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冷たい眼差し、冷徹たる所以
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「冷徹さん、どこへ行くんですか?」
みるくのためのステージ設営が着々と進められているなか、仲間たちに席を外すと告げた冷徹に感傷が声をかけた。
「あくまちゃんが捕らえた、違法甘味に手を出した貴族のところだ。奴が渇毒を入手した経路と、シュガーリウム城へスイートドールを造らせ、送り込んだ術を探っていたのだが、どうにも府に落ちん。奴はそんなことができる器ではない。渇毒は下手に触れれば命を落とす。あのスイートドールを製造させた研究者もそう。我々に気付かれず、あれだけの人数を拐うなど奴には不可能だ。……背後に何者かがいる」
感傷は思わず眉を寄せる。
「背後……って。じゃあまだ、ダム襲撃から始まったあの件はなにも終わっていないことですか?」
「……そうだ。敵は甘味の仕組みを理解した上で、俺たちの国の急所に触れようとした。感傷、お前も決して気は抜くな。あくまちゃんがみるくに熱を上げている今、集中させてやるのが我々の役目だ」
言って、冷徹は短く息を吐くとゆっくりと歩きす。
「そうですね、あくまちゃんはみるくちゃんを応援しようとあんなに頑張ってるんですから……。でも、冷徹さんもあまり根を詰めすぎないように。ボクも、他のみんなもいつでも言ってくれれば動きますからね」
感傷のその言葉に、冷徹はふっと微笑んだ。
「無論だ。…心遣い、感謝する」
◆◇◆
――なゆ黒糖監獄。
魔法で何重にも強化された、堅牢な黒糖の外壁に囲まれた冷たい雰囲気を放つ建物。見張りのみに悪魔に、許可証を提示して冷徹は中へと入っていく。
「冷徹殿、連れて参りました!」
看守服を着たみに悪魔たちに見張られ、尋問室へと連行されてきた件の無能貴族に、椅子に腰かけた冷徹が眼鏡の奥の鋭い眼光を向ける。
「……違法甘味に手を出し、不当に民を苦しめた貴様など即刻晒し首にしてしまえばいいと俺はなゆ姫に進言した。だが、貴様がまだ生きているのはその姫の優しさあってのことだ。俺は、貴様の命に毛程の価値も感じていない。これから、その事実を胸に刻んで口を動かせ」
無能貴族は、蛇を前にした小動物のように身を縮こまらせ、顔を蒼白にして息を飲んだ。側に控えるみにたちの表情にも緊張が広がる。
「……ひいっ! そ、そんな……!」
冷徹が指先で眼鏡を押し上げる。部屋の温度が、一気に氷点下に突入したかのようだった。あまりの寒さに震えるみにたちと、無能貴族を前に冷徹だけが淡々としていた。
「さあ、話せ。貴様に渇毒を与え、研究者たちを誘拐した黒幕について。その喉につっかえているものを全て吐き出すまで、俺は貴様の側を離れない。」
黒糖監獄の壁さえ震わせるその冷気の圧に、無能貴族は平伏した。
「……知ってることは、全てお話しします……!」
冷徹が放っていた冷気が鳴りを潜めた。無能貴族が震える声で語る内容を、調書に黒蜜筆で書き記していく。
「怪しげなローブに身を包んだ、老年の男性、少年二人、そして女性。顔は不明。渇毒の成分を内包した氷針を渡され、ヒポポタスに吹き矢で撃ち込んだ。研究者の誘拐は、女性の転移魔法によるものだった」
おずおずと、考え込む冷徹を前に無能貴族が手を上げた。
「そういえば……気になることが……」
「なんだ」
「一瞬だけですが、女性からは微かに甘天界の魔力残滓が……。あと、その女性の左目は灰色に濁っていました」
「……灰色。甘天界は、離反天使への罰に視力剥奪があり、執行されると目が灰色に染まると聞いたことがある。そいつらのなかには堕天使がいると考えてよさそうだな。」
冷徹の目が細くなる。
「……もう証言は十分だ、檻に戻してくれ。協力感謝する」
みにたちにそう告げ、席を立つと情けなく震える貴族が。
「ど、どど……どうなるんですか……? 私は……!」
「知らん」
冷たい一言。冷徹は無能貴族の胸ぐらを掴み、睨み付けた。
「ただひとつだけ言っておく。――二度と違法甘味に手を出そうなどと思うな。
甘味は命だ。それを弄ぶ者の末路は、常に同じだ」
冷徹が手を離し、立ち去ると同時に無能貴族は床の上に崩れ落ちた。
――冷徹が去ったあと、録画していた尋問シーンを見返してうっとりとするみに悪魔たち。
「はわぁ……冷徹殿、寒かったし怖かったけどかっこよかった……! 特に最後のお言葉、キュンってしちゃった! もうこれ来月の標語にしちゃお!」
「速攻で証言を引き出してみせたあの手管! 冷徹の名に恥じない凄さで……もう、俺っち痺れたっすよ!」
そして、黒糖監獄で働くみにたちの中には冷徹のファンが増えたのだった。
みるくのためのステージ設営が着々と進められているなか、仲間たちに席を外すと告げた冷徹に感傷が声をかけた。
「あくまちゃんが捕らえた、違法甘味に手を出した貴族のところだ。奴が渇毒を入手した経路と、シュガーリウム城へスイートドールを造らせ、送り込んだ術を探っていたのだが、どうにも府に落ちん。奴はそんなことができる器ではない。渇毒は下手に触れれば命を落とす。あのスイートドールを製造させた研究者もそう。我々に気付かれず、あれだけの人数を拐うなど奴には不可能だ。……背後に何者かがいる」
感傷は思わず眉を寄せる。
「背後……って。じゃあまだ、ダム襲撃から始まったあの件はなにも終わっていないことですか?」
「……そうだ。敵は甘味の仕組みを理解した上で、俺たちの国の急所に触れようとした。感傷、お前も決して気は抜くな。あくまちゃんがみるくに熱を上げている今、集中させてやるのが我々の役目だ」
言って、冷徹は短く息を吐くとゆっくりと歩きす。
「そうですね、あくまちゃんはみるくちゃんを応援しようとあんなに頑張ってるんですから……。でも、冷徹さんもあまり根を詰めすぎないように。ボクも、他のみんなもいつでも言ってくれれば動きますからね」
感傷のその言葉に、冷徹はふっと微笑んだ。
「無論だ。…心遣い、感謝する」
◆◇◆
――なゆ黒糖監獄。
魔法で何重にも強化された、堅牢な黒糖の外壁に囲まれた冷たい雰囲気を放つ建物。見張りのみに悪魔に、許可証を提示して冷徹は中へと入っていく。
「冷徹殿、連れて参りました!」
看守服を着たみに悪魔たちに見張られ、尋問室へと連行されてきた件の無能貴族に、椅子に腰かけた冷徹が眼鏡の奥の鋭い眼光を向ける。
「……違法甘味に手を出し、不当に民を苦しめた貴様など即刻晒し首にしてしまえばいいと俺はなゆ姫に進言した。だが、貴様がまだ生きているのはその姫の優しさあってのことだ。俺は、貴様の命に毛程の価値も感じていない。これから、その事実を胸に刻んで口を動かせ」
無能貴族は、蛇を前にした小動物のように身を縮こまらせ、顔を蒼白にして息を飲んだ。側に控えるみにたちの表情にも緊張が広がる。
「……ひいっ! そ、そんな……!」
冷徹が指先で眼鏡を押し上げる。部屋の温度が、一気に氷点下に突入したかのようだった。あまりの寒さに震えるみにたちと、無能貴族を前に冷徹だけが淡々としていた。
「さあ、話せ。貴様に渇毒を与え、研究者たちを誘拐した黒幕について。その喉につっかえているものを全て吐き出すまで、俺は貴様の側を離れない。」
黒糖監獄の壁さえ震わせるその冷気の圧に、無能貴族は平伏した。
「……知ってることは、全てお話しします……!」
冷徹が放っていた冷気が鳴りを潜めた。無能貴族が震える声で語る内容を、調書に黒蜜筆で書き記していく。
「怪しげなローブに身を包んだ、老年の男性、少年二人、そして女性。顔は不明。渇毒の成分を内包した氷針を渡され、ヒポポタスに吹き矢で撃ち込んだ。研究者の誘拐は、女性の転移魔法によるものだった」
おずおずと、考え込む冷徹を前に無能貴族が手を上げた。
「そういえば……気になることが……」
「なんだ」
「一瞬だけですが、女性からは微かに甘天界の魔力残滓が……。あと、その女性の左目は灰色に濁っていました」
「……灰色。甘天界は、離反天使への罰に視力剥奪があり、執行されると目が灰色に染まると聞いたことがある。そいつらのなかには堕天使がいると考えてよさそうだな。」
冷徹の目が細くなる。
「……もう証言は十分だ、檻に戻してくれ。協力感謝する」
みにたちにそう告げ、席を立つと情けなく震える貴族が。
「ど、どど……どうなるんですか……? 私は……!」
「知らん」
冷たい一言。冷徹は無能貴族の胸ぐらを掴み、睨み付けた。
「ただひとつだけ言っておく。――二度と違法甘味に手を出そうなどと思うな。
甘味は命だ。それを弄ぶ者の末路は、常に同じだ」
冷徹が手を離し、立ち去ると同時に無能貴族は床の上に崩れ落ちた。
――冷徹が去ったあと、録画していた尋問シーンを見返してうっとりとするみに悪魔たち。
「はわぁ……冷徹殿、寒かったし怖かったけどかっこよかった……! 特に最後のお言葉、キュンってしちゃった! もうこれ来月の標語にしちゃお!」
「速攻で証言を引き出してみせたあの手管! 冷徹の名に恥じない凄さで……もう、俺っち痺れたっすよ!」
そして、黒糖監獄で働くみにたちの中には冷徹のファンが増えたのだった。
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