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第一部 四章
第五十一話 残り三分
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鉄を叩くような音がして、ミーミルが吹き飛ぶ。
ミーミルはうつ伏せのまま、地面を滑った。
「ってぇ!」
後頭部を抑えながら、跳ね起きるミーミル。
その視線の先では、『骸』がゆっくりと立ち上がろうとしていた。
「――マジか」
確かに上半身と下半身――真っ二つに分断してやったはずである。
だが断面から黒く細い触手が伸び出て、上半身と下半身を繋いだのだ。
さすがに修復に時間がかかっているのか、傷跡から細い触手がウニョウニョと動いているのが見える。
「大丈夫!?」
「あー、大丈夫。アマツの吸収シールドが残ってたお陰で頭吹っ飛ばずに済んだわ」
「良かった……怪我がなくて」
「しかしあのチートふざけてんな。何だあの再生速度」
「大丈夫、こっちもチートだし。チートをチートでねじ伏せてやろう」
アヤメの力強い言葉にミーミルは口の端を歪める。
そういうゴリ押しは嫌いではない。
むしろ望む所だ。
「おし。とりあえず絶掌コンボじゃダメだな。もっと上だ」
納刀していた刀を引き抜き、構えるミーミル。
アヤメはすでに歌っていた。
『ジグラートの烈火』
『死霊都市の鎮魂歌』
『カリギュラの協奏曲』
『狂戦士戯曲』
マクロ1編成。
クリティカル率・攻撃力向上。
攻撃速度・クリティカルダメージ向上。
命中率・回避向上。
防御力がダウンする代わりに攻撃力・攻撃速度・クリティカル率・命中率・移動速度向上。
ゴッリゴリの火力歌四重奏だ。
とにかく避けて叩けってか。
スパルタだわ、と思いながらもミーミルは笑みを浮かべる。
とても十数秒前に「怪我がなくて良かった」と心配していた同一人物とは思えない。
まあ、それでこそアヤメなのだが。
ミーミルは構えると骸に向かって剣を向ける。
今度の先手は、ミーミルだった。
「魔人 闇刃!」
ミーミルは鬱陶しい触手を展開される前に、一気に距離を詰める。
が――。
骸は地面を蹴り、大きく距離を離す。
そして、首をぐりんっ、と傾げた。
ぶちっと、肉が裂ける音がして、骸の首の付け根から、もう一つ顔が現れる。
「――ィ―――――!」
その顔は大きく息を吸うと、叫んだ。
だが、その音はアヤメには聞こえない。
「うっるせ!」
ミーミルだけに聞こえる音だった。
その音には聞き覚えがある。
それは――。
大地が震動する。
遠くから、何かが近づきつつある。
「おいおいマジか!?」
さすがにミーミルも青ざめた。
仲間を呼んだのだ。
『骸』はジェノサイドの現神触だ。
つまり仲間というのは。
「ゴアアアアア」
遠くから聞こえる声は、複数だった。
しかも少し前に倒したエーギル達が倒したジェノサイドより、大きな声に聞こえる。
「じょ、冗談じゃ――」
「ミーミル! 瞬間ポット使って!」
「……あー、了解!」
アヤメの指示でミーミルは二つの薬瓶を取り出し、飲む。
瞬間攻撃速度増加ポーションと、瞬間移動速度増加ポーションだ。
三分間。
このポーションを飲むと、三分間だけ大幅に能力を引き上げる事ができる。
つまり三分であの骸をぶっ殺せというアヤメのお達しだ。
「時間制限付きで、ますますレイドボスっぽくなったな」
仲間が乱入してくれば状況は、かなり厳しくなってしまう。
乱入される前に親玉さえ倒せば、後はどうにかなる――はずだ。
「ミーミル、気合い入れてね! 絶対に倒すよ!」
「応!」
体の奥底から湧き上がる力を感じながら、ミーミルは骸を見据える。
骸はさっきと違い、攻撃を仕掛けようとしてこない。
仲間が来るまで、時間稼ぎをするつもりのようだった。
「そうはさせるか」
ミーミルは再度、「魔人 闇刃」を発動させる。
今までで最速の斬撃が骸を切断した。
もはやアヤメの目ですら捉えられない程のスピードである。
「!?」
だがミーミルの刀が切り払ったのは、骸の触手だけだった。
攻撃に使う触手を防御に回し、ダメージを軽減させたのだ。
ミーミルの攻撃反動を利用し、大きく飛び退る骸。
触手は見る間に、再生していく。
そうやって触手を盾にして逃げ続けるつもりらしい。
完全に逃げの一手だ。
「おー、そうかい。そういう事すんのね」
そう言って、ミーミルは「魔人 闇刃」のクールタイムが過ぎるのを待った。
この戦闘中に試してみたが、やはり連続でスキルは撃てないようだ。
現実なのにゲームと同じように冷却時間があり、使おうとしてもスキルが発動しない。
自転車のブレーキが切れてしまい、ブレーキを引いても『スカッ』と手ごたえを感じない――そんな感覚だった。
つまり連続で突進スキル「魔人 闇刃」を使用し、敵を追う事は不可能なのである。
だがミーミルは不敵に笑みを浮かべる。
そして、こう呟いた。
「逃げられると思うな」
その雰囲気にアヤメは覚えがあった。
狩りを中断してPKを追っていた時と同じだ。
移動速度増加の歌が必要だと、アヤメも無理やり連れられていたあの時。
ミーミルは逃げるPKを、見事に追いかけて倒した。
自分よりも足の速いアサシン職のPKを。
だからミーミルなら必ずやってくれる。
そう信じて、アヤメは歌った。
ミーミルはうつ伏せのまま、地面を滑った。
「ってぇ!」
後頭部を抑えながら、跳ね起きるミーミル。
その視線の先では、『骸』がゆっくりと立ち上がろうとしていた。
「――マジか」
確かに上半身と下半身――真っ二つに分断してやったはずである。
だが断面から黒く細い触手が伸び出て、上半身と下半身を繋いだのだ。
さすがに修復に時間がかかっているのか、傷跡から細い触手がウニョウニョと動いているのが見える。
「大丈夫!?」
「あー、大丈夫。アマツの吸収シールドが残ってたお陰で頭吹っ飛ばずに済んだわ」
「良かった……怪我がなくて」
「しかしあのチートふざけてんな。何だあの再生速度」
「大丈夫、こっちもチートだし。チートをチートでねじ伏せてやろう」
アヤメの力強い言葉にミーミルは口の端を歪める。
そういうゴリ押しは嫌いではない。
むしろ望む所だ。
「おし。とりあえず絶掌コンボじゃダメだな。もっと上だ」
納刀していた刀を引き抜き、構えるミーミル。
アヤメはすでに歌っていた。
『ジグラートの烈火』
『死霊都市の鎮魂歌』
『カリギュラの協奏曲』
『狂戦士戯曲』
マクロ1編成。
クリティカル率・攻撃力向上。
攻撃速度・クリティカルダメージ向上。
命中率・回避向上。
防御力がダウンする代わりに攻撃力・攻撃速度・クリティカル率・命中率・移動速度向上。
ゴッリゴリの火力歌四重奏だ。
とにかく避けて叩けってか。
スパルタだわ、と思いながらもミーミルは笑みを浮かべる。
とても十数秒前に「怪我がなくて良かった」と心配していた同一人物とは思えない。
まあ、それでこそアヤメなのだが。
ミーミルは構えると骸に向かって剣を向ける。
今度の先手は、ミーミルだった。
「魔人 闇刃!」
ミーミルは鬱陶しい触手を展開される前に、一気に距離を詰める。
が――。
骸は地面を蹴り、大きく距離を離す。
そして、首をぐりんっ、と傾げた。
ぶちっと、肉が裂ける音がして、骸の首の付け根から、もう一つ顔が現れる。
「――ィ―――――!」
その顔は大きく息を吸うと、叫んだ。
だが、その音はアヤメには聞こえない。
「うっるせ!」
ミーミルだけに聞こえる音だった。
その音には聞き覚えがある。
それは――。
大地が震動する。
遠くから、何かが近づきつつある。
「おいおいマジか!?」
さすがにミーミルも青ざめた。
仲間を呼んだのだ。
『骸』はジェノサイドの現神触だ。
つまり仲間というのは。
「ゴアアアアア」
遠くから聞こえる声は、複数だった。
しかも少し前に倒したエーギル達が倒したジェノサイドより、大きな声に聞こえる。
「じょ、冗談じゃ――」
「ミーミル! 瞬間ポット使って!」
「……あー、了解!」
アヤメの指示でミーミルは二つの薬瓶を取り出し、飲む。
瞬間攻撃速度増加ポーションと、瞬間移動速度増加ポーションだ。
三分間。
このポーションを飲むと、三分間だけ大幅に能力を引き上げる事ができる。
つまり三分であの骸をぶっ殺せというアヤメのお達しだ。
「時間制限付きで、ますますレイドボスっぽくなったな」
仲間が乱入してくれば状況は、かなり厳しくなってしまう。
乱入される前に親玉さえ倒せば、後はどうにかなる――はずだ。
「ミーミル、気合い入れてね! 絶対に倒すよ!」
「応!」
体の奥底から湧き上がる力を感じながら、ミーミルは骸を見据える。
骸はさっきと違い、攻撃を仕掛けようとしてこない。
仲間が来るまで、時間稼ぎをするつもりのようだった。
「そうはさせるか」
ミーミルは再度、「魔人 闇刃」を発動させる。
今までで最速の斬撃が骸を切断した。
もはやアヤメの目ですら捉えられない程のスピードである。
「!?」
だがミーミルの刀が切り払ったのは、骸の触手だけだった。
攻撃に使う触手を防御に回し、ダメージを軽減させたのだ。
ミーミルの攻撃反動を利用し、大きく飛び退る骸。
触手は見る間に、再生していく。
そうやって触手を盾にして逃げ続けるつもりらしい。
完全に逃げの一手だ。
「おー、そうかい。そういう事すんのね」
そう言って、ミーミルは「魔人 闇刃」のクールタイムが過ぎるのを待った。
この戦闘中に試してみたが、やはり連続でスキルは撃てないようだ。
現実なのにゲームと同じように冷却時間があり、使おうとしてもスキルが発動しない。
自転車のブレーキが切れてしまい、ブレーキを引いても『スカッ』と手ごたえを感じない――そんな感覚だった。
つまり連続で突進スキル「魔人 闇刃」を使用し、敵を追う事は不可能なのである。
だがミーミルは不敵に笑みを浮かべる。
そして、こう呟いた。
「逃げられると思うな」
その雰囲気にアヤメは覚えがあった。
狩りを中断してPKを追っていた時と同じだ。
移動速度増加の歌が必要だと、アヤメも無理やり連れられていたあの時。
ミーミルは逃げるPKを、見事に追いかけて倒した。
自分よりも足の速いアサシン職のPKを。
だからミーミルなら必ずやってくれる。
そう信じて、アヤメは歌った。
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