彼の愛に堕ちて溺れて

螢日ユタ

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episode4

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そんな夏輝を思いながら試着をしてみた私は普段することの無いパンツコーデに若干不安を覚えつつも、夏輝が選んでくれたんだからきっと大丈夫とサイズ感などを確認して試着を終えた。


そして、試着を終えてレジで会計をしようとすると夏輝が傍へやって来て、


「支払い、これでお願いします」


私が現金を出すより先にカードを店員に手渡してしまう。


「夏輝!? え? いいよ、これは私の買い物だから――」

「良いから良いから。俺が選んだ服なんだから、俺からのプレゼントってことで。ね? あ、すみません、これでお願いします」

「かしこまりました」


私たちのやり取りに若干困った表情を浮かべた店員に「お願いします」と夏輝がカードを差し出したことで、結局会計は夏輝が済ませてしまったのだ。


「はい、未來ちゃん」

「……ありがとう。本当に良かったの?」

「勿論。むしろ、俺がプレゼントした服を未來ちゃんが着てきてくれるんだと思ったら嬉しいからね」

「……夏輝……。それじゃあ、逆に夏輝の服は私にプレゼントさせて? ね?」

「……分かった。それじゃあ俺のときはそうさせてもらおうかな」

「うん!」


きっと夏輝としてはプレゼントし合うつもりは無かったのだと思う。


だけど、そうしないと私が納得してくれないことを分かってくれているから首を縦に振ってくれたのかなと思った。


無事私の服を選び終えたので次は夏輝の服を見る為に男性の服が売っている店を見て回る。


今日の夏輝の服装は白のタイプライターシャツに紺のストレートデニムというシンプルなもの。


出逢ったときもそうだけど、基本モノトーンコーデが好きな印象を受ける。


夏輝なら、明るいカラーの服も似合いそうだから、思いきって明るめな色の服……選んじゃおうかな?


そう思った私は無意識に明るめの色の服ばかりを手に取っていく。


夏輝はというと、店員さんに声掛けをされて何やら話し込んでいるようなので、私はひたすら服を合わせながら、夏輝に合いそうなコーディネートを組んでいく。


そして、考えた末に私が選んだのは、紺と白のボーダーのトップスと紺のカーディガン、それからベージュのズボン。


「こんな感じでどうかな? 本当はもっと赤系とか青系とか、色物を選ぼうかなともおもったんだけど、こういう方が抵抗無いかなって」

「色合いも良いね。普段はつい白とか黒とか選びがちだったから明る過ぎる色の服はちょっと抵抗あったから安心した。それじゃあちょっと試着してくるね」

「うん、分かった」


夏輝の反応も良くて安心した私は再び店内を見て回りながら試着を終えるのを待ち、サイズ感など問題無かったようなので約束通り私が夏輝の服を購入して、


「はい、どうぞ」

「ありがとう」


支払いを終えた私は笑顔で商品を手渡した。


「何だか嬉しいなぁ、こういうプレゼントって」


受け取った夏輝は嬉しそうな表情でそんなことを言ってくる。


夏輝だったら服に限らず何かしらのプレゼントは貰い慣れていると思っていた私はちょっとだけ驚いてしまう。


「私も嬉しい! 着ていくのもすごく楽しみだし!」

「だよね。俺も着て行くの楽しみだし、俺が選んだ服を着てくる未來ちゃんを見るのも楽しみだよ」

「私のやりたかったことは叶ったけど、夏輝は何か見たいものとかやりたいこと、ある?」

「うーん、そうだなぁ……特に無いかなぁ」

「そっか。それじゃあ、もうお店出ようか? あんまり遅くなると道も混んじゃうと思うし」

「だね。けどちょっとその前に、悪いんだけどさっき仕事の電話が掛かってきてて、車に乗る前に済ませて来たいから少しだけ待っててくれる?」

「そうなんだ? うん、分かった。それじゃあ……私、あのショップ見てるよ」


仕事の電話ならば仕方が無いと、近くにあるインテリア雑貨などが売っているショップに目がいった私はそこで待っていることを告げると、


「分かった。それじゃあちょっとだけ、待っててね。あ、くれぐれもあの店からは出ないでね? それから、知らない男に声掛けられても付いていっちゃ、駄目だからね?」


ふざけているのか、そんなこと言ってくる夏輝。


「もう、子供じゃないんだから、平気だよ。ちゃんとここで夏輝が戻ってくるの待ってるから……なるべく早く来てね?」


だから私もそれに便乗する形で返しながらも早く来て欲しいことを伝えると、


「そういうとこ、本当に可愛い。分かってる。すぐ戻って来るから待っててね」


人目もあるのに、額にチュッと口付けた夏輝は笑顔で手を振りながら出口の方へ向かって行った。


「もう、こんなところで……」


周りの視線を気にしながらポツリと呟きつつも、内心嬉しかった私は夏輝を待つ為に近くのショップへ入って行った。


店内を一回りしながら夏輝が戻るのを待っていると、可愛いマグカップを見つけて手に取った。


「可愛いなぁ。でも、カップは結構あるし、そんなに使わないんだよね……」


こういう風に可愛いものを見つけては都度買っていたせいで家には未だに使っていないマグカップがいくつかあることを思いながら棚に戻すと、次に目に入ったのは可愛いお皿たち。


「食器もなぁ、結構あるんだけど、ついつい買っちゃうんだよね……」


お洒落なものや可愛いものに目がない私はついつい買ってしまうものの、忙しい日が続くと料理をしない事も多く、結局決まった食器しか棚から出さない事がほとんど。


「駄目だ、買ってもどうせしまい込んじゃうだけだもん。やめやめ」


一度食器から離れた私が次に向かったのはインテリアコーナー。


「この寝具可愛いなぁ。シーツとか、そろそろ新調してもいいかも」


今後も夏輝が部屋に来ることを考えると模様替えなんかもしたいし、彼に可愛い部屋と思われたい私は少しガーリーっぽい寝具を調達しようと食い入るように品定めしていく。


「うーん、これとこれ、どっちにしよう……」


白色にするか、淡いピンク色にするかで悩んでいると、


「俺的には、こっちのほうが好みかな?」


そんな声が後ろから掛けられた。


「夏輝! もう電話は済んだの?」

「うん、大した用じゃ無かったみたいだから」


声の主は電話を終えて戻って来た夏輝だった。


「そうなんだね」

「未來ちゃん、それ買うの?」

「あ、うん。シーツとか、暫く買ってなかったなって思ったから、可愛いの見つけたし買っちゃおうかなって思って。夏輝の言う通り白色にしようかな?」

「いいの? それはあくまでも俺の意見だし……」

「いいのいいの! 迷ってたから決めて貰えたほうが嬉しいし。これ、買ってくるね」

「うん、分かった」


私はピンク色のほうを棚に戻して白色のほうを持ってレジへと向かって行った。


夏輝はあくまでも俺の意見って言ったけど、私としては他でもない夏輝の意見が聞けたから嬉しかったし、夏輝の意見を聞いて決め手にするのは当たり前。


だって、次に夏輝が来てくれたとき、可愛い部屋だな、俺好みだなって思われたいんだから。
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