指切りの彼

藤咲 ふみ

文字の大きさ
16 / 40

新しい一年の幕開けと君を独り占めする放課後。

しおりを挟む
 年が明けた。それからも時は止まることなく進んでゆき、段々と別れの季節が近付いてくる。

 二月になると寒い日には雪が降った。そんな日にはみんなで思い切り遊んだ!大きな雪だるまを作ったり、雪合戦したり!
 そんな楽しいことに、とことん飛びつく僕らは、寒くても海岸で追いかけっこしたりもした。

 そして、卒業式の練習も始まると、そのうち僕らも卒業するんだと、嫌でも感じた。
 三年生に贈るための合唱の練習が始まると、切なさで胸が張り裂けそうになった。

 ねぇ、柊、僕らもいつかはバラバラになるね。その時僕らは、どんな形の僕らで、いるんだろうね?

 切なく響くハーモニーに心を寄せながら、泣きたいのを我慢して、僕は歌を歌った。

 そんな寒かった日々も次第に過ぎゆき、段々と暖かな日を見つけ出したある日、卒業式が行われた。
 僕の家の花屋は、この近辺の学校の卒業式の花束作りを全て請け負っているため、この時期はとても忙しい!この学校の花束も、僕の家の花屋が作っている。それが少し、誇らしかった。

 三年生を無事見送ると、僕らは四月、高校二年生になった。
 緊張したクラス替え、僕は嬉しいことに、柊とまた同じクラスになれた!
 柊はそのことを喜んでくれた。

「俺達また同じクラスだな!よろしくな!」

 って。
 それに僕はとびきり元気に頷いた。

「うん!よろしくね!」

 って。

 新しいクラスになっても、柊は相変わらず女子に人気で、同じクラスになれた子はとても喜んでいたし、離れてしまった子はとても残念がっていた。そしてその中には、柊に告白をする子もいた。

 僕はそれをこっそり見ていた。
 柊がどんな子を恋人に選ぶのか、気になったから。
 噂に聞くに、柊はどの子の告白も断ったと言った。

 柊は好きな人、いるのかな?

 僕は気になった。
 でも勇気がなくて、聞くことなんてできなかった。

 新しいクラスになってから僕らは、前よりもっと話すようになった。一緒に帰る頻度も増えた。
 それは柊のバンドの『ピンキーソーイング』が少し揉めて、ドラムが脱退してしまって、今新しいドラムを探しているから、事実上活動休止状態というのもあったから、柊が帰るの、早かったというのもあったんだけど⋯そんなわけで、僕らはよく一緒に帰った。

「桜綺麗に咲いてんなー!桜に海って贅沢だな!」

 柊が楽しそうに桜の花びらに手を伸ばして、ニッと笑う。
 それに僕も微笑む。
 穏やかでいい日だなと、思った。
 このままこれからも、柊を独り占めしたいと、思った。でもそれは、無理だね!分かってる。

「バンドメンバー、見つかりそう?」

 柊に聞くと

「うん⋯なんとなく、そろそろ決まりそう!できるだけ早く活動また始めたいんだよな!蓮は?いけ花いい感じ?」

 それに僕は

「どうかな?その時の⋯気分次第だから!」

 と笑った。
 それに柊は

「それなんかスゲー分かる!バンドもさ、その時の気分で結構ムラ、できんだよな!特にヴォーカル!調子いいって時と、ヤバめって時の差が結構激しい!」

 それに僕は驚く!

「へー、柊にもムラってあるんだ!柊っていつも安定してるように思ってた!でも⋯ヴォーカルとは違うけど、カラオケとか行くと、その日によって歌える日と、歌えない日って、ある⋯確かに⋯!」

 それに思い付いたように、柊が僕を引っ張る!そして言った。

「なぁ、今からカラオケ行こうぜ!なんか今スゲー歌いたい気分!」

 僕はそんな柊に引っ張られて、カラオケに連れて行かれた。そして

「さぁ、何歌う?蓮は何が好き?」

 と柊は歌う気も聴く気も満々だった!
 それに僕は

「なんでもいいよ!柊の好きなの歌ってよ!」

 それに柊は楽しそうにデンモクをいじって、曲を決めている。

「あっ、なんか知ってるこの曲!」

 それは結構メジャーな、ビジュアルロックバンドの曲だった。
 柊は気持ちよさそうにそれを歌っていた。
 僕も柊の歌声を気持ちよく聴いている。そして、すっかり自分の曲を入れるのを

「忘れてた!」

 僕はへへっと笑った。
 すると、柊はそれにちょっぴり怒って

「なんか入れろ!お前は何が好きなんだ?何が歌えるんだ?」

 と一緒になってデンモクを、ピッピピッピと曲を探す。そして、僕はあっ、と言って、笑って曲を入れた。それは

「チェッカーズの『涙のリクエスト』とか⋯渋いな!いいぞ!なんか逆に新しい!」

 僕は曲が始まると、緊張しながら、両手でマイクを持って、歌い出す。
 それを柊が手拍子で盛り上げてくれる。
 決して上手ではない僕の歌。でも柊はとても楽しそうに聴いてくれている。それが嬉しかった。

 その後も僕らは順番こに歌を歌って、楽しんだ。柊は大分歌いたいストレスが溜まっていたみたいで、なんかそれをぶちまけるように、歌っていた。その姿が、なんか凄い良かった。かっこよかった。何より、独り占めできてるのが、たまらなく嬉しかった。

 柊のストレスが大分発散された辺りで、僕らはカラオケから出て、夕日が眩しい街を歩いて帰った。

「なんか、付き合わせたみたいで、悪かったな!でも⋯スゲー楽しかった!お前のチェッカーズ、なんか良かった!かっこよかった!俺らみたいなバンドマンにないなんかがあって、心に来た!」

 僕は褒められて、素直に照れた。
 あんなに素敵に歌う人に褒められるなんて、光栄過ぎる。

「全然!僕も楽しかったよ!みんなの柊を独り占めできて、凄い幸せ者だったよ、今日の僕!あんな歌、褒めてくれてありがとう!今度から十八番にするね!」

 僕はニッコリ笑って柊に言うと、そろそろ店の手伝いに行くね!と走って帰った。
 とても、特別な一日だった。柊を独り占めした、とっても特別な一日だった。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

恋文より、先にレポートが届いた~監視対象と監視官、感情に名前をつけるまで

中岡 始
BL
政府による極秘監視プロジェクト──その対象は、元・天才ハッカーで現在は無職&生活能力ゼロの和泉義人(32歳・超絶美形)。 かつて国の防衛システムに“うっかり”侵入してしまった過去を持つ彼は、現在、監視付きの同居生活を送ることに。 監視官として派遣されたのは、真面目で融通のきかないエリート捜査官・大宮陸斗(28歳)。 だが任務初日から、冷蔵庫にタマゴはない、洗濯は丸一週間回されない、寝ながらコードを落書き…と、和泉のダメ人間っぷりが炸裂。 「この部屋の秩序、いつ崩壊したんですか」 「うまく立ち上げられんかっただけや、たぶん」 生活を“管理”するはずが、いつの間にか“世話”してるし… しかもレポートは、だんだん恋文っぽくなっていくし…? 冷静な大宮の表情が、気づけば少しずつ揺らぎはじめる。 そして和泉もまた、自分のために用意された朝ごはんや、一緒に過ごすことが当たり前になった日常…心の中のコードが、少しずつ書き換えられていく。 ──これは「監視」から始まった、ふたりの“生活の記録”。 堅物世話焼き×ツンデレ変人、心がじわじわ溶けていく、静かで可笑しな同居BL。

地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛

中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。 誰の心にも触れたくない。 無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。 その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。 明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、 偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。 無機質な顔の奥に隠れていたのは、 誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。 気づいてしまったから、もう目を逸らせない。 知りたくなったから、もう引き返せない。 すれ違いと無関心、 優しさと孤独、 微かな笑顔と、隠された心。 これは、 触れれば壊れそうな彼に、 それでも手を伸ばしてしまった、 不器用な男たちの恋のはなし。

ステッドファスト ー恋に一途な僕らの再会ー

ブンダバー
BL
中学の頃から、橋本はずっと鏑木だけを想い続けてきた。 一方の鏑木も、橋本に特別な感情を抱いていながら、モデルとして生きる彼の未来を思い、その一歩を踏み出せずにいた。 時が経ち、広告代理店に勤める社会人となった鏑木と、人気モデルとして芸能界で活躍する橋本は、仕事をきっかけに偶然の再会を果たす。 ――あの頃、言えなかった気持ち。 ――守りたかった距離。 大人になった今だからこそ、再び動き出す両片想い。 恋も、仕事も、簡単じゃない。それでも不器用に前へ進もうとする 青年たちの、芸能界を舞台にした再会ラブストーリー。 果たして、二人が想いを伝え合える日は来るのか――。 そんな2人を見守る幼馴染サブカップルにも注目!

【完結】ルガルの星―冷徹な社長は、僕の運命を知っていた―

綾波絢斗
BL
この世界には、二つの特別な称号を持つ者たちが存在する。 一つは、絶対的な権力を持つ王の称号――ルガル(lugal)。 もう一つは、ルガルと対をなし、その力を補う「番」――ムル(mul)。 ルガルは生まれながらに選ばれし存在。 国家からエリート教育と地位を与えられ、能力に応じて厳格なランク分けが行われる。 最上位のルガルは、政治さえも動かす絶対者だ。 一方で、ムルは生まれた瞬間にはその正体がわからない。 遺伝子検査や学力テストを経て候補が絞られるが、 最終的に「真のムル」かどうかを見極められるのは――ルガルだけ。 ムルが覚醒したとき、同じ場所に「紋章」が現れ、その瞬間から、ルガルとムルの力は共鳴し始める。 ムルの能力はルガルの力を最大限に引き出す。 ゆえにルガルたちは、自らのムルを求め、時には他人のムル候補を奪い合う。 そして、すべての出生データと遺伝情報を管理するのは、 巨大企業イルジオン――国家をも超える存在。 その頂点に立つ社長、一条レイ。 冷徹なルガルの頂点に君臨する彼が「自分のムル」と出会った。

義兄が溺愛してきます

ゆう
BL
桜木恋(16)は交通事故に遭う。 その翌日からだ。 義兄である桜木翔(17)が過保護になったのは。 翔は恋に好意を寄せているのだった。 本人はその事を知るよしもない。 その様子を見ていた友人の凛から告白され、戸惑う恋。 成り行きで惚れさせる宣言をした凛と一週間付き合う(仮)になった。 翔は色々と思う所があり、距離を置こうと彼女(偽)をつくる。 すれ違う思いは交わるのか─────。

俺の幼馴染が陽キャのくせに重すぎる!

佐倉海斗
BL
 十七歳の高校三年生の春、少年、葉山葵は恋をしていた。  相手は幼馴染の杉田律だ。  ……この恋は障害が多すぎる。  律は高校で一番の人気者だった。その為、今日も律の周りには大勢の生徒が集まっている。人見知りで人混みが苦手な葵は、幼馴染だからとその中に入っていくことができず、友人二人と昨日見たばかりのアニメの話で盛り上がっていた。 ※三人称の全年齢BLです※

孤毒の解毒薬

紫月ゆえ
BL
友人なし、家族仲悪、自分の居場所に疑問を感じてる大学生が、同大学に在籍する真逆の陽キャ学生に出会い、彼の止まっていた時が動き始める―。 中学時代の出来事から人に心を閉ざしてしまい、常に一線をひくようになってしまった西条雪。そんな彼に話しかけてきたのは、いつも周りに人がいる人気者のような、いわゆる陽キャだ。雪とは一生交わることのない人だと思っていたが、彼はどこか違うような…。 不思議にももっと話してみたいと、あわよくば友達になってみたいと思うようになるのだが―。 【登場人物】 西条雪:ぼっち学生。人と関わることに抵抗を抱いている。無自覚だが、容姿はかなり整っている。 白銀奏斗:勉学、容姿、人望を兼ね備えた人気者。柔らかく穏やかな雰囲気をまとう。

僕の恋人は、超イケメン!!

八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

処理中です...