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終わりゆく高校二年生の文化祭といけ花に込めた僕の想い。
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『ピンキーソーイング』は何曲か演奏すると、演奏を終え、たくさんの歓声の中、舞台袖に履けて行った。
僕はそれを追いかけて、柊の出待ちをした。なんか、いてもたってもいられなかった。そこに、演奏終わりの柊が通った。
柊は何も言わずに、僕の手をとると、駆け出した。
僕も何も言わずに、着いて行った。
「なんか、去年も似たことしたな!こうやって二人、逃げんの!ごめんな、突然ステージ上げたりして!どうしてもお前、歌わせたかったんだよ!バンドメンバーも、またあれやりたいって言ってたし⋯じゃあ本番で上げしまおうぜ!ってなって⋯でも、スゲー良かったよ、蓮!痺れた!」
それに僕は途端に恥ずかしくなる。なんかフツフツとこう、恥ずかしさが、湧き上がって来る。
「あの⋯恥ずかしいから⋯やめて!僕歌下手なのにあんな大勢の前で歌っちゃって⋯恥ずかしい⋯!でも⋯恥ずかしいけど、気持ちよかったんだ⋯笑って!柊は凄いや!あんなに堂々と上手く歌えて!羨ましい!僕に、柊の世界を少し分けてくれて、ありがとう!僕、嬉しかった!だから、ありがとう!とっても素敵な、景色だった!柊は素敵な景色を、見てるんだね!」
僕がそう言って微笑むと、柊は僕のことを突然抱き締めた。
「お前、心綺麗すぎ!なんなんだよ!バカ!」
僕はそれに、とてもドキドキする。
「柊、突然どうしたの?柊?」
笑う僕に柊は、何も言わなかった。だから僕も、少しこのままでいようと、思った。
柊、僕らはお友達より、ちょっぴり近いね!でも、きっと恋人とは違うね!でも、これ位の距離で、ずっとくっついていよいよ?ね?
その時、柊が僕を離して、照れくさそうに頭をかいた。
「そうだ!今年の、蓮のいけ花、見に行こうぜ!」
柊がそう言ってやんちゃに笑う。
僕はそれに、ちょっと照れながら、飾ってある場所に柊を案内する。
「これ、今年のいけ花!」
それは黄色い、元気なヒマワリいっぱいのいけ花だった。
それを見た柊はおっきく笑って
「わー、スゲー可愛い!なんか見てるだけで元気になるな!これ、何イメージしてんの?」
と僕に聞く。
その質問に、僕は迷ったけれど、素直なことを答えた。
「柊を、柊をイメージしてるんだ!この花は、ヒマワリは、柊の笑った顔によく似てるから!だから⋯今年の僕の作品は、君だよ!」
そう言って、僕はニッコリ笑った。
それに柊は少し固まった後、照れくさそうに顔を伏せて
「お前、なんか反則!今年のお前、なんか心臓に悪い!なんだよ!俺が作品って⋯なんか⋯なんか⋯お前の特別になれたって勘違いすんだろ!バカ!」
柊はそう言ったきり、何も言わなくなった。
やっぱり気持ち、悪かったよね⋯。
僕はそう思って、心で柊に謝った。
そのまま文化祭一日目は幕を閉じた。
二日目も、柊のロミオ人気は凄まじく、もう教室に入り切らないのに、人が押し寄せた。そんな中を、今日もミュージカルが開幕した。
僕は昨日同様、セットの下からの特等席で、柊のロミオを見つめ続けた。どの瞬間も見逃さないように、瞳に焼き付けて。
ねぇ、柊、柊は僕のことが気持ち悪いかもしれないけど、でも見つめるくらいは、許して、お願い。
それからもミュージカルはつつがなく進み、エンディングを迎えると、みんなでカーテンコール、手を繋いでお辞儀をした。
今日も柊は大人気で、名前を叫ばれたりしていた。
そんな柊は、ロミオを脱ぎ捨てると、すぐにバンド演奏の準備をしだす。そして、ライブ会場に向かって行った。
僕は今日は後ろの方からそっと『ピンキーソーイング』の演奏を眺めた。
昨日柊と気まずい感じで別れたから、僕はそれがなんとなく引っかかって、今日柊とあまり口をきいていない。
それでも柊の歌と演奏は今日もとびきり素敵だった。勿論ロミオも、素敵だった。
「ちゃんと伝えたいな⋯」
でも、なんか言葉にできなかった。
そのまま文化祭は閉会式を迎え、後夜祭がやってきた。
僕らはぎこちないまま花火の時を迎えてしまった。
カウントダウンが始まる。
「五、四、三、二、一!」
その時、少し離れた場所にいた柊と目があった。そして、お互い駆け寄った。
「あのさ!」
二人同時に口を開いた瞬間に、暗い空に花火が上がって、パッと光った。
「なんだよ!先に言えよ!」
柊がいつもの、やんちゃな笑顔で言う。
それに僕は
「ううん!別に、なんでもない!ロミオも、バンドも、素敵だったよって、言おうとしただけ!」
それに柊は
「ありがとさん!お前も、いけ花もバンドの飛び込みも、最高だったぜ!」
そう言うと、僕の肩に自分の腕を回して笑った。
上がり続ける花火の中、僕らはそんな風に、じゃれ合うように遊んでいた。
このままで、いいと思った。これ以上近付くとか、いいと思った。それで柊と、変な距離ができちゃうなら、僕はこのまま、友達以上、恋人未満な距離のままでずっと、遊んでいたいと思った。
だってそうすれば別れは来ないってことだもんね?僕はそう思っていたんだ。上がり続ける、花火の中で、ハッキリと。
そんなことを思っていたら、僕の高校二年生の文化祭はゆっくりと幕を下ろした。
僕はそれを追いかけて、柊の出待ちをした。なんか、いてもたってもいられなかった。そこに、演奏終わりの柊が通った。
柊は何も言わずに、僕の手をとると、駆け出した。
僕も何も言わずに、着いて行った。
「なんか、去年も似たことしたな!こうやって二人、逃げんの!ごめんな、突然ステージ上げたりして!どうしてもお前、歌わせたかったんだよ!バンドメンバーも、またあれやりたいって言ってたし⋯じゃあ本番で上げしまおうぜ!ってなって⋯でも、スゲー良かったよ、蓮!痺れた!」
それに僕は途端に恥ずかしくなる。なんかフツフツとこう、恥ずかしさが、湧き上がって来る。
「あの⋯恥ずかしいから⋯やめて!僕歌下手なのにあんな大勢の前で歌っちゃって⋯恥ずかしい⋯!でも⋯恥ずかしいけど、気持ちよかったんだ⋯笑って!柊は凄いや!あんなに堂々と上手く歌えて!羨ましい!僕に、柊の世界を少し分けてくれて、ありがとう!僕、嬉しかった!だから、ありがとう!とっても素敵な、景色だった!柊は素敵な景色を、見てるんだね!」
僕がそう言って微笑むと、柊は僕のことを突然抱き締めた。
「お前、心綺麗すぎ!なんなんだよ!バカ!」
僕はそれに、とてもドキドキする。
「柊、突然どうしたの?柊?」
笑う僕に柊は、何も言わなかった。だから僕も、少しこのままでいようと、思った。
柊、僕らはお友達より、ちょっぴり近いね!でも、きっと恋人とは違うね!でも、これ位の距離で、ずっとくっついていよいよ?ね?
その時、柊が僕を離して、照れくさそうに頭をかいた。
「そうだ!今年の、蓮のいけ花、見に行こうぜ!」
柊がそう言ってやんちゃに笑う。
僕はそれに、ちょっと照れながら、飾ってある場所に柊を案内する。
「これ、今年のいけ花!」
それは黄色い、元気なヒマワリいっぱいのいけ花だった。
それを見た柊はおっきく笑って
「わー、スゲー可愛い!なんか見てるだけで元気になるな!これ、何イメージしてんの?」
と僕に聞く。
その質問に、僕は迷ったけれど、素直なことを答えた。
「柊を、柊をイメージしてるんだ!この花は、ヒマワリは、柊の笑った顔によく似てるから!だから⋯今年の僕の作品は、君だよ!」
そう言って、僕はニッコリ笑った。
それに柊は少し固まった後、照れくさそうに顔を伏せて
「お前、なんか反則!今年のお前、なんか心臓に悪い!なんだよ!俺が作品って⋯なんか⋯なんか⋯お前の特別になれたって勘違いすんだろ!バカ!」
柊はそう言ったきり、何も言わなくなった。
やっぱり気持ち、悪かったよね⋯。
僕はそう思って、心で柊に謝った。
そのまま文化祭一日目は幕を閉じた。
二日目も、柊のロミオ人気は凄まじく、もう教室に入り切らないのに、人が押し寄せた。そんな中を、今日もミュージカルが開幕した。
僕は昨日同様、セットの下からの特等席で、柊のロミオを見つめ続けた。どの瞬間も見逃さないように、瞳に焼き付けて。
ねぇ、柊、柊は僕のことが気持ち悪いかもしれないけど、でも見つめるくらいは、許して、お願い。
それからもミュージカルはつつがなく進み、エンディングを迎えると、みんなでカーテンコール、手を繋いでお辞儀をした。
今日も柊は大人気で、名前を叫ばれたりしていた。
そんな柊は、ロミオを脱ぎ捨てると、すぐにバンド演奏の準備をしだす。そして、ライブ会場に向かって行った。
僕は今日は後ろの方からそっと『ピンキーソーイング』の演奏を眺めた。
昨日柊と気まずい感じで別れたから、僕はそれがなんとなく引っかかって、今日柊とあまり口をきいていない。
それでも柊の歌と演奏は今日もとびきり素敵だった。勿論ロミオも、素敵だった。
「ちゃんと伝えたいな⋯」
でも、なんか言葉にできなかった。
そのまま文化祭は閉会式を迎え、後夜祭がやってきた。
僕らはぎこちないまま花火の時を迎えてしまった。
カウントダウンが始まる。
「五、四、三、二、一!」
その時、少し離れた場所にいた柊と目があった。そして、お互い駆け寄った。
「あのさ!」
二人同時に口を開いた瞬間に、暗い空に花火が上がって、パッと光った。
「なんだよ!先に言えよ!」
柊がいつもの、やんちゃな笑顔で言う。
それに僕は
「ううん!別に、なんでもない!ロミオも、バンドも、素敵だったよって、言おうとしただけ!」
それに柊は
「ありがとさん!お前も、いけ花もバンドの飛び込みも、最高だったぜ!」
そう言うと、僕の肩に自分の腕を回して笑った。
上がり続ける花火の中、僕らはそんな風に、じゃれ合うように遊んでいた。
このままで、いいと思った。これ以上近付くとか、いいと思った。それで柊と、変な距離ができちゃうなら、僕はこのまま、友達以上、恋人未満な距離のままでずっと、遊んでいたいと思った。
だってそうすれば別れは来ないってことだもんね?僕はそう思っていたんだ。上がり続ける、花火の中で、ハッキリと。
そんなことを思っていたら、僕の高校二年生の文化祭はゆっくりと幕を下ろした。
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