指切りの彼

藤咲 ふみ

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花火と儚い青春と美しい君。

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 重い足取りで家に辿り着くと、もう営業を終えた花屋の前で、父さんが僕に手を振った。

「緑団、優勝したんだろ?おめでとう!なんだ?なんか⋯元気ないな?」

 それに僕は、勇気を振り絞って、父さんに言った。

「あの、父さん!花屋⋯手伝えなくて、ごめんね⋯それから⋯まだ、みんなでお祝いの続き、この後もしようって言ってて⋯行きたいんだけど⋯」

 それに父さんは

「花屋の手伝いなんて、気にするな!それから、高校生はな、少しは嘘ついて悪いことするもんだ!でも⋯あんまり危ないことと、人様に迷惑、かけることはやめろ!いいな!行ってこい!楽しんでこい!青春は、一度だ!どうせ花火でもするんだろ!ほら、遅れちまうぞ!行け!蓮!お友達、待ってるぞ!」

 後ろを振り返ると、花火をたくさん持った柊がニッと笑っていた。

「蓮のお父さん、こんばんは!そういうことなので⋯蓮のこと、借ります!ちゃんと返しに、来ますから、安心して下さい!」

 それに父さんは、爆笑していた。
 僕はそんな柊に手を引かれて、父さんに手を振って、父さんも笑顔で手を振って、店を後にした。

「柊、速いよ!待って待って!」

 それに柊は

「ヤダ!待たない!だって、楽しいんだもん!だから、待ってやらない!」

 柊は笑ってた。それに僕も笑った。
 空には星が光っていた。
 ねぇ、柊、星が綺麗だね!僕らこのままどこまでも行けそうだと思わない?ねぇ、そう思わない?

「柊、空、星が綺麗だよ!」
 僕が言うと、笑う柊は

「本当だな!『君は宇宙』って昔歌わなかった?」

 それに僕は懐かしくなる。

「それ、なんて合唱曲だっけ?」

 僕らは題名もメロディも曖昧になったその曲を、鼻歌で歌いながら、海岸に辿り着くと、みんなの前に花火を広げた!

 その時すぐ近くで他の学年の生徒も、花火をしているのを見た。

 なんだ、みんな考えてること、一緒か。

 そして、バケツを持ってきてくれた子がバケツに水をくんで来て、柊がロウソクに火をつけると、そこから火をとって、みんなで手持ち花火に火をつけて盛り上がる。

「やめろ!追いかけてくんな!」
 とか
「わー、綺麗!」
 とか
あちこちで歓声が上がる。

 その中で、僕は美しく変わり続ける光を眺める。

「綺麗だな!」

 って、微笑みながら。
 その時、手持ち花火を持って追いかけっこしている柊達が目に入る。

「みんな元気だな⋯!」

 僕はその柊達の姿を、花火で辿る。
 美しいと思った。その瞬間の、全てがかけがえがなく、果てしなく、美しいと思った。そして思った。その全てを、青春と呼ぶのだと。

 遠くで、柊が手招きして呼んでいた。

「蓮!蓮もこっち来いよー!」

 って。
 それに僕は答えて、笑う。美しい花火に囲まれて。

「僕も、青春に入ろっと!」

 柊達の中に入ると、僕も花火を持って追いかけっこを始めた。
 それはとても美しくて、儚くて、楽しかった。

 ねぇ、柊、ありがとう!僕の手を引いてくれて

「ありがとう、柊!」

 それに柊は美しい花火を持って、イタズラッぽく笑って

「おう!なんか分かんねぇけど!どういたしまして、蓮!」

 そう言って、また僕を花火を持って追いかけて来た。

 いつかは終わると、知っていた。それが青春なのだと、知っていた。でも、終わらないで欲しかった。それ位、その時間の全てが果てしなく美しく、儚かった。でも、終わるから美しいんだね?それも僕はよく知っていた。
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