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あくまちゃんとみるく【2】
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あくまちゃんが訓練場でオタ芸訓練に心血を注いでいる頃、冷徹と感傷があくまちゃんの部屋への侵入を試みていた。
その目的は、すきだぬいの歌詞の入手。
扉に刻まれた複雑な魔法紋様は、触れた者の特定の記憶に反応しない限り決して開くことはない。
「……感傷、お前の出番だ」
感傷は冷徹の声に緊張気味にうなずき、黒蜜魔力を込めて扉に手をかざした。
「ま、任せてください! あくまちゃん、すみません。でも、恋愛成就のため……!」
視界が揺れ、感傷の頭の中に扉の前に立つあくまちゃんの姿が浮かび上がる。その記憶を読み取ろうと、意識をより深く集中させる。
「もっと、もっと深く……」
――あくまちゃんのみるくへの思い、甘くて切ない感情が胸に押し寄せ、まつ毛が震えた。みるくの音楽を聴きながらくつろぐあくまちゃんの姿に、その思いの深さに感傷は息を呑んだ。
「見えました……クロミツドールっ!」
足元に黒蜜が広がり、少しずつあくまちゃんのシルエットを形成する。ドールが扉に触れると魔法が解け、ゆっくりと開いた。役目を果たしたドールは消え、ふらりと感傷は揺らめく。
「よくやったな。あとは任せておけ」
冷徹が感傷の小さな体を支え、壁に優しく寄りかからせた。
「……お願いします、冷徹さん」
優しく感傷の頭を撫で、冷徹は感傷を残して部屋へと踏み込んだ。
黒蜜灯が照らす室内。色とりどりの甘味飾りと、黒いデスクチェア。デスクにはPC。起動するとパスワード入力画面が現れたが、冷徹は迷いなく打ち込む。
「……みるく、か。あの扉を突破できるの感傷ぐらいのものとはいえ、これではパスワードとして無意味だぞ、あくまちゃん……」
操作してメモ帳を開く。そこには、すきだぬいという名のファイルがあった。クリックして開き、冷徹はそこにあった歌詞を黒蜜ペンでメモに素早く書き記した。
「ミッション完了だ」
眼鏡を指で押し上げ、部屋をあとにした冷徹は感傷に肩を貸して共に仲間たちのところへ戻った。
◆◇◆
その頃、シュガーリウム城の中庭では、みるくのための特設ステージ作りが進んでいた。
「姫達が見てくれてるだけで俺たちみにはやる気増し増しっすー!」
「っしゃあ、見てろよ! 歴史に残るステージをつくってやるぜ!」
「中央はハート型の照明床、左右には灯蜜噴水! 甘味の光が走りますよー!」
激情とツッコミ、ルシェはみに悪魔と共に建設組。内気とてんしちゃん、みに天使たちは厨房と中庭を往復し、甘味を皆に振る舞っている。
「素晴らしい! このステージの構造がみるく嬢を更なる高みへと押し上げるのだ!」
演出は自ら書き上げた図面を片手に喜びに震え、ましゅ姫となゆ姫がその光景を和やかに見守っている。
そこに戻ってきた冷徹と感傷。疲れた様子の感傷には、なゆ姫から黒蜜茶が手渡された。
「ありがとうございます、なゆ姫。あ、とっても美味しいです……」
「無事手に入れた。これがあくまちゃんが書いたすきだぬい、だ」
全員の視線が冷徹が掲げたメモ帳に集まった。
「見事なまでのガチ恋ソング……だな。ってかこの歌、明らかにみるくちゃんとあくまちゃんが二人で歌う感じじゃねえか?」
ツッコミが言い、なゆ姫がそれに同意する。
「そうですわね……みるくちゃんは歌から相手の気持ちを読む才能の持ち主。これを見れば、あくまちゃんに一緒に歌おうと持ちかけるはずですわ。
そして、あくまちゃんはみるくちゃんにそう言われたら断れないでしょう」
「わ、あくまちゃんとみるくちゃんがこの歌で共演なんて……想像しただけでぽかぽかします」
「俺もだぜ! 胸が熱くなってきやがった!」
「お前はいつも熱いだろうが! だがまあ、楽しみだな!」
「撮影用スイートドローンはばっちり調整済み! みるくちゃんとあくまちゃんが一緒にステージに立つなんて初ですからね! これは式で流しちゃうやつですねえ~!」
甘い気持ちに包まれながら誰もがその日を心待ちにする。
だがその背後へ、忍び寄る闇にはまだ誰も気づかない。
◆◇◆
とある森の中、黒ローブの集団が焚き火を囲んでいた。その長らしき人物が掲げた小瓶のなかでは、黒い液体が不吉な輝きを放っていた。
「なゆ姫は護衛が厚く、強大な力の持ち主。故に手は出せないが、あのアイドルのみるくなら可能だ。やつもまた、なゆの血に連なる者の一人……反転させ、闇なゆとすれば災禍としてなゆ国に混乱をもたらすだろう。我らはその混乱に乗じて襲撃し、必ず全員を討つ」
長はなゆ姫、悪魔たち、てんしちゃん、ましゅ姫、みるくの写真を握りつぶし、炎に放り込んだ。
「待っていろ、なゆ国! 貴様らの甘い繁栄は間も無く終わる……この心の傷は、貴様らの死でしか癒えぬのだ!」
長は胸に爪を突き立て、全身に震えを走らせた。写真を飲み込んだ炎が爆ぜ、黒ローブの影が揺れる。
「なゆ国の終焉は、我々の手で――」
長の声に応える、黒ローブたちの凶声が森の闇へ溶けていった。
その目的は、すきだぬいの歌詞の入手。
扉に刻まれた複雑な魔法紋様は、触れた者の特定の記憶に反応しない限り決して開くことはない。
「……感傷、お前の出番だ」
感傷は冷徹の声に緊張気味にうなずき、黒蜜魔力を込めて扉に手をかざした。
「ま、任せてください! あくまちゃん、すみません。でも、恋愛成就のため……!」
視界が揺れ、感傷の頭の中に扉の前に立つあくまちゃんの姿が浮かび上がる。その記憶を読み取ろうと、意識をより深く集中させる。
「もっと、もっと深く……」
――あくまちゃんのみるくへの思い、甘くて切ない感情が胸に押し寄せ、まつ毛が震えた。みるくの音楽を聴きながらくつろぐあくまちゃんの姿に、その思いの深さに感傷は息を呑んだ。
「見えました……クロミツドールっ!」
足元に黒蜜が広がり、少しずつあくまちゃんのシルエットを形成する。ドールが扉に触れると魔法が解け、ゆっくりと開いた。役目を果たしたドールは消え、ふらりと感傷は揺らめく。
「よくやったな。あとは任せておけ」
冷徹が感傷の小さな体を支え、壁に優しく寄りかからせた。
「……お願いします、冷徹さん」
優しく感傷の頭を撫で、冷徹は感傷を残して部屋へと踏み込んだ。
黒蜜灯が照らす室内。色とりどりの甘味飾りと、黒いデスクチェア。デスクにはPC。起動するとパスワード入力画面が現れたが、冷徹は迷いなく打ち込む。
「……みるく、か。あの扉を突破できるの感傷ぐらいのものとはいえ、これではパスワードとして無意味だぞ、あくまちゃん……」
操作してメモ帳を開く。そこには、すきだぬいという名のファイルがあった。クリックして開き、冷徹はそこにあった歌詞を黒蜜ペンでメモに素早く書き記した。
「ミッション完了だ」
眼鏡を指で押し上げ、部屋をあとにした冷徹は感傷に肩を貸して共に仲間たちのところへ戻った。
◆◇◆
その頃、シュガーリウム城の中庭では、みるくのための特設ステージ作りが進んでいた。
「姫達が見てくれてるだけで俺たちみにはやる気増し増しっすー!」
「っしゃあ、見てろよ! 歴史に残るステージをつくってやるぜ!」
「中央はハート型の照明床、左右には灯蜜噴水! 甘味の光が走りますよー!」
激情とツッコミ、ルシェはみに悪魔と共に建設組。内気とてんしちゃん、みに天使たちは厨房と中庭を往復し、甘味を皆に振る舞っている。
「素晴らしい! このステージの構造がみるく嬢を更なる高みへと押し上げるのだ!」
演出は自ら書き上げた図面を片手に喜びに震え、ましゅ姫となゆ姫がその光景を和やかに見守っている。
そこに戻ってきた冷徹と感傷。疲れた様子の感傷には、なゆ姫から黒蜜茶が手渡された。
「ありがとうございます、なゆ姫。あ、とっても美味しいです……」
「無事手に入れた。これがあくまちゃんが書いたすきだぬい、だ」
全員の視線が冷徹が掲げたメモ帳に集まった。
「見事なまでのガチ恋ソング……だな。ってかこの歌、明らかにみるくちゃんとあくまちゃんが二人で歌う感じじゃねえか?」
ツッコミが言い、なゆ姫がそれに同意する。
「そうですわね……みるくちゃんは歌から相手の気持ちを読む才能の持ち主。これを見れば、あくまちゃんに一緒に歌おうと持ちかけるはずですわ。
そして、あくまちゃんはみるくちゃんにそう言われたら断れないでしょう」
「わ、あくまちゃんとみるくちゃんがこの歌で共演なんて……想像しただけでぽかぽかします」
「俺もだぜ! 胸が熱くなってきやがった!」
「お前はいつも熱いだろうが! だがまあ、楽しみだな!」
「撮影用スイートドローンはばっちり調整済み! みるくちゃんとあくまちゃんが一緒にステージに立つなんて初ですからね! これは式で流しちゃうやつですねえ~!」
甘い気持ちに包まれながら誰もがその日を心待ちにする。
だがその背後へ、忍び寄る闇にはまだ誰も気づかない。
◆◇◆
とある森の中、黒ローブの集団が焚き火を囲んでいた。その長らしき人物が掲げた小瓶のなかでは、黒い液体が不吉な輝きを放っていた。
「なゆ姫は護衛が厚く、強大な力の持ち主。故に手は出せないが、あのアイドルのみるくなら可能だ。やつもまた、なゆの血に連なる者の一人……反転させ、闇なゆとすれば災禍としてなゆ国に混乱をもたらすだろう。我らはその混乱に乗じて襲撃し、必ず全員を討つ」
長はなゆ姫、悪魔たち、てんしちゃん、ましゅ姫、みるくの写真を握りつぶし、炎に放り込んだ。
「待っていろ、なゆ国! 貴様らの甘い繁栄は間も無く終わる……この心の傷は、貴様らの死でしか癒えぬのだ!」
長は胸に爪を突き立て、全身に震えを走らせた。写真を飲み込んだ炎が爆ぜ、黒ローブの影が揺れる。
「なゆ国の終焉は、我々の手で――」
長の声に応える、黒ローブたちの凶声が森の闇へ溶けていった。
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