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最終章 緋色の魔法遣い
最終話 仄火
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戦いが終わった後の世界は、あの異変が幻だったかのように静寂だった。
《身喰らう蛇》の身体は、元の山脈の姿に戻った。
操られていた人たちも次々と我に返り、一体自分はなぜこのような場所にいるのか不思議がった。途中で力尽きた者たちだけは除いて。
空には青空が戻り、雲がゆっくりと流れている。
大地には深い傷跡が残されていた。蛇が這い回った場所には、黒い筋のような跡。空から見なければ気が付かない、大地に刻まれた永遠の記録だった。
「終わったのね……」
一人と一頭。他には誰も居ない空の上で、ドラゴンの背中に乗るアルヴィナは呟いた。
ドラゴンはアルヴィナを大地に降ろすと、用は済んだなと言わんばかりに「グルァ」とひと鳴きして、飛び去っていった。
もはや彼のことを誰にも止めることなどできない。アルヴィナの内なる心から解き放たれ、新たな超越者として受肉した今、ドラゴンは自由だった。この星に飽きたなら、別の星の《身喰らう蛇》を討ちに行くかもしれない。さらにそれにも飽きれば、他の星雲、他の世界へ――。
赤褐色の翼はあっというまに小さな点になり、まもなく見えなくなった。
なんとあっけない別れだろうか。しかしアルヴィナの表情は満足げだった。
「ほらね、ほんとうにいるって言ったでしょう?」
「いたわねー、ドラゴン」
「放っておいたらまずくね? ママなんだからちゃんと躾けときなよ、アル」
背後から聞き慣れた声がした。
振り向くと、そこにはレティシアとエリスが立っている。しかし、二人の髪はアルヴィナと同じ真っ白になっていた。
《狂い火》と《身喰らう蛇》によって、只人から別の存在へと変えられてしまった二人は、もはや人間として助かる道は残されていなかった。
〝一度破壊され〟、新たな肉体として再生する。ドラゴンが残していったアルヴィナへの贈り物だった。
レティシアとエリスは自分の髪をなでつける。
「ふたりとおそろいだね、ふひひ」
「これでやっとあたしもアルと一緒よ」
三人は屈託なく笑いあう。
「これからどうする?」
「わたし、魔女認定されちゃってるからなあ。帰ってもみんなの迷惑だよ」
「エリちゃん、世界を終わらせそうになった。もうムリぽ」
「だよねえ」
それでもレティシアは朗らかに笑う。
「ま、いいじゃん。暫くふらふら旅しよ。世界が落ち着いてきたらジャスに助けてもらおう」
「あとは任した、ジャスよ……」
エリスもくふふ、と笑いながら頷く。しばしの別れになるが、〈ステラソナ〉とエリちゃんズが四人の絆を再び繋ぐだろう。
荒廃した夕暮れの大地を背景に、この世界へ新たに誕生した超越者達は肩を寄せ合って歩き出した。
「さあ、ごはん食べに行きましょ。長い戦いでお腹ペコペコだわ」
レティシアの冗談に、アルヴィナとエリスの笑い声がいつまでもこだました。
歴史の表舞台からは去っても炎は燃え続ける。小さく目立たないが、この先もずっと。
完
《身喰らう蛇》の身体は、元の山脈の姿に戻った。
操られていた人たちも次々と我に返り、一体自分はなぜこのような場所にいるのか不思議がった。途中で力尽きた者たちだけは除いて。
空には青空が戻り、雲がゆっくりと流れている。
大地には深い傷跡が残されていた。蛇が這い回った場所には、黒い筋のような跡。空から見なければ気が付かない、大地に刻まれた永遠の記録だった。
「終わったのね……」
一人と一頭。他には誰も居ない空の上で、ドラゴンの背中に乗るアルヴィナは呟いた。
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もはや彼のことを誰にも止めることなどできない。アルヴィナの内なる心から解き放たれ、新たな超越者として受肉した今、ドラゴンは自由だった。この星に飽きたなら、別の星の《身喰らう蛇》を討ちに行くかもしれない。さらにそれにも飽きれば、他の星雲、他の世界へ――。
赤褐色の翼はあっというまに小さな点になり、まもなく見えなくなった。
なんとあっけない別れだろうか。しかしアルヴィナの表情は満足げだった。
「ほらね、ほんとうにいるって言ったでしょう?」
「いたわねー、ドラゴン」
「放っておいたらまずくね? ママなんだからちゃんと躾けときなよ、アル」
背後から聞き慣れた声がした。
振り向くと、そこにはレティシアとエリスが立っている。しかし、二人の髪はアルヴィナと同じ真っ白になっていた。
《狂い火》と《身喰らう蛇》によって、只人から別の存在へと変えられてしまった二人は、もはや人間として助かる道は残されていなかった。
〝一度破壊され〟、新たな肉体として再生する。ドラゴンが残していったアルヴィナへの贈り物だった。
レティシアとエリスは自分の髪をなでつける。
「ふたりとおそろいだね、ふひひ」
「これでやっとあたしもアルと一緒よ」
三人は屈託なく笑いあう。
「これからどうする?」
「わたし、魔女認定されちゃってるからなあ。帰ってもみんなの迷惑だよ」
「エリちゃん、世界を終わらせそうになった。もうムリぽ」
「だよねえ」
それでもレティシアは朗らかに笑う。
「ま、いいじゃん。暫くふらふら旅しよ。世界が落ち着いてきたらジャスに助けてもらおう」
「あとは任した、ジャスよ……」
エリスもくふふ、と笑いながら頷く。しばしの別れになるが、〈ステラソナ〉とエリちゃんズが四人の絆を再び繋ぐだろう。
荒廃した夕暮れの大地を背景に、この世界へ新たに誕生した超越者達は肩を寄せ合って歩き出した。
「さあ、ごはん食べに行きましょ。長い戦いでお腹ペコペコだわ」
レティシアの冗談に、アルヴィナとエリスの笑い声がいつまでもこだました。
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