レンタル彼氏、おっさん

むちむちボディ

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はじまりは冷やかし

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「マジで押したの? うわ、お前やば…!」

スマホを覗き込んできた親友の晶が、口を手で覆って笑いをこらえる。
その画面には『ぽっちゃり・癒し系・50代後半・おじさんレンタルコース』の予約完了通知。
しかも60分・指名あり。

「酔ったノリってやつ。明日にはキャンセルするつもりだし。」

自分で言っておいて、悠斗は画面をスリープさせる。
本当は少しだけ、どんな男が来るのか見てみたかった。
広告に使われている写真は、二重顎に無精髭。
白シャツが腹に食い込み、ボタンの隙間から下着が見えている
――そんな、“需要あるの?”と疑いたくなるような中年男性だった。

いや、だからこそ。
気になってしまったのだ。

待ち合わせ場所の喫茶店に入ると、角のテーブルに一人だけ浮いた存在がいた。

丸眼鏡を外し、ゆっくりコーヒーを啜るその男は、まさにあの写真の“おっさん”だった。
だが実物は――想像以上に分厚かった。

ゆったりとした白シャツの中には、胸と腹の境界が曖昧なほどの肉がついている。
肘をついた腕の肉がぷにっと潰れ、皮膚が汗ばむような湿気を孕んでいるのが、なぜか妙に艶かしく見えた。

目が合った。

「佐久間悠斗さんですか?」

低く、少しかすれた声。
予想以上に、男の声だった。

「……あ、はい。えーっと、橋爪さん?」

頷いた男――橋爪透は、立ち上がって軽く頭を下げる。
近づくと、石鹸と男の汗が混ざったような匂いが鼻をかすめた。
強いわけじゃない。
けれど、胃の奥がじんわりと反応するような、妙に生々しい匂いだった。

「仕事のこととか、聞いても?」

コーヒーを注文しながら、悠斗はなるべく“冷やかしっぽく”見せようと軽口を叩いた。

「いいですよ。必要な範囲で。」

相変わらずぶっきらぼうな返事。
でも、嫌味ではない。
ただ慣れてないのだ、この距離感に。

「……けっこう、こういうの慣れてるんですか?」

「慣れてません。始めて半年くらい。数はこなしてませんよ。」

「ふーん……。意外と、声いいっすね。」

「そうですか?」

さらっと流される。

でも、内心では。
――なんだよこの人、めちゃくちゃ色っぽいじゃん。
そう思ってしまった自分がいた。

目の前にいるのは、普通のおっさんだ。
清潔感はあるけど、決して若くも細くもない。
でも、その皮膚の下に血と体温が詰まってる“生き物としての重さ”が、異様に魅力的だった。

そして、コーヒーを持つ橋爪の太くて節のある指が、湯気の中で微かに震えているのを見て、悠斗はふと聞いた。

「緊張、してるんですか?」

橋爪は一瞬、目を伏せたあと、小さく笑った。

「正直に言えば、はい。こういう仕事、未だに慣れません。」

「……なんか、意外…」

「そっちも、そう見えないですね。慣れてるように見える。」

その“そっち”の言い方が、どこかいやらしかった。
性的な意味での“慣れてる”。
そう受け取った悠斗の下腹部が、ずくん、と疼いた。

喫茶店を出て、駅まで歩く。
予約は60分。そろそろ時間も終わる。

横を歩く橋爪の肩幅は広く、何気なく歩くだけで時々、腕や手が触れそうになる。
そのたびに、悠斗の体の奥がぞわぞわと熱を帯びた。

歩きながら、ふと指先が橋爪の手に触れた。

「……触っていいですか?」

そう言った自分の声に驚いたのは、誰よりも悠斗だった。
冗談じゃなく、本気で欲してしまっている――この肉と体温と、汗の匂いを。

橋爪は立ち止まり、数秒、黙って悠斗を見た。

「それは……」

拒否されるかと思った。
だが橋爪は、言葉の代わりにゆっくり手を差し出してきた。
大きく、ぬくもりのある手。

悠斗はそっとその手を握る。
指が太く、皮膚は乾いていたけど、じんわりと体温が滲んでいた。

そのまま、どちらからともなく、軽く抱き合った。

胸が、腹が、ぴったりと当たる。
服越しでもわかるその“重み”に、悠斗の呼吸が浅くなる。
下半身が、ぴくりと反応してしまっていた。

「……また、会えますか?」

橋爪は迷ったように目を伏せたあと、小さく頷いた。

「俺でよければ。」

その“俺でよければ”という謙虚な一言が、どこまでも優しくて、どこまでも淫らに響いた。

――この男に抱かれたい。

まだ触れてもいないのに、悠斗の身体はすでに、橋爪透を求め始めていた。
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