指切りの彼

藤咲 ふみ

文字の大きさ
25 / 40

高校二年生の文化祭の幕開け。素敵なロミオの君に驚きのサプライズをされて⋯

しおりを挟む
 それから時は経ち、遂に迎えた文化祭当日。僕らは今年も、クラスごとにデザインして注文していたポロシャツに着替えた。今年のクラスポロシャツは、淡いピンクに、濃いピンクで『ロミオとジュリエット』の印字がしてある美しいデザインで、お上品でとても素敵だ。
 それを着ると、みんな体育館に行って、開会の言葉を聞いた。そして、今年も文化祭が始まった!

 廊下中、賑やかな声で溢れる。その中を、今年も午前が当番の僕と柊は、クラスの中で待機して過ごした。勿論、ロミオ役の柊は、衣装を着ていて、それがとても素敵だった。

「二人並んで、写真撮ったげる!」

 デジカメを持った女子が、ロミオ姿の柊と、僕のツーショットを撮ってくれた。けど、なんだかお互い慣れなくて、なんかちょっと照れた顔になってしまった気がした。

「柊、ロミオとっても似合うね!素敵だね!頑張れ!」

 僕が照れながら言うと、柊も照れながら

「お、おう!ありがと!頑張るわ!」

 と頭をかいた。結ぶタイプのウィッグで襟足を少し足した柊は、なんだか本当に、異国の素敵なプリンスに見えた。
 午前の部が始まる大分前に、柊のロミオ目当てのお客さんが教室に押し寄せた。それは本当に凄い人で、ビックリしちゃった!教室に入り切らないからって、脇の窓とかも開けて、そこからの立ち見とかも受け付けた。

「本当に柊って、人気者!」

 僕は口をあんぐりと開けた。
 その時、そろそろ午前の部を始めると、声をかけられた。
 僕は急いでセットの下に行って、セット転換のタイミングの最後の確認をした。
 そしていよいよミュージカルの幕が上がる。

 物語はスルスルと進み、セットの転換も上手くいく。柊のロミオも、ため息を漏らすほど美しく、かっこいい。特に歌う姿は、本当に、この世のものとは思えない程の素敵さだった。
 いよいよ僕が一番のお気に入りの、バルコニーのシーンになる。

 柊のロミオが、バルコニーで歌うジュリエットに、歌を歌って求婚するシーン。そこで僕はあまりの美しさに、うっとりする。

「柊、素敵⋯」

 そしてやがて物語は悲劇に向けて突き進んで、幕を閉じる。
 最後まで演じ切ると、カーテンコール、みんな手と手を繋いで、お辞儀をした。割れんばかりの歓声と、拍手が、教室をを包んだ。
 中には柊の名前を叫ぶ女の子もいて、やっぱり柊の人気を実感した。
 でも

「僕、特等席で見ちゃったもんね⋯ごめんね、みんな⋯!」

 僕はそう言って、微笑んだ。

 午前の部が終わると、僕らはみんなで先生に頼んで集合写真を撮った!

「うん、いい記念!」

 それからみんなクラスポロシャツに着替えて、柊のロミオの魔法は解けてしまった。

「あっ、普通の柊だ!」

 僕が言うと、柊は

「あー、やっと普通に戻れた!ロミオ、衣装結構色々重くてさ、大変だったよ!俺のロミオ、どうだった?」

 それに僕は

「もう、最っ高だったよ!どこのシーンも素敵だったけど⋯やっぱりバルコニーのシーンがさ、特に最高だった!もうね、美し過ぎて、見てていのか迷う程だったよ!柊はやっぱり絵になるね!」

 と興奮気味でまくし立てた。
 それな柊は

「蓮、なんかスゲー褒めるな!普通に照れるわ!でも⋯ありがとうな!やった甲斐あったわ!さて、そろそろ今度は『ピンキーソーイング』行くか!お前も早く来いよ!いいか、できるだけ前の方来いよ!いいな?」

 それに僕は頷く。

「分かった!前の方陣取れるように、頑張る!」

 そこまで話すと、柊はギターを担いで、ライブ会場に向かって行った。

 そんな僕も、柊に言われた通り、早めにライブが行われる視聴覚室に向かって、いい位置を取れるように、頑張った。結果、僕はセンターの一番前の方に立つことができた!そこで、『ピンキーソーイング』が出てくるのをワクワクしながら待った。

 色々なバンドの演奏を楽しんでいるうちに、次がいよいよ『ピンキーソーイング』の出番になる。
 柊が姿を現すと、会場中から女子の黄色い悲鳴が聞こえる。その時、歌い出すと思った柊が、僕を見つけて、いつもみたいにやんちゃに笑って、僕に手を伸ばした。そして、舞台に引き上げた。
 それに僕はとても驚いて、固まった。

「蓮、あの時みたいに、チェッカーズ、歌え!いいか、スティックが三回鳴ったら歌い出せ、いいな!」

 それに僕は驚く!

「え?何?歌うってここで?」

 それに『ピンキーソーイング』のメンバーも自分の楽器を鳴らして笑っていた。
 僕はそれに覚悟を決めて、柊から渡されたマイクを握った。
 ドラムがカウントをする。

「ワン、ツー、スリー!」

 僕は歌い出した!
 それに会場中のみんなが、耳を澄ませている。
 チェッカーズの『涙のリクエスト』のイントロ部分を歌い終えると、楽器がバーッと演奏を始める。そして、柊が僕からマイクを受け取ると、曲が変化して、ロックバンドの曲になる。柊がその歌を歌い出す。その時、柊が僕を指さして、お辞儀した。それにみんな拍手をくれた。
 僕はお辞儀しながら、舞台をそっと降りた。

 とても、恥ずかしかった。けれど、とても気持ち良かった。なんだか、凄く素敵な体験をさせて貰ってしまった。

 柊を見ると、柊はまだ楽しそうに歌っていた。とてもキラキラ輝いて見えた。

 ねぇ、柊、柊ありがとう。僕、柊のおかげで、絶対に自分じゃ見れない世界、見せて貰えたよ!その景色は、とっても素敵だったよ!僕絶対にその景色、忘れない!君の見てる景色、分けてくれてありがとう!

 柊がこっちを向いて、やんちゃに笑った。
 僕はそれを見て、ニッコリ笑った。

「柊!とっても楽しいよ!」

 って、僕は叫んだ。
 それに柊は、楽しそうにギターを弾いていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

消えることのない残像

万里
BL
最愛の兄・大貴の結婚式。高校生の志貴は、兄への想いが「家族愛」ではなく「恋」であったと、失恋と同時に自覚する。血の繋がりという境界線、そして「弟」という役割に縛られ、志貴は想いを封印して祝福の仮面を被る。 しかし数年後、大貴の息子が成長し、かつての兄と瓜二つの姿となったとき、止まっていた志貴の時間は歪な形で動き出す。 志貴(しき):兄・大貴に長年片思いしているが、告げることなく距離を置いていた。 大貴(だいき):志貴の兄。10歳年上。既婚者で律樹の父。無自覚に人を惹きつける性格。志貴の想いには気づいていない。 律樹(りつき):大貴の息子。明るく素直だが、志貴に対して複雑な感情を抱く。

好きです、今も。

めある
BL
高校の卒業式に、部活の後輩・安達快(あだち かい)に告白した桐越新(きりごえ あらた)。しかし、新は快に振られてしまう。それから新は大学へ進学し、月日が流れても新は快への気持ちを忘れることが出来ないでいた。そんな最中、二人は大学で再会を果たすこととなる。 ちょっと切なめな甘々ラブストーリーです。ハッピーエンドです。

僕の恋人は、超イケメン!!

八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

【完結】恋した君は別の誰かが好きだから

海月 ぴけ
BL
本編は完結しました。後日、おまけ&アフターストーリー随筆予定。 青春BLカップ31位。 BETありがとうございました。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 俺が好きになった人は、別の誰かが好きだからーー。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 二つの視点から見た、片思い恋愛模様。 じれきゅん ギャップ攻め

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

ひとりも、ふたりも

鈴川真白
BL
ひとりで落ち着く時間も、ふたりでいる楽しい時間も両方ほしい 1人を謳歌するマイペース × 1人になりたいエセ陽キャ

処理中です...