指切りの彼

藤咲 ふみ

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いよいよ迎えた高校三年生、最終学年。君の決めた進路と僕の覚悟。

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 年が明けた。またもうすぐ僕らは一つ学年が上がって、最高学年の高校三年生になる。僕はそれが、怖かった。何もかもが、高校生活最後になるのが、悲しかった。

 でも時は待ってくれなかった。
 勉強や店番をしていたら、あっという間に三年生は卒業式の練習を始めだし、僕らも三年生に贈る合唱曲の練習を始めた。

 そして寒い季節も過ぎゆき、暖かな日が出できたある日、卒業式が行われ、三年生は卒業していった。

 そして残された僕らは春休みを挟み、桜の美しい季節、無事最高学年の高校三年生になった。

「遂にお前も、三年生か!」

 父さんが何か感慨深そうに言っていた。

「うん、高校、あと一年で終わっちゃう⋯寂しいや!」

 それに父さんが

「何言ってんだ!まだ一年も残ってるだろ!楽しんで来い!蓮!」

 僕はその言葉に、ハッとして、笑って頷いた。

 緊張したクラス替え、奇跡的なことに、柊とはまた同じクラスになれた!本当に、奇跡みたい!

「俺達高校三年間、ずっと同じクラスとか、スゲーな!嬉しいよ!蓮!」

 柊はそう言って興奮していた!
 僕も興奮している!

「本当に!僕何か悪いこと怒るんじゃないかなって位、嬉しい!またよろしくね!柊!」

 僕らは手と手を取り合って、喜びを分かち合った。

 そう言えば去年のクラスで、デジカメで写真をたくさん撮ってくれていた子が、欲しい写真を現像していた。それもやっぱり僕と柊はツーショットが多くて、仲良しって笑われた。
 ロミオの柊と撮った写真は、とてもレアだから、僕の宝物だった。
 今年もたくさんの想い出を、柊とこんな風に増やせると思ったら幸せだった。そう、こんな風に、増やせると、思っていたんだ、この時までは。

 僕らは同じクラスになったのを祝って、久しぶりにカラオケに行った。
 やった、久しぶりに柊を独り占め!
 僕はカラオケで柊を独り占めできるのが、とっても特別感があって嬉しかった。だって素敵に歌う柊を独り占めにできるんだもん!

 その日も柊は、知ってる曲から、知らない曲まで、色々な曲を入れて、楽しそうに、気持ち良さそうに歌っていた。そして、僕も、下手くそながら楽しく歌った。

「ねぇ、柊、今年は『ピンキーソーイング』いっぱい歌う?」

 それに柊は

「最高学年だからな!できたら⋯単独ライブとかにできたら嬉しいな!ちょっとの間だけでも、俺らの為だけのお客さんに囲まれてみてぇな!」

 柊はやんちゃそうに笑って、夢を語った。

「できるよ!柊なら!『ピンキーソーイング』なら、できる!頑張れ!応援してる!」

 それに柊は豪快に笑って

「おう!やってみせる!約束!」

 と言って、小指を立てる。

「約束!あっ、でももう僕をステージには上げないでね!お願いだよ!心臓が幾つあっても足らないや!」

 笑った僕は柊の小指に小指を絡めた。そして柊は

「はーい⋯もうやりません⋯!」

 と、少しシュンとしていた。
 それからも僕らは交互に歌っては話し、歌っては話し、満足すると、部屋を出て、家に向かって歩いた。

 「なあ、波の音、聞いてから帰らねぇ?」

 柊は話し足りない時に、時々そう言って、僕を僕の家の前の防波堤に誘った。
 僕らはそこに腰掛けると、本当に波音を聞きながら、そっと話した。

「あのさ、俺、将来とか分かんないけど、とりあえず都内の大学、受験する!ここじゃないどこかを、見たいんだ!だから⋯高校出たらきっとこの街、出ると思う!」

 強い潮風が、何かをさらって行った。
 あー、やっぱりさよならなんだなって、思った。でも不思議と怖くはなかった。悲しみも、そこまで酷くなかった。それはきっと、ある程度覚悟ができたからなんだと、思った。高校三年生になって、別れる覚悟が、できたんだと、思った。

「そっか!柊は少し、遠くへ行くね!僕はここに残るつもりだから⋯想い出してね、時々!」

 ふわりと笑った僕が、柔らかい潮風に揺れる。

 綺麗に、笑えているだろうか?僕は今、美しいだろうか?友の旅立ちたいという思いを、美しく、受け止め、見届けられているだろうか?

「ねぇ、柊、僕、ちゃんとできてる?ちゃんと柊に、お別れ言う準備、できてる?」

 その時柊が、僕をギュッと抱き締めた。

「お別れなんて、言わないで⋯ずっと傍に、いてよ⋯離れても、また会えるって、言ってよ⋯お願い⋯!」

 柊のその言葉に、僕はハッとした。
 柊が欲しいのは、お別れの言葉なんかじゃないんだ。いつでも帰っておいで!の言葉なんだと。
 僕は柊を抱き返して、笑って言った。

「柊、いつでも帰ってきてね!僕、ここで待ってるから!だから、そのために今は受験に向けて、頑張ろう!」

 柊がその言葉に、僕をもっと強く抱き締めた。

「うん!お互い、頑張ろうな!」

 僕は失うことばかりを、考えてた。でも、違ってた。離れ離れになっても、失うことには、ならないんだね!柊はまたここに、戻って来てくれるんだね!

 ねぇ、柊、これからもずっと、仲良くしようね、僕ら!

 段々と暮れゆく海を背に、僕らはなんだかいつまでも、抱き合っていた。抱き合って、泣いたり、笑ったりしていた。
 そんな新しい学年の始まり。
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