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第三章 旅立ちと試練
第十六話 魔物の咆哮
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滑落地点から移動しはじめて二十分。緩やかな下り坂が続いた先に、急に視界が開けた。
天井の割れ目からわずかな自然光が差し、〈猫眼石〉らしい鉱脈が一面に露出している。そのどれも、高純度――虹色に何本も走る筋が輝いている。
エリスが歓声を漏らし、〈ビーちゃん〉を岩棚へ設置する。
「これ! 見つかったよ! 〝虹彩六条〟!!」
先ほどと同じように試験光を照射すると、今度は計測ランプが三連続で点滅した。どうやら合格らしい。
喜び勇んで、早速採取を始めるエリス。その活き活きとした小さな背中を三人が見守る刹那、入ってきた通路から低い唸り声と腐ったような臭いが届く。闇に赤く光る《凶狼》が十数体、地面や壁面をも駆けながら姿を現した。
予想を超える襲撃者の数に緊張が走る。
「来たよ!」
レティシアの両眼が青く光り〈運命流〉を起動。時の流れが緩やかになる感覚の中で、狼たちの移動ルートを予測し短杖を振る。先頭の一頭から後続を巻き込むようにして〈雷螺〉を一閃。貫通力のある螺旋が、後続ごと《凶狼》を撃ち抜いた。青白い雷光が瞬くたびに、緑色の粘液を蒸発させてゆく。
一息つくもなく、今度は頭上から黒影——人型だが四肢が異様に長い魔物が現れた。《狩人》だ。
ギャッギャッと嗤い声のような不快な鳴き声を発しながら、洞窟の壁を蹴って飛び出し、頭上から今度は無防備なエリスを狙う。
ユスティナが素早く立ち塞がり、〈結界幕〉を広げた。淡藍色の盾が醜くぎざぎざした爪を、眼前で押し留める。
アルヴィナは続けて迫ってきていた二頭の《凶狼》に向かって、左足で岩面を蹴って跳ねた。炎を纏った旋回蹴り当たると二頭を同時に爆散させる。
「アル、高く飛ばさせて!」
「わかった!」
〈運命流〉起動。レティシアの次の行動を未来予知で確認。
アルヴィナが右腕を振り下ろし、竜の喉に似せた火柱を床から噴出させた。その上にレティシアが跳躍し、火柱と共に舞い上がった床石を踏み台にして逆回転。短杖で螺旋を描き、《狩人》が貼り付いていた天井へ向けて〈雷螺〉を放つ。
青く輝く螺旋が壁面に沿って一瞬で駆け巡り、先ほど《狩人》が壁を蹴ってできた爪痕から急に曲がり、魔物が飛翔した軌道をなぞるように突き進む。その間、一秒にも満たず、一瞬にして着弾。鎧のごとき硬い外皮を貫いた。
ユスティナはレンズで角度を測り、岩棚の割れ目へ小石を投げる。
「レッチ、ここに点火!」
レティシアの〈弧炎〉が小石――製品価値の無い低純度の〈猫眼石〉のくず石――を媒介にして爆ぜ、天井の鍾乳石を落下させて、残党を押し潰した。
粉塵が舞う中でアルヴィナとレティシアが荒く息を吐く。長い探索と、エリス達を守りながら多数の敵との戦闘で疲れが見えてきた。
息を整えて洞内に静けさが戻る頃。その時、頭上の岩盤が低く脈打った。
ゴリリ……ゴリリ……
掘削機が通るような不吉な音が響き渡る。
「天上を何かが通ってる」
〈猫眼石〉のサンプルをしっかりと回収し終えたエリスが〈ビーちゃん〉を抱えて、不安げに呟く。
「振動が……規則的に大きく……」
天井にビシッと隙間が開くと、黒紫の節足が何本も這い出し、岩を噛み砕きながら大きな頭が這い出てきた。石の破片が雨のように降り注ぐ。環形の甲殻体、無数の脚が壁面を掘り崩しながら身をくねらせる。レティシアの炎が照らし出したその異形——おぞましい姿をした地下性の節足動物に、ユスティナが低く名を漏らした。
「……《千脚の穿者》」
鉱脈全体が震え、血のように赤い複眼が四人を捕らえた瞬間、それまで凶暴だった《凶狼》たちですら逃げていった。まるで、真の強者の前では、彼らもまた獲物に過ぎないことを本能で理解したかのように。
天井の割れ目からわずかな自然光が差し、〈猫眼石〉らしい鉱脈が一面に露出している。そのどれも、高純度――虹色に何本も走る筋が輝いている。
エリスが歓声を漏らし、〈ビーちゃん〉を岩棚へ設置する。
「これ! 見つかったよ! 〝虹彩六条〟!!」
先ほどと同じように試験光を照射すると、今度は計測ランプが三連続で点滅した。どうやら合格らしい。
喜び勇んで、早速採取を始めるエリス。その活き活きとした小さな背中を三人が見守る刹那、入ってきた通路から低い唸り声と腐ったような臭いが届く。闇に赤く光る《凶狼》が十数体、地面や壁面をも駆けながら姿を現した。
予想を超える襲撃者の数に緊張が走る。
「来たよ!」
レティシアの両眼が青く光り〈運命流〉を起動。時の流れが緩やかになる感覚の中で、狼たちの移動ルートを予測し短杖を振る。先頭の一頭から後続を巻き込むようにして〈雷螺〉を一閃。貫通力のある螺旋が、後続ごと《凶狼》を撃ち抜いた。青白い雷光が瞬くたびに、緑色の粘液を蒸発させてゆく。
一息つくもなく、今度は頭上から黒影——人型だが四肢が異様に長い魔物が現れた。《狩人》だ。
ギャッギャッと嗤い声のような不快な鳴き声を発しながら、洞窟の壁を蹴って飛び出し、頭上から今度は無防備なエリスを狙う。
ユスティナが素早く立ち塞がり、〈結界幕〉を広げた。淡藍色の盾が醜くぎざぎざした爪を、眼前で押し留める。
アルヴィナは続けて迫ってきていた二頭の《凶狼》に向かって、左足で岩面を蹴って跳ねた。炎を纏った旋回蹴り当たると二頭を同時に爆散させる。
「アル、高く飛ばさせて!」
「わかった!」
〈運命流〉起動。レティシアの次の行動を未来予知で確認。
アルヴィナが右腕を振り下ろし、竜の喉に似せた火柱を床から噴出させた。その上にレティシアが跳躍し、火柱と共に舞い上がった床石を踏み台にして逆回転。短杖で螺旋を描き、《狩人》が貼り付いていた天井へ向けて〈雷螺〉を放つ。
青く輝く螺旋が壁面に沿って一瞬で駆け巡り、先ほど《狩人》が壁を蹴ってできた爪痕から急に曲がり、魔物が飛翔した軌道をなぞるように突き進む。その間、一秒にも満たず、一瞬にして着弾。鎧のごとき硬い外皮を貫いた。
ユスティナはレンズで角度を測り、岩棚の割れ目へ小石を投げる。
「レッチ、ここに点火!」
レティシアの〈弧炎〉が小石――製品価値の無い低純度の〈猫眼石〉のくず石――を媒介にして爆ぜ、天井の鍾乳石を落下させて、残党を押し潰した。
粉塵が舞う中でアルヴィナとレティシアが荒く息を吐く。長い探索と、エリス達を守りながら多数の敵との戦闘で疲れが見えてきた。
息を整えて洞内に静けさが戻る頃。その時、頭上の岩盤が低く脈打った。
ゴリリ……ゴリリ……
掘削機が通るような不吉な音が響き渡る。
「天上を何かが通ってる」
〈猫眼石〉のサンプルをしっかりと回収し終えたエリスが〈ビーちゃん〉を抱えて、不安げに呟く。
「振動が……規則的に大きく……」
天井にビシッと隙間が開くと、黒紫の節足が何本も這い出し、岩を噛み砕きながら大きな頭が這い出てきた。石の破片が雨のように降り注ぐ。環形の甲殻体、無数の脚が壁面を掘り崩しながら身をくねらせる。レティシアの炎が照らし出したその異形——おぞましい姿をした地下性の節足動物に、ユスティナが低く名を漏らした。
「……《千脚の穿者》」
鉱脈全体が震え、血のように赤い複眼が四人を捕らえた瞬間、それまで凶暴だった《凶狼》たちですら逃げていった。まるで、真の強者の前では、彼らもまた獲物に過ぎないことを本能で理解したかのように。
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