指切りの彼

藤咲 ふみ

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いよいよ始まった体育祭。「お前の手って綺麗だよな?」

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 旗ができてしまうと、あっという間に体育祭本番を迎えた。
 六月某日、体育祭の日はよく晴れたいい日だった。
 僕は運動が苦手だった。だから、せめて足を引っ張るのだけは避けねばと、気合いを入れた!僕が出場するのは障害物競走とクラス全員リレー。
 僕は開会の挨拶の後、全員で準備体操をして、ドキドキしながら競技開始を待った。
 そしていよいよ障害物競走の招集がかかる。僕は柊に

「思い切り行ってこい!」

 といつも通りのやんちゃな笑顔で見送られて、頷き、入場門へ向かった。
 
 障害物競走が始まると、また一組また一組と、自分の順番が迫る。
 たくさんの歓声や、拍手が響く中を、僕らは自分の順番を待った。そして、遂に自分の番を迎える。
 スタート位置に立って、合図がかかると、僕らは一斉に駆け出した!
 様々な障害を乗り越えて、大きな歓声の中を駆け抜けてゆく。
 僕はなんとか二位でゴールした!

「あー、良かった⋯頑張った!」

 僕の頑張りに、クラスのみんなは大きな拍手をくれた。それがとても、嬉しかった。

 そして競技は進んでゆき、次はいよいよ柊の出場する借り物競争だ!女子が大きな声援を柊に送っている。
 柊ってやっぱり凄いや!モテモテだな!
 僕はそんなこと思いながら、柊に伝える。

「柊、行ってらっしゃい!頑張って!」

 柊はクルっと僕の方に振り返って、ニッとやんちゃそうに笑うと

「勿論、ブッチギリの一番でゴールしてやんよ!」

 と言った。そして、入場門に向かって行った。
 借り物競争が始まり、いよいよ順番が柊に回ってくると、女子の悲鳴のような歓声がこだまする。

「女子うるせぇ!」

 男子が小言を言った。
 その時、柊達が走り出した。
 みんなの声援が響く。柊はどんなものを借りろと言われるだろう?
 その時、柊がフリップを拾った。そこには「美しいもの」と書かれていた。
 放送が叫ぶ。

「緑団が『美しいもの』というフリップを拾いました!何か『美しいもの』を、見つけられるでしょうか?」

 その時、柊は応援席の僕らの方に一直線に走ってきた。そして、何故か僕の手を引っ張って走り出した。
 それにクラスの女子が悲鳴を上げた。

「行くぞ!蓮!」

 僕は呆気に取られて、引かれたその手に懸命に着いて行った。
 不思議と周りがスローモーションに見えた。
 柊と繋いだ手と手が、なんだかこそばゆかった。
 僕らは手と手を繋いだまま、一着でゴールした!

「ハァ、走ったー!大丈夫か?蓮?」

 それに僕は

「大丈夫も、何も⋯突然なに?」
 それに柊は笑う。

「綺麗なもん、見っけたから!ほれ、手!お前の手!」

 それに僕は

「僕の手は⋯汚いよ!凄く荒れてて、綺麗なんかじゃ、ないよ⋯!」

 その通り、僕の手は「美しいもの」として認めては貰えなかった。
 でも、柊は最後まで言った。

「蓮のその手は、綺麗だ!美しい!働く手は美しいんだよ、本当だよ!花屋で働く蓮のその手はとっても、綺麗だよ!」

 その時、僕はハッキリと理解した。僕は柊が好きなんだと。今までは朧気だったけれど、ハッキリと理解してしまった。

 ねぇ柊、僕柊のこと、凄く好きみたい。ごめんね。
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