6 / 6
⑥
しおりを挟む1週間と少しが経過し、俺は君をデートに誘えるタイミングをうかがっていた。
あれから、君はなにも変わらず俺と接してくれている。
「なあなあ、」
「どうしたん?」
「今週の土曜、先輩と飲みにいかへん?」
ストレートに誘う勇気のない俺は、先輩が飲みに行きたいと言っているということにし、君を誘いだした。
そして土曜日、君に電話を掛ける。
「もしもしー」
「はーい」
「先輩がさー、やっぱ今日いかれへんってよ。」
「そうなん?」
どこかそっけない様子。
俺は恐るおそる、打診をする。
「また、2人でどう?」
動悸が止まらない。
心臓の鼓動があまりに激しく、全身の血管が張り裂けそうだ。
「いいよ。」
この返答に、俺は何かずっと努力していたものがようやく報われたような、そんな気分だった。
「どこいく?」
君が尋ねる。
「焼肉でもどう?」
そう言ったのは、俺がただ焼肉が食べたかったから。
それに、君のことだから、何を言ってもうんと言うだろうなと思って。
「いいね!」
「じゃあ、17時にロビーで。」
こうして、初めて俺は自分から君を誘うことができた。
また君と、2人の時間を過ごすことができる。
楽しみであると同時に、少々プレッシャーでもあった。
前回のことを俺はずっと気にしていた。
セックスしなかったことじゃなくて、君の気持にこたえられなかったこと、男としての弱さ、不甲斐なさである。
近くにはいい感じの焼肉屋はなかったので、車で30分ほどのところにある店を予約した。
つまり、今回は酒の力を借りることができない。
まだ午前11時。
約束の時間まで6時間もある。
まず風呂に入り、全身の毛を剃る。
着ていく服は1時間かけて厳選。
イケてる髪のスタイリング方法をユーチューブで調べ、40分くらいかけてセットする。
かばんには財布とモバイルバッテリー、そしてコンドームを入れた。
この時点で、まだ2時間強時間が余っている。
今日行くところは初めての場所だ。
俺はスムーズに君をエスコートできるよう、下見に出掛ける。
非モテコミットもいいところである。
そうわかっていながらも、俺は君のために努力を惜しみたくなかった。
そして、約束の時間がやってくる。
車はあらかじめ近くの臨時駐車場に停めておき、また、まだ5月だがこの日は少し暑かったので、クーラーをつけておいた。
準備は万端だ。
俺は15分前にはロビーで待っていた。
そして17時。まだ君は来ていない。
俺のためにしっかりと準備してくれているのだろう。
なんて、我ながらポジティブなことを考えていた。
この時点では、さっきまでのナーバスな感情は消えており、ただ君に会える喜びだけが増幅していた。
17時4分、パタパタと足音が聞こえる。
「おまたせーっ!」
君がやってきた。
なんてかわいいんだ。
一瞬、思わず見とれてしまっていたが、すぐに切り替える。
「いやー、めっちゃ待ったわ。」
こんなことも言えるくらい、今の俺は余裕に満ちていた。
君と目を合わせ、2人でほほ笑む。
俺と君との、第2章が始まった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
マッチ率100%の二人だが、君は彼女で私は彼だった
naomikoryo
恋愛
【♪♪♪第19回恋愛小説大賞 参加作品♪♪♪ 本編開始しました!!】【♪♪ 毎日、朝5時・昼12時・夕17時 更新予定 ♪♪ 応援、投票よろしくお願いします(^^) ♪♪】
出会いサイトで“理想の異性”を演じた二人。
マッチ率100%の会話は、マッチアプリだけで一か月続いていく。
会ったことも、声を聞いたこともないのに、心だけが先に近づいてしまった。
――でも、君は彼女で、私は彼だった。
嘘から始まったのに、気持ちだけは嘘じゃなかった。
百貨店の喧騒と休憩室の静けさの中で、すれ違いはやがて現実になる。
“会う”じゃなく、“見つける”恋の行方を、あなたも覗いてみませんか。
一条さん結婚したんですか⁉︎
あさとよる
恋愛
みんなの憧れハイスペックエリートサラリーマン『一条 美郷(※超イケメン)』が、結婚してしまった⁉︎
嫁ラブの旦那様と毒舌地味嫁(花ちゃん)....とっ!その他大勢でお送りしますっ♡
((残念なイケメンの一途過ぎる溺愛♡))のはじまりはじまり〜
⭐︎本編は完結しております⭐︎
⭐︎番外編更新中⭐︎
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる