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あくまちゃんとみるく【1】
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――シュガーリウム城、甘味保管庫前。
「おおーい、オレ様たちが帰ってきたぞー!」
遠征任務を終えた悪魔たちが現れた。激情が背負うのは内部が甘味次元に繋がり、砂糖山を軽々と収納できる《スイートリュームバッグ》。甘い香りを漂わせながらシュガーリウム城前で元気よく叫び、集まった姫たちとてんしちゃんみにたちの前で胸を張る。
「皆様、お帰りなさいませ! 早速ですが報告したいことが――」
「待てよなゆ姫。まずは自慢させてくれ。オレ様たち全員、うずうずしてんだ」
あくまちゃんが言うと、激情が前に出て燃えるような瞳で笑い、背からおろしたバッグに手を突っ込み、ずるすると巨大なドラゴンを引っ張り出した。
「みろよ、こいつがヌガティーヌドラゴンだ! 俺の黒蜜焔とタメ張る、あっちい焔を吐くやつだったがみんなで協力してぶっ倒したんだ! すげえだろ!?」
ヌガティーヌドラゴンは灼蜜火山に棲息するドラゴン。火山の熱に鍛えられた琥珀色の鱗は香ばしい甘香を放ち、きらきらと輝いている。
「まあ、素晴らしい……」
なゆ姫はそっと手を伸ばして鱗に触れ、そのほのかなぬくもりに目を輝かせた。
「この鱗、まるで宝石のようです。市場に並べばしばらく話題は尽きないでしょう」
「そして、これで火山街の皆様も安心して暮らせるはずですわ。みなさん、ありがとうございました」
なゆ姫の言葉に悪魔たちは喜びを隠せない様子だった。
「姫の感謝の言葉……それは黒蜜に並ぶ喜び! 素晴らしきかな、なゆ国!」
演出が腕を大きく広げ、幻影の花吹雪を降らせる。
「守れてよかったです、火山街のみなさんを……」
「我らの連携は高水準だがまだまだ改善の余地がある。本部で案を練らなければ……」
「冷徹ぅ~! とか言いつつ口元が緩んでるぞ! 今は素直に喜ぼうぜ!」
高笑いし、共に踊る激情と演出。手を取り合って微笑む感傷と内気。言葉とは裏腹に口元を緩ませた冷徹と肩を組むツッコミ。その様子を研究にくっつかれながら見ていたあくまちゃんが、ふと思い出したように。
「……なゆ姫、んで報告ってなんなんだ?」
「あっ、そうでした……喜んでくださいみなさん! みるくちゃんがもうすぐこちらに来るのですわ!」
「みるく……だと……!?」
雷に打たれたかのように目を見開き、言葉がでないあくまちゃん。周囲の声も遠く聞こえて、高鳴る胸に手をやっていた。
――その様子に、全員が確信していた。また、あくまちゃんのあれが始まると。
◆◇◆
――深夜、スイートデビルノクティス本部訓練場。
普段、悪魔たちの戦闘訓練に使われる訓練場。しかし今日、その照明が照らすのは一心不乱に黒蜜サイリウムを振るあくまちゃんだった。壁のスピーカーから流れる音楽は、みるくちゃんの曲。
「甘味キラリ! みんなの笑顔ォォォォ――ッ!」
曲に合わせて激しくジャンプ。汗が舞い散り、黒蜜サイリウムが弧を描く。あくまちゃんは今、どんな戦場よりも真剣で、熱意を宿していた。黒蜜ドリンクを飲んで、汗をタオルで拭く。
「くそッ! 動きが一秒遅れた……! こんなんじゃみるくのファン失格だ!」
サイリウムを手に動きをイメージしぶつぶつと呟くあくまちゃん。
「行くぞ……! なゆ国の空に、広がる甘い虹ィィィィ――ッ!!」
訓練に打ち込むあくまちゃんを魔法で姿を消して見守る一行。てんしちゃんはハンカチを取り出して涙を拭いていた。
「彼女のこんなにも真剣な姿はなかなか見られるものではありません。あくまちゃん、本気でみるくちゃんになゆしているのですね……」
「もち……あくまちゃん、とっても頑張ってて尊いの。二人にはましゅまろみたいにくっついてほしいの」
「作戦として有効なのはみるくちゃんからの接近だな……」
腕を組んで考え込む冷徹。
「……そう言えば、あくまちゃんの部屋にはみるくちゃんへの思いを綴った歌があるらしい。それを伝えて歌ってもらうように頼む、というのはどうだろう」
「……冷徹、お前なんでそんなことしってるんだ?」
ツッコミが問いかける。
「この前、酒場なゆ亭で二人で飲んでいてな。べろべろに酔ったあくまちゃんから聞いたんだ。本人はなにも覚えていないようだが。曲名は、確か……すきだぬい……」
「「「すきだぬい……!?」」」
「あくまちゃん……なんて愛おしいお歌を……」
驚いて立ててしまった音であくまちゃんに気付かれそうになった一行はあわてて逃げ出し、その先で顔を突き合わせる。
「方向性が定まったな」
「必ず、成功させましょう。あくまちゃんとみるくちゃんが恋人になるのはぼくたちにも喜ばしいことですから……」
「ハートフル・スイートミッション、feat:すきだぬい、ですわね……!」
――その頃、激情は縄で縛られ、ガーディアンエンジェルハウスでみにたちに見張られていた。
「なんでオレだけぇぇぇぇ!」
満場一致で、激情は黙っていられないからと置き去りにされたのだった。
「ごめんなさいっす、激情っち!」
「許してくださいですの。ほかのみなさんに頼まれて……!」
なにはともあれ、作戦は決定した。
「おおーい、オレ様たちが帰ってきたぞー!」
遠征任務を終えた悪魔たちが現れた。激情が背負うのは内部が甘味次元に繋がり、砂糖山を軽々と収納できる《スイートリュームバッグ》。甘い香りを漂わせながらシュガーリウム城前で元気よく叫び、集まった姫たちとてんしちゃんみにたちの前で胸を張る。
「皆様、お帰りなさいませ! 早速ですが報告したいことが――」
「待てよなゆ姫。まずは自慢させてくれ。オレ様たち全員、うずうずしてんだ」
あくまちゃんが言うと、激情が前に出て燃えるような瞳で笑い、背からおろしたバッグに手を突っ込み、ずるすると巨大なドラゴンを引っ張り出した。
「みろよ、こいつがヌガティーヌドラゴンだ! 俺の黒蜜焔とタメ張る、あっちい焔を吐くやつだったがみんなで協力してぶっ倒したんだ! すげえだろ!?」
ヌガティーヌドラゴンは灼蜜火山に棲息するドラゴン。火山の熱に鍛えられた琥珀色の鱗は香ばしい甘香を放ち、きらきらと輝いている。
「まあ、素晴らしい……」
なゆ姫はそっと手を伸ばして鱗に触れ、そのほのかなぬくもりに目を輝かせた。
「この鱗、まるで宝石のようです。市場に並べばしばらく話題は尽きないでしょう」
「そして、これで火山街の皆様も安心して暮らせるはずですわ。みなさん、ありがとうございました」
なゆ姫の言葉に悪魔たちは喜びを隠せない様子だった。
「姫の感謝の言葉……それは黒蜜に並ぶ喜び! 素晴らしきかな、なゆ国!」
演出が腕を大きく広げ、幻影の花吹雪を降らせる。
「守れてよかったです、火山街のみなさんを……」
「我らの連携は高水準だがまだまだ改善の余地がある。本部で案を練らなければ……」
「冷徹ぅ~! とか言いつつ口元が緩んでるぞ! 今は素直に喜ぼうぜ!」
高笑いし、共に踊る激情と演出。手を取り合って微笑む感傷と内気。言葉とは裏腹に口元を緩ませた冷徹と肩を組むツッコミ。その様子を研究にくっつかれながら見ていたあくまちゃんが、ふと思い出したように。
「……なゆ姫、んで報告ってなんなんだ?」
「あっ、そうでした……喜んでくださいみなさん! みるくちゃんがもうすぐこちらに来るのですわ!」
「みるく……だと……!?」
雷に打たれたかのように目を見開き、言葉がでないあくまちゃん。周囲の声も遠く聞こえて、高鳴る胸に手をやっていた。
――その様子に、全員が確信していた。また、あくまちゃんのあれが始まると。
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――深夜、スイートデビルノクティス本部訓練場。
普段、悪魔たちの戦闘訓練に使われる訓練場。しかし今日、その照明が照らすのは一心不乱に黒蜜サイリウムを振るあくまちゃんだった。壁のスピーカーから流れる音楽は、みるくちゃんの曲。
「甘味キラリ! みんなの笑顔ォォォォ――ッ!」
曲に合わせて激しくジャンプ。汗が舞い散り、黒蜜サイリウムが弧を描く。あくまちゃんは今、どんな戦場よりも真剣で、熱意を宿していた。黒蜜ドリンクを飲んで、汗をタオルで拭く。
「くそッ! 動きが一秒遅れた……! こんなんじゃみるくのファン失格だ!」
サイリウムを手に動きをイメージしぶつぶつと呟くあくまちゃん。
「行くぞ……! なゆ国の空に、広がる甘い虹ィィィィ――ッ!!」
訓練に打ち込むあくまちゃんを魔法で姿を消して見守る一行。てんしちゃんはハンカチを取り出して涙を拭いていた。
「彼女のこんなにも真剣な姿はなかなか見られるものではありません。あくまちゃん、本気でみるくちゃんになゆしているのですね……」
「もち……あくまちゃん、とっても頑張ってて尊いの。二人にはましゅまろみたいにくっついてほしいの」
「作戦として有効なのはみるくちゃんからの接近だな……」
腕を組んで考え込む冷徹。
「……そう言えば、あくまちゃんの部屋にはみるくちゃんへの思いを綴った歌があるらしい。それを伝えて歌ってもらうように頼む、というのはどうだろう」
「……冷徹、お前なんでそんなことしってるんだ?」
ツッコミが問いかける。
「この前、酒場なゆ亭で二人で飲んでいてな。べろべろに酔ったあくまちゃんから聞いたんだ。本人はなにも覚えていないようだが。曲名は、確か……すきだぬい……」
「「「すきだぬい……!?」」」
「あくまちゃん……なんて愛おしいお歌を……」
驚いて立ててしまった音であくまちゃんに気付かれそうになった一行はあわてて逃げ出し、その先で顔を突き合わせる。
「方向性が定まったな」
「必ず、成功させましょう。あくまちゃんとみるくちゃんが恋人になるのはぼくたちにも喜ばしいことですから……」
「ハートフル・スイートミッション、feat:すきだぬい、ですわね……!」
――その頃、激情は縄で縛られ、ガーディアンエンジェルハウスでみにたちに見張られていた。
「なんでオレだけぇぇぇぇ!」
満場一致で、激情は黙っていられないからと置き去りにされたのだった。
「ごめんなさいっす、激情っち!」
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なにはともあれ、作戦は決定した。
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