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お別れ
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どうも。夜も遅いわね。エーレインよ。
後始末がようやく終わった私は3姉妹を連れて城のバルコニーに行ったわ。
綺麗な星空。地上で何があっても空は変わらないわね。
「エーレイン様」
「あら、名前で呼ぶのは初めてね」
「も、申し訳ありません!」
ヒースリールは土下座したわ。妹たちも続いて。
そんなことで怒ったりしないのに。女神には大きな器があるのよ。
え?風呂の鼠?何の事かしら。
「どうして急に名前で呼んだの?」
「その……一度だけでもお名前をお呼びしたく……もうお会いできない気がしたので……」
「結構鋭いのね」
そうよ。後始末が終わったから私はようやく自由の身。
あなた達とはこれにてお別れよ。何か忘れてる気がするけど。
「今日会ったばかりなのにいろんなことがあったわねー」
「はい。本当にいろんなことが……今も夢を見ているようです」
彼女は今度は土下座じゃなくて片膝をついて頭を深く下げた。ベルミールとエリーゼも。
「エーレイン様、度重なる御恩に感謝いたします。この事は未来永劫忘れはしません」
「ありがとうございました!」
「お、お元気で!」
美人の3姉妹が並んでると絵になるわね。
星の下で礼を捧ぐ少女たち、みたいな。
「一応言うけど、貴女たちの能力を取り上げたりしないわ。残りの魔法書を全部読んだら私くらい万能になれるかもね」
「そ、そうなのですか?」
「ええ。好きに生きなさい」
彼女は喜ぶかと思ったけど、無言。
重圧を感じてるのね。
「そんなに責任感があると損するわよ。世界なんて適当にやっても回るんだから」
「でも、エーレイン様も責任感がお強い御方です」
「えー」
いやいやいや。
ないないない。
この子は何を見てきたのかしら。
「ふふふ、じゃね」
私はそれを最後に羽を広げ、星空に向かって飛び去ろうとした。
そこで邪魔が入ったわ。
「うおおおおお!俺様を置いていくなー!」
赤い竜が私の前に立ちはだかったわ。
そういえばこんな奴がいたわね。
吹っ飛ばすわよ?そう思って拳を構えるとすぐに首をガードしたわ。
「ひいいいっ!首は!首だけはやめろー!もう取れるのは嫌だ!」
「あんたは連れて行かないわよ。目立つにも程があるし、役に立たないし」
「そんなことはない!色々と役に立つ!」
「なんで私について行きたいの?」
一度は私に殺されたでしょ。
これが復讐を狙ってるなら納得するけどそんな風でもないし。
「お前は俺より強い奴だ。俺を殺せるやつ奴など初めて会った。すごく興味がある」
ひょっとして遊び相手がほしいの?
じゃあ、あげるわ。
「そこのヒースリールも強いわよ」
「え?」
「妹たちもすぐ魔法書を読んで強くなるわ」
「え?」
「え?」
3人とも青ざめてる。
ごめんね。押し付けさせてもらうわ。
そういえば少し前に元盗賊も押し付けたわね。私ってば罪な女神。
「頼もしい護衛と思えばいいでしょ?」
「お前らも強いのか。知らなかった……」
3人に顔を近づけて匂いや外見を調べ始めてる。
これじゃ犬ね。
私はその隙に空へ飛び立って手を振ったわ。じゃあね~。
と、いうことで神殿に帰ってきたわ。
ええ。誰も使ってない空き部屋。
2回目だけど、ここを今夜の借り宿とするー!
知覚阻害の術もかけたし、ようやくごろごろできるわ。
さあ、ベッドに転がろうと思ったらドアをノックする音が聞こえた。
空き部屋なのになんでだろう。
無視してたら声が聞こえてきたわ。
「エーレイン様、モルゲン枢機卿と申します。どうかお開け下さい」
え?知覚阻害かけてるのになんでわかるの?
神術でドアの向こうを見るとなんと靄がかかっててよく見えない。
神術妨害?それってつまり私と同じ同じ神クラスってことよ。
私以外にもいたんだ。
一応、戦闘系の神術をいつでも使えるようにしてドアを焼失させると知らない男が入ってきたわ。
「お初にお目にかかります。先に申しますが私は神々によって創られた実験体です。個体名はシグニドです」
「ああ、廃棄される前ね」
「はい。この世界で残った実験体は私だけです」
「ふーん」
「率直に申しますが、この世界から出て行っていただけませんか?」
ニコニコしてるけど敵意の感情が漏れてるわよ。
「なんで?」
「廃棄された世界にもそれなりの秩序が必要です。貴女様は世界を歪ませてしまいます」
「歪みも世界の一つでしょう」
「拒否されますか?でしたらこの世界をすべて焼却いたします」
なんで脅迫者ってたいていニコニコしてるのかしら。
その方が迫力が出るの?
「でもそれって……」
「元も子もない。はい。ですが、それ以外に私がエーレイン様をお止めする方法がありません」
「ひょっとして……廃棄された後に文明が崩壊したのってあなたの仕業?」
「はい。歪んでいましたので一度綺麗にしました」
世界の破壊者が宗教組織にいるってのはありがちね。
このままだと気分次第でまた世界を焼くのは確実。口に出さないけど、ヒースリール達も力を持ちすぎたから処分する気でしょう?
「うーん、じゃあ取引しましょう」
「はい?」
「あなたの魂をむこう側に連れて行ってあげる。だから何もしないで」
「おお……」
体がプルプル震えているわよ。
「本当ですか?」
「真偽看破でわかるでしょう?」
「失礼いたしました。廃棄世界では何をしても魂が同じ世界を転生してしまいます。よかった。やっとお母様に会えます」
「ええ。今までよく頑張ったわ。準備はいい?」
「はい。いつでも」
私は神術で彼の体を崩壊させてゆく。
あれ?この体って魔石生命体ってやつ?
そうか。実験体なんていうけど完成品ね。
遊び終わったから世界ごと廃棄された。玩具の宿命かぁ。
世界を焼き尽くしたのが八つ当たりだったら叱れないわね。
「逝ってらしゃい、シグニド」
私は全てを消滅させた後で窓から手を振ったわ。
単なるお芝居。罪悪感を紛らわすため。
あなたの魂を魂魄転生局に送る。
本当に送るつもりだった。あなたに魂があれば。
「さあ、気持ちを切り替えて……ごろ寝するわよー!」
しんみりすると思った?残念!
生きてりゃいろいろあるのが当たり前よ!
社畜女神エーレインの有休1日目、終了~~~!!
後始末がようやく終わった私は3姉妹を連れて城のバルコニーに行ったわ。
綺麗な星空。地上で何があっても空は変わらないわね。
「エーレイン様」
「あら、名前で呼ぶのは初めてね」
「も、申し訳ありません!」
ヒースリールは土下座したわ。妹たちも続いて。
そんなことで怒ったりしないのに。女神には大きな器があるのよ。
え?風呂の鼠?何の事かしら。
「どうして急に名前で呼んだの?」
「その……一度だけでもお名前をお呼びしたく……もうお会いできない気がしたので……」
「結構鋭いのね」
そうよ。後始末が終わったから私はようやく自由の身。
あなた達とはこれにてお別れよ。何か忘れてる気がするけど。
「今日会ったばかりなのにいろんなことがあったわねー」
「はい。本当にいろんなことが……今も夢を見ているようです」
彼女は今度は土下座じゃなくて片膝をついて頭を深く下げた。ベルミールとエリーゼも。
「エーレイン様、度重なる御恩に感謝いたします。この事は未来永劫忘れはしません」
「ありがとうございました!」
「お、お元気で!」
美人の3姉妹が並んでると絵になるわね。
星の下で礼を捧ぐ少女たち、みたいな。
「一応言うけど、貴女たちの能力を取り上げたりしないわ。残りの魔法書を全部読んだら私くらい万能になれるかもね」
「そ、そうなのですか?」
「ええ。好きに生きなさい」
彼女は喜ぶかと思ったけど、無言。
重圧を感じてるのね。
「そんなに責任感があると損するわよ。世界なんて適当にやっても回るんだから」
「でも、エーレイン様も責任感がお強い御方です」
「えー」
いやいやいや。
ないないない。
この子は何を見てきたのかしら。
「ふふふ、じゃね」
私はそれを最後に羽を広げ、星空に向かって飛び去ろうとした。
そこで邪魔が入ったわ。
「うおおおおお!俺様を置いていくなー!」
赤い竜が私の前に立ちはだかったわ。
そういえばこんな奴がいたわね。
吹っ飛ばすわよ?そう思って拳を構えるとすぐに首をガードしたわ。
「ひいいいっ!首は!首だけはやめろー!もう取れるのは嫌だ!」
「あんたは連れて行かないわよ。目立つにも程があるし、役に立たないし」
「そんなことはない!色々と役に立つ!」
「なんで私について行きたいの?」
一度は私に殺されたでしょ。
これが復讐を狙ってるなら納得するけどそんな風でもないし。
「お前は俺より強い奴だ。俺を殺せるやつ奴など初めて会った。すごく興味がある」
ひょっとして遊び相手がほしいの?
じゃあ、あげるわ。
「そこのヒースリールも強いわよ」
「え?」
「妹たちもすぐ魔法書を読んで強くなるわ」
「え?」
「え?」
3人とも青ざめてる。
ごめんね。押し付けさせてもらうわ。
そういえば少し前に元盗賊も押し付けたわね。私ってば罪な女神。
「頼もしい護衛と思えばいいでしょ?」
「お前らも強いのか。知らなかった……」
3人に顔を近づけて匂いや外見を調べ始めてる。
これじゃ犬ね。
私はその隙に空へ飛び立って手を振ったわ。じゃあね~。
と、いうことで神殿に帰ってきたわ。
ええ。誰も使ってない空き部屋。
2回目だけど、ここを今夜の借り宿とするー!
知覚阻害の術もかけたし、ようやくごろごろできるわ。
さあ、ベッドに転がろうと思ったらドアをノックする音が聞こえた。
空き部屋なのになんでだろう。
無視してたら声が聞こえてきたわ。
「エーレイン様、モルゲン枢機卿と申します。どうかお開け下さい」
え?知覚阻害かけてるのになんでわかるの?
神術でドアの向こうを見るとなんと靄がかかっててよく見えない。
神術妨害?それってつまり私と同じ同じ神クラスってことよ。
私以外にもいたんだ。
一応、戦闘系の神術をいつでも使えるようにしてドアを焼失させると知らない男が入ってきたわ。
「お初にお目にかかります。先に申しますが私は神々によって創られた実験体です。個体名はシグニドです」
「ああ、廃棄される前ね」
「はい。この世界で残った実験体は私だけです」
「ふーん」
「率直に申しますが、この世界から出て行っていただけませんか?」
ニコニコしてるけど敵意の感情が漏れてるわよ。
「なんで?」
「廃棄された世界にもそれなりの秩序が必要です。貴女様は世界を歪ませてしまいます」
「歪みも世界の一つでしょう」
「拒否されますか?でしたらこの世界をすべて焼却いたします」
なんで脅迫者ってたいていニコニコしてるのかしら。
その方が迫力が出るの?
「でもそれって……」
「元も子もない。はい。ですが、それ以外に私がエーレイン様をお止めする方法がありません」
「ひょっとして……廃棄された後に文明が崩壊したのってあなたの仕業?」
「はい。歪んでいましたので一度綺麗にしました」
世界の破壊者が宗教組織にいるってのはありがちね。
このままだと気分次第でまた世界を焼くのは確実。口に出さないけど、ヒースリール達も力を持ちすぎたから処分する気でしょう?
「うーん、じゃあ取引しましょう」
「はい?」
「あなたの魂をむこう側に連れて行ってあげる。だから何もしないで」
「おお……」
体がプルプル震えているわよ。
「本当ですか?」
「真偽看破でわかるでしょう?」
「失礼いたしました。廃棄世界では何をしても魂が同じ世界を転生してしまいます。よかった。やっとお母様に会えます」
「ええ。今までよく頑張ったわ。準備はいい?」
「はい。いつでも」
私は神術で彼の体を崩壊させてゆく。
あれ?この体って魔石生命体ってやつ?
そうか。実験体なんていうけど完成品ね。
遊び終わったから世界ごと廃棄された。玩具の宿命かぁ。
世界を焼き尽くしたのが八つ当たりだったら叱れないわね。
「逝ってらしゃい、シグニド」
私は全てを消滅させた後で窓から手を振ったわ。
単なるお芝居。罪悪感を紛らわすため。
あなたの魂を魂魄転生局に送る。
本当に送るつもりだった。あなたに魂があれば。
「さあ、気持ちを切り替えて……ごろ寝するわよー!」
しんみりすると思った?残念!
生きてりゃいろいろあるのが当たり前よ!
社畜女神エーレインの有休1日目、終了~~~!!
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