指切りの彼

藤咲 ふみ

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初めて届いたメール。そして高校一年生の文化祭の準備開始。

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「お待たせしました!こちらでいかがでしょうか?って、ごめんね⋯やっぱり不格好になっちゃった!嫌だったら父さんに直して貰って!」

 僕がそう言って柊に花束を渡すと、柊は嬉しそうに花束を眺めて

「ううん!スゲー綺麗!お前やっぱ頑張り屋だな!綺麗な、花束だよ!ありがとう!母さん絶対喜ぶ!で、お代はいくら?」

 それに父さんが

「お代は蓮の練習代ということで無料!と言いたいけど⋯それだと君がお母さんへのプレゼントの手前、格好がつかないよね?だから⋯五百円だけ、貰おうかな?この前サービスするとも言ったしね!」

 父さんはそう言って微笑んだ。
 それに柊は少し申し訳なさそうに、でも嬉しそうに瞳をキラキラさせて

「ありがとうございます!こんな綺麗な花束、五百円なんて、この店潰れちゃうや!また⋯何かの機会に買いに来ますね!」

 柊はそう言うと、五百円を置いて、花束を抱えて幸せそうに笑った。その姿が、とても美しかった。

 ねぇ、柊、柊は気付いてないよね?柊はとっても、美しいよ!どんな時も、とびきり美しいんだから!今だって、君は花が良く似合う。

「じゃあ、俺これ帰って母さんに渡すわ!じゃあな、蓮!また学校でな!」

 そう言って、柊は店を出て行った。
 父さんが

「あの子、いい子だな!」

 と笑っていた。

「うん、柊は凄く、いい子だよ!」

 僕はとても柔らかく、笑った。

 柊からメールがあったのは、その日の夜のことだった。
 普段殆ど鳴ることのない携帯電話が突然鳴って、驚いた。
 携帯電話を開けると、それは柊からのメールだった。

「さっきは花束、ありがとう!母さんとっても喜んでた!綺麗だって!お前やっぱりスゲーな!サービスしてくれた、蓮のお父さんにもよろしく伝えてな!」

 メールにはそう書かれていて、下に柊の携帯電話の番号が添えてあった。

 僕はそのメールに、嬉しくなる。
 柊からのメール、初めてのメール。
 僕はそれを抱いて、ベッドに潜り込むと、幸せに笑った。一生、大切にしようと思った。絶対に消したりしないで、大切にとっておこうと思った。
 そして僕は返信を返す。

「喜んで貰えたみたいで、良かった!こちらこそ、初めてのお客さんになってくれて、ありがとう!もっと頑張って練習するから、また買いに来てね!父さんにも伝えておくね!ありがとう!」

 そのメールには返信は来なかったけれど、僕は自分の連絡先に、柊の名前が入ったことが、奇跡のように幸せだった。
 そんな大切な携帯電話を握り締めて、僕はその日眠った。

 夏休みが明けた。突然戻ってきた学校という名の日常に、僕らは戻るのに少し時間がかかった。
 でもそんな間にも、九月半ばにある文化祭に向けての準備はどんどんと進んだ。
 僕らのクラスは教室を使った迷路をやることになっていた。だから、結構準備には時間が必要だった。『不思議の国のアリス』をイメージした迷路にする予定だったから、予め机を組んで迷路のルートを作ると、それに合わせて、ダンボールに絵が得意な子が、絵を描いてゆく。
 僕らは絵が得意な子が描いた下描きに従って、絵にアクリル絵の具で色を付けた。
 トランプの兵隊や、時計ウサギなど、アリスの世界の登場人物が、どんどんできあがる。
 みんな毎日楽しく作業していた。

 そんな中、柊達はバンドの練習にも一生懸命になっていた。みんな噂していた。

「柊のバンド、今年の文化祭でライブ出るらしいよ!」

 って!
 僕も本人からそれとなく聞いていた。今年はメジャーデビューしたバンドのコピーだけど、文化祭のライブに出るって。

「お前、ちゃんと見に来いよな!」

 柊は僕のことを誘ってくれた。それがなんか、嬉しかった。
 そんな文化祭はもう目前に迫っていた。

「みんな、あと少しだから頑張ろう!」

 絵の得意な子が、僕らに声をかけてくれる。
 その声に、僕らはあとひと頑張りする!

 そう言えば最近、全然花屋、手伝えてないな⋯。

 僕はボンヤリと考える。でも、父さんは文化祭をきちんと頑張れと言うだろうなと、思った。だから今は、文化祭に全力投球することにした!

 柊がバンドの練習を終えて、クラスの方に戻って来た。そして、作業を手伝ってくれる。
 僕らは毎日そんな風にして、日が暮れるまで文化祭の準備を頑張った。
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