サラリーマンのおっさんが英雄に憧れたっていいじゃないか~異世界ではずれジョブを引いたおっさんの英雄譚~

梧桐将臣

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第2章~学園動乱編~

数の暴力に抗う少女

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全力で走り、ジャスリーンたち女の子が避難している大部屋に辿り着く。

そこで目に入ってきたものは、とても受け入れがたいものだった。

逃げようとした罰でも与えているつもりなのか、ゴブリン達は女の子たちの体を触ったり自らの下半身を触らせたりして弄んでいる。

さっきまであんなひどい目にあっていたのに、また悪夢のような時間が始まろうとしていた。

私たちを助けようとしたジャスリーンは、リーダー格なのであろう一回り身体の大きなゴブリンにせっかくナツヒ君からもらった冒険者の服を引き裂かれ、今まさに脱がされようとしている。

――絶対に許さない。

「やめてええええぇぇぇぇぇーーーー!!!!!」

私は一番近くにいるゴブリン目掛け駆け出し、大剣で斬り飛ばす。

次いで大剣を水平に薙いで、女の子たちを弄んでいた2匹にまとめて攻撃を加える。

「ゲギャヤヤーー!!」という不快な声を発しながら吹き飛ぶ3匹のゴブリン達。

私の乱入にゴブリンも女の子たちもみんなが気付き、この空間にいる全員の視線を集める。

「私が戦うからみんなは逃げて!」

女の子達に声をかけ、私の攻撃を受け体勢を崩す目の前のゴブリンを見据え大剣を振り下ろす。

大上段から真っ二つにゴブリンをたたき斬る。ゴブリンは驚愕の表情を張り付かせたまま光の粒となって消え星へと還る。

これで1匹!残りは17匹。

「うっ!」

次のゴブリンに狙いを定めていると、背中のあたりに鋭い熱さを感じる。

後ろから斬りつけられた!

振りむきざまに、身体を回転させながら大剣を横薙ぎに振るう。

私に攻撃を加えていたゴブリンと周囲にいたゴブリンにまとめてダメージを与える。

その場にとどまっていては危ない。すぐに前進し追撃を加える。

大剣の武器の1つであるリーチを最大限に活かす為、大きく水平に斬撃を繰り出す。

さらに1歩前進し、力強く踏み込みながら返す刀で大剣を叩き込む。

一連の攻撃で計2匹のゴブリンを倒す事に成功する。

「うぐっ!」

しかし、次の瞬間太ももに鋭い痛みが走る。

遠くから弓矢で射抜かれたようだ。

太ももの痛みに気をとられていると、続いて腕を短剣で斬られる。

「あうっ!」

がむしゃらに斬り込んでしまったのが良く無かったのだろう、気付くと私はゴブリン達に囲まれていた。

ナツヒ君ならこんな事態には陥っていないだろうなと思う。

だけど今の私には大剣を振るって目の前の人を助けることしかできない。

それに、私の武器は重くリーチが長い。集団戦には向いているはずだ。

ひとまずはこの囲まれている状況を脱しなければ。

取り囲んでいる集団の穴を探す。

――あそこだ。

私は弓矢を持っているゴブリンめがけ包囲網を突破することにした。

「ストレング・・きゃあっ!!」

ヴァレンティア家で落ちこぼれと言われている私が得意としている身体強化魔法。

おおよそ賢者の家系には似つかわしくは無いが、今の私がとれる最善策。

自身の力を強化して、包囲網を突破しようと試みたが剣を持ったゴブリンに邪魔をされる。

魔法を使う隙を与えてくれないゴブリン達。

ならば魔法無しで突破するしかない!

「いっくよーーー!!!」

私は自分を鼓舞する為にも叫びながら大剣を振るう。

――空気を切り裂きうなりを上げる私の大剣がゴブリンを斬り裂く。

大剣を振るい終わった隙を狙われ、弓矢や剣の攻撃を受ける。

時には、私の大剣がゴブリンの短剣ごと押し返しその首を斬り飛ばす。

次の瞬間背中やお尻に焼けるような痛みを感じる。

何度互いの命を削り合う攻防を繰り返しただろうか、私はダメージを負いながらも前進を止めることは無かった。

そして、弓矢を持っているゴブリンを射程圏内に捉える。

私は大きく跳躍し空中で1回2回3回と縦に回転をして、大きく遠心力を加えた一撃を弓ゴブリンに加える。

会心の手応えを感じたその一撃で弓ゴブリンは絶命した。

すぐにでも一息つきたいところだけれど、すぐに振り返りゴブリン達を見据える。

その数残り10体。

私の残りHPは4割程までに減っていた。

まだまだ戦える。

――絶対にナツヒ君の元へは行かせはしない。

しかし、私が強引に集団を突破したせいで、ナツヒ君がいるボス部屋へ続く通路の入口とは反対側に来てしまった。

このままゴブリン達がくるりと私に背を向け、走り出してしまったらボス部屋への合流を許してしまう。

まずい!と一瞬思ったが、ゴブリン達に動く様子は無かった。

「ゲギャゲギャ!!」と一回り大きいゴブリンリーダーが何かを指示すると、周りのゴブリン達がゲギャギャー!と喚きだす。

ゴブリン達の黄色く濁った眼の全てが私に向けられる。

その眼はいやらしく、女の子たちを弄んだり犯したりしている時の眼と同じだった。

中には口をだらしなく開けてよだれを垂らしているゴブリンもいる。

思えば先にゴブリンシャーマンが放っていた黒い鳥の指示も恐らく「私を捕らえる為に戻ってこい。」というものだったのだろう。

そして今リーダーが、やつらの気持ちを煽るような事を言ったのだと悟る。

でもこれで私が倒れ捕らえられない限りは、こいつらがナツヒ君の戦っているボス部屋に行かない事がわかった。

――だから私は絶対に負ける訳にはいかない。

「ストレングス・ブースト」

一瞬の間をついて、私は身体強化の魔法をかける。

「やああぁぁぁぁぁっ!!!!」

強化された力をもって、私はゴブリンの群れに飛び込む。

2匹3匹とまとめて薙ぎ払いさらに追撃を加え、数を減らそうと思った時だった。

「ゲギャッハー!!!!」

鎖かたびらを着こみ、片手剣を持ったゴブリンが斬りかかってきた。

――ゴブリンリーダー、レベル6。

攻撃に移ろうとしていた隙をつかれ、私はまともに防御をとる事ができずゴブリンリーダーの一撃をもろに腹部にもらってしまう。

「かはっ!!」

口から鮮血が噴き出す。

先のゴブリンシャーマンの火の玉をうけ脆くなっていたのか、レザーアーマーは大きく切り裂かれお腹を守る部分が崩れ落ちてしまった。

――いけない。

ストレングス・ブーストは攻撃力を上げる魔法で防御力まではあがらない。

スカートもぼろぼろで、レザーアーマーの下に着ているブラウスも焼け焦げ、切り裂かれもはや糸がまとわりついているだけ。

レザーアーマーもゴブリンリーダーの攻撃によって、胸の部分を覆うのみになってしまっている。

更にHPも4割をやや下回っていた。

装備が壊れ防御力が下がってしまっている今、もうこれ以上攻撃をもらう訳にはいかない。

そんな私の考えにはお構いなしに、ゴブリンリーダーが斬りかかってくる。

なんとか大剣でガードをして前後左右のゴブリンをまとめて攻撃する為、身体を回転させ円を描くように大きく大剣を振るう。

ゴブリンリーダー含め何匹かのゴブリンにダメージを与えた確かな手ごたえを感じる。

しかし、すぐさま太ももに痛みと重みを感じる。

痛みの発生元を見ると、私の太ももにゴブリンがしがみつき汚らしい口を大きくあけ噛みついていた。

そして私の太ももに噛みついたまま、短剣でお尻から太ももあたりを切り裂く。

「いたぁっ!!」

思わず声がでてしまう。

その一撃はぼろぼろだったスカートを断ち切り、もはやぼろ布と化していたスカートがはらりと落ちていく様が目に入った。

この後に及んでも下着が見えてしまうということへの恥ずかしさを感じ、犯されていた女の子たちの姿がフラッシュバックする。

私の思考が一瞬戦闘から離れた隙を見逃さず、ゴブリンリーダーがお腹から胸をなぞるように片手剣で斬り上げる。

「いやあっ!!!」

確かなダメージと共に、残り少ないレザーアーマーの右胸部分が欠けて飛んでいくのが見えた。

このまま負けてしまうのかな。

ナツヒ君はまだ助けにきてくれないのかな。

私が戦意を喪失しそうになったその時だった。

――アビリティ【ビキニアーマー】を獲得しました。

この星を司る女神ガイア様の声が頭の中に響いた。
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