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第一部
【34】吸血鬼ばぶちゃんと定期のばぶ期。
しおりを挟む――――――一晩旅館でゆったりまったり過ごしたした俺とリクリたんは、当然のように迎えに来たリムジンに乗り、宮殿まで帰宅した。
「帰って来たなぁ~~!」
すっかりここがホームになっている。
「たっだいまぁ~~」
宮殿の玄関前では、ずらっと並んだメイドさんや執事さんたちが一斉に『お帰りなさいませっ!!』と告げてびっくり。
寒くはないのだろうか?メイドさんは長袖カーディガンにタイツだから……大丈夫かな?
カーディガン羽織ったメイド服初めて見たけど、でも季節は秋。寒さ対策は必要だよね。そして執事さんたちはもちろん上着を着ている。
まぁ寒さ対策バッチリでのお出迎えなら俺も安心かなー。
――――――ってか、やっぱり王子だなぁ、リクリたん。
「ね、リクリたん。早速お土産を見よっか~~」
アイスは先に冷凍で宮殿に送ってある。その他にも温泉饅頭や謎の哺乳瓶木彫りを仕入れて送っておいたのだ。哺乳瓶木彫りはリクリたんが気に入っちゃったので購入した。因みにプラスチック製のストラップもあったので、リクリたんと俺のスマホにお揃いで付けてある。
玄関に上がりつつ、メイドのお姉さんたちに靴を片付けてもらいながら、リクリたんを見やる。
「ばぶ」
「えっ!?」
えぇと……ばぶ?
「ばぶばーぶ、マミー」
「……ふおあぁぁぁぁっ!?」
何か……またばぶちゃんになってない!?
――――――ばぶ化していると言うことは。
「あの、何か悲しいことやショックでもあった?」
「ばぶぶ~~」
え、違うの?首を横にふるふる振るリクリたん。そう、だよな?今まで幸せ満載で過ごしてたもんな?
「温泉、名残惜しかった?」
「ばぶぶ~~」
また首を横にふるふるするリクリたん。そうだよな……思えばこの宮殿の湯殿だって原泉掛け流しだぞ。
「宿屋にもっと泊まりたかったの?」
「ばぶぶ~~」
またまた首を横に振るリクリたん。
リクリたんは俺と一緒なら満足する性質だからなぁ。違うよね。
「……あ、ままんと一緒で嬉しすぎる!」
「ばぶばーぶ、マミー、ばぶっ」
うーん、これはそうではあるけれども、このばぶ化の原因じゃないってこと?
「じゃぁ、ままんに甘えたすぎて!」
「ばぶばー、マミー、ばぶばーぶっ」
あー、そうだよね。リムジンの中でも甘えていたし……。
「あの、リクリたんがまたばぶちゃん化したんだけど、どうして?」
近くに控えていたエンジュさんに問うたのだが、エンジュさんは無言のまま、目を合わせてくれない。
……。
……はっ!!
リクリたんがばぶ化中だからだ~~っ!忘れていた。ばぶ化中はままんがほかの誰かと話していても嫉妬しちゃうのだ……!
あれ、でも夜会の時は、ばぶ化していたお義父さんの横のお義母さんと俺、話をしていたし。ままん同士ならオッケーなのだろうか。
「よし……!お義母さんのところへ行こう!」
「ばぶ?マミー、ばぶっ」
え、リクリたん、ダメなの?
その時、リクリたんがエンジュさんからひとつの本を受け取り、俺に渡してくれた。
その本の表紙にはメモがくっついており……。
【リクヤばぶちゃんがばぶ化中だから、何か困ったことがあったら、この本を読んでねっ!
――――――お義母さんより】
お義母さんんんっ!?まさかこの事態を読んでいたとでも、言うのか……っ!!?
そしてその本の表紙を確認する。
【ままんとばぶちゃんの初めての定期ばぶ化の過ごし方】
まさかのままん用テキスト――――――っ!?しかも【著:靜樹】って……お義母さん著~~~~っ!さすがはみんなのお義母さん。みんなのままんっ!!
――――――抜かりない……!!
あ、もしかして……。
「これって、定期のばぶ化あぁぁっ!?」
「ばぶっ!」
リクリたんがこくんと頷く。
なんとまぁ、突然のタイミングで定期のばぶ化が来てしまったのだった。
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