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第03話 海の操言士と不思議な塔
2.職人操言士(中)
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「せっかくだから、ヒューくんに職人操言士のところを案内してもらおうか」
支部長室を出て一階に下りるなり、王黎はそう言ってヒューの姿を探し始めた。
「いたいた。ヒューくん」
ヒューは操言士だけが入れる奥の部屋におり、丸眼鏡をかけて何か作業をしていたようだったが、王黎に呼ばれると眼鏡を外し、無愛想な薄茶色の瞳をこちらに向けた。
「弥生ちゃんがヒューくんを頼っていいって言うからお言葉に甘えさせてもらいたいんだけど、いいかな」
「何がしたいんですか」
ヒューは面倒くさそうな表情を浮かべたが、支部長である弥生の名前を出されては拒否できないのか、渋々王黎に用件を尋ねた。
「工房を案内してほしいんだ。弥生ちゃんは皐月も使っていいって言ってくれたから、彼女のところかな。それと、職人操言士について紀更に説明してくれると嬉しいな~」
王黎がのほほんとした笑顔で頼むと、ヒューは返事をすることなく立ち上がり、椅子にかけてあった操言ローブをきっちりと羽織った。
部屋を出たヒューは、王黎ではなく一階の広間にいた紀更に近付いて、不愛想な声でぼそりと呟いた。
「付いてきてください」
「えっ、あ、はい」
突然話しかけられた紀更は驚いたが、ヒューがすたすたと会館を出ていくので、そのうしろを小走りで追った。ユルゲン、最美、王黎も紀更に続いて操言支部会館を後にする。
「操言ブローチの刻印の意味は、見習いでもご存じですよね」
石畳の道を歩きながら、ヒューは紀更に問いかけた。
以前、ルーカスからも同じ質問をされたのを思い出しながら、紀更は答えた。
「操言院の修了試験結果によって与えられるんですよね。えっと……Ⅳをもらえる人は少ないとか」
「刻印は操言の力の種類を表します。操言の力そのものの種類というより、その操言士の力の使い方の分類と言った方が正確かもしれませんが」
「力の使い方の分類?」
「Ⅰは操作、つまり操言の力を使って何かを操作するのが得意ということです。Ⅱは治癒、Ⅲは攻撃を得意とし、Ⅳは特に個性的な操言の力を持つ者に与えられます」
「個性的……じゃあ、王黎師匠は」
「王黎さんの操言の力を詳しくは知りませんが、何か特殊なんでしょうね。Ⅳは特殊タイプとも言われますから」
紀更は少しうしろを歩いている王黎をちらりと振り返った。
(やっぱり、王黎師匠はすごい操言士なのね)
操言ブローチは操言院の修了試験に合格した際に与えられる。つまり、その時からすでに、王黎はほかの操言士よりも何かが秀でていたのだろう。
その優秀さは持って生まれたものなのか、それとも王黎の努力によるものなのか。紀更にはわからないが、王黎が並の操言士でないことは間違いない。
「実は、割合で言うと操言士の約半数はタイプⅠです」
「え、そうなんですね。つまり、皆さん操作が得意?」
「一概にそうとも言えません。操言の力をきっちり分類することはほぼ不可能に近く、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳの刻印を与えるに値しない者にⅠが与えられるという側面が大きいからです。ですが、タイプⅠの操言ブローチを持つ操言士の中でも、本当に操作が得意な操言士が職人操言士と呼ばれることがあります」
(職人操言士……)
王黎と違ってヒューの喋り方は堅苦しく、操言院の教師を思い出させた。だが、それはただ単に彼の性格なのだろう。紀更はなるべく気にしないように、ヒューの解説に耳をかたむけた。ついでに、ちらりと彼の胸元の操言ブローチを確認する。彼の瞳と同じ薄茶色のブローチには、Ⅰの刻印が施されていた。
「ゼルヴァイスにいるタイプⅠの操言士のほとんどは、日々〝工房〟と呼ばれる場所にいてそこで何かしらの生活器を作っています」
「今からそこに行くんですか?」
「もう着きました」
ヒューは足を止めた。そこは操言支部会館から少し離れた、住宅街のど真ん中だ。
「ここ……ですか?」
工房と聞いた紀更は、融通の利かない気質の中年男性たちが怒号を交わしているような雰囲気を想像していた。しかし周囲は住宅街らしく閑静で、目の前の木造の家屋には特に看板もない。ただの民家にしか見えなかった。
ヒューは玄関ドアをノックもせず、いきなり開け放った。中はすぐ目の前が廊下になっており、狭い間隔で右にふたつ、奥にひとつ、左にひとつドアがあった。すぐ左手には傾斜の急な階段があり、二階に続いているようだ。
「全部は案内しませんのであしからず」
ヒューは背後にいる紀更を振り返ってそう告げると、廊下を進んで一番奥のドアを開けた。そこは一辺が三メイほどの四角い部屋で、採光窓が小さいためか、日光は十分あるはずなのに明るいとは言えず、やけに薄暗い。壁に設置された棚には、紀更の見たことのない工具や何かの材料と思われる木片が乱雑に置かれており、室内で一番スペースをとっている木造の机の上、そして床には何枚かの紙片が無造作に散らばっていた。
「ここが、工房?」
紀更は目をぱちくりとさせて室内を見回した。
「皐月、寝てるなら起きてください」
ヒューは冷静に室内の主を呼ぶ。
すると、部屋の奥の床上からハスキーな声が聞こえた。
「皐月は寝ていますので起きません」
「王都から〝特別な操言士〟が来ましたよ」
「うっそ! マジ!?」
皐月と呼ばれた小柄な女性が、机の下から飛び起きるように現れた。どうやら床の上に寝そべっていたらしい。
紀更よりやや背の低いその女性は、非常にボリューミーなオレンジ色の髪の毛を雑に左右に分けて結んでいる。汚れに無頓着なのか、まとっている操言ローブには食べ物か飲み物のシミがあちこちに付着していた。
「彼女は皐月。弥生ちゃんの娘で三十歳の操言士です」
「支部長の娘さんっ!?」
ヒューの淡々とした紹介と相反するように、紀更は驚嘆の声を上げた。
自分のことをちゃん付けで呼ばせていた支部長の弥生は、あれはあれでなかなか印象に残る女性だったが、その娘と聞いてあまりにも似ていないことに驚く。母と娘というより、歳の離れた友達と聞いた方がまだしっくりくる印象だ。
「なんで年齢まで言うのよ、ヒュー」
「このような三十歳にならないでほしいという気遣いです」
「そんなの気遣いじゃないし! いいじゃんか、こーゆー三十歳がいても!」
皐月は床に散らばる紙片をまったく気にすることなく踏みつけ、部屋の入り口に立っている紀更まで近付くと、ニカッと歯を出して笑い、右手を差し出した。
「ようこそゼルヴァイスへ、特別な操言士さん」
「あ、は、初めまして……紀更、と申します」
「そっか、紀更ちゃんね。ごめんよ、名前までは知らなくてね。操言士団民間部所属の操言士、皐月だよ」
皐月はこすこすと鼻の上を指でかいた。
「あとさ、そこで気配を消してるけどひょろ坊もいるっしょ? 久しぶりじゃん」
「あ、どうぞ僕のことは気にせず。空気になってるんで」
「あははっ。そんなに皐月が苦手か~い?」
皐月は意地悪げにニヤニヤと笑う。
「キミはねえ、浅そうに見えて深いからやりにくいよねえ」
王黎はわざとらしいまでの笑顔を作ると、最美とユルゲンを廊下に残して、一人で建物の外へ出ていってしまった。
「王黎師匠ってば」
残された紀更は、王黎のいなくなった空間にため息をつく。
「王黎はマイペースだけど、皐月も超マイペースだかんね。自分の思い通りにならないから、皐月に苦手意識があるんっしょ」
「王黎が振り回せないとは、相当変わり者だな」
「ユ、ユルゲンさんっ」
けらけらと笑う皐月に思わずユルゲンが呟くと、紀更は今度はユルゲンに向かって慌てた。王黎は出ていってしまうし、ユルゲンは初対面の相手に失礼な発言をするし、せっかく職人操言士の工房を案内してもらっているのに、皐月が気を悪くしないだろうか。紀更は不安になったが、皐月は豪快に笑い声を上げていた。
「あっはっは! いいよ。皐月、気にしないから。紀更ちゃん、いい子だね~。そんないい子なのに、ひょろひょろ王黎の弟子なんだ? たいへんだね」
「あの……その、ひょろひょろとは」
「ああ。王黎ってかなり早めの十三歳で操言院の修了試験に合格したんだけどさ、ずいぶんとひょろひょろした体形だったから、大人たちがそう呼んでたんよ。まあ、まだ子供なのに修了試験に合格して優秀だね、って言ってるようなもんだね」
「本人は絶対、そういう意味には受け取ってないだろうな」
にしし、と笑う皐月にユルゲンは冷静に反論した。
「王黎師匠が一人前になったのは、十三歳の時……」
王黎は三十歳なので、それは十七年前のこと。つまり紀更が生まれた年に、王黎は操言院の修了試験に合格した。紀更が今日まで生きてきた時間と同じ分だけ、王黎は操言士として生きてきたということだ。
成人する十七歳程度で合格するのが平均と言われているので、十三歳で修了試験に合格したということは、確かに早い方だ。そしてその事実も、操言ブローチの刻印と同じく王黎が優秀であることを意味している。
「んで? そのひょろ坊がここに弟子を連れてきたのはなぜかな?」
「彼女は王黎さんと祈聖石巡礼の旅をしています。皐月、職人操言士とは何なのか、あなたの普段の仕事を説明してください」
「なるほど、弟子の社会科見学ね。お安い御用だよー」
支部長室を出て一階に下りるなり、王黎はそう言ってヒューの姿を探し始めた。
「いたいた。ヒューくん」
ヒューは操言士だけが入れる奥の部屋におり、丸眼鏡をかけて何か作業をしていたようだったが、王黎に呼ばれると眼鏡を外し、無愛想な薄茶色の瞳をこちらに向けた。
「弥生ちゃんがヒューくんを頼っていいって言うからお言葉に甘えさせてもらいたいんだけど、いいかな」
「何がしたいんですか」
ヒューは面倒くさそうな表情を浮かべたが、支部長である弥生の名前を出されては拒否できないのか、渋々王黎に用件を尋ねた。
「工房を案内してほしいんだ。弥生ちゃんは皐月も使っていいって言ってくれたから、彼女のところかな。それと、職人操言士について紀更に説明してくれると嬉しいな~」
王黎がのほほんとした笑顔で頼むと、ヒューは返事をすることなく立ち上がり、椅子にかけてあった操言ローブをきっちりと羽織った。
部屋を出たヒューは、王黎ではなく一階の広間にいた紀更に近付いて、不愛想な声でぼそりと呟いた。
「付いてきてください」
「えっ、あ、はい」
突然話しかけられた紀更は驚いたが、ヒューがすたすたと会館を出ていくので、そのうしろを小走りで追った。ユルゲン、最美、王黎も紀更に続いて操言支部会館を後にする。
「操言ブローチの刻印の意味は、見習いでもご存じですよね」
石畳の道を歩きながら、ヒューは紀更に問いかけた。
以前、ルーカスからも同じ質問をされたのを思い出しながら、紀更は答えた。
「操言院の修了試験結果によって与えられるんですよね。えっと……Ⅳをもらえる人は少ないとか」
「刻印は操言の力の種類を表します。操言の力そのものの種類というより、その操言士の力の使い方の分類と言った方が正確かもしれませんが」
「力の使い方の分類?」
「Ⅰは操作、つまり操言の力を使って何かを操作するのが得意ということです。Ⅱは治癒、Ⅲは攻撃を得意とし、Ⅳは特に個性的な操言の力を持つ者に与えられます」
「個性的……じゃあ、王黎師匠は」
「王黎さんの操言の力を詳しくは知りませんが、何か特殊なんでしょうね。Ⅳは特殊タイプとも言われますから」
紀更は少しうしろを歩いている王黎をちらりと振り返った。
(やっぱり、王黎師匠はすごい操言士なのね)
操言ブローチは操言院の修了試験に合格した際に与えられる。つまり、その時からすでに、王黎はほかの操言士よりも何かが秀でていたのだろう。
その優秀さは持って生まれたものなのか、それとも王黎の努力によるものなのか。紀更にはわからないが、王黎が並の操言士でないことは間違いない。
「実は、割合で言うと操言士の約半数はタイプⅠです」
「え、そうなんですね。つまり、皆さん操作が得意?」
「一概にそうとも言えません。操言の力をきっちり分類することはほぼ不可能に近く、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳの刻印を与えるに値しない者にⅠが与えられるという側面が大きいからです。ですが、タイプⅠの操言ブローチを持つ操言士の中でも、本当に操作が得意な操言士が職人操言士と呼ばれることがあります」
(職人操言士……)
王黎と違ってヒューの喋り方は堅苦しく、操言院の教師を思い出させた。だが、それはただ単に彼の性格なのだろう。紀更はなるべく気にしないように、ヒューの解説に耳をかたむけた。ついでに、ちらりと彼の胸元の操言ブローチを確認する。彼の瞳と同じ薄茶色のブローチには、Ⅰの刻印が施されていた。
「ゼルヴァイスにいるタイプⅠの操言士のほとんどは、日々〝工房〟と呼ばれる場所にいてそこで何かしらの生活器を作っています」
「今からそこに行くんですか?」
「もう着きました」
ヒューは足を止めた。そこは操言支部会館から少し離れた、住宅街のど真ん中だ。
「ここ……ですか?」
工房と聞いた紀更は、融通の利かない気質の中年男性たちが怒号を交わしているような雰囲気を想像していた。しかし周囲は住宅街らしく閑静で、目の前の木造の家屋には特に看板もない。ただの民家にしか見えなかった。
ヒューは玄関ドアをノックもせず、いきなり開け放った。中はすぐ目の前が廊下になっており、狭い間隔で右にふたつ、奥にひとつ、左にひとつドアがあった。すぐ左手には傾斜の急な階段があり、二階に続いているようだ。
「全部は案内しませんのであしからず」
ヒューは背後にいる紀更を振り返ってそう告げると、廊下を進んで一番奥のドアを開けた。そこは一辺が三メイほどの四角い部屋で、採光窓が小さいためか、日光は十分あるはずなのに明るいとは言えず、やけに薄暗い。壁に設置された棚には、紀更の見たことのない工具や何かの材料と思われる木片が乱雑に置かれており、室内で一番スペースをとっている木造の机の上、そして床には何枚かの紙片が無造作に散らばっていた。
「ここが、工房?」
紀更は目をぱちくりとさせて室内を見回した。
「皐月、寝てるなら起きてください」
ヒューは冷静に室内の主を呼ぶ。
すると、部屋の奥の床上からハスキーな声が聞こえた。
「皐月は寝ていますので起きません」
「王都から〝特別な操言士〟が来ましたよ」
「うっそ! マジ!?」
皐月と呼ばれた小柄な女性が、机の下から飛び起きるように現れた。どうやら床の上に寝そべっていたらしい。
紀更よりやや背の低いその女性は、非常にボリューミーなオレンジ色の髪の毛を雑に左右に分けて結んでいる。汚れに無頓着なのか、まとっている操言ローブには食べ物か飲み物のシミがあちこちに付着していた。
「彼女は皐月。弥生ちゃんの娘で三十歳の操言士です」
「支部長の娘さんっ!?」
ヒューの淡々とした紹介と相反するように、紀更は驚嘆の声を上げた。
自分のことをちゃん付けで呼ばせていた支部長の弥生は、あれはあれでなかなか印象に残る女性だったが、その娘と聞いてあまりにも似ていないことに驚く。母と娘というより、歳の離れた友達と聞いた方がまだしっくりくる印象だ。
「なんで年齢まで言うのよ、ヒュー」
「このような三十歳にならないでほしいという気遣いです」
「そんなの気遣いじゃないし! いいじゃんか、こーゆー三十歳がいても!」
皐月は床に散らばる紙片をまったく気にすることなく踏みつけ、部屋の入り口に立っている紀更まで近付くと、ニカッと歯を出して笑い、右手を差し出した。
「ようこそゼルヴァイスへ、特別な操言士さん」
「あ、は、初めまして……紀更、と申します」
「そっか、紀更ちゃんね。ごめんよ、名前までは知らなくてね。操言士団民間部所属の操言士、皐月だよ」
皐月はこすこすと鼻の上を指でかいた。
「あとさ、そこで気配を消してるけどひょろ坊もいるっしょ? 久しぶりじゃん」
「あ、どうぞ僕のことは気にせず。空気になってるんで」
「あははっ。そんなに皐月が苦手か~い?」
皐月は意地悪げにニヤニヤと笑う。
「キミはねえ、浅そうに見えて深いからやりにくいよねえ」
王黎はわざとらしいまでの笑顔を作ると、最美とユルゲンを廊下に残して、一人で建物の外へ出ていってしまった。
「王黎師匠ってば」
残された紀更は、王黎のいなくなった空間にため息をつく。
「王黎はマイペースだけど、皐月も超マイペースだかんね。自分の思い通りにならないから、皐月に苦手意識があるんっしょ」
「王黎が振り回せないとは、相当変わり者だな」
「ユ、ユルゲンさんっ」
けらけらと笑う皐月に思わずユルゲンが呟くと、紀更は今度はユルゲンに向かって慌てた。王黎は出ていってしまうし、ユルゲンは初対面の相手に失礼な発言をするし、せっかく職人操言士の工房を案内してもらっているのに、皐月が気を悪くしないだろうか。紀更は不安になったが、皐月は豪快に笑い声を上げていた。
「あっはっは! いいよ。皐月、気にしないから。紀更ちゃん、いい子だね~。そんないい子なのに、ひょろひょろ王黎の弟子なんだ? たいへんだね」
「あの……その、ひょろひょろとは」
「ああ。王黎ってかなり早めの十三歳で操言院の修了試験に合格したんだけどさ、ずいぶんとひょろひょろした体形だったから、大人たちがそう呼んでたんよ。まあ、まだ子供なのに修了試験に合格して優秀だね、って言ってるようなもんだね」
「本人は絶対、そういう意味には受け取ってないだろうな」
にしし、と笑う皐月にユルゲンは冷静に反論した。
「王黎師匠が一人前になったのは、十三歳の時……」
王黎は三十歳なので、それは十七年前のこと。つまり紀更が生まれた年に、王黎は操言院の修了試験に合格した。紀更が今日まで生きてきた時間と同じ分だけ、王黎は操言士として生きてきたということだ。
成人する十七歳程度で合格するのが平均と言われているので、十三歳で修了試験に合格したということは、確かに早い方だ。そしてその事実も、操言ブローチの刻印と同じく王黎が優秀であることを意味している。
「んで? そのひょろ坊がここに弟子を連れてきたのはなぜかな?」
「彼女は王黎さんと祈聖石巡礼の旅をしています。皐月、職人操言士とは何なのか、あなたの普段の仕事を説明してください」
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