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第16話 師匠操言士と親の過去
5.理解(上)
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(ただ一人、闇を愛してくれた存在。それが嬉しくて、四分力を与えた?)
アーサーの言うように、紀更たち人間が思う以上に神様が人間らしい存在なら、そう考えるかもしれない。自分を見て愛して受け入れてくれたただ一人の人間に、嬉しさのあまり自分の力を与えるかもしれない。
(闇の四分力を得て、初代操言士は操言士になった。闇の四分力……それは操言の力?)
その時紀更は、これまで気にしていなかった疑問に気が付いた。
(神様の四分力と現代の操言士が持っている〝操言の力〟は、同じものなの?)
操言の力を持って生まれてくる者――それが操言士だ。操言士は己の魂に操言の力を宿している。表現は四分力と同じだが、果たして「四分力」と「操言の力」を完全に同一とみなしてもいいのだろうか。
(いいえ、違う。だって、四分力を与えられたのは限られた人だけのはず。でも現代では、操言の力を持つ操言士が多くいる……。待って、初代操言士と現代の操言士は、もしかして同じ存在じゃないの!?)
光か闇の四分力を与えられた限られた人間の中で「操言士」と呼ばれたのは、初代操言士とフォスニアの初代女王ザンドラの二名だけだ。それ以外の四分力を授かった始祖たちは「操言士」ではない。
(四分力と操言の力……そのふたつが別物なら、何がどう違うの)
闇の四分力を与えられた、初代操言士。
闇の四分力を与えられ、後天的に操言士となった、初代操言士の娘ザンドラ。
そして、生まれつき「操言の力」を魂に宿している、現代の操言士たち。
(何かが少しずつ違う。操言の力って何なの? 神様が与えてくれた力ではないの?)
――怪魔は普通の獣じゃねぇからな。謎の存在には謎の力で対抗するしかねぇよな。
――謎の力、って……操言の力のことですか?
――ああ、そうだ。なんで言葉を言うだけであれこれできるんだ? どうなってんだよ。意味不明だよ。謎だろ。怪魔と同じくらい謎だろ。
水の村レイトの噴水広場でユルゲンと会話して、笑ってしまった場面がよみがえる。
そうだ、「操言の力」は謎の力だ。その力はどうやって生まれたのか、なぜその力を人間は生まれ持ってくることができるのか。
(レバ王が神様から力を授かり、同時に初代操言士も力を授かった。だから操言の力は神様から与えられたもの……いつの間にかそう思っていた)
四分力と操言の力が同じものだと誤解していた? いや、そう思い込むようにミスリードされていた?
――全員が真実を言っていると信じ込んでいる。いや、疑ったことがないのか。言葉には裏も表もある。
アーサーが言いたかったのは、このことだろうか。
伝承やおとぎ話。操言院の授業、あるいは王黎の教えやステファニーの話。
うまく継承できなかった歴史――事実。
時を重ねるごとに少しずつ形を変えてしまった真実は、いったいなんだ?
(私は後天的に操言士になった。その言葉を表面的にとらえるなら、初代操言士やザンドラ女王も〝後天的に操言士になった人〟で私と同じと言える。でも、私は〝操言の力〟を宿したけど四分力は持っていない。対してその二人は、四分力を授かりはしたけど〝操言の力〟を宿したかどうかは実は定かじゃない)
ラルーカもステファニーもカギソも、初代操言士とザンドラは後天的に操言士になったと言った。だから紀更と同じだと。けれど、厳密には違う。その二人は闇の四分力を授かったのであって、操言の力を宿したわけではない。操言士と呼ばれはしたが、紀更と完全に同じではないのだ。
(初代操言士とザンドラ女王が、もしも操言の力を宿していたわけじゃないなら)
なぜ二人は操言士と呼ばれたのだろう。
(魂に宿る四分力。そして、同じく魂に宿るけどきっと別物である操言の力)
ヤオディミスは想像力を用いて魂を作った。
生物は知恵を用いて身体を作った。
カオディリヒスは具現力を用いて魂を身体に入れた。
魂を作ること。魂を肉の器に入れること。神様の役割分担。二神が協力することで、この世界に生物が誕生する。
(闇の四分力は想像力。光の四分力は具現力)
一部の生物の魂は大きく、これを身体にとどめようとする力が生まれた。
その力、心と呼ぶ。
ヤオディミスとカオディリヒスは心を知らぬ。
心を持つ生物は人間、ヒューマとメヒュラなり。
心を持つ唯一の生物、人間。
大きな魂を持つ自分たち人間が手にした、四分力ではない力。
(操言の力……それは神様の力じゃなくて、人自身の力?)
――私たち人間の魂はほかの生物に与えられる魂よりも大きいから。ゆえに、その魂を器にとどめようとする力が生まれます。フォスニアではよく軛という表現がされますが、魂を器にとどめておくその力のことを心と呼ぶのです。
ラルーカはそう語った。『空白の物語Ⅰ』の内容と同じだ。人間が持つ心は、神様が作ったものではない。人間が自ら作り出したものだ。人間には、神様の想定していないものを生み出す力があるのだ。
(言葉を紡いで万物に干渉する力……操言の力。神様から与えられたものだと思っていたけど、本当は違う)
現代の操言士たちは、自分たち人間自身が生み出した自らの力を用いている。
では闇の四分力、つまりヤオディミスの持つ「想像力」という力を手に入れた初代操言士は、その力をどう扱ったのだろう。
(ヤオディミスとカオディリヒス……想像力と具現力)
この世界を創るためにも、あらゆる生物を作るためにも、二神の力が必要だ。光と闇は、ふたつがそろって初めてひとつの事を成す。そう考えると、初代言従士が光の四分力を授けられたのも頷ける。
初代操言士と初代言従士は、それぞれが持つ光と闇の四分力を使って人々の生活を豊かにしていった。言葉とイメージが互いを補い合うように、ふたつでひとつ――二人で一緒に、神様の力を正しく使ったのだ。
(その二人を見て、神様は何を思ったのかしら。そういう二人が増えてほしくて、レバ王とダニエラ女王にも力を授けた?)
その二人に、第二の操言士と言従士になってほしかったのだろうか。
(サーディア王家とフォスニア王家に四分力を授けたのも、そういう理由? でも、フォスニアのザンドラ女王は初代操言士の娘だから、少し時間が経ってる)
それに、レバとダニエラは最終的には別々の国を作り、それぞれの地で亡くなった。生涯共にいられたわけではなかった。与えられた四分力も、光と闇の組み合わせではなく、光と光だ。
(やっぱり、始祖の時代に何かがあったのね。簡単には説明できない何かが)
それが、今のこの時代にどう関係してくるのだろう。
そして、ここまで考えても、やはり揺るがない思いがある。
(ピラーオルド……彼らが持っている闇の四分力は、彼らが持つべきものじゃない。不当に奪ったものよ。取り返さなきゃ)
確かにヤオディミスは、初代操言士とザンドラに闇の四分力を授けたのだろう。けれど、その二人はもういない。ならば、闇の四分力はヤオディミスに返すべきだ。
(人は人の力、操言の力を持っている。神様の力は、もうなくていいの)
人間が神様の力を持っているから。身の丈に合わない強大な力を持っているから。だからレプティトゥイールスの術だとか、怪魔の生成だとか、恐ろしいことをピラーオルドが実行するのだ。
(そんなの、もう終わらせる! 人は人の領分で生きていくべきよ)
ああ、もしかしたら――。
光の神様カオディリヒスは天に昇って太陽になったと伝わっている。天に昇ったということは、それまでカオディリヒスは地上にいたのだろう。だが、四分力をめぐって何かが起きて、人間の傍にいてはいけないと思ったのかもしれない。神様と人間の領分をこれ以上重ねてはいけない。線引きをきっちりしなければいけない。そう思って、人の手の届かない天へと昇ったのだろう。
(カオディリヒス、その判断は正しいかもしれません)
想像力と具現力という、神様の力。無から何かを想像しそれを具現化する、この世界を創り出した力。もしもすべての四分力を人が手にしたら、きっとピラーオルド以上の恐ろしい存在になってしまうかもしれない。人は自分たちが考える以上に、とても残酷なことをいとも簡単にやってのけてしまうことがあるから。
(闇神様が持っている三つの闇の魂水晶を、全部取り返す!)
そうすればピラーオルドは、怪魔の生成もレプティトゥイールスも何もできなくなる。カオディリヒスと違ってどこにいるのか不明だが、取り返した四分力はヤオディミスに返したい。
(それが、ピラーオルドをなんとかするということだわ)
始祖の時代に起きたことも気になるが、現代を生きる紀更がしたいことは、ピラーオルドを止めることだ。彼らの力の源である闇の四分力の魂水晶を奪い、彼らの活動を停止させる。それが、サーディアのピラーパレスに赴いて成し遂げたい目的だ。
(王黎師匠に言わなきゃ。きっと賛成してくれるはず)
この始海の塔は便利な場所だ。命の危険はないし食事は楽に出てくるし、厠も浴室も清潔で、洗濯なんてしなくても、汚れの落ちた服がいつの間にか寝台の上に畳まれている。ユルゲンとの甘く熱い時間を過ごせたのも、この塔のおかげと言えるだろう。
(でも、ここはずっといてもいい場所じゃない。私は操言士なんだから、国のために、人々の平和のために……そのために、操言の力を尽くさなきゃ)
そうでないと、亡くなった弟の俊に、あるいは言従士として付き従ってくれている紅雷や、故郷の里を出てまで助けに来てくれたマークに申し訳が立たない。
(私は、操言士としてのさだめに従う。その責務をしっかり果たすわ)
その一心で、師匠の王黎と修行の旅を続けてきたのだ。
アーサーたちに攫われて怖い思いをした。カギソに心をのぞかれて、とても不快だった。気持ち悪かった。だが、もう大丈夫だ。この塔に足止めを食らって、休むだけ休んだ。前に進むためのエネルギーが、心身ともに補充された。
(だから始海の塔、そろそろ私たちを出して。もう行かなきゃ)
心の中で塔の主に呼びかける。
だが、残念ながらのその日も塔の外に出る扉は開かなかった。
◆◇◆◇◆
アーサーの言うように、紀更たち人間が思う以上に神様が人間らしい存在なら、そう考えるかもしれない。自分を見て愛して受け入れてくれたただ一人の人間に、嬉しさのあまり自分の力を与えるかもしれない。
(闇の四分力を得て、初代操言士は操言士になった。闇の四分力……それは操言の力?)
その時紀更は、これまで気にしていなかった疑問に気が付いた。
(神様の四分力と現代の操言士が持っている〝操言の力〟は、同じものなの?)
操言の力を持って生まれてくる者――それが操言士だ。操言士は己の魂に操言の力を宿している。表現は四分力と同じだが、果たして「四分力」と「操言の力」を完全に同一とみなしてもいいのだろうか。
(いいえ、違う。だって、四分力を与えられたのは限られた人だけのはず。でも現代では、操言の力を持つ操言士が多くいる……。待って、初代操言士と現代の操言士は、もしかして同じ存在じゃないの!?)
光か闇の四分力を与えられた限られた人間の中で「操言士」と呼ばれたのは、初代操言士とフォスニアの初代女王ザンドラの二名だけだ。それ以外の四分力を授かった始祖たちは「操言士」ではない。
(四分力と操言の力……そのふたつが別物なら、何がどう違うの)
闇の四分力を与えられた、初代操言士。
闇の四分力を与えられ、後天的に操言士となった、初代操言士の娘ザンドラ。
そして、生まれつき「操言の力」を魂に宿している、現代の操言士たち。
(何かが少しずつ違う。操言の力って何なの? 神様が与えてくれた力ではないの?)
――怪魔は普通の獣じゃねぇからな。謎の存在には謎の力で対抗するしかねぇよな。
――謎の力、って……操言の力のことですか?
――ああ、そうだ。なんで言葉を言うだけであれこれできるんだ? どうなってんだよ。意味不明だよ。謎だろ。怪魔と同じくらい謎だろ。
水の村レイトの噴水広場でユルゲンと会話して、笑ってしまった場面がよみがえる。
そうだ、「操言の力」は謎の力だ。その力はどうやって生まれたのか、なぜその力を人間は生まれ持ってくることができるのか。
(レバ王が神様から力を授かり、同時に初代操言士も力を授かった。だから操言の力は神様から与えられたもの……いつの間にかそう思っていた)
四分力と操言の力が同じものだと誤解していた? いや、そう思い込むようにミスリードされていた?
――全員が真実を言っていると信じ込んでいる。いや、疑ったことがないのか。言葉には裏も表もある。
アーサーが言いたかったのは、このことだろうか。
伝承やおとぎ話。操言院の授業、あるいは王黎の教えやステファニーの話。
うまく継承できなかった歴史――事実。
時を重ねるごとに少しずつ形を変えてしまった真実は、いったいなんだ?
(私は後天的に操言士になった。その言葉を表面的にとらえるなら、初代操言士やザンドラ女王も〝後天的に操言士になった人〟で私と同じと言える。でも、私は〝操言の力〟を宿したけど四分力は持っていない。対してその二人は、四分力を授かりはしたけど〝操言の力〟を宿したかどうかは実は定かじゃない)
ラルーカもステファニーもカギソも、初代操言士とザンドラは後天的に操言士になったと言った。だから紀更と同じだと。けれど、厳密には違う。その二人は闇の四分力を授かったのであって、操言の力を宿したわけではない。操言士と呼ばれはしたが、紀更と完全に同じではないのだ。
(初代操言士とザンドラ女王が、もしも操言の力を宿していたわけじゃないなら)
なぜ二人は操言士と呼ばれたのだろう。
(魂に宿る四分力。そして、同じく魂に宿るけどきっと別物である操言の力)
ヤオディミスは想像力を用いて魂を作った。
生物は知恵を用いて身体を作った。
カオディリヒスは具現力を用いて魂を身体に入れた。
魂を作ること。魂を肉の器に入れること。神様の役割分担。二神が協力することで、この世界に生物が誕生する。
(闇の四分力は想像力。光の四分力は具現力)
一部の生物の魂は大きく、これを身体にとどめようとする力が生まれた。
その力、心と呼ぶ。
ヤオディミスとカオディリヒスは心を知らぬ。
心を持つ生物は人間、ヒューマとメヒュラなり。
心を持つ唯一の生物、人間。
大きな魂を持つ自分たち人間が手にした、四分力ではない力。
(操言の力……それは神様の力じゃなくて、人自身の力?)
――私たち人間の魂はほかの生物に与えられる魂よりも大きいから。ゆえに、その魂を器にとどめようとする力が生まれます。フォスニアではよく軛という表現がされますが、魂を器にとどめておくその力のことを心と呼ぶのです。
ラルーカはそう語った。『空白の物語Ⅰ』の内容と同じだ。人間が持つ心は、神様が作ったものではない。人間が自ら作り出したものだ。人間には、神様の想定していないものを生み出す力があるのだ。
(言葉を紡いで万物に干渉する力……操言の力。神様から与えられたものだと思っていたけど、本当は違う)
現代の操言士たちは、自分たち人間自身が生み出した自らの力を用いている。
では闇の四分力、つまりヤオディミスの持つ「想像力」という力を手に入れた初代操言士は、その力をどう扱ったのだろう。
(ヤオディミスとカオディリヒス……想像力と具現力)
この世界を創るためにも、あらゆる生物を作るためにも、二神の力が必要だ。光と闇は、ふたつがそろって初めてひとつの事を成す。そう考えると、初代言従士が光の四分力を授けられたのも頷ける。
初代操言士と初代言従士は、それぞれが持つ光と闇の四分力を使って人々の生活を豊かにしていった。言葉とイメージが互いを補い合うように、ふたつでひとつ――二人で一緒に、神様の力を正しく使ったのだ。
(その二人を見て、神様は何を思ったのかしら。そういう二人が増えてほしくて、レバ王とダニエラ女王にも力を授けた?)
その二人に、第二の操言士と言従士になってほしかったのだろうか。
(サーディア王家とフォスニア王家に四分力を授けたのも、そういう理由? でも、フォスニアのザンドラ女王は初代操言士の娘だから、少し時間が経ってる)
それに、レバとダニエラは最終的には別々の国を作り、それぞれの地で亡くなった。生涯共にいられたわけではなかった。与えられた四分力も、光と闇の組み合わせではなく、光と光だ。
(やっぱり、始祖の時代に何かがあったのね。簡単には説明できない何かが)
それが、今のこの時代にどう関係してくるのだろう。
そして、ここまで考えても、やはり揺るがない思いがある。
(ピラーオルド……彼らが持っている闇の四分力は、彼らが持つべきものじゃない。不当に奪ったものよ。取り返さなきゃ)
確かにヤオディミスは、初代操言士とザンドラに闇の四分力を授けたのだろう。けれど、その二人はもういない。ならば、闇の四分力はヤオディミスに返すべきだ。
(人は人の力、操言の力を持っている。神様の力は、もうなくていいの)
人間が神様の力を持っているから。身の丈に合わない強大な力を持っているから。だからレプティトゥイールスの術だとか、怪魔の生成だとか、恐ろしいことをピラーオルドが実行するのだ。
(そんなの、もう終わらせる! 人は人の領分で生きていくべきよ)
ああ、もしかしたら――。
光の神様カオディリヒスは天に昇って太陽になったと伝わっている。天に昇ったということは、それまでカオディリヒスは地上にいたのだろう。だが、四分力をめぐって何かが起きて、人間の傍にいてはいけないと思ったのかもしれない。神様と人間の領分をこれ以上重ねてはいけない。線引きをきっちりしなければいけない。そう思って、人の手の届かない天へと昇ったのだろう。
(カオディリヒス、その判断は正しいかもしれません)
想像力と具現力という、神様の力。無から何かを想像しそれを具現化する、この世界を創り出した力。もしもすべての四分力を人が手にしたら、きっとピラーオルド以上の恐ろしい存在になってしまうかもしれない。人は自分たちが考える以上に、とても残酷なことをいとも簡単にやってのけてしまうことがあるから。
(闇神様が持っている三つの闇の魂水晶を、全部取り返す!)
そうすればピラーオルドは、怪魔の生成もレプティトゥイールスも何もできなくなる。カオディリヒスと違ってどこにいるのか不明だが、取り返した四分力はヤオディミスに返したい。
(それが、ピラーオルドをなんとかするということだわ)
始祖の時代に起きたことも気になるが、現代を生きる紀更がしたいことは、ピラーオルドを止めることだ。彼らの力の源である闇の四分力の魂水晶を奪い、彼らの活動を停止させる。それが、サーディアのピラーパレスに赴いて成し遂げたい目的だ。
(王黎師匠に言わなきゃ。きっと賛成してくれるはず)
この始海の塔は便利な場所だ。命の危険はないし食事は楽に出てくるし、厠も浴室も清潔で、洗濯なんてしなくても、汚れの落ちた服がいつの間にか寝台の上に畳まれている。ユルゲンとの甘く熱い時間を過ごせたのも、この塔のおかげと言えるだろう。
(でも、ここはずっといてもいい場所じゃない。私は操言士なんだから、国のために、人々の平和のために……そのために、操言の力を尽くさなきゃ)
そうでないと、亡くなった弟の俊に、あるいは言従士として付き従ってくれている紅雷や、故郷の里を出てまで助けに来てくれたマークに申し訳が立たない。
(私は、操言士としてのさだめに従う。その責務をしっかり果たすわ)
その一心で、師匠の王黎と修行の旅を続けてきたのだ。
アーサーたちに攫われて怖い思いをした。カギソに心をのぞかれて、とても不快だった。気持ち悪かった。だが、もう大丈夫だ。この塔に足止めを食らって、休むだけ休んだ。前に進むためのエネルギーが、心身ともに補充された。
(だから始海の塔、そろそろ私たちを出して。もう行かなきゃ)
心の中で塔の主に呼びかける。
だが、残念ながらのその日も塔の外に出る扉は開かなかった。
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