきたいとこだ。

次は、『戦闘試験』で革ベルトにふっとばされてパンツが丸見えになっていた、大剣使いの女戦士だ。

「ストレングス・ブースト」

と唱え身体が一瞬光ったかと思うと、次の瞬間には魔法人形まで跳躍し大剣の一撃を叩き込んでいた。

「ピピッ!37ダメージ。」

「おー!すごいダメージだけど・・・。」

「でも魔法じゃなくね?」

ざわつく会場内。

少し非難めいた雰囲気が流れる。

「私は自己強化の魔法しか使えないので魔法の効果を見てもらう為に、ちょっとぶった切ってみました!」

はじけるような笑顔で屈託なく宣言する女戦士。

ちなみに本人が言うぶった切っている最中にも、モロにパンツが見えていた。

この子はスカートの役割をわかっているのだろうか。

「ふむ。まぁいいでしょう。」

「魔法じゃなくねって言ったやつ誰だよ?立派な魔法だろ。」

「てかあの子かわいくね?」

うなずく教官と女戦士の宣言で手のひらを返す男たち。

うん。16才ってそんなもんだよな。

日本も異世界も男の本能は変わらないらしい。

だが俺の中身は34才になるので、さすがにそんな浅はかでは無い。・・・と言いたいところだが素直に思う。

女戦士めっちゃかわいい!

なんとなく反則みたいになりつつあった会場の雰囲気をあれこれ考える訳では無く、たったの一言で変えてしまう天真爛漫さ。

おっさんの俺には眩しすぎる。

試験に受かりたいと思う気持ちに少し不純な動機が上乗せされる。

「はーはっは!なかなか奇抜な魔法だ。俺が本物の魔法を見せてやろう。」

クロード=アルヴェイユ、こいつは本当にいちいちうっとうしいやつだな。

「我が威光にひれ伏せ!!」

呪文詠唱なのかセリフなのかもよくわからん。

だが、手のひらから無数の光の玉が尾をひきながら魔法人形に殺到し着弾する。

「ピピッ!63ダメージ。」

「うおーー!!すげーー!50越え!!」

「きゃーーーーーー!!!!クロード様――!!」

「ふっ。魔法人形を壊したらいけないと思い、だいぶ力を抑えたんだがな。」

・・・。鼻につくだけじゃなくて、強いとはな。

ちなみに俺は雷の適正はあったが、放出の仕方がわからず魔法人形にあてる事ができなかった。

今日の今日まで魔法を使った事のない俺には不利すぎだろ。

その様子を見て、

「ぎゃははは!魔法飛ばせないってどういう事だよ!!」

「子供以下じゃねーか!!!」

「なんて不憫なの・・・。」

「はーーっはっはっ!平民ここに極まれりだな!みんなあんまり笑ってやるなよ!!はーーっはっは!!」

「・・・・。」

げらげら笑う受験生たちや、笑うなと言いながら自分が一番笑っているクロードに黙って様子を見ている女戦士。

光の勇者様は嫌なやつで実力もあるって俺みたいな凡人にとって最悪のシチュエーションだなおい。

だが俺は日本のサラリーマン生活を経て、そんな事いくらでも経験してきた。

親の金の力だったとしても良い大学にいったやつはそこで人脈を作る。

そして環境によって結局能力も磨かれる。

そこで培った能力や人脈は社会人になっても活きる。

その結果は年収の差によって明確に現れる。

また、顔やスタイルなどの外見に恵まれた者はそれだけで、アイドルや芸能人になりちやほやされる。

もたざる者である俺たち【サラリーマンのおっさん】よりも遥かに良い生活を手に入れられる。

そんな日本なのにサラリーマンのおっさん同士仲良くする訳でもなく、蹴落としあいながらも毎日働く。

こんな地獄のような環境で日々を過ごしてきた俺にとっては、この程度の異世界の洗礼ははっきり言って余裕だ。

異世界でバカにされただけで心の底から悔しい思いをするようなラノベの主人公と一緒にするなよ。

サラリーマンのおっさんなめんな。

絶対にこの世界で英雄になってこいつら見返してやる。



試験を終え、宿に帰りベッドに横たわる。

英雄になる前に、学園生活は満喫してみたいなとぼけーっと考える。

とりあえず“楽しい学園生活”に必要な事を整理してみる。

①試験合格
これは必須だ。ただ、入学試験はクラス分けがメインの目的で基本合格はできると聞いているので大丈夫だろう。

②女戦士と仲良くなる。
ものすごく可愛かった。サラリーマン生活で疲れた俺にとってあの天真爛漫さは癒しでしかない。絶対性格も良い。俺が魔法を出せないのを見ても笑っていなかったし。

③自称光の勇者クロード=アルヴェイユに天誅を。
こいつが幅を利かせている限り、俺は楽しい学園生活を送れない気がする。ただし、戦闘力も高いし人気もありそうだ。すぐに真っ向勝負は下策と言わざるを得ない。まずは大人しい振りをして、牙をとぎしかるべき時に最大限の“ざまぁ”をするべきだ。

・・・うん。学園生活を満喫するにも英雄になるにも、まずは自分の冒険者としての能力の低さをどうにかしないとな。

あと、宿も6日しかいれないし。何か割の良いクエストでもこなさないと。

とりあえず試験の結果は2週間後で仮に受かっていたとしても、入学は1か月後との事だ。

当面は入学までの戦闘力アップと金稼ぎだな・・・。

今後の方針をかためながら俺は眠りに落ちた。
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