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三章
あの日
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「この料理も美味いな!」
「行儀悪いですよ。それと、口元が汚れています」
生誕祭の料理を頬張りながら話すバルドに、コンラットがハンカチを差し出して注意する。
「しかし、アリアがこっちに来ないと分かっていると、生誕祭も安心して楽しめますね」
「おい!!名前出すなよ!来たらどうするんだ!?」
しみじみと言ったと言ったコンラッドの言葉に、バルドは警戒するように辺りを見渡しながら、アリアの姿が見えないかどうかを確認し始めた。
あの一件以来、バルドはすっかりアリアに苦手意識が出来たようで、クラスの中にいても全く目を合わせようとしない。
まあ、彼女の方も最近は無理に近寄って来る事がなく、他の生徒に対しても、今は干渉を控えているようだった。
「……この様子を見ると、余程凄い子なんだな」
今回も僕達に付き添ってくれているお兄さんが、バルドの様子を見ては憂鬱そうな表情を更に暗くして言った。
「はぁ…。今回…何も問題がなく無事に終ってくれるなら、それでもう良い…」
前回の事があったせいで、少し神経質になっているようのか、さっきから時おり辺りを見渡してはため息を付いていた。
「この前の事で、誰かに何か言われたの?」
「何もお咎めがなかった分、逆に気にしているみたいなんですよね…」
お兄さんに気付かれないように、コンラットに小声で訪ねている間も、不安そうにキョロキョロと周囲を見渡していた。
別にお兄さんが悪いわけじゃないから、怒られなかったのなら気にしなくても良いような気もするけれど、お兄さんはそうじゃないみたいだ。
バルドの方を見ると、全く周囲を気にする様子もなく、まるで嫌な事を忘れようとしているかのように、会場に置いてある料理を食べる続けていた。
「そういえば、彼女が大人しくている分、他の生徒が騒ぎ出したって、あの担任も嘆いてましたね」
コンラットから不意にあの日の事を持ち出され、僕は教室での出来事を思い出した。
「問題を起こさすなと言う簡単な指示が、何故理解出来ない?」
僕達が演習場で色々あったその日、別の場所では数人の怪我人が出ていたらしく、朝からクラス全員に事情説明と聞き取りが行われていた。
本人達は転んだと主張しているらしいが、明らかに殴られたような痕跡もあり、教師陣達がその事を追求しても、本人達は頑固としてそれを認めようとしないらしい。そのせいで、僕達にまで被害が来るのはいい迷惑だ。
「はぁ…。何故…私がこんな…」
何処か苛ついたように片手で頭をかきながら、何か不満を口にしていたけれど、声が小さすぎて上手く聞き取れない。
「……私が言えたぎりではないが、規律を守って行動しろ。いいな」
それだけ言うと、伝える事は伝えたとでもいうように、少し足取り荒く先生は教室を出て行くと、先生から聞いた話題をネタに雑談を交わしたりして、段々とクラスの中が少し騒がしくなっていく。
去年からいる人にとっては、リータス先生の態度は何時も事として、慣れっこになって来ていた。
「俺達が犯人扱いされなくて良かったな!」
僕達も例に漏れず、バルドが何処かほっとしたように話す。
「その可能性があるのは、貴方だけです」
「うっ…!」
揉め事に首を突っ込んだりするため、そういったトラブルが珍しくないバルドは、真顔で淡々と話すコンラットの言葉に、図星を疲れたような顔で表情を歪めた。
「話しは変わりますが、もうすぐ生誕祭開かれる生誕祭、リュカは大丈夫なんですか?昨日、彼女から紹介するように頼まれていたようですが…?」
そんなバルドを気にする素振りもなく、僕の事を心配そうな顔で見ているコンラットの横で、バルドは驚いたように声を張り上げた。
「アイツも生誕祭来るのか!?」
「当然来るでしょう…」
若干煩そうに顔を歪めながらも、何を当たり前な事を言っているんだと言う目で、バルドに視線を投げる。
「勘弁してくれよ!!」
コンラットの言葉を受けて、頭を抱えるようにして項垂れているバルドに、何と言っていいか分からず、とりあえず前向きになれそうな事を言ってみる。
「えっと…ほら…アリアも用事があって来ないかもしれない…でしょ…?」
「絶対だな!?」
「ごめん…今の言葉はなかった事にして…」
バルドの真剣な顔を受けて、僕は視線をそらしながら、さっき言った事を直ぐに撤回した。
「本人に直接聞いてくれはいいだろう?」
「じゃあ!ネアが聞いてこいよ!!」
「俺は参加しないから関係ない」
バルドの言葉に、ネアは興味なさそうにそっぽを向いて、完全拒否の姿勢を取った。
「……僕が聞いてくるよ」
「ホントか!?」
昨日の去り際に言っていた事も聞きたかったのもあって、僕は自分から彼女に聞きに行くと提案すると、バルドは嬉しそうに顔を綻ばせる。
バルドの声援を後ろに受けながらアリアの所に行くと、僕は思い切って声を掛けた。
「あ、アリア…。ちょっと…いい…?」
「何?貴方の方から私に声かけて来るなんて初めてよね?何か凄い問題でも起きたの?」
「そ、そういうわけじゃないけど…。アリアは…生誕祭…来るんだよね…?」
「当たり前じゃない?」
深刻そうな顔から、何処か肩透かしを受けたような表情で、予想していた言葉を同然のように言う。それを聞いて、僕は固唾を飲んで続きの言葉を口にする。
「そ、それでね…。その日、兄様を紹介させるために…僕達の所にやって来るのかなぁ~?って…」
「行かないわよ」
「えっ!?」
さも当然のように予想とは違う言葉を言うアリアに、僕は驚きと疑問の声を上げた。
「お父様がいる前で、私がそんな真似するわけないでしょう。それに、貴方のお兄様とは仲良くしておきたいけど、私のお父様と貴方の父親とは仲が良いわけじゃないみたいだし近寄らないわ。そもそも、押しかける気があるなら去年に押しかけてるわよ」
「え…?仲悪いの…?」
僕が疑問の言葉を口にすれば、アリアは呆れたような表情を浮かべていた。
「はぁ?貴方と初めてあった時の様子覚えてないの?あの様子見れば分かるじゃない?お兄様くらいなら、父親とかを味方にすれば何とかなるかもしれないけど、父親同士が悪いなら無理でしよ。そんな2人を鉢合わせさせて、せっかくの商談の場をわざわざ台無しにしないわ」
「そ、そう…」
「用事はそれだけ?ならもう行って良い?」
「ちょ、ちょっと待って!」
教室長を去って行こうとするアリアを、僕は慌てたように引き止めた。
「何?」
「ア、アリアって、本性隠す気あるのかなって思って…?」
「はぁ?」
わざわざ引き止めてまで、そんな質問をされると思っていなかったのか、アリアは怪訝そうな顔を浮かべていた。
「いきなり何?まあ、別に隠そうと思えば出来るけど、良い所だけ見せてたら私が疲れるし、その後の評価が落ちるだけでしょ?だけど、先に悪い所を見せてそれを受け入れて貰えたなら、後は上がるだけの方が楽だし、その方が私の性にも合ってるのよ。まあ、お父様達がいる前くらいでは、ちゃんと少しおバカで可愛い娘やってるけどね。もう行って良い?」
「あ、あとね…」
「まだ何かあるの!?」
少し苛立ったような視線を受けて、僕は聞きたかった事を口にした。
「き、昨日の最後の言葉って、バルドの事を言ってたの…?」
今思いだすと、途中までは淑女のような振りをしていたのに、途中から少し態度が変わっていたように思う。
「昨日?ああ、あれは黙っててくれてたお礼になればと思っただけよ。みんな、私の事を好きに言いふらすのに、彼、周りに何も言わなかったみたいだったから。私、借りを作ったらその日のうちに必ず返すようにしているのよ」
アリアはそこで言葉を一旦止めると、ニンマリとした笑みを浮かべながら先を続ける。
「沈黙って本当に大事よね?さすがにまた呼び出しされるのは嫌だったから、女相手に負けたって風潮しない連中で助かったわ。だから、しばらくは大人しくしてるつもりだから安心してって、彼に伝えておいて!」
軽く手を振りながらクラスを後にするアリアの背を見送った僕は、思いがけず昨日の犯人を知って、彼女にだけは喧嘩は売らないでおこうと思った…。
「……ュカ!聞い…ますか?リュカ!」
「え!?何!?」
「何じゃないですよ。途中からボーっとして、どうしたんですか?何度も呼んだんですよ?」
「そ、そうだったんだ…ごめん…」
あの日の時の事を思い出したせいで、少し思考が止まっていたようだ。
「ですか、事件があったから大人しくしているとは、彼女の中にも常識があるようで少し安心しましたね」
「そうだね…」
バルドの事や、事件の犯人の件に付いてはみんなには言わないでおいた。口は災いのもととも言うから、沈黙が1番だ…。
「行儀悪いですよ。それと、口元が汚れています」
生誕祭の料理を頬張りながら話すバルドに、コンラットがハンカチを差し出して注意する。
「しかし、アリアがこっちに来ないと分かっていると、生誕祭も安心して楽しめますね」
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「はぁ…。今回…何も問題がなく無事に終ってくれるなら、それでもう良い…」
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「何もお咎めがなかった分、逆に気にしているみたいなんですよね…」
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別にお兄さんが悪いわけじゃないから、怒られなかったのなら気にしなくても良いような気もするけれど、お兄さんはそうじゃないみたいだ。
バルドの方を見ると、全く周囲を気にする様子もなく、まるで嫌な事を忘れようとしているかのように、会場に置いてある料理を食べる続けていた。
「そういえば、彼女が大人しくている分、他の生徒が騒ぎ出したって、あの担任も嘆いてましたね」
コンラットから不意にあの日の事を持ち出され、僕は教室での出来事を思い出した。
「問題を起こさすなと言う簡単な指示が、何故理解出来ない?」
僕達が演習場で色々あったその日、別の場所では数人の怪我人が出ていたらしく、朝からクラス全員に事情説明と聞き取りが行われていた。
本人達は転んだと主張しているらしいが、明らかに殴られたような痕跡もあり、教師陣達がその事を追求しても、本人達は頑固としてそれを認めようとしないらしい。そのせいで、僕達にまで被害が来るのはいい迷惑だ。
「はぁ…。何故…私がこんな…」
何処か苛ついたように片手で頭をかきながら、何か不満を口にしていたけれど、声が小さすぎて上手く聞き取れない。
「……私が言えたぎりではないが、規律を守って行動しろ。いいな」
それだけ言うと、伝える事は伝えたとでもいうように、少し足取り荒く先生は教室を出て行くと、先生から聞いた話題をネタに雑談を交わしたりして、段々とクラスの中が少し騒がしくなっていく。
去年からいる人にとっては、リータス先生の態度は何時も事として、慣れっこになって来ていた。
「俺達が犯人扱いされなくて良かったな!」
僕達も例に漏れず、バルドが何処かほっとしたように話す。
「その可能性があるのは、貴方だけです」
「うっ…!」
揉め事に首を突っ込んだりするため、そういったトラブルが珍しくないバルドは、真顔で淡々と話すコンラットの言葉に、図星を疲れたような顔で表情を歪めた。
「話しは変わりますが、もうすぐ生誕祭開かれる生誕祭、リュカは大丈夫なんですか?昨日、彼女から紹介するように頼まれていたようですが…?」
そんなバルドを気にする素振りもなく、僕の事を心配そうな顔で見ているコンラットの横で、バルドは驚いたように声を張り上げた。
「アイツも生誕祭来るのか!?」
「当然来るでしょう…」
若干煩そうに顔を歪めながらも、何を当たり前な事を言っているんだと言う目で、バルドに視線を投げる。
「勘弁してくれよ!!」
コンラットの言葉を受けて、頭を抱えるようにして項垂れているバルドに、何と言っていいか分からず、とりあえず前向きになれそうな事を言ってみる。
「えっと…ほら…アリアも用事があって来ないかもしれない…でしょ…?」
「絶対だな!?」
「ごめん…今の言葉はなかった事にして…」
バルドの真剣な顔を受けて、僕は視線をそらしながら、さっき言った事を直ぐに撤回した。
「本人に直接聞いてくれはいいだろう?」
「じゃあ!ネアが聞いてこいよ!!」
「俺は参加しないから関係ない」
バルドの言葉に、ネアは興味なさそうにそっぽを向いて、完全拒否の姿勢を取った。
「……僕が聞いてくるよ」
「ホントか!?」
昨日の去り際に言っていた事も聞きたかったのもあって、僕は自分から彼女に聞きに行くと提案すると、バルドは嬉しそうに顔を綻ばせる。
バルドの声援を後ろに受けながらアリアの所に行くと、僕は思い切って声を掛けた。
「あ、アリア…。ちょっと…いい…?」
「何?貴方の方から私に声かけて来るなんて初めてよね?何か凄い問題でも起きたの?」
「そ、そういうわけじゃないけど…。アリアは…生誕祭…来るんだよね…?」
「当たり前じゃない?」
深刻そうな顔から、何処か肩透かしを受けたような表情で、予想していた言葉を同然のように言う。それを聞いて、僕は固唾を飲んで続きの言葉を口にする。
「そ、それでね…。その日、兄様を紹介させるために…僕達の所にやって来るのかなぁ~?って…」
「行かないわよ」
「えっ!?」
さも当然のように予想とは違う言葉を言うアリアに、僕は驚きと疑問の声を上げた。
「お父様がいる前で、私がそんな真似するわけないでしょう。それに、貴方のお兄様とは仲良くしておきたいけど、私のお父様と貴方の父親とは仲が良いわけじゃないみたいだし近寄らないわ。そもそも、押しかける気があるなら去年に押しかけてるわよ」
「え…?仲悪いの…?」
僕が疑問の言葉を口にすれば、アリアは呆れたような表情を浮かべていた。
「はぁ?貴方と初めてあった時の様子覚えてないの?あの様子見れば分かるじゃない?お兄様くらいなら、父親とかを味方にすれば何とかなるかもしれないけど、父親同士が悪いなら無理でしよ。そんな2人を鉢合わせさせて、せっかくの商談の場をわざわざ台無しにしないわ」
「そ、そう…」
「用事はそれだけ?ならもう行って良い?」
「ちょ、ちょっと待って!」
教室長を去って行こうとするアリアを、僕は慌てたように引き止めた。
「何?」
「ア、アリアって、本性隠す気あるのかなって思って…?」
「はぁ?」
わざわざ引き止めてまで、そんな質問をされると思っていなかったのか、アリアは怪訝そうな顔を浮かべていた。
「いきなり何?まあ、別に隠そうと思えば出来るけど、良い所だけ見せてたら私が疲れるし、その後の評価が落ちるだけでしょ?だけど、先に悪い所を見せてそれを受け入れて貰えたなら、後は上がるだけの方が楽だし、その方が私の性にも合ってるのよ。まあ、お父様達がいる前くらいでは、ちゃんと少しおバカで可愛い娘やってるけどね。もう行って良い?」
「あ、あとね…」
「まだ何かあるの!?」
少し苛立ったような視線を受けて、僕は聞きたかった事を口にした。
「き、昨日の最後の言葉って、バルドの事を言ってたの…?」
今思いだすと、途中までは淑女のような振りをしていたのに、途中から少し態度が変わっていたように思う。
「昨日?ああ、あれは黙っててくれてたお礼になればと思っただけよ。みんな、私の事を好きに言いふらすのに、彼、周りに何も言わなかったみたいだったから。私、借りを作ったらその日のうちに必ず返すようにしているのよ」
アリアはそこで言葉を一旦止めると、ニンマリとした笑みを浮かべながら先を続ける。
「沈黙って本当に大事よね?さすがにまた呼び出しされるのは嫌だったから、女相手に負けたって風潮しない連中で助かったわ。だから、しばらくは大人しくしてるつもりだから安心してって、彼に伝えておいて!」
軽く手を振りながらクラスを後にするアリアの背を見送った僕は、思いがけず昨日の犯人を知って、彼女にだけは喧嘩は売らないでおこうと思った…。
「……ュカ!聞い…ますか?リュカ!」
「え!?何!?」
「何じゃないですよ。途中からボーっとして、どうしたんですか?何度も呼んだんですよ?」
「そ、そうだったんだ…ごめん…」
あの日の時の事を思い出したせいで、少し思考が止まっていたようだ。
「ですか、事件があったから大人しくしているとは、彼女の中にも常識があるようで少し安心しましたね」
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