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第二章 双焔
第十話 二つの焔
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とうとう決戦当日。日没直前となり、観覧席は立ち見が出るほどの満員だ。
「いよいよ今夜のメインマッチです!
まずは〝名門アンティクア家の令嬢〟レティシア! 彼女の兄上様レオポルト氏は、当学園における決闘勝利数のレコードホルダーです! 対するは皆さんご存知〝爆裂少女〟アルヴィナ! 大講堂のステンドグラスを大破させたのは彼女の仕業です。経験は差はあるにしても、火力の大きさはすでに証明されているでしょう。観客数はなんと過去最多の三千三十二名!」
学園の生徒は勿論、アストラフォラで様々な商売を営む商人、職人、ただの見物人まで、多種多様な人で溢れていた。
太鼓と角笛が響き、実況部の〈拡音器〉から響く声がルールを再確認する。
「両者は御守りを二枚ずつ身につけています! 攻撃が当たり御守りが砕けた瞬間に一点! 合計二失点で敗北となります!」
立会人のパトロナ教授が入場する。
「立会人は一級魔法遣いパトロナ! 場外への攻撃は彼女が防ぎますので皆様ご安心を。選手負傷により、立会人が試合続行不可能と判断した場合は決着となります!」
日中に陽光をたっぷり集めた魔法器〈ライト〉が点灯し、試合場の昼間のように明るく照らした。
「制限時間は五分、延長はありません!」
レティシア・アンティクアは真紅のローブを翻し、片膝を折って観客へ淑やかな礼をした。アルヴィナは胸に拳を当てて短い敬礼を返す。
いよいよ開始の鐘が鳴る。
〈レティシア視点〉
――コーンッ!
レティシアは右足を軸に一歩踏み込み、短杖を振るう。得意の〈弧炎〉を縦三連で放ちながら、同時に〈運命流〉を起動。時間がゆっくり流れるような感覚とともに未来を予測する線が青白く迸る。炎の弧がどこで爆ぜ、相手がどう対応するか──すべてが透けて見える。
青い未来線は、アルヴィナが〈弧炎〉をすべて紙一重でかわすと告げている。
(へえ、あなたも〝流れ〟が見えるのね)
時間の感覚が戻る。予見どおりアルヴィナは〈弧炎〉を飛び込み前転でかわし、着地と同時に拳大の火球を生成。再度起動した〈運命流〉が、アルヴィナからの反撃がレティシアの胸を貫いてくると鮮やかな赤色の未来線で告げる。
レティシアはバレエのように爪先を支点に回旋。〈炎導布〉で織られたローブの裾が螺旋を描き、火球に触れた瞬間にその軌道を歪ませる。
「ふふっ、ぴょんぴょん跳ねてまるで白兎みたい。でも、これは予想できる!?」
レティシアは体を一回転させるうちに〈弧炎〉を火球に重ね、投石器のように投げ返す。橙と紅が混ざり、真紅の彗星となってアルヴィナに向かって一直線で飛ぶ。
『観客の皆さま、これがアンティクアの〝妙技〟!』
実況が叫ぶ──
〈アルヴィナ視点〉
アルヴィナの〈運命流〉が真っ赤な警告を出した。
(うそっ、戻ってくる!?)
だが放たれた後に視たのでは遅い。時間が粘土のように伸びる意識の中、緩慢に動く体に炎が突き刺さる。皮膚が凍るほど〝熱い〟矛盾の衝撃が胸郭を叩いた。
胸のアミュレットが粉砕音を立てる。その瞬間、観客席からは絶叫と歓声が上がった。
「先制はレティシア! アルヴィナ残り一枚!」
白煙を払い立ち上がるアルヴィナ。
(もう後がない。出し惜しみなんかしていたら負ける!)
心に薪を焚べる。朱に染まった髪先が揺れ、瞳がより紅く輝き出す。口元に浮かぶのは悔しさより高揚。
観客席で試合を見守るユスティナは腕を組み、手汗でぐしゃぐしゃの賭札を握り直した。彼女のいるスタンドの影では黒服が淡々とアルヴィナに計測器を向けていた。赤ランプが再び点り、彼女の何かを観測し続ける。
「すばらしい攻防です! 開幕わずか二〇秒でなんという密度でしょうか! でもまだまだこの戦いは序章に過ぎません!」
そうだ、全部出しきってやる。残り時間をゲージで示すクロノメーターの表示は四分二〇秒。アルヴィナの反撃がはじまる。
------
▶︎次話『第十一話 炎、交差する瞬間』につづく
本エピソードのキャラクターの感情をイメージした楽曲が、下記にて配信しております。サブスクご利用の方は是非ご視聴くださいませ。
● Apple Music
https://music.apple.com/jp/song/%E5%8F%8C%E7%84%94/1820486590
● Amazon Music
https://music.amazon.co.jp/albums/B0FCXLF4LR?marketplaceId=A1VC38T7YXB528&musicTerritory=JP&ref=dm_sh_xebNXnIzSYbpSzfDMRuSBXmQU&trackAsin=B0FCXVGJBY
「いよいよ今夜のメインマッチです!
まずは〝名門アンティクア家の令嬢〟レティシア! 彼女の兄上様レオポルト氏は、当学園における決闘勝利数のレコードホルダーです! 対するは皆さんご存知〝爆裂少女〟アルヴィナ! 大講堂のステンドグラスを大破させたのは彼女の仕業です。経験は差はあるにしても、火力の大きさはすでに証明されているでしょう。観客数はなんと過去最多の三千三十二名!」
学園の生徒は勿論、アストラフォラで様々な商売を営む商人、職人、ただの見物人まで、多種多様な人で溢れていた。
太鼓と角笛が響き、実況部の〈拡音器〉から響く声がルールを再確認する。
「両者は御守りを二枚ずつ身につけています! 攻撃が当たり御守りが砕けた瞬間に一点! 合計二失点で敗北となります!」
立会人のパトロナ教授が入場する。
「立会人は一級魔法遣いパトロナ! 場外への攻撃は彼女が防ぎますので皆様ご安心を。選手負傷により、立会人が試合続行不可能と判断した場合は決着となります!」
日中に陽光をたっぷり集めた魔法器〈ライト〉が点灯し、試合場の昼間のように明るく照らした。
「制限時間は五分、延長はありません!」
レティシア・アンティクアは真紅のローブを翻し、片膝を折って観客へ淑やかな礼をした。アルヴィナは胸に拳を当てて短い敬礼を返す。
いよいよ開始の鐘が鳴る。
〈レティシア視点〉
――コーンッ!
レティシアは右足を軸に一歩踏み込み、短杖を振るう。得意の〈弧炎〉を縦三連で放ちながら、同時に〈運命流〉を起動。時間がゆっくり流れるような感覚とともに未来を予測する線が青白く迸る。炎の弧がどこで爆ぜ、相手がどう対応するか──すべてが透けて見える。
青い未来線は、アルヴィナが〈弧炎〉をすべて紙一重でかわすと告げている。
(へえ、あなたも〝流れ〟が見えるのね)
時間の感覚が戻る。予見どおりアルヴィナは〈弧炎〉を飛び込み前転でかわし、着地と同時に拳大の火球を生成。再度起動した〈運命流〉が、アルヴィナからの反撃がレティシアの胸を貫いてくると鮮やかな赤色の未来線で告げる。
レティシアはバレエのように爪先を支点に回旋。〈炎導布〉で織られたローブの裾が螺旋を描き、火球に触れた瞬間にその軌道を歪ませる。
「ふふっ、ぴょんぴょん跳ねてまるで白兎みたい。でも、これは予想できる!?」
レティシアは体を一回転させるうちに〈弧炎〉を火球に重ね、投石器のように投げ返す。橙と紅が混ざり、真紅の彗星となってアルヴィナに向かって一直線で飛ぶ。
『観客の皆さま、これがアンティクアの〝妙技〟!』
実況が叫ぶ──
〈アルヴィナ視点〉
アルヴィナの〈運命流〉が真っ赤な警告を出した。
(うそっ、戻ってくる!?)
だが放たれた後に視たのでは遅い。時間が粘土のように伸びる意識の中、緩慢に動く体に炎が突き刺さる。皮膚が凍るほど〝熱い〟矛盾の衝撃が胸郭を叩いた。
胸のアミュレットが粉砕音を立てる。その瞬間、観客席からは絶叫と歓声が上がった。
「先制はレティシア! アルヴィナ残り一枚!」
白煙を払い立ち上がるアルヴィナ。
(もう後がない。出し惜しみなんかしていたら負ける!)
心に薪を焚べる。朱に染まった髪先が揺れ、瞳がより紅く輝き出す。口元に浮かぶのは悔しさより高揚。
観客席で試合を見守るユスティナは腕を組み、手汗でぐしゃぐしゃの賭札を握り直した。彼女のいるスタンドの影では黒服が淡々とアルヴィナに計測器を向けていた。赤ランプが再び点り、彼女の何かを観測し続ける。
「すばらしい攻防です! 開幕わずか二〇秒でなんという密度でしょうか! でもまだまだこの戦いは序章に過ぎません!」
そうだ、全部出しきってやる。残り時間をゲージで示すクロノメーターの表示は四分二〇秒。アルヴィナの反撃がはじまる。
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▶︎次話『第十一話 炎、交差する瞬間』につづく
本エピソードのキャラクターの感情をイメージした楽曲が、下記にて配信しております。サブスクご利用の方は是非ご視聴くださいませ。
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