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第二部 四章
第四十話 突然の惨劇
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「!?」
地面にどっと倒れる兵士。
いきなり起こった惨劇に、アヤメもミーミルも声を出せなかった。
声を出せないのはマキシウスも同じだ。
一体、何が起きたのか全く理解できなかった。
自分の部下が、気が付いたら死んでいる。
「いい加減にしろ! 俺を無視してダラダラ話しやがって!」
ニアが激怒していた。
アヤメとミーミルには見えた。
ニアが突然、右手から薄い緑の透明なブレードを三枚出現させ、兵士に飛ばしたのを。
射出速度は弓よりも遥かに速かった。
ブレード自体も非常に見づらく、恐らく常人では見切れまい。
「何をやっている」
ゼロがニアを睨みつける。
「こんな茶番見てても仕方ねぇだろうが! 俺はそっちより村の方に行きてぇんだよ!」
「お前がすべきは、この状況を維持する事だ」
「最終的に全員殺すんだから、さっさと始末して村に行けばいいだろ!」
「ふー」
ゼロは深いため息をついた。
「私はこの状況がどう動くのか、最後まで確認したかったのだ。帝国の切り札が、人質を取られて、どう動くのか。大人しく殺されるのか、それとも起死回生の手があるのか。それを見届ける事に意義があった」
「んなもん見る必要あるか?」
「ここにいる価値は無くなった。私は村へ戻らせて貰うよ」
ゼロはそう言うと、背を向ける。
「ニア、後始末は頼んだぞ」
「俺に命令すんな」
ニアはゼロに殺意すら滲ませながら言う。
その殺意を涼し気に受け流しながら、ゼロは森の奥へと消えた。
「ど、どういう事です。ニア様。何故、私の部下を」
マキシウスがニアに声をかける。
「どういう事も何も、お前は騙されてんだよ。俺達に」
「俺達に騙され――?」
意味を理解したマキシウスの顔が、さっと青ざめる。
「実は無い。お前ら三人を最終的に殺すのが目的だ。それでいいか?」
ニアは手から透明で緑のブレードを伸ばす。
そうしてマキシウスに向かって手を振り上げた。
だが、そのブレードが振り下ろされるより早く、ミーミルが突っ込んで来た。
ミーミルは思い切りニアを蹴り飛ばす。
「ぐおあっ!!」
悲鳴を残してニアは吹き飛び、木に叩きつけられる。
その勢いは凄まじくニアが巨木にめり込む程であった。
「フン。ま、こんな事だろうと思ってたよ。神護者が嘘つきってのは分かってたしな」
木にめり込んで動かないニアをあざ笑うミーミル。
そして地面に転がっていたレ・ザネ・フォルの枝を拾う。
ミーミルの動作は誰よりも早かった。
ややこしい状況だったにも関わらず、一番倒すべき相手を真っ先に攻撃している。
アヤメすら意表を突かれる思い切りの良さであった。
「ミーミル、騙されてる事に気づいてたの?」
「何が本当なのか分からんが、アヤメの実力だけは絶対に信じられるからな。マキシウスにアヤメが捕まる訳がないだろ。だからマキシウスにアヤメが掴まった、って言ったゼロが嘘ついてると思っただけだ」
神護者が動かないのを確認してからミーミルはアヤメに向き直り、笑みを見せた。
「つー事で、嘘つく神護者は全員、悪者確定。とりあえずセツカとリッカから目を離した瞬間に思いっきり蹴ると決めてた」
「また単純な」
ミーミルらしいシンプルな答えだった。
だがアヤメの事を深く知っているミーミルだからこそ、たどり着けた答えだろう。
「でも、ありがとうね」
そんなミーミルをアヤメは嬉しく思った。
「そんな――何故だ」
一方でマキシウスは部下の死体の前に膝をついている。
「実は無いのは本当だよ。何年か前にセツカとリッカが使ってしまったから」
アヤメは膝をつくマキシウスに声をかける。
現神の実は百年に一度くらいの周期でしか実をつけない。
つまりマキシウスが生きている間に、実を手に入れられる可能性は、もう無かった。
「最初から――最初から騙されていたのか? 私の協力を引き出す為に……」
「ま、そうだろうな」
ミーミルは崩れ落ちたマキシウスを見下ろしながら呟く。
「何故だ。こんな……意味などないではないか。お互いに利益しか存在しないのだぞ。私が中央を手に入れれば、南部領は全て神護者に任せる契約だったのだ。こんな事をすればお互いに不利益しか生まれないというのに――」
「さぁな。何か目的があるんだろ」
神護者が敵であるのはハッキリしているが、どうして敵になったのかは分からない。
「まあ、でも気にせずぶっ飛ばせばいいんじゃね。全員」
目的は分からないが、やる事はシンプルだ。
全員、残らずブッ倒す。
ミーミルの中で方針は決まった。
「よし、じゃあとりあえず双子の拘束を解いて」
「やってくれんじゃねーか」
後ろからかかった声にミーミルは振り向く。
木にめり込んだままのニアが、手をかざしていた。
武器を取り出す暇が無かったので、慌てて蹴り飛ばしたが、手加減は一切していない。
普通の人間が食らえば、例え鎧を着込んでいても鎧ごとバラバラに出来る程の、威力はあった。
だがニアは気絶すらしていない。
気絶したフリをしていたのだ。
さっきのブレード射出か?
と思ったミーミルは剣を構えて防御する。
――しかしニアの攻撃先は、別であった。
「きゃああああああ!!」
セツカとリッカの悲鳴が森に響いた。
二人を拘束していた木材が形を変え、地面のから伸びあがった木の根と絡み合いながら二人を高く持ち上げたのだ。
二人はまるで木の根に取り込まれたような形になっていた。
「テメェ――!」
「喋ったら根を絞って潰す。動いたら潰す。他の二人もそうだ。いいな?」
ミーミルの声を遮りながら、ニアは手をかざしつつ、木から這い出てくる。
這い出て来たニアの顔は怒りに満ちていた。
「つまんねー仕事だと思ってたが、気が変わった。お前が殺してくれって懇願するまで痛めつけて、縊り殺すわ」
ニアの周囲に緑色のブレードが浮かび上がる。
「――っ」
ミーミルは反射的に剣を構えようとする。
その途端、絡み合った木の根が、ぎちりと嫌な音を立てる。
「ぎ……」「うぐ……」
セツカとリッカが苦しそうな声を上げた。
「動くなって言わなかったか? 次、動いたら双子の足が潰れるからな? 次は腕だ。人質が達磨で解放されても意味ないよなぁ?」
ばりっ、とアヤメの奥歯が鳴る音が響く。
アヤメの攻撃スキルは、ほぼ全てが範囲攻撃だ。
使えばニアだけでなくミーミルやマキシウス、さらにはセッカやリッカも巻き込む。
何も出来ない自分を恨めしく思った。
地面にどっと倒れる兵士。
いきなり起こった惨劇に、アヤメもミーミルも声を出せなかった。
声を出せないのはマキシウスも同じだ。
一体、何が起きたのか全く理解できなかった。
自分の部下が、気が付いたら死んでいる。
「いい加減にしろ! 俺を無視してダラダラ話しやがって!」
ニアが激怒していた。
アヤメとミーミルには見えた。
ニアが突然、右手から薄い緑の透明なブレードを三枚出現させ、兵士に飛ばしたのを。
射出速度は弓よりも遥かに速かった。
ブレード自体も非常に見づらく、恐らく常人では見切れまい。
「何をやっている」
ゼロがニアを睨みつける。
「こんな茶番見てても仕方ねぇだろうが! 俺はそっちより村の方に行きてぇんだよ!」
「お前がすべきは、この状況を維持する事だ」
「最終的に全員殺すんだから、さっさと始末して村に行けばいいだろ!」
「ふー」
ゼロは深いため息をついた。
「私はこの状況がどう動くのか、最後まで確認したかったのだ。帝国の切り札が、人質を取られて、どう動くのか。大人しく殺されるのか、それとも起死回生の手があるのか。それを見届ける事に意義があった」
「んなもん見る必要あるか?」
「ここにいる価値は無くなった。私は村へ戻らせて貰うよ」
ゼロはそう言うと、背を向ける。
「ニア、後始末は頼んだぞ」
「俺に命令すんな」
ニアはゼロに殺意すら滲ませながら言う。
その殺意を涼し気に受け流しながら、ゼロは森の奥へと消えた。
「ど、どういう事です。ニア様。何故、私の部下を」
マキシウスがニアに声をかける。
「どういう事も何も、お前は騙されてんだよ。俺達に」
「俺達に騙され――?」
意味を理解したマキシウスの顔が、さっと青ざめる。
「実は無い。お前ら三人を最終的に殺すのが目的だ。それでいいか?」
ニアは手から透明で緑のブレードを伸ばす。
そうしてマキシウスに向かって手を振り上げた。
だが、そのブレードが振り下ろされるより早く、ミーミルが突っ込んで来た。
ミーミルは思い切りニアを蹴り飛ばす。
「ぐおあっ!!」
悲鳴を残してニアは吹き飛び、木に叩きつけられる。
その勢いは凄まじくニアが巨木にめり込む程であった。
「フン。ま、こんな事だろうと思ってたよ。神護者が嘘つきってのは分かってたしな」
木にめり込んで動かないニアをあざ笑うミーミル。
そして地面に転がっていたレ・ザネ・フォルの枝を拾う。
ミーミルの動作は誰よりも早かった。
ややこしい状況だったにも関わらず、一番倒すべき相手を真っ先に攻撃している。
アヤメすら意表を突かれる思い切りの良さであった。
「ミーミル、騙されてる事に気づいてたの?」
「何が本当なのか分からんが、アヤメの実力だけは絶対に信じられるからな。マキシウスにアヤメが捕まる訳がないだろ。だからマキシウスにアヤメが掴まった、って言ったゼロが嘘ついてると思っただけだ」
神護者が動かないのを確認してからミーミルはアヤメに向き直り、笑みを見せた。
「つー事で、嘘つく神護者は全員、悪者確定。とりあえずセツカとリッカから目を離した瞬間に思いっきり蹴ると決めてた」
「また単純な」
ミーミルらしいシンプルな答えだった。
だがアヤメの事を深く知っているミーミルだからこそ、たどり着けた答えだろう。
「でも、ありがとうね」
そんなミーミルをアヤメは嬉しく思った。
「そんな――何故だ」
一方でマキシウスは部下の死体の前に膝をついている。
「実は無いのは本当だよ。何年か前にセツカとリッカが使ってしまったから」
アヤメは膝をつくマキシウスに声をかける。
現神の実は百年に一度くらいの周期でしか実をつけない。
つまりマキシウスが生きている間に、実を手に入れられる可能性は、もう無かった。
「最初から――最初から騙されていたのか? 私の協力を引き出す為に……」
「ま、そうだろうな」
ミーミルは崩れ落ちたマキシウスを見下ろしながら呟く。
「何故だ。こんな……意味などないではないか。お互いに利益しか存在しないのだぞ。私が中央を手に入れれば、南部領は全て神護者に任せる契約だったのだ。こんな事をすればお互いに不利益しか生まれないというのに――」
「さぁな。何か目的があるんだろ」
神護者が敵であるのはハッキリしているが、どうして敵になったのかは分からない。
「まあ、でも気にせずぶっ飛ばせばいいんじゃね。全員」
目的は分からないが、やる事はシンプルだ。
全員、残らずブッ倒す。
ミーミルの中で方針は決まった。
「よし、じゃあとりあえず双子の拘束を解いて」
「やってくれんじゃねーか」
後ろからかかった声にミーミルは振り向く。
木にめり込んだままのニアが、手をかざしていた。
武器を取り出す暇が無かったので、慌てて蹴り飛ばしたが、手加減は一切していない。
普通の人間が食らえば、例え鎧を着込んでいても鎧ごとバラバラに出来る程の、威力はあった。
だがニアは気絶すらしていない。
気絶したフリをしていたのだ。
さっきのブレード射出か?
と思ったミーミルは剣を構えて防御する。
――しかしニアの攻撃先は、別であった。
「きゃああああああ!!」
セツカとリッカの悲鳴が森に響いた。
二人を拘束していた木材が形を変え、地面のから伸びあがった木の根と絡み合いながら二人を高く持ち上げたのだ。
二人はまるで木の根に取り込まれたような形になっていた。
「テメェ――!」
「喋ったら根を絞って潰す。動いたら潰す。他の二人もそうだ。いいな?」
ミーミルの声を遮りながら、ニアは手をかざしつつ、木から這い出てくる。
這い出て来たニアの顔は怒りに満ちていた。
「つまんねー仕事だと思ってたが、気が変わった。お前が殺してくれって懇願するまで痛めつけて、縊り殺すわ」
ニアの周囲に緑色のブレードが浮かび上がる。
「――っ」
ミーミルは反射的に剣を構えようとする。
その途端、絡み合った木の根が、ぎちりと嫌な音を立てる。
「ぎ……」「うぐ……」
セツカとリッカが苦しそうな声を上げた。
「動くなって言わなかったか? 次、動いたら双子の足が潰れるからな? 次は腕だ。人質が達磨で解放されても意味ないよなぁ?」
ばりっ、とアヤメの奥歯が鳴る音が響く。
アヤメの攻撃スキルは、ほぼ全てが範囲攻撃だ。
使えばニアだけでなくミーミルやマキシウス、さらにはセッカやリッカも巻き込む。
何も出来ない自分を恨めしく思った。
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