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第05話 グラマラスな操言士と旅の終わり
2.羨望(中)
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匂いを記憶するのは得意だ。特に意識しなくても、この嗅覚はいつも様々な匂いを嗅ぎ分けている。あまり気にしすぎるとよくないから気を付けなさいと、同じくミズイヌのメヒュラである母からはよく言われたものだ。確かに、気持ちが悪くなるような臭いもはっきりと嗅ぎ取れてしまうので、せめて人型でいる時はなるべく嗅覚は鈍感にさせておいた方がいい。だが近しい者の匂いはしっかりと憶えて、人型であっても感知できるように習慣づけておいてよかったと、今は思う。
ポーレンヌ城下町の北東エリアにある共同営舎の登録解除の手続きを終えた紅雷は、鼻で息をしながら歩いていた。
故郷であるアルソーの村よりも人口の多いこの街ではなかなかお目当ての匂いにたどり着けなかったが、自分の嗅覚と勘を信じて紅雷は歩く。
紀更にはすぐ戻ると言ったが、その前に可能ならすませたいことがあった。そのためには、ターゲットが一人でいることが望ましい。
「すんすん……うーん」
紀更を見たら、世界がすべて紀更で埋め尽くされた。紀更以外の人間なんて、会話しなくてもいいと思えるほどに。自分という存在は紀更のためだけにあったのだと思うほどに。紀更との出会いは、それほど紅雷に大きな衝撃を与えた。
(紀更様とあたしの、二人だけならいいのに)
しかし紅雷にとって重要な存在である紀更の周りには、紅雷でない人物が五人もいた。そしていま、その中の一人、一番目付きが悪く一番背の高い黒髪の男の匂いを紅雷は捜している。
「こっち……こっちかな」
昼時なので、様々な食事の香りが空気中に蔓延している。その匂いの大洪水の中からどうにか目当てのものを探し出し、匂いのもとへ紅雷は足を進めた。
本当は気が乗らない。やっと胸の奥のもやもやが晴れて身体中のちくちくが消えて、自分が言従士であること、紀更という仕え従うべき操言士と出会えたこと、その僥倖を噛み締められるのに。こんなわずかな気掛かりに胸の奥をざわつかせたくないのに。
「ねえ」
目当ての男は人通りの少ない道、民家の壁に背中を預けて腕を組んで休んでいた。紀更と一緒にいる可能性の方が高いと思っていただけに、思惑通りに一人でいてくれたことになんだか拍子抜けしてしまう。
声をかけられたユルゲンは身動きせず視線だけを紅雷に寄越す。その目付きの悪いことといったら。もしも彼が紀更の知り合いでなければ、怖くて絶対に声なんかかけようと思わないだろう。
「どうした。紀更のところに戻るんじゃねぇのか」
「あなたに用があって。一人でいてくれて助かりました」
紅雷は紀更より若干背が高く、平均的な女性に比べて少し背が高い方だ。しかしユルゲンは、そんな紅雷より頭ひとつ分以上も高い。軽く背中を丸めてレンガの壁に体重を預けている姿勢のはずなのに、はるか高みから威圧感を放ってきているように感じる。普通の女性なら、その雰囲気だけで怯えてしまうだろう。
その身長差にもユルゲンが放つ威圧感にもなるべく負けないように、紅雷は身体を強張らせた。そして今様色の瞳でキリッとユルゲンを見上げる。
「あなた、紀更様の何なんですか」
「なんだよ、その質問。訊いてどうする」
「ほかの人たちはわかります。紀更様の師匠さん、その言従士さん、それから護衛の騎士さんたち……でも、あなたがどうして紀更様と一緒にいるのかわかりません」
「一緒にいる理由が知りたいのか」
「あたしの問いに答えてください」
責め立てるような紅雷の口ぶりに少し苛立ち、ユルゲンは顔をしかめた。
「一方的にまくしたてられて律儀に答える義理はねぇな」
「あなたには同じ匂いを感じます」
「はあ?」
「あたしと同じ……違うけど、同じ匂い」
「俺はお前の兄弟じゃねぇぞ」
「知ってますよ! そうじゃなくて」
ユルゲンに凄まれてもひるまなかった紅雷の語尾が、にわかに小さくなる。
船の上で紀更に語った時と同じだ。自分の中にあるものをどうやってアウトプットしたらいいのか、やり方がわからなくてもどかしい。適切な言葉を考えては探して、そうして浮かんだ言葉はどこか納得がいかなくて消してしまう。その作業を繰り返すことがはがゆい。紅雷の表情はそんな苦しさで覆われる。
「奇遇だな。俺も、お前と自分が似てると思ったよ」
ユルゲンは低い声で言った。
「俺もお前と同じだ。何かをどうしても見つけたくて、探してるんだ」
「それが、あたしと同じ?」
「同じだろ? 俺もその何かを見つけたくて故郷を飛び出してきたんだ。いくつかの都市部を転々として、それから紀更たちに会った」
「ふーん……それで? どうして紀更様と一緒にいることになるんですか」
「傭兵のカンだ。あいつらに付いていけば、探し物が見つかる気がしたんだ」
実際は見つかるどころか、見つけたいという気持ちがすっかり凪いでしまっているが。
ユルゲンはレンガの壁から背中を離すと、背筋をしゃんと伸ばして紅雷を見下ろした。
「お前はいいよな」
「何がですか」
紅雷は自分を見下ろすユルゲンに負けじと、鼻息を荒くする。
「明確な答えを手に入れたんだからな」
紀更の何なんだ――そう問われたら、紅雷は答えることができる。自分は紀更の言従士であると。それはユルゲンに許された答えではない。紅雷だけの答えだ。
「そうやってごまかして、あたしの質問には答えない気ですか」
紅雷はめげずに強い眼差しをユルゲンへ向ける。
紀更と一緒にいる時の紅雷は、実年齢よりも幼い子供のように感情を揺れ動かし、ずいぶん明るくてはっちゃけた性格だと思った。しかしこうして一対一で話す紅雷は、紀更の隣にいると時とまったく違う顔をする。まるで野生の犬のようだ。
「答える義理はないと言っただろ」
「ないのは義理じゃなくて、答えそのものなんじゃないですか」
それは図星だったが、まさか簡単に負けを認めるわけにもいかずユルゲンは沈黙した。
「あたし……あたしが紀更様の言従士なんだから! ほかの誰でもなくてっ」
そう言いながら、紅雷は自分の放った言葉にはっとした。
紀更以外の人物は見ないようにしていた。見なくてもいいから。紀更だけがいてくれればいいから。それなのにどうしても気になってしまった、この黒髪の男。時折、やけに切なそうに紀更を見つめるこの男が、どうしてだか自分から紀更を取り上げてしまいそうな気がした。それこそが、先ほどうまく言葉で表現できなかった自分の中にあるもの――つまり、不安。その可能性が怖くて、紀更のいない場所で確かめたかった。この男が紀更の何なのか。そして自分は宣言して安心したかったのだ。
「紀更様の隣にいていいのはあなたじゃなくてあたしなんですからね!」
やっと見つけた自分の操言士。この先ずっと一緒にいる、大事な人。
とらないで。
とらないで。
でも……。
「気が済んだならその紀更様のとこに行け。俺はもう少しぷらぷらさせてもらう」
ユルゲンは左手のひらを紅雷に向けて、犬を追い払うようにしっしっと吐き捨てた。その雑な態度に、紅雷は赤い舌をべーっと出して走り去っていく。
(隣にいていい、か)
紅雷のことを羨ましく思うのは、彼女がその理由を持っているからかもしれない。
「はぁ」
ユルゲンの口から無意識のうちに盛大に漏れ出たそれは、間違いなくため息だった。
◆◇◆◇◆
陽が沈むまでに、紅雷は街中にただよう匂いをたどって祈聖石巡りをしていた紀更に合流した。その後、騎士団本部で用事を終えたエリックもパーティに加わったが、ユルゲンだけがなかなか戻らなかった。
仕方がないので五人はユルゲンを待つことを諦めて宿の南へ少し歩き、広くて有名な食事処「くらら亭」で夕食をとることにした。
「王黎師匠、最美さんはご無事でしょうか」
四角いテーブルに案内され、注文をすませるなり紀更は王黎に話しかけた。
「大丈夫だよ。ジャスパーさんとカタリーナお嬢様に手紙を渡して、ゼルヴァイスの様子を確認している頃さ」
王黎は先に出された冷水を豪快に飲み干しながらのんきに笑う。それから思い出したようにエリックに話しかけた。
「エリックさん、騎士団で何か面白い話でも聞けましたか」
「ああ、ポーレンヌの操言士団が、騎士団のように部隊を編制しているらしい」
「へえ~?」
エリックが答えると、王黎は興味深そうに目を見開いた。
「オドレイ支部長が言ってた騎士団との連携、ってやつかな」
「レイトとラフーアの怪魔襲撃騒ぎの影響だそうだ。対策ということだな」
「でも騎士と操言士では数が違いますよね。どういう編成にしているんでしょうか」
ルーカスも気になるようで首をかしげる。
王都を含むほぼすべての都市部に共通することだが、その都市部にいる騎士と操言士とでは、騎士の人数の方が圧倒的に多い。操言士は生まれながらになれるかどうかが決まっているが、騎士はなろうと思えば誰でもなれるからだ。
「詳しくは操言士団に聞かないとわからないな。そちらで何か聞かなかったか」
エリックに問われて王黎は曖昧に笑った。
「操言士団も怪魔襲撃に備えて策はとっている、としか。操言士団と騎士団で連携をとるために話し合いを重ねているとは聞きましたよ」
「そうか」
注文した料理が運ばれてきて、テーブルの上がにぎやかになる。それらを取り分けながらエリックは紀更の方を向いた。
「紀更殿、この街での祈聖石巡りの進捗はどうだ?」
「はい、えっと、今日は街の東側の祈聖石を巡りました。それでもまだ全体の三分の一程度でしょうか」
「そうだね、明日もまだかかるね。王都からの手紙の返信も待たなきゃだし、へたしたら明後日もまだここに滞在だね。まあ、ゆっくりやろう」
紀更のエリックへの返答に、王黎は苦笑を交えた。
「王黎殿、ポーレンヌの操言士の方を訪ねたりはしないんですか。ほら、ゼルヴァイス城下町の時みたいに。紀更殿の勉強にもなるんじゃないでしょうか」
「ええ、そうだと思うわ。ぜひそうしてちょうだいな」
ルーカスの提案を肯定する女性の声が突如割って入って、紀更は驚いて食事を喉につまらせた。
ポーレンヌ城下町の北東エリアにある共同営舎の登録解除の手続きを終えた紅雷は、鼻で息をしながら歩いていた。
故郷であるアルソーの村よりも人口の多いこの街ではなかなかお目当ての匂いにたどり着けなかったが、自分の嗅覚と勘を信じて紅雷は歩く。
紀更にはすぐ戻ると言ったが、その前に可能ならすませたいことがあった。そのためには、ターゲットが一人でいることが望ましい。
「すんすん……うーん」
紀更を見たら、世界がすべて紀更で埋め尽くされた。紀更以外の人間なんて、会話しなくてもいいと思えるほどに。自分という存在は紀更のためだけにあったのだと思うほどに。紀更との出会いは、それほど紅雷に大きな衝撃を与えた。
(紀更様とあたしの、二人だけならいいのに)
しかし紅雷にとって重要な存在である紀更の周りには、紅雷でない人物が五人もいた。そしていま、その中の一人、一番目付きが悪く一番背の高い黒髪の男の匂いを紅雷は捜している。
「こっち……こっちかな」
昼時なので、様々な食事の香りが空気中に蔓延している。その匂いの大洪水の中からどうにか目当てのものを探し出し、匂いのもとへ紅雷は足を進めた。
本当は気が乗らない。やっと胸の奥のもやもやが晴れて身体中のちくちくが消えて、自分が言従士であること、紀更という仕え従うべき操言士と出会えたこと、その僥倖を噛み締められるのに。こんなわずかな気掛かりに胸の奥をざわつかせたくないのに。
「ねえ」
目当ての男は人通りの少ない道、民家の壁に背中を預けて腕を組んで休んでいた。紀更と一緒にいる可能性の方が高いと思っていただけに、思惑通りに一人でいてくれたことになんだか拍子抜けしてしまう。
声をかけられたユルゲンは身動きせず視線だけを紅雷に寄越す。その目付きの悪いことといったら。もしも彼が紀更の知り合いでなければ、怖くて絶対に声なんかかけようと思わないだろう。
「どうした。紀更のところに戻るんじゃねぇのか」
「あなたに用があって。一人でいてくれて助かりました」
紅雷は紀更より若干背が高く、平均的な女性に比べて少し背が高い方だ。しかしユルゲンは、そんな紅雷より頭ひとつ分以上も高い。軽く背中を丸めてレンガの壁に体重を預けている姿勢のはずなのに、はるか高みから威圧感を放ってきているように感じる。普通の女性なら、その雰囲気だけで怯えてしまうだろう。
その身長差にもユルゲンが放つ威圧感にもなるべく負けないように、紅雷は身体を強張らせた。そして今様色の瞳でキリッとユルゲンを見上げる。
「あなた、紀更様の何なんですか」
「なんだよ、その質問。訊いてどうする」
「ほかの人たちはわかります。紀更様の師匠さん、その言従士さん、それから護衛の騎士さんたち……でも、あなたがどうして紀更様と一緒にいるのかわかりません」
「一緒にいる理由が知りたいのか」
「あたしの問いに答えてください」
責め立てるような紅雷の口ぶりに少し苛立ち、ユルゲンは顔をしかめた。
「一方的にまくしたてられて律儀に答える義理はねぇな」
「あなたには同じ匂いを感じます」
「はあ?」
「あたしと同じ……違うけど、同じ匂い」
「俺はお前の兄弟じゃねぇぞ」
「知ってますよ! そうじゃなくて」
ユルゲンに凄まれてもひるまなかった紅雷の語尾が、にわかに小さくなる。
船の上で紀更に語った時と同じだ。自分の中にあるものをどうやってアウトプットしたらいいのか、やり方がわからなくてもどかしい。適切な言葉を考えては探して、そうして浮かんだ言葉はどこか納得がいかなくて消してしまう。その作業を繰り返すことがはがゆい。紅雷の表情はそんな苦しさで覆われる。
「奇遇だな。俺も、お前と自分が似てると思ったよ」
ユルゲンは低い声で言った。
「俺もお前と同じだ。何かをどうしても見つけたくて、探してるんだ」
「それが、あたしと同じ?」
「同じだろ? 俺もその何かを見つけたくて故郷を飛び出してきたんだ。いくつかの都市部を転々として、それから紀更たちに会った」
「ふーん……それで? どうして紀更様と一緒にいることになるんですか」
「傭兵のカンだ。あいつらに付いていけば、探し物が見つかる気がしたんだ」
実際は見つかるどころか、見つけたいという気持ちがすっかり凪いでしまっているが。
ユルゲンはレンガの壁から背中を離すと、背筋をしゃんと伸ばして紅雷を見下ろした。
「お前はいいよな」
「何がですか」
紅雷は自分を見下ろすユルゲンに負けじと、鼻息を荒くする。
「明確な答えを手に入れたんだからな」
紀更の何なんだ――そう問われたら、紅雷は答えることができる。自分は紀更の言従士であると。それはユルゲンに許された答えではない。紅雷だけの答えだ。
「そうやってごまかして、あたしの質問には答えない気ですか」
紅雷はめげずに強い眼差しをユルゲンへ向ける。
紀更と一緒にいる時の紅雷は、実年齢よりも幼い子供のように感情を揺れ動かし、ずいぶん明るくてはっちゃけた性格だと思った。しかしこうして一対一で話す紅雷は、紀更の隣にいると時とまったく違う顔をする。まるで野生の犬のようだ。
「答える義理はないと言っただろ」
「ないのは義理じゃなくて、答えそのものなんじゃないですか」
それは図星だったが、まさか簡単に負けを認めるわけにもいかずユルゲンは沈黙した。
「あたし……あたしが紀更様の言従士なんだから! ほかの誰でもなくてっ」
そう言いながら、紅雷は自分の放った言葉にはっとした。
紀更以外の人物は見ないようにしていた。見なくてもいいから。紀更だけがいてくれればいいから。それなのにどうしても気になってしまった、この黒髪の男。時折、やけに切なそうに紀更を見つめるこの男が、どうしてだか自分から紀更を取り上げてしまいそうな気がした。それこそが、先ほどうまく言葉で表現できなかった自分の中にあるもの――つまり、不安。その可能性が怖くて、紀更のいない場所で確かめたかった。この男が紀更の何なのか。そして自分は宣言して安心したかったのだ。
「紀更様の隣にいていいのはあなたじゃなくてあたしなんですからね!」
やっと見つけた自分の操言士。この先ずっと一緒にいる、大事な人。
とらないで。
とらないで。
でも……。
「気が済んだならその紀更様のとこに行け。俺はもう少しぷらぷらさせてもらう」
ユルゲンは左手のひらを紅雷に向けて、犬を追い払うようにしっしっと吐き捨てた。その雑な態度に、紅雷は赤い舌をべーっと出して走り去っていく。
(隣にいていい、か)
紅雷のことを羨ましく思うのは、彼女がその理由を持っているからかもしれない。
「はぁ」
ユルゲンの口から無意識のうちに盛大に漏れ出たそれは、間違いなくため息だった。
◆◇◆◇◆
陽が沈むまでに、紅雷は街中にただよう匂いをたどって祈聖石巡りをしていた紀更に合流した。その後、騎士団本部で用事を終えたエリックもパーティに加わったが、ユルゲンだけがなかなか戻らなかった。
仕方がないので五人はユルゲンを待つことを諦めて宿の南へ少し歩き、広くて有名な食事処「くらら亭」で夕食をとることにした。
「王黎師匠、最美さんはご無事でしょうか」
四角いテーブルに案内され、注文をすませるなり紀更は王黎に話しかけた。
「大丈夫だよ。ジャスパーさんとカタリーナお嬢様に手紙を渡して、ゼルヴァイスの様子を確認している頃さ」
王黎は先に出された冷水を豪快に飲み干しながらのんきに笑う。それから思い出したようにエリックに話しかけた。
「エリックさん、騎士団で何か面白い話でも聞けましたか」
「ああ、ポーレンヌの操言士団が、騎士団のように部隊を編制しているらしい」
「へえ~?」
エリックが答えると、王黎は興味深そうに目を見開いた。
「オドレイ支部長が言ってた騎士団との連携、ってやつかな」
「レイトとラフーアの怪魔襲撃騒ぎの影響だそうだ。対策ということだな」
「でも騎士と操言士では数が違いますよね。どういう編成にしているんでしょうか」
ルーカスも気になるようで首をかしげる。
王都を含むほぼすべての都市部に共通することだが、その都市部にいる騎士と操言士とでは、騎士の人数の方が圧倒的に多い。操言士は生まれながらになれるかどうかが決まっているが、騎士はなろうと思えば誰でもなれるからだ。
「詳しくは操言士団に聞かないとわからないな。そちらで何か聞かなかったか」
エリックに問われて王黎は曖昧に笑った。
「操言士団も怪魔襲撃に備えて策はとっている、としか。操言士団と騎士団で連携をとるために話し合いを重ねているとは聞きましたよ」
「そうか」
注文した料理が運ばれてきて、テーブルの上がにぎやかになる。それらを取り分けながらエリックは紀更の方を向いた。
「紀更殿、この街での祈聖石巡りの進捗はどうだ?」
「はい、えっと、今日は街の東側の祈聖石を巡りました。それでもまだ全体の三分の一程度でしょうか」
「そうだね、明日もまだかかるね。王都からの手紙の返信も待たなきゃだし、へたしたら明後日もまだここに滞在だね。まあ、ゆっくりやろう」
紀更のエリックへの返答に、王黎は苦笑を交えた。
「王黎殿、ポーレンヌの操言士の方を訪ねたりはしないんですか。ほら、ゼルヴァイス城下町の時みたいに。紀更殿の勉強にもなるんじゃないでしょうか」
「ええ、そうだと思うわ。ぜひそうしてちょうだいな」
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