1億日連勤の転生女神、有休を取る

M.M.M

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空の旅

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 どうしてこんな事になったんだろう。
 私、ルェードリン・ヒュドルは体を焼かれるような発熱と眩暈に耐えながら思った。ヒュドル王国では遺跡から溢れた凶悪な魔物が村々を襲い、今も大勢の死者を出している。討伐部隊を向かわせてもよほど知能が高いのか感知能力が高いのか逃げてしまう。相手は一匹。数ではなく質の高い兵士か魔術師が求められていた。
 ゆえに私は陛下の末娘として近隣の国に助力を求めた。だけど、どこも貴重な戦力を見返りの少ない弱小国に出すことを渋る。私がいくら頭を下げようと具体的な見返りがなければ英雄級の騎士や魔術師は動かせないと言われ、自分の無力さに情けなくなった。
 そんな時にルーク共和国でこんな話を聞いた。最近、王国からロザリア共和国となったところには女神と竜に守られた光機卿という女性がいると。見返りを求める国家と違い、神殿ならば援助の手を差し伸べてくれるかもしれないと役人たちは口々に言う。
 私は藁にもすがる思いで護衛を連れて共和国へ向かった。けれど、神殿を訪ねた際にユステナル連邦という大国が横柄な態度で横入りをしてきた。

「大国ともあろうものが順番も守れないのですか?」

 私は正論を言ったつもりだった。だが、彼らは剣を抜き、斬り合いになった。どうして?私が悪かったの?私の護衛をしてくれる兵たちは必死に戦ったが、相手は強力な魔法具を持っていて私も怪我をした。浅かったけれど毒が塗っていたらしく私たちは全員体が動かなくなり、神殿の神官たちが魔法薬をかけてくれたけど効いていない。
 体がどんどん重くなっていく感覚で私は死を予感した。
 空は雲一つなくて綺麗なのに怖くて涙が出た。泣くしかできない自分が泣けない。でも、怖い。このまま惨めに死んでいくなんて嫌。お父様とお母様に会えなくなるなんて嫌。誰か。誰でもいいから助けてください。
 そう祈っていた時、私の真上にあった青空を巨大な赤いものが遮った。
 それが巨大な赤竜だと気づくのに少し時間がかかった。燃えるような瞳が私を見つめている。

「こいつらを連れて行けばいいのか?」

 竜の言葉が私の頭の中に伝わった。
 どこへ連れて行くの?
 そう聞きたかったけれど、口が動かない。
 そういえば光機卿は竜に守られているのだっけ。その話を思い出す私の体を薄い光の膜のようなものが覆った。私だけじゃなく護衛の兵たちごと光の球体が覆ったらしく、竜が大きく口を開けた。食べないでと思ったけれど、竜は私たちを包む球体を咥えて空へ舞い上がった。
 ロザリア共和国の首都があっという間に小さくなる。このまま天国へ連れて行かれるのかも。
 そんな事を思っていた私に悲鳴のような声が聞こえた。

「グラブレア様ー!もう少しゆっくり飛んでくださいますか!?でないと私たちが振り落とされます!」
「む?そうなのか?飛べない生き物は面倒だな」
「いえ!飛べるのですが、グラブレア様の速度についていけません!」
「お姉さま!こんなに高い場所へ来たのは生まれて初めてです!」
「お姉さま!大地があんなに遠くにあります!あっ、下に鳥の群れが飛んでいますよ!」

 3人の女性の声。
 竜の背中に乗っているらしい。竜に乗れる人がいるなんて伝説や御伽噺でも聞いたことがない。この人たちのいずれかがヒースリール光機卿なのだろうか。でも、どうして私たちを遠くて連れて行くのだろう。神殿の中に入れてくれないの。わからない。
 わからないことだらけのまま私たちは空を旅した。

「あっ、そこで下りてくださいますか!」

 女性の声が指示を出し、竜が降下してゆく。
 よかった。天国に連れて行かれるわけではないらしい。
 私たちは草の上に置かれて光の球体が消えた。私の視界には竜の背中から下りる3人の女の子が見えた。顔が良く似ている。きっと姉妹なのだろう。

「さて、こいつらをどうするんだ?俺様が治癒魔法を使ってみてもいいが?」
「え!?グラブレア様も使えるのですか!?」

 最年長の女性が驚いた。
 この竜のことをよく知らないらしい。

「その程度も使えないと思っていたのか?」
「い、いいえ!そういうわけでは……」
「ふんっ!ちょっと見ていろ!」

 竜は私たちに大きな顔を近づけた。
 毒物の治療。その多くは魔法薬が使われるけど、毒の種類や量によってはどんな上級魔法薬でも効かない場合がある。私たちが受けたのは確実に猛毒。どうしてそんなものが使われたのかわからないけど、私は竜の治療に希望を託すしかなかった。

「どれどれ……魔法や寄生した生物はいないな……ならば体内の邪魔者を追い出すだけでよいのだ。肉が腐っているわけでも体力がなくなったわけでもないならこうやって……」
「あ、私も触ってよいですか?解毒の魔法は初めてなので」
「構わんぞ」
「ありがとうございます。ベルミール、エリーゼ、貴女たちも勉強させてもらいなさい」
「はい!」
「勉強します!お姉さま!」

 3人と竜が私たちの体に触れている。
 実験体になった気分だったけれど、私の中から何かが取り除かれるのが分かった。
 しばらく経つと熱が引いていき、体を起こせるようになった。竜と女の子たちは私の護衛兵たちも治療してくれている。私は跪いて祈ることしかできなかった。
 でも、自分の無力さに打ちのめされている場合じゃない。この御恩をどうやって返せばいいのか考えないと。私たちが差し出せるのは少額の金銭と何の役に立つかもわからない魔法書。それだけで御恩を返し、祖国の救援を求めるなんて傲慢なお願いができるの?
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