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五章
隠し事は出来ない
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僕達の様子が不自然そうに見えたのか、まるで不審者でも見るような視線を向けてくる。そんな中、一人だけ動揺していないネアだけが、ティへと声を掛ける。
「お前、戻ってくるのがあまりに速くないか?色々と手間が掛かる分、もう少し時間が掛かると思ったんだが?」
「えっ!?ほ、ほら、こういうのは急いだ方が良いでしょう!?だから、ちょっとだけ頑張ってあげたのよ!!」
ネアから聞かれた途端、さっきまで怪しげな視線を向けていたティの目が完全に泳ぎだし、態度もどこか落ち着きなさそうな挙動不審なものに変わる。そんな明らかに何か隠しているような様子に、今度は僕等が不審な目を向けていると、ティは開き直ったような態度で反論する。
「何よ!?仮に私が何を隠してようが、アンタ達には特に関係ないでしょう!私はちゃんとやる事はやったんだから!!ほら!アンタもボサッとしてないで、さっさと行くわよ!!」
「えっ!?でも、兄様に一言でも言ってからじゃないと……」
「どうせまだ準備なんて終わらないんだから、そんなの適当に時間を潰してから呼べば良いわよ!!」
行く時は声を掛けるよう兄様から言われていたから、驚きながらも少し待って貰おうと思ったら、今すぐ此処から離れたそうに、僕を背中を押して無理やり連れて行こうとする。強引に連れて行こうとするティに、僕も負けじとその場に踏み留まろうとするけれど、グイグイと押してくるティの力が思いの他に強くて、僕の身体が少しづつ前へと押されて行く。だから、みんなに助けを求めるように後ろを振り返れば、あっちも予期せぬ事態に混乱しているようだった。
「なぁ!?これって止めた方が良いのか!?」
「私にそんな事を聞かれても、仕組みも分からないものを止めても良いかなんて分かりませんよ!?」
焦っているそんな2人をよそに、その様子を冷静に後ろで見ていたネアは、僕と視線が合っても見送るように軽く手を振るだけで助けようともしてくれない。そんな薄情な姿に僕が不満を口にしようとしたら、何の前触れもなく、僕が見えていた景色が一変した。
僕としては押し出されるがまま一歩踏み出しだけのつもりだったから、急に見慣れた僕の屋敷の庭から何もない真っ白な空間へと急に視界が切り替わってしまった事に、どうしても頭が付いて行けない。驚き戸惑っていると、そんな僕の気持ちなんかおかまいなしのように、ティは僕の背中から手を離すと平然と声を掛けてくる。
「ほら、何時までボサッと立ってないでさっさと行くわよ!はぐれたりしたらそのまま置いて行くからね!」
ティがいなかったら方向すら分からない空間なだけに、不満はあったけど僕も置いて行かれないように歩き出す。だけど、ティは僕がちゃんと付いて来れるくらいのゆっくりとした速度で飛びながら、僕がちゃんと付いて来ているか、時折振り返りながら確認してくれる。でも、こんな場所を無言のまま歩いていると、どうしても心細くなってしまう。
「ねぇ?どうしてティは進む方向が分かるの?」
「ん?こんなの魔力の流れに沿って進めば良いだけだから、慣れれば誰だって簡単に行けるわよ。まぁ、入る時はちょっとコツがいるけれどね」
ティはチラリとこちらを振り向くと、何でもない事のようにさらりと言う。でも、魔力の流れを読むなんて僕には出来ない。だけど、父様や兄様なら出来そうだなと思いながら、少しでも気を紛らわすためにティへと話し掛ける。
「ねぇ?コツってどうやるの?」
「どうやるって…?んー…?なんて言えば良いのかしら?ドアノブがない扉に、取っ手を付けるみたいなものかしら?」
「分かるような…分かんないような…?そもそも取っ手を付けるって何?」
「そこに扉があっても、取っ手がないと中に入れないでしょう?だから、ドアノブの変わりになるような物を魔力で作って、空間ごとそこをねじ開ける感じよ」
「うーん…?」
「どうせ悩んだってアンタには無理なんだから、そんなの気にしたってしょうがないでしょう。さぁ、もうちょっとで外に出るわよ」
説明するのが面倒になったのか、開け方だけでその取っ手の作り方までは教えてくれなかった。そうして、さっさとこの話題を終われせるかのように前を向くと、ティはさっきよりも少しだけ速度を上げて進み始める。だけど、いくら説明しても無理だといっても、そんなにはっきりと本当の事を言われると面白くない。
さっきの強引な言動もあり、僕が不満を内心に抱えながらも歩みを止めずに歩いていると、入って来た時と同様に、何の前触れもなく急に周りの景色が切り替わり、いつか見た事があるような森の中に出ていた。
「それで、これから行く道は何処にあるの?」
「あっちよ」
道がある場所が分からない僕が尋ねると、ティは森の奥へと続いて行きそうな道の方を指さして言った。てっきり、道を出て直ぐ近くの所にあると思っていただけに、思ったよりも歩く事に疑問を抱く。
「此処から離れた所に作ったんだね?」
「アイツに伝えた時間までまだあるんだから、少し距離があったって別に良いでしょう」
「でも、さっき急いだ方が良いって言ってなかった?」
「うぐっ!そ、そんな事言ったかしら!?」
自身で言っていた事を僕が指摘すれば、途端に惚けたような態度へと変わるティ。そんな態度に、僕が再度怪しげな視線を向けていると、聞いた事がない元気な声が聞こえてきた。
「あっ、お菓子の家の子だ」
声がした方を向くと、ティよりも少しだけ幼いような顔立ちをした妖精の女の子の姿があった。その子は人懐っこいのか、それともティと一緒にいるからなのかは分からないけど、何の警戒心もなく近寄って来たその子に、僕はさっき聞こえてきた言葉の意味を問い掛ける。
「お菓子の家って?」
「えっ?だって、女王様が何時もお菓子をいっぱい持って来てくれるから、お菓子の家に住んでるんでしょ?」
「えっと…そう…だね…?」
何の悪意もない純真な目で見つめられながら言われると、その小さくて幼い姿なのもあって、その夢を壊したら駄目だと頷いてしまった。だけど、この子と親しいはずのティが、何故か此処にいて欲しくなさそうな雰囲気でその子に話し掛ける。
「それより、どうして此処にいるの?今日は、あっちでみんなと遊ぶって言ってなかった?」
「うん。そのつもりだったんだけど、何か面白いことないかなぁ~って散歩してしてたの。そうしたら、女王様がお菓子の家の子と一緒にいるから飛んで来たの。でも、どうして一緒にいるの?」
「コイツ等が私達が使っている道をどうしても使いたいって言うから、私が直々に案内して上げてるのよ!」
「すごーい!お菓子の家の子に頼られるなんて、やっぱり女王様はすごいね!」
その子から聞かれて、ティは威厳を保つかのように胸を張るって答えれば、直ぐに曇りがない称賛の声が返って来る。その事に、ティも気を良くしたように得意げだったから、僕もその場の空気に合わせるように、少しだけティを持ち上げながら答える。
「そうなんだ。僕達のために、ティがわざわざそれまで行くための道を作ってくれたんだよ」
「あれ?でも、女王様?そこまで行く道はもうあるから、後は広げるだけで終わるってさっきウルとお話ししてなかった?」
「聞いてたの!?あっ!そ、そうじゃなくて、そんな話してないわよね…?」
僕の父様のために協力してくれているから、僕もそれに感謝する気持ちで言っただけだったのに、思わぬ形でティの隠し事が露呈してしまった。咄嗟に出ただろう本音を隠すようにティは慌てた様子で惚けるけど、身内のような相手には強く出られないのか、その言葉尻はどこか弱い。そのせいか、その子はまるで嘘なんか付いてないとでも言うように、少し口を尖らせながら言葉を返す。
「してたよ!ウルが正直に言った方が良いって言ったら、女王様がどうせ分かりこないって!!」
何の悪気もなく、秘密にしようとしていた事を全部喋られてしまったティは、ダラダラと冷や汗でも掻きそうな顔で、必死に僕から顔をそむけていた。それでも僕がただ無言で見つめていたら、その無言に耐えられなくなったのか、何故かティの方が怒り出した。
「ちょっと!言いたい事があるなら、はっきり言えば良いでしょう!!」
「……兄様に正直に言った方が良いと思うよ?」
「駄目よ!アイツには内緒!性根が腐ってるから、何をされるか分からないわ!」
「兄様はそんな人じゃないよ」
「とにかく内緒よ!その代わり、アンタのお願い事を一つだけ聞いて上げるから!」
懇願するように言ってきたその言葉に、何かあったかなと少し考えてみたけれど、今の問題を解決すること以外、特にお願いしたい事がない。だけど、その事をティにお願いしたとしても、とても叶えてもらえそうにない。
「とりあえず、今はないかな?」
「そう。なら、決まったら言いなさい。ただし、私に出来る範囲までだからね!」
どこか上から言ってくるティに少しだけ呆れながらも、此処で少しだけ時間を取ってしまっているだけに、僕はティへと声を掛ける。
「あまり兄様を待たせるわけにもいかないし、そろそろ行った方が良いんじゃない?」
「まだよ!アイツにはもう少し遅い時間を伝えちゃったから、此処で時間を潰してから行くわ!」
清々しい程に開き直ったティだったけど、僕もその提案を断る事が出来ずに、結局は暫く森で過ごす事になってしまったけど、後で合流したウルとかにも会えたりもした。でも、ティよりもウルの方が森に詳しかったのは、やっぱりと言えば良いのか分からない。そうして、暫くお喋りをした後に、ティからそろそろ良い頃合いだと言われて案内されるがまま付いて行ったけど、真っ白な空間を超えて着いたと言われた場所も、最初と変わらないような森の中だった。
「本当に着いたの?」
「あのね。アンタの家にいる奴や、召喚獣が特殊だったから出来たのであって、自然に出来る道が街の中になんか出来るわけないでしょう。この場所だって、本当はもう少し森の中にあったやつが、人間が森の木を切ったから此処まで町の近くになっただけだしね」
僕が疑うような視線を向ければ、ティは心外だとでもいうように怒り出すけれど、周囲が木々に覆われているから、ティが本当の事を言っているのかは分からない。だけど、ここで嘘を付く必要もないので、たぶん目的の場所の近くまでは来ているんだと思う。でも、まだ少し信じきれないでいると、ティは覚悟でも決めたかのように声を張り上げる。
「さぁ、あの捻くれ物を呼ぶわよ!言っとくけど、さっきの事は本当に内緒だからね!!」
「内緒にはするけど、兄様は捻くれてなんかいないからね」
「アンタはアイツ等の本性に気付いてないだけよ!私への態度を見てれば分かるでしょう!?」
ティの言葉に不満を唱えれば、自分の事を例に出して訴えてくるけど、それはティの事項自得な所が大きいだけに、兄様達の態度が厳しくなってもしょうがないと思う。でも、それをティに言ったら絶対に反論してくる。そうしたら、兄様をさらに待たせる事になってしまるから、今だけぐっと不満を押し殺して、兄様を呼ぶために魔力を練り始める。
授業でやり慣れたヒナノではなく、兄様の事を意識して魔法陣を展開すれば、何時もとは少しだけ違うような感覚がした後、静かに兄様が魔法陣の上へと姿を表した。だけど、兄様に一言も言わずに行ったからか、その表情はどこか不機嫌そうで、その視線は僕の近くにいるティへと向かう。
「勝手に連れ出したそうだな?」
バルド達にでも聞いたのか、ティの行動を真っ先に追及するような事を言う。すると、ティはそんな視線から逃れるため、僕の背中に隠れて盾のようにするけれど、その行動も兄様には不満なようで、より一層厳しい目になっていた。
「私が指定していた場所とも随分と違うようだが、お前はそんなに私に喧嘩を売りたいのか?」
「うっさいわね!少し場所がズレたくらい大目にみなさいよ!そんな細かいこと言っていると女にモテないわよ!」
「ふん、その方が助かる」
威圧するように言う兄様が怖いのか、僕の肩から顔だけ出してティは反論するけれど、それが僕の耳元の近くだけに少し煩い。それに、言われた方の兄様は、本気でその方が良いと思っているようで、ティの言葉を鼻で笑うだけでそれに対する動揺は殆どない。そんな兄様の様子に、ティは自分とは合わない人間に向けるような嫌そうな声で、ボソリと呟いた。
「やっぱり、アイツは心が狭い捻くれ者だわ…」
「聞こえているぞ」
ティが小声で言った言葉にも関わらず、兄様にはしっかり聞こえていたようだった。
「お前、戻ってくるのがあまりに速くないか?色々と手間が掛かる分、もう少し時間が掛かると思ったんだが?」
「えっ!?ほ、ほら、こういうのは急いだ方が良いでしょう!?だから、ちょっとだけ頑張ってあげたのよ!!」
ネアから聞かれた途端、さっきまで怪しげな視線を向けていたティの目が完全に泳ぎだし、態度もどこか落ち着きなさそうな挙動不審なものに変わる。そんな明らかに何か隠しているような様子に、今度は僕等が不審な目を向けていると、ティは開き直ったような態度で反論する。
「何よ!?仮に私が何を隠してようが、アンタ達には特に関係ないでしょう!私はちゃんとやる事はやったんだから!!ほら!アンタもボサッとしてないで、さっさと行くわよ!!」
「えっ!?でも、兄様に一言でも言ってからじゃないと……」
「どうせまだ準備なんて終わらないんだから、そんなの適当に時間を潰してから呼べば良いわよ!!」
行く時は声を掛けるよう兄様から言われていたから、驚きながらも少し待って貰おうと思ったら、今すぐ此処から離れたそうに、僕を背中を押して無理やり連れて行こうとする。強引に連れて行こうとするティに、僕も負けじとその場に踏み留まろうとするけれど、グイグイと押してくるティの力が思いの他に強くて、僕の身体が少しづつ前へと押されて行く。だから、みんなに助けを求めるように後ろを振り返れば、あっちも予期せぬ事態に混乱しているようだった。
「なぁ!?これって止めた方が良いのか!?」
「私にそんな事を聞かれても、仕組みも分からないものを止めても良いかなんて分かりませんよ!?」
焦っているそんな2人をよそに、その様子を冷静に後ろで見ていたネアは、僕と視線が合っても見送るように軽く手を振るだけで助けようともしてくれない。そんな薄情な姿に僕が不満を口にしようとしたら、何の前触れもなく、僕が見えていた景色が一変した。
僕としては押し出されるがまま一歩踏み出しだけのつもりだったから、急に見慣れた僕の屋敷の庭から何もない真っ白な空間へと急に視界が切り替わってしまった事に、どうしても頭が付いて行けない。驚き戸惑っていると、そんな僕の気持ちなんかおかまいなしのように、ティは僕の背中から手を離すと平然と声を掛けてくる。
「ほら、何時までボサッと立ってないでさっさと行くわよ!はぐれたりしたらそのまま置いて行くからね!」
ティがいなかったら方向すら分からない空間なだけに、不満はあったけど僕も置いて行かれないように歩き出す。だけど、ティは僕がちゃんと付いて来れるくらいのゆっくりとした速度で飛びながら、僕がちゃんと付いて来ているか、時折振り返りながら確認してくれる。でも、こんな場所を無言のまま歩いていると、どうしても心細くなってしまう。
「ねぇ?どうしてティは進む方向が分かるの?」
「ん?こんなの魔力の流れに沿って進めば良いだけだから、慣れれば誰だって簡単に行けるわよ。まぁ、入る時はちょっとコツがいるけれどね」
ティはチラリとこちらを振り向くと、何でもない事のようにさらりと言う。でも、魔力の流れを読むなんて僕には出来ない。だけど、父様や兄様なら出来そうだなと思いながら、少しでも気を紛らわすためにティへと話し掛ける。
「ねぇ?コツってどうやるの?」
「どうやるって…?んー…?なんて言えば良いのかしら?ドアノブがない扉に、取っ手を付けるみたいなものかしら?」
「分かるような…分かんないような…?そもそも取っ手を付けるって何?」
「そこに扉があっても、取っ手がないと中に入れないでしょう?だから、ドアノブの変わりになるような物を魔力で作って、空間ごとそこをねじ開ける感じよ」
「うーん…?」
「どうせ悩んだってアンタには無理なんだから、そんなの気にしたってしょうがないでしょう。さぁ、もうちょっとで外に出るわよ」
説明するのが面倒になったのか、開け方だけでその取っ手の作り方までは教えてくれなかった。そうして、さっさとこの話題を終われせるかのように前を向くと、ティはさっきよりも少しだけ速度を上げて進み始める。だけど、いくら説明しても無理だといっても、そんなにはっきりと本当の事を言われると面白くない。
さっきの強引な言動もあり、僕が不満を内心に抱えながらも歩みを止めずに歩いていると、入って来た時と同様に、何の前触れもなく急に周りの景色が切り替わり、いつか見た事があるような森の中に出ていた。
「それで、これから行く道は何処にあるの?」
「あっちよ」
道がある場所が分からない僕が尋ねると、ティは森の奥へと続いて行きそうな道の方を指さして言った。てっきり、道を出て直ぐ近くの所にあると思っていただけに、思ったよりも歩く事に疑問を抱く。
「此処から離れた所に作ったんだね?」
「アイツに伝えた時間までまだあるんだから、少し距離があったって別に良いでしょう」
「でも、さっき急いだ方が良いって言ってなかった?」
「うぐっ!そ、そんな事言ったかしら!?」
自身で言っていた事を僕が指摘すれば、途端に惚けたような態度へと変わるティ。そんな態度に、僕が再度怪しげな視線を向けていると、聞いた事がない元気な声が聞こえてきた。
「あっ、お菓子の家の子だ」
声がした方を向くと、ティよりも少しだけ幼いような顔立ちをした妖精の女の子の姿があった。その子は人懐っこいのか、それともティと一緒にいるからなのかは分からないけど、何の警戒心もなく近寄って来たその子に、僕はさっき聞こえてきた言葉の意味を問い掛ける。
「お菓子の家って?」
「えっ?だって、女王様が何時もお菓子をいっぱい持って来てくれるから、お菓子の家に住んでるんでしょ?」
「えっと…そう…だね…?」
何の悪意もない純真な目で見つめられながら言われると、その小さくて幼い姿なのもあって、その夢を壊したら駄目だと頷いてしまった。だけど、この子と親しいはずのティが、何故か此処にいて欲しくなさそうな雰囲気でその子に話し掛ける。
「それより、どうして此処にいるの?今日は、あっちでみんなと遊ぶって言ってなかった?」
「うん。そのつもりだったんだけど、何か面白いことないかなぁ~って散歩してしてたの。そうしたら、女王様がお菓子の家の子と一緒にいるから飛んで来たの。でも、どうして一緒にいるの?」
「コイツ等が私達が使っている道をどうしても使いたいって言うから、私が直々に案内して上げてるのよ!」
「すごーい!お菓子の家の子に頼られるなんて、やっぱり女王様はすごいね!」
その子から聞かれて、ティは威厳を保つかのように胸を張るって答えれば、直ぐに曇りがない称賛の声が返って来る。その事に、ティも気を良くしたように得意げだったから、僕もその場の空気に合わせるように、少しだけティを持ち上げながら答える。
「そうなんだ。僕達のために、ティがわざわざそれまで行くための道を作ってくれたんだよ」
「あれ?でも、女王様?そこまで行く道はもうあるから、後は広げるだけで終わるってさっきウルとお話ししてなかった?」
「聞いてたの!?あっ!そ、そうじゃなくて、そんな話してないわよね…?」
僕の父様のために協力してくれているから、僕もそれに感謝する気持ちで言っただけだったのに、思わぬ形でティの隠し事が露呈してしまった。咄嗟に出ただろう本音を隠すようにティは慌てた様子で惚けるけど、身内のような相手には強く出られないのか、その言葉尻はどこか弱い。そのせいか、その子はまるで嘘なんか付いてないとでも言うように、少し口を尖らせながら言葉を返す。
「してたよ!ウルが正直に言った方が良いって言ったら、女王様がどうせ分かりこないって!!」
何の悪気もなく、秘密にしようとしていた事を全部喋られてしまったティは、ダラダラと冷や汗でも掻きそうな顔で、必死に僕から顔をそむけていた。それでも僕がただ無言で見つめていたら、その無言に耐えられなくなったのか、何故かティの方が怒り出した。
「ちょっと!言いたい事があるなら、はっきり言えば良いでしょう!!」
「……兄様に正直に言った方が良いと思うよ?」
「駄目よ!アイツには内緒!性根が腐ってるから、何をされるか分からないわ!」
「兄様はそんな人じゃないよ」
「とにかく内緒よ!その代わり、アンタのお願い事を一つだけ聞いて上げるから!」
懇願するように言ってきたその言葉に、何かあったかなと少し考えてみたけれど、今の問題を解決すること以外、特にお願いしたい事がない。だけど、その事をティにお願いしたとしても、とても叶えてもらえそうにない。
「とりあえず、今はないかな?」
「そう。なら、決まったら言いなさい。ただし、私に出来る範囲までだからね!」
どこか上から言ってくるティに少しだけ呆れながらも、此処で少しだけ時間を取ってしまっているだけに、僕はティへと声を掛ける。
「あまり兄様を待たせるわけにもいかないし、そろそろ行った方が良いんじゃない?」
「まだよ!アイツにはもう少し遅い時間を伝えちゃったから、此処で時間を潰してから行くわ!」
清々しい程に開き直ったティだったけど、僕もその提案を断る事が出来ずに、結局は暫く森で過ごす事になってしまったけど、後で合流したウルとかにも会えたりもした。でも、ティよりもウルの方が森に詳しかったのは、やっぱりと言えば良いのか分からない。そうして、暫くお喋りをした後に、ティからそろそろ良い頃合いだと言われて案内されるがまま付いて行ったけど、真っ白な空間を超えて着いたと言われた場所も、最初と変わらないような森の中だった。
「本当に着いたの?」
「あのね。アンタの家にいる奴や、召喚獣が特殊だったから出来たのであって、自然に出来る道が街の中になんか出来るわけないでしょう。この場所だって、本当はもう少し森の中にあったやつが、人間が森の木を切ったから此処まで町の近くになっただけだしね」
僕が疑うような視線を向ければ、ティは心外だとでもいうように怒り出すけれど、周囲が木々に覆われているから、ティが本当の事を言っているのかは分からない。だけど、ここで嘘を付く必要もないので、たぶん目的の場所の近くまでは来ているんだと思う。でも、まだ少し信じきれないでいると、ティは覚悟でも決めたかのように声を張り上げる。
「さぁ、あの捻くれ物を呼ぶわよ!言っとくけど、さっきの事は本当に内緒だからね!!」
「内緒にはするけど、兄様は捻くれてなんかいないからね」
「アンタはアイツ等の本性に気付いてないだけよ!私への態度を見てれば分かるでしょう!?」
ティの言葉に不満を唱えれば、自分の事を例に出して訴えてくるけど、それはティの事項自得な所が大きいだけに、兄様達の態度が厳しくなってもしょうがないと思う。でも、それをティに言ったら絶対に反論してくる。そうしたら、兄様をさらに待たせる事になってしまるから、今だけぐっと不満を押し殺して、兄様を呼ぶために魔力を練り始める。
授業でやり慣れたヒナノではなく、兄様の事を意識して魔法陣を展開すれば、何時もとは少しだけ違うような感覚がした後、静かに兄様が魔法陣の上へと姿を表した。だけど、兄様に一言も言わずに行ったからか、その表情はどこか不機嫌そうで、その視線は僕の近くにいるティへと向かう。
「勝手に連れ出したそうだな?」
バルド達にでも聞いたのか、ティの行動を真っ先に追及するような事を言う。すると、ティはそんな視線から逃れるため、僕の背中に隠れて盾のようにするけれど、その行動も兄様には不満なようで、より一層厳しい目になっていた。
「私が指定していた場所とも随分と違うようだが、お前はそんなに私に喧嘩を売りたいのか?」
「うっさいわね!少し場所がズレたくらい大目にみなさいよ!そんな細かいこと言っていると女にモテないわよ!」
「ふん、その方が助かる」
威圧するように言う兄様が怖いのか、僕の肩から顔だけ出してティは反論するけれど、それが僕の耳元の近くだけに少し煩い。それに、言われた方の兄様は、本気でその方が良いと思っているようで、ティの言葉を鼻で笑うだけでそれに対する動揺は殆どない。そんな兄様の様子に、ティは自分とは合わない人間に向けるような嫌そうな声で、ボソリと呟いた。
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