失われた世界

いぬ

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土曜日は、1日中ベッドから抜け出せなかった。

心の中で何度も君に謝りながら、また、次に君に会ったとき、どう言い訳しようかなんて考えながら。

日曜日も同じだ。

だが夕方くらいになると、流石に腹が減ってきた。

近くのスーパーに車を走らせる。

てきとうな惣菜を買って、帰路に着く。

俺の心は放心状態。

すると、前を走る車に気がついた。

君の車だった。

君も同じスーパーに買い物をしにきていた。

後ろを走る俺に、君は気づいているのかと、ドキドキした。

頼むから気づかないでくれ。

俺の心はまだそんな甘いことを言っている。

駐車場で声を掛けようとも思ったが、結局、何もできずに、月曜日を迎えてしまった。

月曜日、仕事に行くと、すでに上司は来ていた。

君はまだ来ていないようだ。

「おう!どうやった??笑」

上司のニヤニヤした顔が、とんでもなく醜悪に見えた。

「楽しかったっすよ!」

「てか、なんなんすか!」

俺は上司があんなやり方でマッチングさせたことに文句を垂れた。

「楽しかったならいいやんけ!笑」

まあ、正直そこはどうでもいいのだが。

俺はそんな話しかできなかった。

「おはようございまーす。」

君が来たようだ。

普段からあまりテンションが高い方ではないので、いつも通り、といった雰囲気。

でも顔は、こころなしか少し暗いような気がした。

俺はみんながいない時、2人きりになれたら話しかけようと思った。

君と話さないまま、仕事が始まった。

1人で淡々と仕事をこなしていると、上司がやってきた。

「あいつ、楽しかったってよ!でも、お前が楽しめてたかめっちゃ気にしてたぞ。」

なんていい子なのだろう。

俺は泣きそうだった。

そして昼過ぎ、

「誰にも言ってないやんな!笑」

君が話しかけてきた。

「言ってないって!笑」

「ほんまかよ笑」

なんで、

こんな俺に、そんな笑顔で話しかけてくれるんだ。

笑顔だったが、無理していたのは一目瞭然だった。

俺と気まずくならないようにしてくれているのだろう。

また君に、リードしてもらっている。

悔しくて悔しくて、俺はつい、冷たくしてしまった。

「酔ったらいつもあんな感じ?」

「ちがうよ笑」

「ふーん」

気まずい空気が流れ始めた。

「ごめんね。」

なぜか君は謝った。

あとから聞いた話だが、君は俺に嫌われたと思ったらしい。

だが当時の俺にそんなことはわからない。

「いや全然。大丈夫。」

俺は焦った。

このまま君との関係が終わってしまいそうで。

「楽しかったで!」

俺は最後の力を振り絞るように、君に言った。

「また行こうな」

君に謝るのはまた、今度にしよう。
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