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思わぬ珍客。

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「出てきなさいこの泥棒猫おぉぉっ!!!」

はぁ。まだ妹(=俺の母上)に酔っているルベライト公爵こと義父上を追い返してから平和な日々が続くのかと思ったら、今度は何だろう。
因みに今朝もシェルからキスの雨にぎゅむぎゅむサービスを受けた。
平和だなぁー。でろ甘だなぁーと和んでいればこれである。

「なぬっ!?ユウェルはかわいいユウェルにゃんこだ、にゃんにゃん!泥棒猫とは聞き捨てならぬっ!にゃんにゃん」
そっこじゃねえぇぇっ!
みなさん、お待たせしました。今回のそっこじゃねえぇぇっ!のコーナーが始まりましたよ。
しかも謎のにゃんにゃん付き。

さて、では今の状況から説明しよう。本日はサロンでシェルとお茶をしていたのだが、何だか騒がしい声が。何でも大公邸の前で「入れろ」だの俺を「泥棒猫」だの叫ぶ女が現れたらしい。

それで様子を見に行こうと言うことでシェルと一緒に見に行って見ればーーそこには髪ボサボサでギラついた目で睨みながら俺を泥棒猫と叫ぶウーヴァがいたのだ。

かつての着飾った化粧くさいウーヴァは何処へ行ったんだか。

しかも堂々と馬車で来そうなのに何故ひとりで?つか徒歩で来たん?

「ユウェルはかわいいにゃんこだ!訂正しろ!」
……てなわけでうちの旦那さまがまた斜め上なセリフを吐いているわけである。

「どこがよ!そんなツリ目の悪ガキ!」
まぁ、悪役令息とは往々にしてツリ目なのである。でもタレ目の悪役令息がいてもいいと思うんだ。まぁ俺はテンプレのツリ目だが。あと母上もツリ目。でもそんなツリ目もシスコン公爵やシェルは愛してくれているんだろうなぁ。なんかほっこりする。シスコン公爵はちょっとうざいけど。

「ユウェルのかわいさが分からないだと!?こんだ阿婆擦れがっ!ッシャーっ!」
しかも猫シャーしたよ。……ちょっとかわいい。

「何ですって!?私はプレナイト公爵夫人よ!?」
いや、《前》だろが。せっかくシェルの猫シャーにきゅんと来てたのに台無しだわー。

んもぅ、自分が溺愛してきた息子の地位奪ってどうすんよ。アンタは充分に公爵夫人として贅沢してきただろうが。
そしてウーヴァもウーヴァだな。

相手王弟殿下。大公閣下。
まさか自分が大公閣下にそんな物言いをしていい立場だとも思っているのか?王位継承権を持つ王弟と、前公爵を騙して公爵夫人の座をもぎ取ったウーヴァが対等に話せるはずがない。

てかアンタ、シェルのその議論に参加すんのかよ。普通ぽかんとするわ。シスコン公爵はシスコンが行きすぎて付き合ってた。あとシスコン公爵はまともな公爵だし、あと陛下の忠臣で、シェルの伴侶である俺の養父だから良かったのである。

でもウーヴァ、アンタは違うかなぁー。

「取り敢えず、アナタは何しに来たんですか?」
とりま俺だけでも仕切らないと。
周りの警備の騎士や家令たちが困ってる。

「何をしに……ですってぇ!?」
いやだって、知らないもん。何でここに来ようと思ったのか超イミフ。

「どうせユウェル目当てに来たのだろう!ユウェルのおパンツは私のものだ!」
ちょいちょいちょーいっ!ちょっとシェルは黙ってなさいっ!いい子だから!

シェルを腕で制すれば。

すりすり。

すりすりすり。

腕にめっちゃすりすりし出したー。ちゃうって。そう言う腕ぽいじゃないの!でも大人しくなったならまぁいいか。

「それで、ご用は?」
俺の腕にシェルがくっついてるうちに済ませよう。

「金を、寄越しなさい!」
はい?

「宝石やアクセサリーでもいいわ!とにかく金目のもんを出しなさい!」
え、強盗?白昼堂々と大公邸に強盗しに来たのかこの女っ!!

「いや、逮捕だろ」

「捕縛しろ!」
俺の言葉に、家令が指示を出し、騎士たちがウーヴァを引っ捕らえる。

「放しなさい!金を、金を寄越せえぇぇっ!」
いや、大公邸に来た目的が強盗って。笑えないな。

「騎士団に引き渡すことになるかな?」
「えぇ、そうですね。引き渡して参ります」
大公家の騎士隊長の先導のもと、ウーヴァは邸の敷地内から連れ出された。そして王国を守る騎士団が王都には常駐しているので彼らに引き渡される。

シェルも騎士団所属だが、多分所属は違うから、貴族邸ーーしかも大公邸に堂々と強盗にやって来たウーヴァは笑い者になりながら騎士団が連行してくれるだろう。

「しかし、何でウーヴァが単独でここへ?」
「プレナイト前公爵に捨てられたのだ」
答えたのはシェルだった。

「何か知ってるの?」
しかも、捨てられたって。

「一連の事件であの女が前公爵の子と偽ってヴィーノと公爵家に上がり込んだことがしれわたり、前公爵に離縁されたのだ。もちろんあの女の実家の男爵家も引き取りを拒否。無一文で放り出されたもんだから、何故かは分からんがこちらに金をせびりに来たのだろう」
何故かは、ねぇ。プレナイト公爵家にいた頃も俺に金をせびりに来ていたから、同じようにできると思ったのかな。もう赤の他人以上に元々赤の他人だったのに。そしてプレナイト公爵家と縁を切り、大公家の嫁となった俺に金をせびりに来たところでもらえるはずないだろうに。

「あれ、そう言えばヴィーノは?プレナイト公爵家、追い出されてないの?」
ヴィーノも前公爵とは赤の他人なのだが。

「それは兄上がアップフェルとの婚姻を認めたからな。追い出すにも追い出せないのだろう」
「あぁ」
そっか。王命があるもんねぇ。追い出したところで公爵位を王命でアップフェルに継承させた以上その権威が前公爵に戻ることはないし、今さら前公爵だとしゃしゃり出たところで、前公爵を相手にする貴族もいないからなぁ。

しかし知ってて何も言わないとは――――

シェルも腹黒?いや、単に俺の腕にすりすりしたかっただけかもしれない。


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