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そしてその日の晩。結局この日もシルバレットと仲直り出来ないまま夜を迎えてしまったアンネロッタは朝から続いた公務でクタクタになった体をベッドに横たえながら大きく息を吐いた。
「はあ……昨日あれほど後悔したのにどうしてまた言い返してしまったのかしら……」
昨日の後悔を忘れてつい言い返してしまった自分の愚かさにアンネロッタは自己嫌悪の溜め息を吐き、目蓋を閉じようとした時。ギシッと床が軋む音がアンネロッタの耳に響いた。その音にハッとなったアンネロッタが音のした方向……窓の方に顔を向けると、そこには胡乱な目をした男がナイフを片手に無言で立っていた。
「!!?」
明らかに自分を害しに来たであろう男の存在に声を詰まらせたアンネロッタは咄嗟にベッド脇に置かれたベルに手を伸ばし、護衛の騎士を呼ぼうとした。が、それよりも先に男に首を鷲掴まれてベッドに押し付けられてしまう。
「ぅ……ぐ……!な、なにを……!」
助けを呼べない状況に追い込まれても尚、アンネロッタは気丈に自分の首を掴む男を睨みながら必死に首を掴む手を引き離そうと抵抗したが、足掻けば足掻くほど首に込められる力が強くなり、段々と息が上手く吸い込めなくなる。呼吸を制限され首を締められる痛みに悶えるアンネロッタの苦痛に満ちた顔を見て……ここで漸く初めてアンネロッタの首を締めている男が口を開いた。
「……っは、ははははは。なんて無様な顔なんでしょう。こんな女が我が主を退けて王妃の座で踏ん反り返っていたとは……腑が煮えくり返りそうになりますね。やはり我が主シャルティア様こそ王妃に相応しい。」
「しゃ、シャル……っ……?」
何処かで聞いた事のある名前に朦朧とする意識で記憶を手繰り寄せたアンネロッタはそういえば五年前……王妃候補に選ばれた令嬢達の中で唯一年齢が幼いという理由で王妃候補から外された令嬢『シャルティア』がいた事を思い出した。そして同時に自分の記憶が正しければ今日社交界入りを迎えた令嬢達の中に『シャルティア』という名前の令嬢がいた事を思い出したアンネロッタは男の目的を理解して恐怖に体を戦慄かせる。そのアンネロッタの様子に自分の目的をアンネロッタが勘付いたと気付いた男はニヤリと醜悪な笑みを浮かべるとアンネロッタの首を掴んだまま、鈍色に光るナイフを振り翳してアンネロッタの胸にナイフを突き立てようとした。
瞬間。
突如、現れた一羽の鷹が「ピィー!」と甲高い声を上げて男の頭を鋭い鉤爪で掴んだ。
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