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第一部
【22】吸血鬼ばぶちゃんと吸血鬼の王。
しおりを挟む「そうそう、レナードちゃんとイカルガくんも、来てくれたのね~~!リクリちゃんのところに遊びに行っていたのかしら」
と、次にお義母さんはレナードさんとイカルガさん夫夫に話し掛ける。
「そんな感じです」
……ってレナードさん。そんな感じなの!?息子の俺が言うのもなんだけど、父さんに殺されかかってなかったか!?
「俺はレンを迎えにな~~」
ニカッと笑うイカルガさんに、レナードさんが……。
「だってぇ……リクりんりんとユユにゃんにゃんとか、ユズちーとナナちーがラブラブで、ぼく寂しくなっちゃって。ぼくだって自分のばぶちゃんと触れ合いたいじゃない?」
いや、ユズちーとナナちーて。ほんのり思っていたけれど、このひと他者への愛称独特すぎない!?
「あら……そうなの?ナナちゃんったら、ついに?」
お義母さんがナナヤさんに顔を向ければ、ナナヤさんが輝かんばかりのイケメンスマイルを向けーー。
「やっぱり貴様は殺す……っ!!」
父さんがくわっと目を見開き、そして懐からナイフを取り出しナナヤさんに振りかざす……!!
ひぇ――――――っ!?まだ危ないもの持ってたの!?一回持ち物検査やっとくべきだったあぁぁぁ――――――っ!!!
「やめよ。王の前で争うとは、命が惜しくないのか」
ふぇ……お義父さん!?
『……っ』
その時、父さんとナナヤさんがピタリと止まる。何がどうなって一瞬で止まったんだ……?
てか……おーって……?
「武器を納めよ」
「ぐ……っ」
悔しげな父さん。しかしお義父さんも迫力がすごいな。
「ユズリハ。さすがに兄上の前だ。諦めよう」
「貴様……っ」
相変わらずナナヤさんをガン睨みな父さんだが。
「……分かった」
父さんがナイフを床に投げ、すかさずレナードさんが回収する。
「ほらほら、そんないがみ合ってないで。みんな、仲直りしましょ……!」
そして緊迫した空気を解すようなお義母さんの声に……。
「シズキ」
ぎゅむっ。
多分この場で一番強い系オーラを出していたお義父さんが、一瞬にしてお義母さんにくっついた。無表情ながら、とっても嬉しそう。
「そうですよ。吸血鬼の王を怒らせるほど恐いことはないですからねー!それくらいにしましょう…!」
続いてレナードさん。
「そうそう。嫁さんの意見だからな、聞いとけ。嫁さんの意見無視したらリクヤが今度こそキレるかんな~!」
ガッハッハと笑うイカルガさん。
「……ねぇ、リクリたん」
ここはそろそろ聞いてもいいと思うんだ。
「うん?なぁに、ユユ」
リクリたんもお義父さんのマネして俺にぎゅーしてるもんな。
「お、おーとか、おーじって何?リクリたんやお義父さんのこと……であってる?」
「あぁ。父上は王で、私が王子だぞ」
ふぇ……?
「あの、おーってつまり……」
「ユユっぴはまだまだ吸血鬼初心者だもんねぇ。あのね、吸血鬼にはヴァンパイアロード……つまり吸血鬼の王さまって呼ばれる存在があるんだ。吸血鬼の王家は世界に5つ。この国にもいて、その一族が薔薇園家だよ。つまりその当主のリクヤさまが王。その息子のリクリゅんが王子。ナナヤんが王弟ってことになるね!」
さすがにレナードさんも、お義父さんはさま付けなんだ――――……。って、それよりも……!王さま、王族って……。
「……偉いの?」
リクリたんを見上げて、思わず問う。
「うむ?まぁこの国の吸血鬼ナンバーツーだしな」
はうぅぅっ!!まさかの……!
「そんな王子さまの嫁がっ!人間の俺でいいのぉっ!?」
「む?もちろんだ。吸血鬼の王族の大半がばぶだ。そのばぶにとってもっとも大切なままんが伴侶になることに反対するものはいない」
「ばぶとままんのコって100%吸血鬼だし、ばぶが遺伝するんだよね。まぁほかの吸血鬼だと遺伝もあれば突発的に現れることもある。あと、ままんはほぼ突発的に生まれるからね」
そ、そうだった――――――っ!ままんとばぶのコは、100%吸血鬼でばぶ!ばぶはとりわけ優秀……!そりゃぁみんな、反対はしないわ。
「あ……てことは父さんたちのコも……」
リアルばぶちゃん吸血鬼?
「……っ」
ガンっ
と、父さんが柱に頭突きしたぁ――――――っ!?しかも、柱にヒビが入ってるうぅぅ――――――っ!!!
「あのっ、ごめんなさ……っ」
息子としてお義母さんに思わず謝ろうとすれば……。
「いいのよ、いいの。すぐに修復されるから!」
そう言えばそうだった~~っ!
「それより、ナナちゃんとお嫁さんの赤ちゃん!私も見たぁ~いっ!」
その言葉に父さんが驚愕の表情を浮かべ、お義母さんが見たいと言うのならばとお義父さんもキラキラした目で頷く。
お義母さんがそう言うのならば、もう誰にも拒むことはできない。
リクリたんはリクリたんで、俺にくっついていられれば満足みたいだし……!
そもそも……俺も弟見たいし~~っ!
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