指切りの彼

藤咲 ふみ

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新しい一年の幕開けと君を独り占めする放課後。

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 年が明けた。それからも時は止まることなく進んでゆき、段々と別れの季節が近付いてくる。

 二月になると寒い日には雪が降った。そんな日にはみんなで思い切り遊んだ!大きな雪だるまを作ったり、雪合戦したり!
 そんな楽しいことに、とことん飛びつく僕らは、寒くても海岸で追いかけっこしたりもした。

 そして、卒業式の練習も始まると、そのうち僕らも卒業するんだと、嫌でも感じた。
 三年生に贈るための合唱の練習が始まると、切なさで胸が張り裂けそうになった。

 ねぇ、柊、僕らもいつかはバラバラになるね。その時僕らは、どんな形の僕らで、いるんだろうね?

 切なく響くハーモニーに心を寄せながら、泣きたいのを我慢して、僕は歌を歌った。

 そんな寒かった日々も次第に過ぎゆき、段々と暖かな日を見つけ出したある日、卒業式が行われた。
 僕の家の花屋は、この近辺の学校の卒業式の花束作りを全て請け負っているため、この時期はとても忙しい!この学校の花束も、僕の家の花屋が作っている。それが少し、誇らしかった。

 三年生を無事見送ると、僕らは四月、高校二年生になった。
 緊張したクラス替え、僕は嬉しいことに、柊とまた同じクラスになれた!
 柊はそのことを喜んでくれた。

「俺達また同じクラスだな!よろしくな!」

 って。
 それに僕はとびきり元気に頷いた。

「うん!よろしくね!」

 って。

 新しいクラスになっても、柊は相変わらず女子に人気で、同じクラスになれた子はとても喜んでいたし、離れてしまった子はとても残念がっていた。そしてその中には、柊に告白をする子もいた。

 僕はそれをこっそり見ていた。
 柊がどんな子を恋人に選ぶのか、気になったから。
 噂に聞くに、柊はどの子の告白も断ったと言った。

 柊は好きな人、いるのかな?

 僕は気になった。
 でも勇気がなくて、聞くことなんてできなかった。

 新しいクラスになってから僕らは、前よりもっと話すようになった。一緒に帰る頻度も増えた。
 それは柊のバンドの『ピンキーソーイング』が少し揉めて、ドラムが脱退してしまって、今新しいドラムを探しているから、事実上活動休止状態というのもあったから、柊が帰るの、早かったというのもあったんだけど⋯そんなわけで、僕らはよく一緒に帰った。

「桜綺麗に咲いてんなー!桜に海って贅沢だな!」

 柊が楽しそうに桜の花びらに手を伸ばして、ニッと笑う。
 それに僕も微笑む。
 穏やかでいい日だなと、思った。
 このままこれからも、柊を独り占めしたいと、思った。でもそれは、無理だね!分かってる。

「バンドメンバー、見つかりそう?」

 柊に聞くと

「うん⋯なんとなく、そろそろ決まりそう!できるだけ早く活動また始めたいんだよな!蓮は?いけ花いい感じ?」

 それに僕は

「どうかな?その時の⋯気分次第だから!」

 と笑った。
 それに柊は

「それなんかスゲー分かる!バンドもさ、その時の気分で結構ムラ、できんだよな!特にヴォーカル!調子いいって時と、ヤバめって時の差が結構激しい!」

 それに僕は驚く!

「へー、柊にもムラってあるんだ!柊っていつも安定してるように思ってた!でも⋯ヴォーカルとは違うけど、カラオケとか行くと、その日によって歌える日と、歌えない日って、ある⋯確かに⋯!」

 それに思い付いたように、柊が僕を引っ張る!そして言った。

「なぁ、今からカラオケ行こうぜ!なんか今スゲー歌いたい気分!」

 僕はそんな柊に引っ張られて、カラオケに連れて行かれた。そして

「さぁ、何歌う?蓮は何が好き?」

 と柊は歌う気も聴く気も満々だった!
 それに僕は

「なんでもいいよ!柊の好きなの歌ってよ!」

 それに柊は楽しそうにデンモクをいじって、曲を決めている。

「あっ、なんか知ってるこの曲!」

 それは結構メジャーな、ビジュアルロックバンドの曲だった。
 柊は気持ちよさそうにそれを歌っていた。
 僕も柊の歌声を気持ちよく聴いている。そして、すっかり自分の曲を入れるのを

「忘れてた!」

 僕はへへっと笑った。
 すると、柊はそれにちょっぴり怒って

「なんか入れろ!お前は何が好きなんだ?何が歌えるんだ?」

 と一緒になってデンモクを、ピッピピッピと曲を探す。そして、僕はあっ、と言って、笑って曲を入れた。それは

「チェッカーズの『涙のリクエスト』とか⋯渋いな!いいぞ!なんか逆に新しい!」

 僕は曲が始まると、緊張しながら、両手でマイクを持って、歌い出す。
 それを柊が手拍子で盛り上げてくれる。
 決して上手ではない僕の歌。でも柊はとても楽しそうに聴いてくれている。それが嬉しかった。

 その後も僕らは順番こに歌を歌って、楽しんだ。柊は大分歌いたいストレスが溜まっていたみたいで、なんかそれをぶちまけるように、歌っていた。その姿が、なんか凄い良かった。かっこよかった。何より、独り占めできてるのが、たまらなく嬉しかった。

 柊のストレスが大分発散された辺りで、僕らはカラオケから出て、夕日が眩しい街を歩いて帰った。

「なんか、付き合わせたみたいで、悪かったな!でも⋯スゲー楽しかった!お前のチェッカーズ、なんか良かった!かっこよかった!俺らみたいなバンドマンにないなんかがあって、心に来た!」

 僕は褒められて、素直に照れた。
 あんなに素敵に歌う人に褒められるなんて、光栄過ぎる。

「全然!僕も楽しかったよ!みんなの柊を独り占めできて、凄い幸せ者だったよ、今日の僕!あんな歌、褒めてくれてありがとう!今度から十八番にするね!」

 僕はニッコリ笑って柊に言うと、そろそろ店の手伝いに行くね!と走って帰った。
 とても、特別な一日だった。柊を独り占めした、とっても特別な一日だった。
 
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