指切りの彼

藤咲 ふみ

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二人きりの線香花火と見つけた僕の青春。

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「おーい!先生来た!」

 クラスの一人が叫んだ!その声に、みんな手に持っていた花火を水に沈めて、散らかした花火を集めて持つと、走って逃げた。

「急げー!」

 って!
 逃げるのもなんか、青春の一部だった。
 みんな笑いながら、足場の悪い海岸を走った。走って走って、街明かりが見えた所でみんな立ち止まると、あー、ヤバかった!と笑い合った。

 そして今度こそ解散をした。最後に

「緑団、優勝おめでとう!」

 とみんなで拳を掲げて、笑い合って。

 解散してからも柊はたくさんの花火を持って、僕の後を着いてきた。

「なんで、柊、僕の後、着いてくるの?」
 って聞いたら

「だって蓮のお父さんと、約束したから!蓮、返しに来ますって!だから、蓮の家まで着いてく!」

 柊はいつも通りのやんちゃな笑顔で、笑って言った。
 僕はそれに照れて、下を向く。

「約束、したけど⋯でも、いいんだよ?あんなのジョークでしょ?守んなくても⋯」

 それに柊は

「守るよ!俺、約束は守る男だから!」

 柊はなんか真面目に言ってた。それに僕はまた照れてしまう。
 今にも切れそうな街灯が、チラチラとしている。

 ねぇ、柊、今こっち向かないでね⋯僕多分顔に書いてあるから⋯君が好きって、書いてあるから⋯だから、こっち、向かないで⋯!

 そのうち僕の家であり、花屋が見えた。

「柊、送ってくれて、ありがとう!父さん⋯起きてるかな?」

 その時、柊が僕の腕を掴んだ。
 それに僕はクルっと柊の方を振り向くと、柊は何か企んでるような顔で笑って言った。

「線香花火!一回戦だけやってこうぜ!」

 って。
 僕はその笑顔にあてられて、頷く。
 そして家の前の防波堤に腰掛けて、二人で線香花火に火をつける。

「おー!結構パチパチいってんじゃん!元気元気!」

 そう笑う柊の綺麗な顔が、線香花火に照らされる。

 柊の顔って、本当に整ってて、綺麗だな⋯。

 僕は柊の顔に見惚れる。
 その間にも、線香花火はパチパチと、命を削ってゆく。

「僕の方も、まだまだ元気!」

 でも、そう言ったのも束の間、線香花火の火種は突然勢いをなくしてゆく。
「おっ、なんか蓮の方、元気なくなってきた!」

 柊がニッと笑う。その時、僕の方の線香花火の火種が突然音もなくポトリと、地面に落ち、短い生涯を終えた。

「あっ、負けちゃった⋯!」

 僕が言うと、柊はガッツポーズして喜ぶ

「よっしゃー!俺の勝ち!なんでも一つ、言うこときいてくれるんだろ?いつ使おうかな?楽しみだな?」

 僕は柊の無邪気な笑顔を見て、負けて良かったと、思った。柊の願いごとなら、なんだってきいてあげられると、思ったから。
 それから僕は、柊と柊の線香花火を見つめた。

「頑張るね!柊の線香花火!綺麗、だね!」

 それに柊は優しく微笑んで

「あぁ、さっきの派手な手持ち花火も良かったけど⋯こういう、地味めなのもいいよな、綺麗で!俺好きだな!ほれ、頑張れ、俺の線香花火!」

 それから柊の線香花火は結構粘って、やがて時と共にそっと火種を落とし、その生を終えた。

「大往生だったね!」

 僕が拍手を送ると、柊は

「まぁな!俺に似て、粘り強いのよ!さて、帰りますか!そろそろ蓮、返さないと!」

 そう言って、花屋に向かって歩き出す。
 そして僕は花屋の扉を開けると、中から、父さんが出てきた。

「おー、帰ってきた!お帰り、蓮!と⋯お友達は、本当に蓮を返しに来てくれたの!ありがとうね!」

 父さんは笑っていた。

「はい!約束したんで!遅くなってごめんなさい!でも、しっかり返しに来ました!」

 そんな柊の言葉に父さんは

「わざわざありがとうね!蓮、いい友達持ったな!今度花、買いに来てね!サービスするから!君も気を付けて帰ってね!」

 それに柊は

「ありがとうございます!花、買いに来ます!じゃあ⋯蓮また学校でな!楽しかったな!バイバイ!」

 そう言って、笑顔で去って行った。
 僕は柊が見えなくなるまで、手を振った。振り続けた。

 ねぇ、柊!柊、僕見つけたよ、青春時代にしかできないこと!それはね

「柊を、追いかけること⋯!」

 そんなことを思いながら僕はいつまでも、柊に手を、振り続けた。
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