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10. 深刻な嫁不足

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エアデールの瞳はどこかぼんやりしていて、焦点が合っていないようにも見える。エアデールは私の体に啄む様に唇を落としながら下へ下へと顔を移動させて行った。私は擽ったさに身を捩る。

「んんっ、···エアデール?」

どうしたんだろう。
いつもと様子が違う気がする。

「ユカ···」

体中にキスの雨を降らせながら、足の先にチュッと唇を落とした後、エアデールは私の胸に顔を横向きにして埋め、私の体をぎゅぅぅっと抱き締めて深く息を吐いた。

何だかものすごく甘えられているようで、胸の中に甘いキュンとした感情が生まれてくる。違う違う。これはただ流されている事柄から生まれて来る感情であって···。所で、どうしたらいいのこの状況。がっちりホールドされていて身動きがとれない。

薄い布地の上から、エアデールの体温がダイレクトに伝わって来て、私はとくんとくんと甘く胸を弾ませた。心臓の音、聞こえ無いといいなぁ···。

「え、エアデール···?」

私を抱きしめたまま動かないエアデール。
本当に、どうしてしまったのだろう。

「暫く、このままで」

「···わかった」

今の状況の理解が出来ず、少しだけ混乱しているけれど、私は辛うじて動く腕でエアデールの体を包み込んだ。

「···、」

ビクりと体を震わせるエアデール。
もしかして、余計な事をしてしまったのかな。





ユカが欲しい···。
ユカを花嫁にしてからと言うもの、ココ最近やたらと体がユカを欲しがっていた。こんな欲求は今まで経験した事は無く、性欲はそこそこの物だったと思っていたが、これは酷い。発情期に入った獣のようだ。花嫁を娶ると性欲が増すとは聞いていたが···デスクに肩肘を付いて額を抱えた。

コレは子孫を残せと本能的な物なのか、最近では執務中にやたらとユカの姿が脳裏を過ぎり、そうして気が付けば力が抜けて机に突っ伏していた。
少しだけ休憩しようとソファに深く腰掛け、背もたれに体重をかけていると、俺の様子を見兼ねたようにイージスがユカを俺のいる執務室に寄越した。あられもない格好をさせて。

例えるなら、今の俺は餌を前に飢える獣だ。まるで美味そうな餌を前にして、花嫁を食えと言われているようだ。

ユカの甘い花の様な匂いがふわっと漂い、抑えられない欲が暴走しようとしている。ユカの手首を引っ張り、些か乱暴にソファに押し倒してガウンを剥ぎ取った。

薄紫色のベビードールに、透ける体。
太過ぎず細過ぎず、程よくむっちりとした丸みを帯びた肉付きに、マシュマロのように白く柔らかな肌。おわん型の乳房には、小さなさくらんぼの様な乳首。緩やかなカーブを描くウエストから太もものラインの丸みが···いや、今は大人しくユカを堪能したい。

あぁ、堪らない···。
喉の奥に生唾を呑み込み、ユカの柔い体中に唇を落とした後、俺はユカを抱き締めて柔らかさと温もりを肌で感じ取る。柔らかな胸に頭を預けるだけで、気分が落ち着く···訳が無かった。

今すぐに唇を貪り、乳房を揉みしだきたい。
ユカの感じる表情を見ながらユカの最奥に、俺のソレを打ち付けたい。

欲望のままにユカを貪り尽くしたい。
いや、それではダメだ。
ユカの体は大切な母体となる身だ、それに人間の体は脆く弱い。

俺がそんな葛藤と戦っている中で、ユカは俺を抱き締めた。
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