指切りの彼

藤咲 ふみ

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放課後のかき氷と初めての指切り。

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 放課後の校内は、色々な音で溢れていた。吹奏楽部の演奏するメロディ、合唱部の歌う声、そして、軽音部のかき鳴らすバンドサウンド。

 僕は思い立って、柊のバンドを見に行ってみることにした。

「なんか、緊張するな⋯」

 そう思いながら開いた視聴覚室で、柊は活き活きと歌っていた。

「わー、とってもかっこいい!」

 僕のその声に気付いたんだろう、柊が、こちらをチラリと見た。
 そして

「悪い!そろそろ交代の時間だったよな!」

 と言って別のバンドと交代をする。
 そしてこちらに向かって来る。

「なーに、覗き見してんだよ?」

 柊のイタズラッぽい笑顔が、胸をくすぐる。

「ちょっと、部活終わりに、覗いてみようかなって⋯柊、かっこいいね!歌ってるの!」

 それに柊は

「歌ってるのも!だろ?」

 と笑う。
 その笑顔が、なんか心臓に悪い。

「俺、もうそろそろ練習引き上げるから!一緒に帰ろうぜ!」

 それに僕は頷く。
 そして、本当に間もなく練習を終えた柊は、ギターをケースにしまうと、僕の隣に並んだ。

「お待たせ!帰ろうぜ!あっ、帰りにさ、アイス、アイス買って食おうぜ!お前ん家の前の防波堤で!」

 僕らはそんなことを話しながら、仲良く帰った。

「わー、どこから湧いてくんだか、毎年観光客も海水浴客もスゲーなこの時期!」

 柊が日も落ちようとしているビーチをまだ歩き回る人々に、驚いている。

「ね、みんなまだ遊ぶのかな?」

 それに柊は

「ナイトビーチとかもあるからな⋯まだ遊ぶのかもな?それよりさ、アイス、何にする?どうせなら海の家のかき氷とかにする?」

 それに僕は

「それいいね!空いてそうなところあるかな?」

 僕らは人で賑わうビーチに降りて、かき氷の売っていて、空いていそうな海の家を探す。
 どこの海の家からも、明るい夏を彩るナンバーが溢れる。その中を、僕と柊ははぐれないように、手を繋いで、歩いた。それに胸がドキドキした。
 その時、柊が言った。

「あっ、この海の家のかき氷、いちごミルクある!ここにしよ!」

 って。
 その時海の家から、サザンオールスターズの題名は分からないけど、なんか聞いたことがある歌が流れてきた。それがなんか、凄く良かった。

 僕らは水着のお客さんに混ざって、注文の列に並ぶ。夕方の風が火照った体に心地よかった。
 僕らは揃っていちごミルクのかき氷を注文すると、それを食べながら歩いて、僕の家の前の防波堤を目指した。

「そう言や、蓮、今日の部活どうだった?芸術作品できた?」

 柊の何気ない質問に、僕は照れる。だって、今日は柊のこと考えて終わっちゃったから。

「うーん⋯爆発しきらなかったかな?なんてね。柊は、なんか凄い活き活き歌ってたけど⋯調子いい感じ?」

 その時、僕らは僕の家の前の防波堤に辿り着いた。僕らはそこにそっと腰掛けると、沈みゆく夕日を見つめながら、いちごミルクのかき氷を食べた。

「うん!俺らのバンド、今超いい感じ!名前もさ、決めたんだ!聞きたい?」

 それに僕は頷く。

「教えて!知りたい!」

 僕の前のめりな答えに、柊はなんだか照れくさそうに笑って、言った

「『ピンキーソーイング』!『指切り』って意味の造語なんだ!なんか⋯『指切り』って、指を切るんだけど、どっちかってーと、指を繋ぐって方がイメージに合わねぇ?だから⋯小指を縫い合わせるって意味で、『ピンキーソーイング』!俺さ、何かっていうと『指切り』すんのが癖なんだ!だから、この名前にした!」

 それに僕は

「なんか⋯可愛いね!『ピンキーソーイング』!うん、素敵だと思う!頑張ってね!」

 僕のその言葉に、柊は

「おう!いいバンドにする!そうだ!文化祭でさ、必ず演奏するからさ、見に来てよ!ほれ、約束!」

 柊が笑顔で小指を差し出した。その笑顔が、潮風で揺れる。
 とても、素敵な瞬間だと思った。とても美しくて、素敵な瞬間。
 僕はその柊の小指に、自分の小指をそっと絡めた。

「約束!」

 と、ニッコリ笑って。

「あっ、蓮の花も、見せろよな!楽しみにしてるから!」

 柊がニッと笑う。その笑顔が、憎らしいほど、愛くるしく、かっこいい。

 ねぇ、柊、僕らは友達だね?いつまでも友達かな?いつか僕を恋人にしてくれたなら⋯僕は柊を、独り占めできるかな?

 なんてできもしないことを考えながら、僕は甘すぎるいちごミルクのかき氷を食べた。柊と、美味しいねって、笑い合って。

「なぁ、もうすぐ日、落ちるな⋯蓮は今日、楽しかった?」

 その質問に僕は

「うん!とっても、楽しかったよ!」

 と、とびきり幸せに笑った。
 その笑顔に柊は

「そうか!なら良かった!俺も、楽しかった!かき氷も美味かったしな!」

 そんな僕らは、沈みゆく夕日を見つめて、笑っていた。始まったばかりの暑い夏に、笑っていた。
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