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ぷくたろう

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シガーラウンジ

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~sideデッキ上の人間~
「いやぁぁぁぁ!また人が死んだわ!」
「おいおい、もう勘弁してくれよ…」

デッキ上の人間が口々に叫ぶ。

7月22日、20時18分のことだ。

「ここも危険かもしれない!階段で上に上がろう!」
誰かが叫んだのをきっかけに、皆はデッキの更に上へと上がった。
「こんなの、もう嫌だっ」
誰かが叫んだ。それは、皆も同じだった。
「安全な場所ってどこなんだよ!こんな、どこも血生臭い所で…」
「そんなの分かるわけないだろっ!」
「そんなの、探してみないと分からないよ!」
皆が思ったことをそのまま言っているので、もう誰が何を言っているのかは分からない。

「何か静かすぎて怖えーよ…俺たち以外にも誰もいないのかな?」
事態が少しだけ飲み込めてきた兎山が言った。
「わからない…だが、この状況を把握出来てない以上、その前に一旦どこかに身を潜めておいたほうがいい。」
先ほど老人をおぶっていた少年が言った。
「ひとまず、あそこの部屋に入ろう!」
誰かがそう言ったので、その場にいた人間は、皆その部屋に飛び込んだ。

そこは、シガーラウンジと呼ばれる部屋で、中には、応接室で使われるような長い机が2つ、長いソファーが4つあった。

「流石にちょっと疲れてきたし、あそこで少し座らないか?」
老人をおぶっている少年が言う。
「あぁ…そうだな。」
兎山もこれに賛成した。
皆がまた話し始める。オレンジ色をしたアフロとヒゲが目立つ男性が言った。
「もしかしたらさ、俺ら以外にも生存者がいたりするんじゃね?」
老人が答えた。
「ふーむ…どうじゃろな。」
「こういう状態になった時ってさ、なんとなく人数がいると心強いっていうか、安心するじゃん?」
「それはそうだけど…他に生存者がいるか分からないのに、無闇に外を出歩くのはちょっと…」
「じゃあ、これからどうするのさ?」
「暫くは、ひとつに固まって行動した方がいいかもしれないな。」
「そそっ!困った時はお互い様って言うし!皆で協力し合おうぜ!」

そして、皆の自己紹介と、先ほどの様子を語り合った。

「俺は、猿渡。一応カジノを経営してるんだ。……俺はよぉ、さっきまで1人食ってたんだぜぇ?そしたら…突然のあれだ…あんな大勢の人がどんどん死んでいくなんて、聞いてねーぜ」
先ほども述べたように、オレンジ色のアフロとヒゲが目立つ男は、猿渡と言うようだ。

「私は……狐井コーポレーションという会社の会長、狐井です。ワシは、食事の後で便所におったわ。外が騒がしいから覗いてみたら…血の海が広がっておったわ。」
狐井という男は、先ほど少年におぶられていた老人だ。杖がないと歩けないぐらいヨボヨボらしい。

「俺の名前は虎牙。この船の専属コックだ。俺は、デッキの所でサボってたんだ。ちょっとキッチンで嫌なことがあったからな。そしたら突然あちこちで悲鳴が聞こえてくるじゃねーかよ!本気でビビったよ!」
虎牙と名乗るその男は、体格がよく、顎にはヒゲを蓄えている。先ほどから焦っているのか、口調が荒い印象だ。

「あ…僕は、この船の船員の、犬飼と言います。まだ新人なのですが…。僕は船内を見回った後、デッキのとこで虎牙さんと飲みながら世間話をしていました。」
その男性は、まだ初々しさが残った青年だ。紫の髪をしていて、優しそうな印象だ。

「あっ…あっ…あたしは、蛇子と言います…その時に1人でディナーホールにて食事をしていたわっ…船のオーナーに客を占ってくれって招待されたのに…冗談じゃないわ!」
蛇子と名乗った女性は、いかにも占い師らしい風貌だった。長い緑色の髪。長すぎる爪。

「…………孔雀です。高校1年です……。………その時は…廊下にいた。」
簡潔すぎる説明で自分の番を終わらせた彼女は、孔雀。先ほどうの手を引いて、ここまで連れてきてくれた少女だ。やはり同い年か。兎山はそう思った。

「よ…鼠谷です…えっと…小5で、ロシアと日本のハーフです…私はパパとママ、鹿宛くんの家族と皆で一緒に食べてたんだよ。」
「そしたら、僕ら以外の大人たちが急にあんなことになってさ…もうトラウマなんですけど。あ…僕は鹿園。同じ小5。」
この会話からして、2人はもともと知り合いなのだろう。鼠谷は、ロシアとのハーフだけあって、長い綺麗な金髪を持っている。ぱっと見小5には見えないぐらい大人っぽい。鹿園は、着ているものや雰囲気からして、どこかの家のお坊ちゃん感が漂っている。

「僕の名前は鯆。高校1年。僕も、彼女と一緒にディナーホールで食事をとっていたら、彼女も突然目の前で…」
この人もやはり同い年か。この人は、先ほど老人をおぶっていた男子だ。お年寄りを助けるなど、温厚そうな性格だな、と兎山は思った。

ついに兎山の番だ。
「俺も…同級生の女の子と、ディナーホールで食事をしていて…だけど…目の前で…その子は……」
兎山は、うまく喋ることができなかった。あの光景を思い出すと、どうしても震えてしまう。
「俺、まだこれが現実だって実感が湧かなくて…自分なりに現状を頭の中で整理しようとしてるんだけど…俺、バカだから全然ワケわかんなくて…でも、何か自然現象とかじゃない…気がする。」

これで、全員喋った。皆がそう思っていた。

「それは私から説明しましょう。申し遅れました、私、亀田と言います。」

もう一人いたのか……まるで機械かのように存在感が0だったため、誰も亀田の存在に気づいていなかった。

「なぜか、人がどんどん死んでいく、この現象の原因…それは…私の組織が極秘で製作した試作ウィルスによるものなのです。ただし、それを船内にバラ撒いたのは、組織の者以外以外の人物によるものです…。」

組織…?試作ウィルス?一体誰がそんなものを……

「この場にいる皆様も、既に感染されている身です。船内に広がったウィルスからは逃れられません。皆様には、これからこの船の上で…」

少しの沈黙。

「生き残れるように必死にもがいて頑張ってもらうしかないですね。ウィルスをバラ撒いたのはだーれだっ?アッハッハッハッ!!!!!」

亀田は、恐ろしいぐらいに目を見開いて甲高く笑った。
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