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第三章 旅立ちと試練
第十七話 千脚の穿者
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巨大なヤスデのような節足動物、《千脚の穿者》は、体をねじり始めたかと思うとその場で高速回転を始めた。岩と甲殻が擦れ、摩擦熱で石がガラス状にどろっと溶けて、飛沫が飛び散る。
「突っ込んでくるぞ!」
ユスティナが叫ぶ。その声と同時に、巨蟲はドリルのように回転しながら一行に向かって猛スピードで直進してきた。真っ赤に焼けた頭部の殻が目前に迫る。〈運命流〉で既に読んでいた二人が、エリスを抱えて回避する。
轢かれたらずたずたに引きちぎられる上に、跡形もなく燃やされるであろう突進とすれ違うと、そのまままっすぐ壁に激突して止まった。その巨体に向けて、アルヴィナが火槍を射出する。しかし甲殻が熱を拡散し、真紅の炎は弾かれて壁を焦がしただけだった。
「ぜんぜん焼けない!」
レティシアが短杖を振り上げ、蒼白い螺旋を周りに纏わせる。
「ならば撃ち抜く――〈雷螺〉!」
プラズマの刃が甲殻の節と節の隙間を一瞬で通り抜け、白い火花が散った。甲殻の一部分が割れて、赤橙色の軟組織が露出する。
「アル、開口部へ炎を注ぎ込め! 高圧で!」
ユスティナの指示にアルヴィナが反応し、跳躍する。びたんびたんとのたうち回る巨蟲の動きを〈運命流〉で予測しながら飛びつく。短杖を甲殻の割れ目に押し込み、火炎を一点注入。内側から爆ぜた熱で節が膨張し、周囲の甲殻を押し上げた。巨蟲の口からギイギイと身の毛がよだつ金切り声が漏れる。
「隙間がよく見えるようになった! もう一度!」
レティシアが第二射、三射と〈雷螺〉で、今度は節を断ち割る。さらに殻の内側があらわになった時に、エリスの〈ビーちゃん〉が反応した。
《千脚の穿者》の頭の後ろあたりに、〈猫眼石〉と同じ緑色の発光が浮かび上がった。
「もしかして! あそこが弱点じゃ!?」
「こいつは岩を噛み砕きながら地中を移動する魔物だ。体内にこの鉱洞の〈猫眼石〉を蓄積させていても不思議はない」
巨蟲は怒りで頭部の触角を振動させ、低周波を放つ。天井の岩盤に蜘蛛の巣状の裂け目が走った。〈運命流〉で確認。すぐに崩落する兆しはないが…。
「崩落まで三十秒!」
アルヴィナとレティシアは呼吸を合わせ、〈雷螺〉で裂き、炎で焼く連携を何度も繰り返す。体を何分割にもされ、頭部のある体が大半の足を失い、ついには動かなくなった。
「よし、とどめだよ!」
アルヴィナが切断面に火柱を注ぎ込んだ。彼女の髪が紅く輝き出し、さらに炎の勢いが増す。頭部にある〈猫眼石〉が炎に反応して光が膨れ上がっていく――。
「離れて!」
〈運命流〉でその後の展開を知覚したレティシアが、仲間の腕を引いた瞬間、《千脚の穿者》が内側から爆発した。甲殻の破片と体組織が飛び散り、空洞全体が崩れ始めた。
ユスティナが結界幕を後方へ展開。
「走れ!」
四人はもと来た通路へ疾走する。背後で天井が崩落し、巨蟲の残骸が粉塵に埋もれた。そして、瓦礫の奥で静かに輝く〈猫眼石〉の結晶が転がっていた。
レティシアとアルヴィナに手伝ってもらいながら、エリスは小さい体を隙間に滑り込ませ、その結晶を回収した。
安全な場所まで移動して足を止め〈ビーちゃん〉で確認すると、〝ピピピッ〟と短く点滅する。
「ウヘっ!? これすごい純度! お、お宝きたー!」
レティシアが汗を拭いながら笑う。
「無駄撃ちにならなかったな」
「でも終わりじゃない。もっと大きい〝何か〟の気配がするよ」
アルヴィナは前方の闇を見据える。自分の〈運命流〉でもわかる。真っ赤な未来線が一直線に四人の方を指した。もっと巨大な悪意がこちらに気がついている。
「まずいぞ……いまの戦闘でアルヴィナはかなり炎を使ってしまった。この空間の残存酸素量が危うい。次で仕留めないと全滅だ」
ユスティナの不安な声を嘲笑うかのように、洞窟の奥底を揺らす低い咆哮が応えた――。
「突っ込んでくるぞ!」
ユスティナが叫ぶ。その声と同時に、巨蟲はドリルのように回転しながら一行に向かって猛スピードで直進してきた。真っ赤に焼けた頭部の殻が目前に迫る。〈運命流〉で既に読んでいた二人が、エリスを抱えて回避する。
轢かれたらずたずたに引きちぎられる上に、跡形もなく燃やされるであろう突進とすれ違うと、そのまままっすぐ壁に激突して止まった。その巨体に向けて、アルヴィナが火槍を射出する。しかし甲殻が熱を拡散し、真紅の炎は弾かれて壁を焦がしただけだった。
「ぜんぜん焼けない!」
レティシアが短杖を振り上げ、蒼白い螺旋を周りに纏わせる。
「ならば撃ち抜く――〈雷螺〉!」
プラズマの刃が甲殻の節と節の隙間を一瞬で通り抜け、白い火花が散った。甲殻の一部分が割れて、赤橙色の軟組織が露出する。
「アル、開口部へ炎を注ぎ込め! 高圧で!」
ユスティナの指示にアルヴィナが反応し、跳躍する。びたんびたんとのたうち回る巨蟲の動きを〈運命流〉で予測しながら飛びつく。短杖を甲殻の割れ目に押し込み、火炎を一点注入。内側から爆ぜた熱で節が膨張し、周囲の甲殻を押し上げた。巨蟲の口からギイギイと身の毛がよだつ金切り声が漏れる。
「隙間がよく見えるようになった! もう一度!」
レティシアが第二射、三射と〈雷螺〉で、今度は節を断ち割る。さらに殻の内側があらわになった時に、エリスの〈ビーちゃん〉が反応した。
《千脚の穿者》の頭の後ろあたりに、〈猫眼石〉と同じ緑色の発光が浮かび上がった。
「もしかして! あそこが弱点じゃ!?」
「こいつは岩を噛み砕きながら地中を移動する魔物だ。体内にこの鉱洞の〈猫眼石〉を蓄積させていても不思議はない」
巨蟲は怒りで頭部の触角を振動させ、低周波を放つ。天井の岩盤に蜘蛛の巣状の裂け目が走った。〈運命流〉で確認。すぐに崩落する兆しはないが…。
「崩落まで三十秒!」
アルヴィナとレティシアは呼吸を合わせ、〈雷螺〉で裂き、炎で焼く連携を何度も繰り返す。体を何分割にもされ、頭部のある体が大半の足を失い、ついには動かなくなった。
「よし、とどめだよ!」
アルヴィナが切断面に火柱を注ぎ込んだ。彼女の髪が紅く輝き出し、さらに炎の勢いが増す。頭部にある〈猫眼石〉が炎に反応して光が膨れ上がっていく――。
「離れて!」
〈運命流〉でその後の展開を知覚したレティシアが、仲間の腕を引いた瞬間、《千脚の穿者》が内側から爆発した。甲殻の破片と体組織が飛び散り、空洞全体が崩れ始めた。
ユスティナが結界幕を後方へ展開。
「走れ!」
四人はもと来た通路へ疾走する。背後で天井が崩落し、巨蟲の残骸が粉塵に埋もれた。そして、瓦礫の奥で静かに輝く〈猫眼石〉の結晶が転がっていた。
レティシアとアルヴィナに手伝ってもらいながら、エリスは小さい体を隙間に滑り込ませ、その結晶を回収した。
安全な場所まで移動して足を止め〈ビーちゃん〉で確認すると、〝ピピピッ〟と短く点滅する。
「ウヘっ!? これすごい純度! お、お宝きたー!」
レティシアが汗を拭いながら笑う。
「無駄撃ちにならなかったな」
「でも終わりじゃない。もっと大きい〝何か〟の気配がするよ」
アルヴィナは前方の闇を見据える。自分の〈運命流〉でもわかる。真っ赤な未来線が一直線に四人の方を指した。もっと巨大な悪意がこちらに気がついている。
「まずいぞ……いまの戦闘でアルヴィナはかなり炎を使ってしまった。この空間の残存酸素量が危うい。次で仕留めないと全滅だ」
ユスティナの不安な声を嘲笑うかのように、洞窟の奥底を揺らす低い咆哮が応えた――。
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