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⑤
しおりを挟む土曜日は、1日中ベッドから抜け出せなかった。
心の中で何度も君に謝りながら、また、次に君に会ったとき、どう言い訳しようかなんて考えながら。
日曜日も同じだ。
だが夕方くらいになると、流石に腹が減ってきた。
近くのスーパーに車を走らせる。
てきとうな惣菜を買って、帰路に着く。
俺の心は放心状態。
すると、前を走る車に気がついた。
君の車だった。
君も同じスーパーに買い物をしにきていた。
後ろを走る俺に、君は気づいているのかと、ドキドキした。
頼むから気づかないでくれ。
俺の心はまだそんな甘いことを言っている。
駐車場で声を掛けようとも思ったが、結局、何もできずに、月曜日を迎えてしまった。
月曜日、仕事に行くと、すでに上司は来ていた。
君はまだ来ていないようだ。
「おう!どうやった??笑」
上司のニヤニヤした顔が、とんでもなく醜悪に見えた。
「楽しかったっすよ!」
「てか、なんなんすか!」
俺は上司があんなやり方でマッチングさせたことに文句を垂れた。
「楽しかったならいいやんけ!笑」
まあ、正直そこはどうでもいいのだが。
俺はそんな話しかできなかった。
「おはようございまーす。」
君が来たようだ。
普段からあまりテンションが高い方ではないので、いつも通り、といった雰囲気。
でも顔は、こころなしか少し暗いような気がした。
俺はみんながいない時、2人きりになれたら話しかけようと思った。
君と話さないまま、仕事が始まった。
1人で淡々と仕事をこなしていると、上司がやってきた。
「あいつ、楽しかったってよ!でも、お前が楽しめてたかめっちゃ気にしてたぞ。」
なんていい子なのだろう。
俺は泣きそうだった。
そして昼過ぎ、
「誰にも言ってないやんな!笑」
君が話しかけてきた。
「言ってないって!笑」
「ほんまかよ笑」
なんで、
こんな俺に、そんな笑顔で話しかけてくれるんだ。
笑顔だったが、無理していたのは一目瞭然だった。
俺と気まずくならないようにしてくれているのだろう。
また君に、リードしてもらっている。
悔しくて悔しくて、俺はつい、冷たくしてしまった。
「酔ったらいつもあんな感じ?」
「ちがうよ笑」
「ふーん」
気まずい空気が流れ始めた。
「ごめんね。」
なぜか君は謝った。
あとから聞いた話だが、君は俺に嫌われたと思ったらしい。
だが当時の俺にそんなことはわからない。
「いや全然。大丈夫。」
俺は焦った。
このまま君との関係が終わってしまいそうで。
「楽しかったで!」
俺は最後の力を振り絞るように、君に言った。
「また行こうな」
君に謝るのはまた、今度にしよう。
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