落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ

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五章

持ってきたのは

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「今日はネアのせいで本当に散々だった!!」

「バルド…そろそろ落ち着いたらどうですか…?それに、ネアも何かしらの意図があって頼んだんだと自分で言っていたじゃないですか…?」

「だから、ちゃんと言われた通りにしただろ!なのに、学院を休んだだけじゃなく、此処に顔も見せに来てないじゃんか!!」

コンラントが宥めるも、昨日の件があったのと、此処に来ればネアがいると思っていたのにその宛が外れてしまった事もあって、バルドの怒りは中々収まりそうにもなかった。どうやら、協力する変わりにアリアから無理難題を頼まれたようで、さっきからの聞こえてくる愚痴の大半の理由は、その事が原因のようだった。だけど、僕達が何を頼まれたのかを訪ねると、バルドは珍しく口を閉ざして何も教えてくれなかった。

なかなか苛立ちが収まらないバルドの愚痴を聞きながら、なかなか現れないネアを僕の部屋で待っていると、ようやくネアが来たようで、部屋をノックする音が聞こえた。

「遅いぞ!それと、何で今日学院に来なかったんだよ!?」

「調べ物で少し忙しかったんだ」

メイドに開けて貰った扉を潜りながらこっちへとやって来たネアに、バルドがせきを切ったように不満を口にするけれど、ネアはそれを簡単に流しすかのような態度を見せる。

「調べ物って何だよ!?お前が休んだせいで、俺はアリア相手に大変だったんだぞ!」

「そんな事よりも、アリアから協力は取り付けて来たのか?」

「そんな…事って…!!」

ネアの態度にバルドがもう一度憤慨したように文句を口するけど、全く意に返したようすもなく、平然とした様子で結果報告を聞いてくる態度に、バルドはさらに怒った顔で唸る。だけど、そんな態度すらもどうでも良いとでも言うように、再度同じ事を問い掛ける。

「それで、どうなんだ?」

「ちゃんと取り付けて来たよ!ふん!」

とても大事な事であるかのように、ネアが真剣な面持ちで尋ねれば、不満を全面に出しながらも質問には答えていた。でも、最後は鼻息荒く、拗ねたようにそっぽを向いてしまった。だけど、ネアはその回答に満足したようで、静か頷いてから手に持っていた封筒を机の上に置いた。

「何?これ?」

「昨日話していた店の場所の情報だ」

「店って!?そんなのとっくに調べが終わってるだろ!」

僕が不思議に思ってネアに問い掛けたけど、それに答えをネアの言葉を聞いた途端、バルドは今さらそんなの調べても意味はないとでも言うように怒る。でも、ネアは違うとでもいうように軽く首を横に振った。

「未だ不明になっている運び先だ」

「も、もしかしてですが…王都から運び出された召喚獣がいる場所ですか…?」

「そうだ」

「はぁっ!?何でお前がそんな物を持ってるんだよ!?」

まさかとでもいうような顔で恐る恐る聞いたコンラットの問い掛けに、ネアは平然とした顔で頷く。すると、出して来た物があまりにもあり得ない物だったため、さっきまでの怒りを忘れたようにバルドが驚きの声を上げた。

「あの後帰ってからいろいろとな」

「いや!いろいろって!こんなの調べようと思ったって、そう簡単に分かるような事じゃねぇだろ!」

「今回ばかりは、ウィンクルム商会が全面的に協力するからな」

「つまり…ネアの所の情報網を使ったと言う事ですか…?」

「……」

コンラットからの問い掛けに、ネアは肯定も否定もせず、無言で立っていた。けれど、それ以外考えられない状況に、僕達は1度顔を見合わせる。

「なぁ…こんなの1日で調べ上げるってどれだけなんだ?」

「商人同士という事もあり、情報も集まり易いということなんですかね…?」

「でも、ネアって猫の事が絡むと、人が変わったように凄いよね…」

手段が限られていて、自由に動けなかったとしても、あの兄様が未だに特定出来なかった情報をあっさりと持ってくるネアの執念に、何処か末恐ろしい物を感じる。そんなネアに、バルドは思うところがあるのか愚痴でもこぼすかのように呟く。

「これぐらいのやる気を普段から出せば、授業とかでも張り合いでるのにな」

「貴方の場合、ただ手合わせの相手が欲しいだけでしょう…」

「まぁな」

「はぁ…とりあえず、何処からの情報なのかだけは聞いておいた方が良いんじゃないですか?」

どこか軽い口調で言うバルドにため息を付きながらも、今後のために情報源だけは聞いておいた方が良いと言うので、それを聞くために僕が顔を上げると、話は終わったかとでもいうような顔でこちらを見ていたネアと目があった。

「ねぇ?これって、誰から聞いたの?」

「それは言えない」

「信用問題とかがあるからでですか?」

「情報は金にもなるならな」

顧客情報を簡単に売り渡す店だと知れたらまずいのか、僕達の問い掛けにもはっきりとは答えず、それ以上の事は何も言うつもりはないようだった。

「見ても良い?」

「好きに見ればいいだろう」

空いている席へと座ろうとしていたネアに聞けば、もう自分の手を離れて、もう興味すらない物かのうな態度を見せる。そんなネアの態度に戸惑いながらも、僕が封筒を開けて中身を確認しようとすると、2人は興味深げに両脇から覗いてきた。

「知らない店だな?」

「それは当然ですよ。住所を見ると北の領地にあるお店みたいですからね」

書類を見ながらバルドが上げた声に、コンラットが店がある場所が書かれた箇所を指差しながら答えれば、見覚えのある場所に疑問の声を上げる。

「あれ?北って」

「アリアの領地ですね」

「あぁ、だからネアは俺に頼んできたのか。でも、昨日の時点では何処に行ったのかも知らなかったよな?なのに、よく北だって分かったな?」

バルドがコンラットの言葉に納得がいったかのような表情を浮かべるけど、途中で何かに気付いたかのように、ネアへと視線を向けた。

「この王都でこれだけ見つからずに活動する事が出来るなら、国が絡んでいる可能性が高い。それでまず疑うとしたら帝国連中だが、最近は摘発が相次いだ事で根城を潰されている奴等は、それの立て直しで今は精一杯だろう。そうなると、ハンデルかルークスの2国のどちらかとなるが、商業国家のハンデルがそんなリスクが高い事をするとは思えない。なら、運ばれる先として考えられるのはルークスであり、その国と国境が近い北だろう」

「やっぱり、ネアは色々と考えてるんだなぁ。でも、それに気付いてるなら、最初から教えてくれれば良かったんじゃないのか?」

ネアが語った考察に、バルドは感心したような呟きを零しながら頷いていたけれど、ふと気付いたかのように昨日の事を口にする。だけど、それが原因で喧嘩になりかけた事もあり、傍で聞いていた僕達は少しだけ身を固くする。だけど、そんな僕達の気持ちを知ってか知らずか、2人は普通に話していた。

「俺が気付くような事なら、とっくに誰か気付いて何かしてるだろう」

「そうか?俺は気付かなかったけど。それで、此処まで行くのにどれくらいかかるんだ?」

「急いで行けば、馬車で10日くらいだな」

「思ったより遠いな」

そこに行った事があるのか、ネアが何の迷いもなくそこまでの日数を口にすれば、それを聞いていたコンラットの顔が少し曇った。

「この資料を見ると、王都を立ったのが一週間程前ですから、今から追いかけても間に合わないかもしれないですね……」

「急げば何とかならないのか!?」

「いくら馬を飛ばしたとしても、この差を埋めるのは容易ではないと思います」

「でも!兄様ならきっと何とか出来るんじゃない!?」

「そうだな!なにせ、ドラゴンがいるからな!」

ドラゴンに乗ってけば馬より速く着く事が出来ると思った僕達は、その興奮を押さえきれずに、封筒を片手にネアへと問い掛ける。

「ねぇ!?兄様にこれ渡しても良い!?」

「お前に渡した物なんだから、後は好きにしろよ」

ネアの言葉を受けて、兄様がいる執務室に急いで移動しようと席を立つ僕達だったけど、ネアだけは立つ素振りすら見せない。

「何してるんだ!?速く行くぞ!?」

「俺は此処に残る」

「はぁっ!?一番の功労者が何言ってるんだ!?」

座ったままでいるネアに声を掛けるけれど、それを拒絶するネアの態度に、バルドはあり得ないといった顔で声を上げる。だけど、ネアの方は説明するのも面倒臭そうな顔で言った。

「俺が行ったって、どうせ色々と聞かれて怪しまれるだけだろう。だから、そんな面倒な場所には行く気はない」

「大丈夫だって!言えない事にも理由があるんだから、ちゃんと分かってもらえるって!」

「うん。兄様は優しいから、ちゃんと分かってくれるよ!」

「……それはお前にだけだろう」

「えっ?なに?」

「何も言ってない」

小声で言ったネアの言葉が聞き取れず、聞き返した僕だったけど、ネアは言っても無駄かのように首を横に振るだけだった。

その後、ごねるネアを何とか説得して、兄様の執務室へと一緒にやって来た僕達は、さっき僕の部屋であった事を兄様に一から話した。

「ふぅ、とりあえず事情は分かった。それに、ここに書かれている内容を見ても、納得いく部分が多い。だから、情報の信憑性もあるだろう。だが、今は不用意な情報で動くのは得策ではない」

僕達の経緯を聞き終え、ネアが持って来た情報を納得したように見ていた兄様だったけど、何故か反対するような事を言ってきた。

「でも!急がないと!」

「迅速な対応と適切な対応は違う」

急かすように言った僕の言葉を、兄様はきっぱりとした態度で否定する。兄様からここまで突き放されたような事を言われた事がなかった僕は、兄様のその態度に何も言い返せないでいると、兄様の方も僕と視線を合わせていたくなかったのか、静かにネアの方へと視線を向けた。

「それと、いくら商人達の情報が速いと言っても、さすがに限度があるだろう。それに、金になりそうな情報をそう簡単に他人に明け渡したりするとも思えない。この情報を、お前は何処から手に入れた?」

「……」

「黙りか。では、この事を口外しない事を約束し、それについての誓約書も書くと約束しよう。それでも、この情報源に関しては何も話せないのか?」

「……」

情報源を明らかにしようと、兄様がネアへと取引を持ち掛けるも、それ対しても返事をしようとしないネアに、兄様の目が段々と厳しいものになって行く。

「兄様…ネアも隠したくて隠してるわけじゃないんだよ…?それに、兄様もさっき分かったって言ったでしょう…?」

「……そうだったな」

僕が言った言葉で1度は納得するような事を言うも、それでも何か言いたそうな目でネアの事を兄様が見ていると、部屋の扉がノックもなしに乱暴に開け放された。そして、屋敷中に聞こえるんじゃないかと思えるくらい大きな声が響き渡った。

「アンタ達!アイツの気配がないけど、いったい何処に消えたのよ!?」

そう言って兄様の執務室へ押し入って来たのは、大変な時に何処に行っていたのかも分からなかったティだった。
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