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第10章 気持ちの清算
1. 彼の隣 side 綾瀬ゆい
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最近の昼休みは、教室の隅に座るふたりの姿を見るたび、胸がざわつく。
はるくんと白浜くん。
ふたりだけでいることが、当たり前みたいになってきた。
もともと、はるくんはいつもひとりだったのに。
無表情で、誰とも関わらなくて、でも私にだけは……話しかけたら笑顔を見せてくれていたのに——
「ゆいぴ、今日も……って感じだね」
隣の席で、渡辺咲がそう囁いた。
咲は私の中学からの友達で、私がはるくんのことを好きなのも知っている。
「うん……」
ぼそりと返した声は、自分でも驚くほど弱かった。
強がる気力もない。目の前の光景があまりにも心に刺さる。
ふたりは席を並べて、楽しそうに話している。
白浜くんが何か面白いことを言ったらしく、はるくんがふっと笑った。
……笑った。
その瞬間、胸の奥にずきんと何かが刺さる。
あのはるくんが、あんなふうに笑顔を浮かべるなんて。
私には一度も向けられたことのない、心からの笑顔だった。
「……最近、なんか変わったよね。南条くん」
咲の声に、私はただ小さく頷いた。
「無表情だったのにさ。最近、柔らかいっていうか……」
「……あの笑顔、私、知らない」
ぽつりと呟いたその言葉は、溜息のように空気に溶けた。
「ゆいぴ……」
咲が心配そうに覗き込んでくる。
それでも私は、無理やり笑ってみせた。引きつっていたかもしれないけど、それでも頑張って笑った。
「大丈夫。それでもまだ……好きだから」
「……うん」
「……今もはるくんのこと、ずっと好き」
もう何度目かわからない、その気持ちの再確認。
でも、そう言わないと、心がばらばらになってしまいそうだった。
ふたりを見ていると、焦ってしまう。
このまま、置いて行かれてしまうような気がする。
——はるくんを、取らないで。
そう思ってしまう自分が、苦しかった。
彼にとって、私はただの友達。それ以上ではないって、わかっている。
でも……せめて一度だけでも、あの目で、私を見てほしい。
その思いだけが、胸の奥で膨らんでいった。
午後のチャイムが鳴るすこし前、私は机に頬杖をついたまま、ふたりをぼんやり見つめていた。
白浜くんが笑うと、はるくんもつられるように口元を緩める。
まるで、〝光〟と〝光〟が寄り添っているみたいだった。
ずっとはるくんの隣にいたのは、私。
彼が誰にも興味を持っていなかったころ、一番近くにいたのは私だけで、はるくんの隣にいられるのは、私だけだと——本気で思っていた。
「だから……はるくんと、もう一度、話そうかな」
ぽつりとこぼしたその声は、自分でも驚くくらい小さかった。
でも、咲にはきちんと届いていたらしい。
「えっ……ゆいぴ……」
彼女がこちらを見る。目を大きく見開いて、言葉を飲み込んでいる。
私はゆっくりと顔を上げて、咲の目をまっすぐに見返した。
「もう一度、きちんと伝えたい。私の気持ちを、全部」
「……それって……告白するってこと?」
「うん……そうなる、かな」
怖い。ほんとうは、すごく怖い。
前にも1回「好き」と伝えて、断られている。
あの時は優しかったけれど、次は冷たく拒否されたら、たぶんもう……今までみたいには戻れないかもしれない。
でも、何もしないまま終わるなんて——その方が、もっと後悔すると思った。
私は唇を噛みしめて、ふたりの背中を見つめる。
「……私、はるくんのこと、諦めたくないの」
その一言が、教室の喧騒に溶けていく。
私は再び、はるくんの方を見た。
ふたりが並んで笑っている。
——並んで、笑っている。
その光景に、どうしてか涙が出そうになった。
「……いいと思うよ、ゆいぴ。好きな人に想いを伝えるのって、勇気いるけど、すごくかっこいいよ」
咲の言葉が、強く私の背中を押す。
「ありがとう、咲。私……きちんと伝えてくるね」
言葉にしてはじめて、腹の底に灯るような、強い決意を感じた。
もう振り返らない。もう、目をそらさない。
昼休み終了を告げるチャイムが鳴った。
教室にざわめきが広がっていく。
でも私は、誰よりも落ち着きを持ったまま立ち上がった。
この気持ちに、きちんと名前をつけに行く。
終わらせるためではない。
——私のために。私が、ここから先へ進むために。
はるくんと白浜くん。
ふたりだけでいることが、当たり前みたいになってきた。
もともと、はるくんはいつもひとりだったのに。
無表情で、誰とも関わらなくて、でも私にだけは……話しかけたら笑顔を見せてくれていたのに——
「ゆいぴ、今日も……って感じだね」
隣の席で、渡辺咲がそう囁いた。
咲は私の中学からの友達で、私がはるくんのことを好きなのも知っている。
「うん……」
ぼそりと返した声は、自分でも驚くほど弱かった。
強がる気力もない。目の前の光景があまりにも心に刺さる。
ふたりは席を並べて、楽しそうに話している。
白浜くんが何か面白いことを言ったらしく、はるくんがふっと笑った。
……笑った。
その瞬間、胸の奥にずきんと何かが刺さる。
あのはるくんが、あんなふうに笑顔を浮かべるなんて。
私には一度も向けられたことのない、心からの笑顔だった。
「……最近、なんか変わったよね。南条くん」
咲の声に、私はただ小さく頷いた。
「無表情だったのにさ。最近、柔らかいっていうか……」
「……あの笑顔、私、知らない」
ぽつりと呟いたその言葉は、溜息のように空気に溶けた。
「ゆいぴ……」
咲が心配そうに覗き込んでくる。
それでも私は、無理やり笑ってみせた。引きつっていたかもしれないけど、それでも頑張って笑った。
「大丈夫。それでもまだ……好きだから」
「……うん」
「……今もはるくんのこと、ずっと好き」
もう何度目かわからない、その気持ちの再確認。
でも、そう言わないと、心がばらばらになってしまいそうだった。
ふたりを見ていると、焦ってしまう。
このまま、置いて行かれてしまうような気がする。
——はるくんを、取らないで。
そう思ってしまう自分が、苦しかった。
彼にとって、私はただの友達。それ以上ではないって、わかっている。
でも……せめて一度だけでも、あの目で、私を見てほしい。
その思いだけが、胸の奥で膨らんでいった。
午後のチャイムが鳴るすこし前、私は机に頬杖をついたまま、ふたりをぼんやり見つめていた。
白浜くんが笑うと、はるくんもつられるように口元を緩める。
まるで、〝光〟と〝光〟が寄り添っているみたいだった。
ずっとはるくんの隣にいたのは、私。
彼が誰にも興味を持っていなかったころ、一番近くにいたのは私だけで、はるくんの隣にいられるのは、私だけだと——本気で思っていた。
「だから……はるくんと、もう一度、話そうかな」
ぽつりとこぼしたその声は、自分でも驚くくらい小さかった。
でも、咲にはきちんと届いていたらしい。
「えっ……ゆいぴ……」
彼女がこちらを見る。目を大きく見開いて、言葉を飲み込んでいる。
私はゆっくりと顔を上げて、咲の目をまっすぐに見返した。
「もう一度、きちんと伝えたい。私の気持ちを、全部」
「……それって……告白するってこと?」
「うん……そうなる、かな」
怖い。ほんとうは、すごく怖い。
前にも1回「好き」と伝えて、断られている。
あの時は優しかったけれど、次は冷たく拒否されたら、たぶんもう……今までみたいには戻れないかもしれない。
でも、何もしないまま終わるなんて——その方が、もっと後悔すると思った。
私は唇を噛みしめて、ふたりの背中を見つめる。
「……私、はるくんのこと、諦めたくないの」
その一言が、教室の喧騒に溶けていく。
私は再び、はるくんの方を見た。
ふたりが並んで笑っている。
——並んで、笑っている。
その光景に、どうしてか涙が出そうになった。
「……いいと思うよ、ゆいぴ。好きな人に想いを伝えるのって、勇気いるけど、すごくかっこいいよ」
咲の言葉が、強く私の背中を押す。
「ありがとう、咲。私……きちんと伝えてくるね」
言葉にしてはじめて、腹の底に灯るような、強い決意を感じた。
もう振り返らない。もう、目をそらさない。
昼休み終了を告げるチャイムが鳴った。
教室にざわめきが広がっていく。
でも私は、誰よりも落ち着きを持ったまま立ち上がった。
この気持ちに、きちんと名前をつけに行く。
終わらせるためではない。
——私のために。私が、ここから先へ進むために。
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