落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ

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二章

初日

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希望を胸に学院へ到着した僕は、開始早々、盛大に迷子になっていた。

最初は、大勢の生徒が向かう方向について行けば、自然と教室に着くと思っていた。だから何も考えず、その流れに身を任せて歩いた。けれど、しばらくしてから、胸の奥に小さな違和感が芽生える。

(……おかしいな……。……人、減ってない……?)

周囲を見回すと、いつの間にか、さっきまでの賑わいが嘘のように消えていた。そうして辿り着いたのは、別棟。Fクラスなどがある建物だった。

「……やっちゃった」

学院に着いてから、最初にすべきだったことは、人の流れについて行くことじゃなくて、誰かに聞くことだった。後悔しながら周囲を見渡すと、棟の入口に、誘導員の先生らしき人が立っているのが目に入った。僕は、ほっとしながら駆け寄って尋ねる。

「すみません! Aクラスの教室は、どこですか……?」

「Aクラスは、こことは反対方向にある建物にありますので、今来た道を戻って、そのまま進めば見えてくると思います。案内して差し上げたいのですが、私は持ち場を離れられなくて……。途中に別の案内人もいるはずですから、分からなければ、その者に聞いてください」

丁寧な説明に何度も頷き、僕は言われた通りに来た道を戻った。でも、その言葉を信じて進んだものの、誘導が終わったからなのか、生徒の姿も案内人の姿も見当たらない。それでも指示された通りに人影を探しながら歩いてみるけど、進めば進むほど、人の気配が薄れていくような気がした。

(……本当に、こっちで合ってるの?)

ピィー。

不意に、澄んだ鳥の声が辺りに響いた。何処からだろうと顔を見上げると、木の上に一羽の鷹が止まっており、胸元には契約紋が見えた。だから、誰かの召喚獣だろうと、近くに契約者がいるのではないかと辺りを見渡してみるが、人影は見つからない。

「ねえ。君の契約者は、どこにいるの?」

半ば独り言のように呟くと、、鷹は羽を広げて木から飛び立ち、小さく鳴きながら僕の上空をゆっくり旋回した。そして、まるで案内するかのように、僕の前をゆっくりと飛び始める。

「……案内してくれるの?」

まるで僕の声に返事をするかのように短く鳴く。だから、僕は置いていかれないよう、鷹の後を追った。だけど、上ばかりを見て走っていたせいで、前をよく見ていなかった。

ドンッ!

「うわっ!」

その結果、気付いた時には、思い切り誰かにぶつかり、転んでしまった。

「ご、ごめんなさい! 前をよく見てなくて!!」

「小さいのにぶつかられても、そんなに痛くない。別にいい。それに俺は、子供相手に怒ったりしない」

慌てて謝りながら立ち上がり、顔を上げると、そこには赤い髪に黒い目をした少年が立っていた。僕は思い切りぶつかったはずなのに、少年はよろめくこともなく、その場に立ったままだ。

大人びた顔立ちをしているけれど、身長差はせいぜい十センチほど。学院の制服を着ていて、左手には少し大きめの腕輪をつけている。けれど、学年ごとに色分けされているはずのネクタイをしていないため、学年が分からなかった。

兄様と入れ違いで、僕は兄様と同じ緑色のネクタイをしている。そのため、こちらが新入生だということは相手にも分かるはずで、もし先輩だった場合、失礼な態度は取れない。そう思い、不満を胸にしまい込みながら、声をかけることにした。

「この学院の先輩ですか?ぶつかっておいて申し訳ないのですが、僕、今日入学したばかりで道が分からなくて……教室まで案内してもらえませんか?」

「子供扱いが不満なら、不満だと言えばいい。それに、学院に通うのは俺も今日からだ。先輩じゃない」

(少し身長が高いからって、同い年なのに子供扱い!?それに、ちゃんとネクタイしてよ!!)

「じゃあ、君だって子供じゃないか!!それに、こんな場所に一人でいるなら、僕と一緒で迷子なんでしょ!?」

「子供でも迷子でもない。俺は人を探しに来ただけだ」

図星を突かれているはずなのに、まったく動じる様子がない。

「じゃあ、誰を探してるの!?」

「お前だ。レグリウス家の次男。目立つ銀髪がクラスにいなかったから探していた」

「……僕に、何か用?」

勢いでそう尋ねると、初対面の相手から探していたと言われ、胸の奥に小さな警戒心が芽生えた。思わず一歩引きながら問い返すが、相手はまったく動じる様子もなく、はっきりとした声で言う。

「お前というより、父親と兄だな。その二人と関係を持ちたいが、警戒心が強すぎる。その点、お前なら取り入りやすいと思った」

(……それ、本人の前で言うことじゃないと思う)

あまりにも正直すぎる物言いに、どうかと思いながらも、呆れにも似た感情が湧いてくる。そのおかげか、さっきまで抱いていた警戒心は、いつの間にか少しだけ薄れていた。

「もしかして……君も、Aクラスなの?」

「そうだ。それと、俺の名前はネアだ。貴族じゃないから家名はないが、これからは同じクラスだ。よろしく」

「……よろしく」

クラスにいなかった、という言葉を思い出して尋ねると、ネアと名乗った少年は物怖じした様子もなく答えた。けれど、貴族相手でも平然と敬語を使わないその態度に、戸惑いしか覚えない。だから、挨拶は返したものの、問題を起こしそうな予感しかしなかった。

キーンコーンカーンコーン。

「予鈴だな。遅刻したくなければ、付いて来い」

あまり仲良くしたい相手ではない。けれど、初日から遅刻するわけにもいかず、僕は仕方なくネアの後を追い、教室へ向かった。

ふと気付くと、ここまで案内してくれた鷹の姿は、まるで役目を終えたかのように、もうどこにも見当たらなかった。胸の奥に、不安と嫌な予感を残したまま、僕の学院生活は静かに、けれど確かに本格始動した。
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