指切りの彼

藤咲 ふみ

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高校最後の文化祭。すれ違う僕ら。君が僕に贈った歌とは?

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 高校生活最後の夏休みが明けた。いよいよ高校生活最後の文化祭が、迫って来る。
 今年は僕らのクラスは綿あめ屋の屋台を出すことになっていた。だから、準備はそこまで大変ではなかった。

 でも僕は文化祭どころではなかった。柊と、どうしたらいいのか、サッパリ分からなくなってしまった。

 と言うのも、あの肝試しの後から、柊と微妙な距離ができてしまった。それをなんともできていなかった。
 一見すると前と同じような二人だったが、柊はどこかで僕と一定の線を引いているように見えた。それがなんか、もどかしかった。

 それでも文化祭の準備は始まるし、柊はバンドの練習に一生懸命になった。それもそのはずだ!今年は柊のバンド『ピンキーソーイング』は一般公開のある一日目だけ、単独ライブ開催が決まったのだ!
 それも影響してか、僕らのコミュニケーションは極端に減った。

 謝りたかった。あの日のこと、柊に謝りたかった。本当はずっと、謝りたかった。でも、できなかった。なんか怖かった。柊に、真正面からぶつかるのが、怖かった。

 そんな気持ちを抱えたまま、進む文化祭の準備。僕らは屋台の看板や、お店の装飾、呼び込みのための看板などを作った。綿あめ屋だから、フワフワ可愛らしいイラストを描いて、それにみんなで色を付けていく。そこに柊の姿は殆どなかった。それがとても、寂しかった。

「折角だからこのフワフワの絵のところ、本当の綿、貼っちゃう?」

 ある子の思い付きで、みんな盛り上がる!そして、綿を買い出しに行って、みんなでフワフワの綿あめを表現する!

「うん!美味しそうだね!」

 僕が笑うと、みんなも笑った。

 そんな高校生活最後の文化祭も、段々と近付いてきた。

 そんなある日、柊が僕に、何かを渡して言った。

「これ、文化祭の『ピンキーソーイング』の単独ライブのチケット!お前、絶対来い!お前に⋯プレゼントが、あるから⋯!約束!」

 僕はそれに笑って、兎に角笑って、受け取ると、お礼を言って、柊の小指に自分の小指を絡めた。

「ありがとう、柊!絶対に行くね!約束!楽しみだな、プレゼント!」

 柊はそれだけ渡すと、またバンドの練習に戻って行った。
 僕はそのチケットを大切に胸に抱くと、ファイルの間に挟んでカバンにしまった。

 それからも楽しく僕らは綿あめ屋の屋台の準備をし、業者から借りた綿あめ機が届くと、わたあめ作りの練習もした!これが結構コツがいって難しい。僕らはコツを掴むまで何度も練習し、綺麗に丸い綿あめが作れるように頑張った。

 そして迎えた文化祭当日、僕らは今年もクラスごとにデザインしたポロシャツに着替えた!今年の僕らのクラスポロシャツは、淡い水色に、淡いピンクの綿あめがプリントされた、とっても可愛らしいデザインだった!それをみんな着て、体育館に向かうと、みんな校長先生の開会の言葉を聞いて、いよいよ今年の高校生活最後の文化祭の幕が上がった!

 賑やかな声が、学校中に響き渡る。僕らも宣伝の看板を持って、綿あめ屋の客引きをした。

 そんな僕と柊は、午前が当番だった。
 柊は主に注文を聞いたり、雑務担当だった。僕は一生懸命に綿あめを作る係だった。だから、当日もそんなに多くは喋らなかった。
 でも柊と同じ空間にいられるだけで楽しくて、幸せだった。

 綿あめ屋には、小さな子供が結構たくさん来た。その子一人一人にも、柊は楽しそうに話しかけていた。それがキラキラしていて、なんか良かった。

 ねぇ、柊、これが終わったらさ、僕ちゃんと謝るね。ごめんなさい、するね⋯だから、許してね、柊?

 そう思いながら、僕は綿あめを作って作って、作り続けた。

 そして、いつの間にか午前の部は終わり、午後の部、柊は『ピンキーソーイング』の単独ライブへ走って行った。
 僕も『ピンキーソーイング』のライブチケットを握りしめて、ライブの行われる視聴覚室に走った。
 そこにはチケットを手に入れられた人も、そうでない人も、たくさんの人で溢れていた。
 チケット確認の係の子が、叫んでいた!

「『ピンキーソーイング』ライブチケット、ここで拝見してます!」

 僕はそこに向かって、チケットを出した!すると係の子はそのチケットに定規を当てて、綺麗にもぎると、半券を僕に返してくれた。

 僕は会場に入ると、もう結構人がいる中、できるだけ前の方につめた。もう、ステージが真ん前位の所辺りまでつめた!

 時間が迫って来ると、どんどんお客さんが増えて、やっぱりチケット制でも視聴覚室では入り切らなくて、人はやや外に溢れた。

 そんな中、柊達『ピンキーソーイング』が姿を現した!この様子は放送部がしっかりカセットテープに録音していると聞いた。本当に

「凄い人気だな!」

 と、僕は改めて感心した!
 そんな中、柊はマイクに入らない声で、ステージ真下の僕に言った。

「一曲目、お前に、蓮にやる!」

 って
 たくさんの女子の悲鳴の中、柊がギターを弾き出す。その曲は、失恋の曲だった。

「さようなら、指切りしよう?いつまでも変わらないって?この日のままの君で永遠に⋯」

 それに僕は、唖然とした。

 なんで、なんで柊?なんで、僕達付き合ってるのに、別れの歌を僕に贈るの?

 その歌は、とても美しい歌だった。でも、僕は悲しかった。別れの歌を贈られたことが、とても悲しかった。
 柊がその歌を最後まで歌い終えると、その歌のタイトルを言った。

「『ピンキーソーイング』のオリジナル曲で『指切り』でした!ありがとう!」

 それにたくさんの拍手と歓声と悲鳴が沸き起こる。
 でも僕は、金縛りにあったように、動くことも、喋ることもできなかった。

 ねぇ、柊、柊はそんなに僕のこと、怒ってるの?僕らもう、おしまいなの?

 それに柊は何も答えをくれはしなかった。
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