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主婦の遊び
しおりを挟む「じゃぁ、行ってくるから。また来週。」
「はい。行ってらっしゃい。気をつけて。」
私達夫婦の週末の会話。
夫は、今年の4月から単身赴任をしている。子供のいない私は一人暮らしになっていた。仕事もしていないので、主婦。毎日、同じ事の繰り返しに物足りなさを感じていた。
ある日、何気なくドラマを観ていた。主婦がアプリで不倫するという内容だった。私は、いつの間にか夢中になっていた。何もなく毎日過ごしている私には凄く刺激的だった。
ドラマが終わり、携帯でアプリを検索していた。そして、好奇心からダウンロードをした。一体どんなものなんだろう。まぁ、大した事ないだろうな。そんなに、私がはまることはないだろう。本当に軽い気持ちだった。
ハンドルネームから考えたり、自己紹介などはもちろん本当の事は書かなかった。独身という事にした。人妻なんて絶対書けない。そう思っていた。
すると、すぐに携帯が鳴り始めた。えっ?凄い。こんなに沢山くるものなの?驚きを隠せなかった。32歳って事にしてるのに、その位だと男性は興味を持たないと思っていたからだ。
1人ずつ自己紹介を見ていった。まぁ、皆当たり前だけど1夜限りを求めていた。そんなものだろうなぁと、読み進めていった。スクロールするとふと、手を止めた。
(35歳です。楽しくお話がしたいです。)
皆、体の関係を求めているのにこの人は違った。でも、そういうのを書かないでこの人も同じかもしれないとは思った。でも、気になり返事をした。
(私も楽しくお話がしたいです。)
しばらくすると、返事がきた。
(ありがとうございます。では、お会い出来ますか?)
(はい。)
明日、会う事になった。私は、ドキドキしながら洋服や下着まで選んでいた。夫の存在を忘れ、独身に戻った気持ちでいた。
待ち合わせの場所に着いた。落ち着いたワンピースに、化粧も落ち着いた感じにした。どんな人が来るのかドキドキが止まらなかった。もちろん指輪は、外してきた。
すると、スラッとしたスーツ姿の男性が声をかけてきた。
「あのう…華さんですか?」
「あっ。はい…」
「よかった。でも、こんな綺麗な方だとは思いませんでした。」
「いえいえ。こちらこそ…」
そう。ハンドルネームは華(はな)にしていたのだ。
「じゃぁ、行きましょうか。」
「はい…」
「やっぱり緊張しますよね~。でも、ホント気は使わないで下さいね。」
と。優(ゆう)さんは優しく話しながら店まで連れて行ってくれた。私も、少しずつ緊張がとれていった。お互い、緊張もほぐれたのか店に着く頃にはすっかり笑い合っていた。
食事が、終わるとバーにでも行こうという話になり優さんの行きつけのバーに行った。そこでも、彼は紳士的で私はちょっと惹かれていた。でも、飲み終わると帰ろうという話になった。その後を誘う素振りも見せずに優さんはタクシーをひろってくれた。
「今日は、本当にありがとうございました。楽しかったです。」
「こちらこそ、華さんに出会えてよかった。また連絡しますね。」
家に着き、シャワーを浴びながら優さんの事を考えていた。あんな紳士的な人がいるものなんだなぁ…誘われると思ってたのに…ちょっと残念だと思う私と、安堵する私もいた。
髪をタオルで乾かしながら、引き出しから結婚指輪を出し左手にはめた。手をかざしてあぁ結婚してるんだなぁと思った。夫の事を考えると、罪悪感に襲われた。何をやってるんだろうか。裏切りではないのか。そんな感情が溢れてきた。
すると、思わず夫に電話をした。
「どうしたんだ?」
「うん。ちょっと寂しくなっちゃって…」
「そうか。ごめんな。寂しい思いさせて。」
夫の優しさに涙がこぼれてきた。
「うん…。」
「今週末何処か行こうか。」
「うん。」
私は、本当に悪い事をしたと胸が締め付けられる思いだった。
それからは、アプリも消去して普段の生活に戻っていた。時々、優さんの事を思い出すが罪悪感の方が勝っていた。
ところが、それから3ヶ月程経ってから夫が中々帰ってこなくなった。週末も仕事と言ったり、夜も飲み会と連絡があまりつかなくなった。始めの頃は、そうか…と思っていたが、途中から確信に変わっていった。夫は、浮気をしている。でも、私は問い詰めたりしなかった。最後には私の所に帰って来てくれるならそれでいいと思った。
ある日突然、優さんから連絡がきた。私は連絡先を交換していた事をすっかり忘れていた。夫の浮気がわかり、私はもうどうにでもなれと思った。
待ち合わせ場所で優さんを待っていた。
「華さん!!お待たせしました。すみません。行きましょうか。」
「大丈夫ですよ。」
やはり、紳士的な優さんだった。彼は、以前と変わらず優しくて気さくで楽しかった…。食事をして、外に出た。
でも、今日の優さんは違った…。2人でタクシーに乗り、着いたのはホテル。チェックインを済ませ、部屋に入った。
「華さん…。」
キスを交わし、そのままベットに横たわった。優さんの白い肌…私は、流されるまま優さんに身を委ねた…久しぶりの男性の肌に私はもう何もかも忘れていた…
カチッとタバコに火をつけて優さんは吸いはじめた。私は、そんな優さんが愛おしく思えた。そして、またしがみつく様に優さんの腕の中に入った。
それからも、私と優さんの関係は続いた…
会う間隔はどんどん短くなっていった。
そんなある日、夫が帰ってきた。深刻な顔をしているのがわかった。夕飯の支度をして、さぁ食べようという時に夫は重い口を開いた。
「じ…実は…ごめん!!!!彼女に子供ができた!!だから、別れて欲しい。マンションや、慰謝料は払う。だから…ごめん!!!!」
「……わかったわ。いいわよ。子供もいないし…何となくわかってたから…」
「えっ?…」
「私だって、バカじゃないのよ。その位わかってたわよ。」
「本当にごめん!!!!」
そういうと、夫は出て行った…
私は、涙すら出なかった…。私には、優さんがいる…と。もちろん悲しかったけど、もう戻れないという烙印を押された気がして…
優さんに電話していた…。
「今日、今から会える?」
私は、走って待ち合わせ場所に行った。
優さんが来ると、思わず抱きついていた。
「どうしたの?急に…」
「好き…」
「俺もだよ…。やっと言ってくれた。ありがとう。」
「ごめんなさい…」
「謝らなくていいよ。色々、本当の事はわかっているから…」
「うん…」
それから私達は、愛を確かめ合った…涙を流しながら、優さんの腕の中で幸せを感じていた…
それから、夫とも離婚し正式に優さんと交際を始めた。この人となら幸せになれる…そう思った。
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