インシツな指先

依頼者

　性欲を処理した俺は、そのままとあるマンションへと向かった。
　そして、そこの管理人室の扉をノックする。
　すると、扉が小さく開き、白髪頭の小柄な男がひょっこりと顔だけ出した。顔立ちは優しそうだが、目つきは卑屈そうに細められている。

「き、来たか……入ってくれ」

　言われるままに管理人室に足を踏み入れると、中は男の見かけによらず、綺麗に整頓されていた。
　俺は鞄からSDカードの入ったケースを出し、男に手渡す。

「ほらよ、約束の品だ。中身を確認してくれ」
「わかった……！」

　急いでSDカードを携帯に挿入した男は、中の映像を見て、感嘆の声を漏らした。

「おお……おお……！素晴らしい！」
「しかし、アンタも中々だね。自分が管理してるマンションに住んでる人妻のパンツ見たさに１０万も払うなんて」
「そりゃあ、こんだけ美人ならな……！」
「見てるとこ見つからないようにしなよ。どうせ、このマンションにまだターゲットがいるんだろ？」
「う、うるさい！とにかく金は渡したんだから、誰にも言わないでくれよ！」
「わかってるよ。じゃあ、しっかり楽しんでくれ」

　俺は興奮を隠しきれてない男に背を向け、マンションを後にした。

　・・・

　今回のような事は三年前ぐらいから定期的に引き受けている。
　SNSを通じて始めた副業だが、口コミでそれなりに広まっているらしい。
　もちろん依頼は厳選しているし、必要とあらば探偵を雇って依頼者の身許を調べて安全を確保している。
　基本的に依頼料は最低５万円から受けている。それに加えて、さっきみたいに買い物に使った料金も請求している。
　まあ、それなりに割のいいバイトだ。捕まったら終わりだが。
　あの男のように絶対にバレてはいけない相手に対しての依頼は、俺も興奮するシチュエーションなので、いくら引き受けても構わないんだが、如何せん手間暇かかる。
　ちなみに来月はイベント会社の社長からの依頼で、イベントコンパニオンの逆さ撮りを依頼されている。これもいい稼ぎになりそうだ。

　・・・

　マンションを出て、歩道を歩いていると、偶然にもさっきの女店員とすれ違った。
　向こうは気づいてないようで、すたすたと歩いていくのを俺は見送り、今晩もう一度オカズにしようと誓った。　

　・・・

　お楽しみの場所は学校内では他にもある。
　それは部活動だ。
　ウチの学校は部活動に関しては比較的緩いので、顧問としては楽で助かる。
　そんな俺の担当する部活は……水泳部だ。
　更衣室で深呼吸をしてから、俺はプールへと向かった。