落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ

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一章

ラクス到着!

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城から帰って来た僕は、急いで寝る準備を済ませると、そのままベッドへと潜り込んだ。

明日からの旅行が楽しみで眠れないかもしれない。そう思っていたのに、初めてのパーティーで疲れていたのか、布団に入って少し経つと、そのまま深い眠りに落ちていた。

最近、使用人の人数が減ったせいか、リタはあちこちから手伝いを頼まれて忙しそうにしていた。それなのに、二泊三日の旅行の準備は、僕が起きたら既に全部終わっていて、僕の鞄にはきちんと衣服もお菓子も、必要なものがそろっていた。

(全部リタがやってくれたんだ……)

僕が感謝を告げると、いつもの元気な笑みを見せてくれた。

出発時間が待ちきれず、父様達の部屋へ向かうと、父様も母様も、すでに準備を終えていた。なので、そのまま三人で少し速く食堂に向かえば、僕達と同じタイミングで兄様も食堂へとやって来たようだった。

全員揃っていることもあり、朝食の時間を予定よりも早めたけれど、これから長時間馬車に乗るとあって、出てきたのは簡単な朝食だった。でも、僕の口からは自然と鼻歌がこぼれる。

「リュカ、ご機嫌だね」

「はい! 凄く楽しみです!!」

最近、父様の仕事が忙しくて、あまり遊べなかった。だから、旅行中なら一緒に遊べると思えば、それだけで胸が弾んでくる。

(兄様とも……ま一緒に遊べたらいいな)

昨日の新年祭で一緒に踊ったことを思い出し、自然と頬が緩んだ。

ラクスの町へは二台の馬車で向かうようで、僕はいつも通り、父様と同じ馬車に乗った。

王都を出て森に差しかかった頃。ふと、前に兄様から聞いた話を思い出し、父様に尋ねてみた。

「父様?父様がいると魔物が寄ってこないって、兄様が言ったけど……ほんとう?」

「そうだね。魔物の中には、私の魔力量を理解できる者もいるからね。そういう連中は確かに近寄らない。 でも、そうじゃない魔物も多いから、冒険者ギルドに討伐を依頼しているんだ。 正直、そちらの功績の方が大きいかな?」

「ふ~ん。じゃあ父様も、魔物ってあまり見たことないの?」

「必要な時以外はね。魔物は賢いから、面倒なのは馬鹿な相手の方だよ。……だから、冒険者に“しっかりと”狩っておいてもらわないとね」

その言葉と同時に、父様が何気なく外へ視線を向けた。どこか普段と違う静かな威圧を感じたけれど、仕事で疲れているのだと思い、深く考えないで家族旅行を楽しむことにした。

途中で休憩を挟みつつ、馬車は無事ラクスの町に到着した。

夏は避暑地として賑わっていたこの町も、今は冬で人が少なく静かだ。それに、湖の冷たい風が吹き抜けて、肌を刺すように寒い。

「今回は、この宿に泊まるよ」

父様が指さした宿は、夏に泊まった湖畔の宿ではなく、湖から離れた場所にある宿だった。

「前の宿と違うの?」

「湖に近いと風が冷たいからね。リュカ達が寒くないよう、今回は少し離れた場所にしたんだ。 前の宿と比べると、質は落ちるかもしれないけどね」

貴族達が多く来る避暑地とあって、質が落ちると言っても立派な外観をしていて、何も遜色ないように見える。

(でも、父様が選んでくれた宿なら、どこでもいいや)

僕はそう思いながら、宿の立派な門をくぐった。

しかし、僕が気付いていないところで、別の動きが始まっていた。

〈???視点〉

その日、ラクス近くの山中にある古びた山小屋で、数人の男達が酒を飲んでいた。

身なりは悪く、荒れた顔つきの男ばかり。中でも奥で飲んでいる大柄の男は、伸びた無精ひげと鋭い目つきで、周囲とは明らかに雰囲気が違った。

「ケッ!どっかの貴族のせいで商売上がったりだぜ!冒険者共に金をばらまくくらいなら、こっちに回しやがれってんだ!」

酒瓶を床に叩きつけ、苛立ちを露わにする。今回も“とある貴族”が、冒険者ギルドに大金を払って討伐依頼を出しているせいで、盗賊達はここ最近、思うように動けず、追われる日々を過ごしていた。

「で、でも、お頭……その貴族は相当ヤバい奴だって噂で……」

「はっ!最近は丸くなったらしいじゃねぇか!討伐だって冒険者任せで、自分じゃ何もしねぇ。ビビる必要なんざねぇ!」

部下らしき男が恐る恐る声をかけるが、大柄の男な盗賊団の頭らしき男は、顔をしかめながら酒をあおる。

本来なら、王都から帰る貴族共を狙う絶好の稼ぎ時。それなのに、冒険者ギルドの動きが激しすぎて、ここに隠れるしかない状況に不満だけが降り積もる

そこへ、一人の男が駆け込んできた。

「お頭!宿に潜ませてた奴から連絡が!まだ名前は分からねぇですが、貴族がラクスに来たそうです!」

「わざわざ、獲物の方からやってくるとはなぁ」

降って湧いた朗報に、苛立ちを忘れてニヤリと笑う。

「でも……今回ばかりは大人しくしてろって、ギルドのマスターの奴が……」

ラクスのギルドマスターには賄賂を渡し、“獲物”の情報を流させていたが、今回は「手を出すな」と通知が来ていた。

「従う理由なんざねぇだろ?こんな季節に来るってことは、避暑地の意味も知らねぇ地方の貴族だ。消えても誤魔化せるし……俺達の存在が知れて困るのは向こうだ。さぞ必死で揉み消してくれるだろうよ」

ここに来たのも、ここなら捕まらないと分かっていたからだ。今までにも何度か、冒険者共が騒いだ事があったが、ここにいる間は、多少悪さをしても一度も捕まりそうになった事なんてない。

「最後は全員バラせば証拠もねぇ。誰にもバレやしねぇよ」

そう言いながら、男達は獲物を捕らえる計画を始める。

自分達が、正体を知らぬ“運命最悪の相手”に手を出そうとしているとも知らずに。
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